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それでも、日本人は「戦争」を選んだ [日本史]


それでも、日本人は「戦争」を選んだ (新潮文庫)

それでも、日本人は「戦争」を選んだ (新潮文庫)

  • 作者: 加藤 陽子
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2016/06/26
  • メディア: 文庫



 「日本人がなぜ戦争に突き進んでいったのか」を探求した本なのだが、類書に比べてもかなり読みやすい。

 まず日清戦争のところからさかのぼって解説しているところがよい。歴史というのは、原因と結果が脈々と連なっているものなので、太平洋戦争の原因を探るにしても、かなり前までさかのぼらないと全体像が見えてこない。太平洋戦争の前の日中戦争がどのようなものであったのか、さらに前の第一次世界大戦、日露戦争、日清戦争を知らなければならない。そういう意味で、この本は日清戦争のところから順を追って解説してくれているので、流れがつかみやすい。

 本書を読むと、日清戦争、日露戦争、第一次世界大戦という流れの中で、日本が中国や韓国における権益を着々と獲得して、拡張路線をとり続けていったことが見て取れる。諸外国はこれに対して当然反発するのだけれど、日本は手に入れた権益を失うことを恐れたのだ。

 政治家や軍人の話だけでなく、当時の人々が戦争に対してどのような見方をしていたのかという点についても、具体的な資料を挙げながら示されている。この本を読むと、日中戦争にしても太平洋戦争にしても、軍部が推し進めたというだけではなく、多くの国民やマスコミの支持というものがあったことが見えてくる。

 国民国家における戦争は総力戦なので、国民の支持がないとそもそも始められない。軍人の暴走とそれに騙された国民といった単純な図式では収まらなくて、国民もまた戦争を後押しする役割を果たしていたのだ。

 ここで不思議なのは、太平洋戦争において、日本と米国に圧倒的な兵力差があることは、軍人にも国民にも分かっていたということ。今から振り返ると、どう考えても不合理で無謀な戦いにしか見えないのに、なぜか日本はこれを進めてしまった。このあたりについては、この本の解説を読んでも謎のままである。日本人は集団幻想のようなものにとりつかれていたのだろうか?

 日中戦争も太平洋戦争も、もはや自衛戦争の範疇を超えてしまっていて、侵略戦争だよなあと思う。人のものを盗ろうとするのはよくないと単純に考えてしまうのだけれど、昔の日本人は別の価値観で動いていたようだ。昔の帝国主義の時代だから、今とは全然考えが違ったのだろうか? この手の本はときどき読むのだが、最終的にはいつも釈然とせず、「なんだかよく分からんなあ」となる。
タグ:加藤陽子
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人類と気候の10万年史 [地学]


人類と気候の10万年史 過去に何が起きたのか、これから何が起こるのか (ブルーバックス)

人類と気候の10万年史 過去に何が起きたのか、これから何が起こるのか (ブルーバックス)

  • 作者: 中川 毅
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2017/02/15
  • メディア: 新書



 猛暑日が続いていて、夏バテ気味である。昨年どうだったかすぐに忘れてしまうのだが、いつもよりも暑いような感覚はある。

 実際に気候変動のデータを見ても、温暖化は進んでいるようだ。このまま温暖化対策を取らなかった場合、今後100年で5度も上昇するなんていうシミュレーション予測もある。

 なんだか異常だなあと思うし、地球がどうなってしまうのか心配になってくるほどだが、過去の長い長い地球の歴史を見ると、地球の気温というのはもともと激しく変遷しているものなんだそうだ。

 今よりもずっと暖かくて、北極にも南極にも氷床が存在しない時代もあった。そんな時代でも恐竜が跋扈して、植物も豊かに繁栄していた。逆に今よりもっと寒冷だった時代もあった。地球のあらゆる場所が氷で覆われた「スノーボール・アース」と呼ばれる状態になったこともあった。

 地球はたえず温暖と寒冷を繰り返してきた。こうした長いスケールでみると、地球の気温というのは常態が決まっているわけではなく、「定常」も「異常」もないことが分かる。

 それにしても、温暖と寒冷が繰り返されているのはどういうメカニズムが働いているからなんだろう? そもそもそんなに昔のことをどうやって調べたんだろう? 「人類と気候の10万年史」という本は、こうした素朴な疑問に答えてくれる一冊だ。

 昔のことを調べる際に「ものさし」としてよく出てくるものに、放射性同位体というのがある。歴史の本を読むとよく出てくる。炭素には質量12から14まで3種類の同位体があって、質量14の炭素は不安定なので放射線を出して窒素に変化しようとする。生物の体内にはこれらの炭素が取り込まれているので、木片などの歴史的な試料の中に含まれる質量14の炭素の量を測定し、他の同位体と比べてどの程度の割合なのかを調べることで、試料の年代が分かる。

 問題はこの質量14の炭素の割合が、時代によって不規則に変動するということ。この割合が不正確だと、年代測定も不正確になってしまう。

 もっといい年代測定法はないかということで、本書では日本の水月湖の年縞という新たな「ものさし」が紹介されている。炭素の放射性同位体よりも正確に年代測定ができる優れものらしい。こんな身近なところに、世界レベルの年代測定の技術があるとは知らなかった。

 この「ものさし」を使うことで、過去の気候変動がより正確に分かるらしい。過去の気候変動が正確に分かれば、どのようなメカニズムが働いているかの手がかりになる。そして本書の中では、過去の気候変動のデータに基づいて、気候変動にあるパターンがあるのではないかと精緻な分析を試みている。

 データを分析して理論を組み立てる。そしてそれを実証しようとする。科学研究の手本を見るかのような爽快感。謎を解明していく楽しさ。読んでいて本当にぞくぞくする本だ。

 最初は単なる解説本の類かなと思って読み始めたのだが、筆者自身の長年の研究がまとめられたもので、ものすごい読みごたえで驚いた。
タグ:中川毅
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九人と死で十人だ [ミステリ(外国)]


九人と死で十人だ (創元推理文庫)

九人と死で十人だ (創元推理文庫)

  • 作者: カーター・ディクスン
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2018/07/30
  • メディア: 文庫



 旅行とミステリーは相性がよい。いわゆるトラベルミステリーというものだ。

 旅の雰囲気が味わえるというのもあるが、もっと実際的な理由もある。ミステリーに必要なのは、謎の容疑者たち。いわくありげな登場人物たちがいるから面白い。そして、旅行では見知らぬもの同士が同じ汽車に乗ったり飛行機に乗ったりするのだから、謎の登場人物がわんさと出てくる。

 カーター・ディクスンの「九人と死で十人だ」は、こうしたトラベルミステリーの面白さを凝縮したような作品だった。第二次大戦下、ニューヨークからイギリスに向かうエドワーディック号という客船が話の舞台。航海のさなかに殺人事件が起こる。

 とにかく「ツカミ方」がうまい。冒頭のシーン、戦時下ということで舞台となる客船には爆撃機や爆薬などの軍需品が積まれ、ただの客船とは違うということが示される。航路もアメリカからイギリスに直接向かうもので、潜水艦の魚雷で攻撃される可能性もある危険なものだ。

 戦時下ではアメリカ人が交戦中の国に渡航することは制限されていたことも併せて考えると、このような船に乗る人はほぼいないはず。なのに、9人の乗客がいるという。

 「この乗客たちはなんでわざわざ危険も承知で乗ってるんだ?」「どんな人たちなんだ?」と、冒頭のシーンだけで、一気に好奇心をわしづかみにされてしまった。

 謎の答えが知りたくなってページをめくって、次々に新事実が判明するのだけれど、ことあるごとに新たな謎が提示される。「犯人はなんでこんな謎の行動をとったんだろう?」「この登場人物の謎の行動は一体?」というような出来事が途中途中で起こる。これもまた気になるので、ページをめくるのが止められなくなるというしかけ。

 とにかく「ツカミ」の連続で、ストーリーテリングのうまさには舌を巻いた。

 もちろん、「ツカミ」がうまくても、解決編が残念なケースというのもあるが、本作について言えば解決編もまた見事だった。メイントリック自体は定番のものだったが、使い方がうまいのか、素直に騙されてしまった。犯人の行動も筋が通っていて、謎の行動にもこんな意味があったのかという納得感がある。

 ミステリーでは殺人の謎がメインになるのだが、メインの謎だけじゃなくて、いろいろ細かい「ツカミ」のための謎が大事なんだなということがよく分かる作品。伏線とその回収という視点で見ていくと、とても面白い話だと思った。
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自分の考えを「伝える力」の授業 [実用]


自分の考えを「伝える力」の授業

自分の考えを「伝える力」の授業

  • 作者: 狩野 みき
  • 出版社/メーカー: 日本実業出版社
  • 発売日: 2014/06/05
  • メディア: 単行本



 子どもの頃、夏休みになると宿題で読書感想文を書かされたものである。自分はこれが嫌いだった。無理矢理に本を読まされている感じや、何を書いたら分からないもどかしさが本当に苦痛だった。

 読書感想文にいい思い出を持っている人は、なかなかいないんじゃないだろうか? だから、読書感想文なんかいらないんじゃないかという意見はときどき聞くし、まあたしかにとも共感できる。

 でも最近になって、読書感想文も教え方によっては、役に立つのではないかとも思えてきた。「どういう手順で書けばいいのか」ということをあらかじめ教師がきちんと指導すればという条件付きでだが。

 そんな風に思ったのは、「自分の考えを「伝える力」の授業」という本を読んだからかもしれない。タイトルの通り、自分の意見を伝えるためのコツを伝授した本なのだが、相手にとって分かりやすい説明をするためには手順があると書かれている。

 様々な場面での説明の手順が紹介されていて、「企画を提案する方法」「人について説明する方法」「社会問題について説明する方法」「描写をする方法」「映画の感想を述べる方法」などが解説されている。そして、場面は異なっていても、分かりやすい説明というものは、同じ手順でできるということが書かれている。

 本書で紹介されているのは、例えば、重要度の高いものから低いものへという順番で説明するべきといったようなことだ。相手が知らない概念は最初に定義を入れるとか、結論を先に書いて、そのあとに根拠を述べるとか、詳細や周辺情報は最後に簡単にといったようなこと。当たり前のことかもしれないが、意外と意識していなかったようなことが書かれている。

 社会に出ると、報告や企画の提案、議事録の作成など、説明が求められることが多い。だから、分かりやすく意見を伝える力は非常に大事である。にもかかわらず、なぜか学校では教えてくれない。少なくとも自分のときはそうだった。

 本来は子供の頃にこうしたことを教育するべきだろう。そして、場面は異なっても、分かりやすい説明には共通する手順があるということであれば、読書感想文などで説明の仕方を教えることは有益だと思うのだ。本の感想を述べるには、本の内容をまず理解しなければならず、読解力が必要になるし、本の内容を簡単に解説する要約力や、自分の意見を説明する説得力も必要になる。

 ただ漫然と好きなことを書かせても、身にならないだろう。どうやって書いたらいいのか、手順をきっちりと教えてから書かせるべきで、そういう意味でも教育方法は大事だ。自分も子供の頃にそういう風に教えてくれていたらなあと思う。そうすれば、社会に出てもあたふたせずに済んだだろうし、こういう本も読まなくて済んだのだ。
タグ:狩野みき
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上手に「切り返す」技術 [実用]


上手に「切り返す」技術

上手に「切り返す」技術

  • 作者: 齋藤 孝
  • 出版社/メーカー: 辰巳出版
  • 発売日: 2018/07/06
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)



 相手が自分と違う意見を言ってきたときにどう反論するのか、議論はどのようにするべきなのか、会話のコツについて書かれた本である。

 こういう上手に「切り返す」技術は本当に大事だなあと最近つくづく思う。自分はこれが苦手で、相手の間違いを正して論破しようとしたり、自分の意見を一方的にまくしたてるということをついやってしまう。それでいろいろな人を怒らせてきた……。こういう一方的なやり方は本質的な議論とはとても言えないだろう。

 議論というのは、勝ってスッキリするためにするのではない。議論の目的は、どこに問題の本質があるのかを整理したり、問題解決のために相手に動いてもらったりすることにある。

 議論をすることで、意見の違いを知り、自分にはない視点があることが分かる。ひとりで考えるよりも、複数の人間の視点で見ることで、問題の全体像が整理されたり、解決策を深めていくことができる。

 最終的に相手に動いてもらうことに意味があるので、その場の議論で勝っても仕方がない。自分の言いたいことだけ言って、相手がヘソを曲げてしまうというのはうまいやり方ではないだろう。どうにかして相手に動いてもらうように、妥協点を見いだしたり、相手の立場や感情にも配慮したりすることが大事だ。

 自分はこのあたりの配慮が足らなかったなあと、この本を読んで反省している。理想的な議論のあり方は何なのかを考えさせられる本で、新しい気づきを与えてくれる本だ。
タグ:齋藤孝
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James Cameron's Story of Science Fiction [洋書]


James Cameron's Story of Science Fiction

James Cameron's Story of Science Fiction

  • 作者: Randall Frakes
  • 出版社/メーカー: Insight Editions
  • 発売日: 2018/05/15
  • メディア: ハードカバー



 映画監督のジェイムズ・キャメロンが自らインタビュアーとなって、著名なSF映画監督たちに、SFの魅力についてインタビューをした対談本。

 インタビューを受けている監督たちが豪華な顔ぶれなのである。スティーブン・スピルバーグ、ジョージ・ルーカス、クリストファー・ノーラン、ギレルモ・デル・トロ、リドリー・スコット。いずれもエポックメイキングな映画を作り続けている巨匠たちである。

 巨匠同士でSF映画について思う存分語っているので、語られている内容が驚くほど充実している。各監督たちが、映画を作るときにどのようなことを考えて作ってきたのかということを、自ら詳しく解説してくれていて、作品や隠されたテーマをより深く理解することができる。

 例えば、スピルバーグはSF映画を作るときには、イメージをとても大事にしていると言っている。「マイノリティ・リポート」という映画を作ったときも、中に出てくる様々なアイデアは、脚本の段階ではなく、ストーリーボードを作るときに自らスケッチをしている過程で生まれてくることがほとんどだったという。描いているうちにアイデアがどんどんわいてくるのだそうだ。

 宮崎駿もイメージボードという形で同じようなことをやっているけれど、ファンタジーやSFではイメージ作りがまず大事というのは万国共通なのだろう。

 ジョージ・ルーカスの話も面白かった。ルーカスが若いときに撮った「THX1138」は未来を舞台にしているけれど、実は未来社会を描きたかったのではなく、ベトナム戦争当時のアメリカ現代社会をメタファーとして描いていたんだそうだ。ベトナム戦争でアメリカは正義の国だという価値観が揺らぎ始めた時代にあって、アメリカという巨大なシステムの束縛から解放されたいというテーマが隠れているのだ。そして、このテーマはそのまま「スターウォーズ」にも受け継がれていったのだそう。

 いろいろな監督が共通して言っているのは、SFというのは必ずしも未来を予言するものではないということ。実際SFはいろいろな未来予知を外してきたし、インターネット社会も予言できなかった。
 
 むしろ、SFの役割は未来への警告であるという。こういう未来が来るという正確な予知はできなくても、危険を警告することはできる。だから、映画の中ではターミネーターやAIは暴走するのだし、ハイブリッド恐竜は暴れるし、タイムマシンでトラブルが起こり、仮想空間に閉じ込められる。SF映画の作り手たちはこうしたストーリーを提供することで、観客にテクノロジーの進化した未来の危険性を警告しているのだ。
 
 この本を読むと、SFといっても科学や未来や宇宙のことばかりではなく、現代とのつながりが大事だし、一番大事なのは人間を描くということなんだということが分かる。
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ルポ 児童相談所 [社会]


ルポ 児童相談所: 一時保護所から考える子ども支援 (ちくま新書1233)

ルポ 児童相談所: 一時保護所から考える子ども支援 (ちくま新書1233)

  • 作者: 慎 泰俊
  • 出版社/メーカー: 筑摩書房
  • 発売日: 2017/01/05
  • メディア: 新書



 本書は筆者が10か所の児童相談所を訪問し、100人以上の関係者にインタビューをし、実際に児童相談所の一時保護所に寝泊りまでして取材したという本。綿密な取材が生きていて、児童相談所がどのような場所なのかが克明に描かれている。

 安易な児童相談所叩きはせず、客観的で冷静な立場で児童相談所を捉えようとしているところは好感が持てた。

 本書を読むと、児童相談所には2つの問題があることが分かる。

 ひとつは、一時保護を決定するプロセス。一時保護をするにも基本は親の同意を得て行うのだけれど、同意が得られない場合でも、虐待のような緊急性があれば、児童相談所は親の意向を無視して子どもを連れていくことができる。場合によっては、裁判所の許可も得て、家のカギを壊してまで立ち入ったりもする。児童相談所にはそういったかなり強力な権限が与えられているらしい。

 ただ、このプロセスは児童相談所の判断に委ねられる部分が大きい。そのため、子どもが助けてほしいとメッセージを出しているのに、親の言い分をうのみにしてしまい、見逃してしまうケースも多い。せっかく与えられた権限が生かされないことになる。

 もうひとつの問題は、一時保護所の施設の在り方。施設によって差はあるものの、児童相談所に滞在した子どもたちは多くの場合、もう二度と行きたくないという感想を持つのだそうだ。

 なんで子どもたちが嫌がるのかというと、児童相談所がまるで刑務所のような場所になってしまっているから。一時保護所に入ると、子どもたちは自由に外に出入りすることもできず、逃げられないように入り口にカギがかかっている。トイレに行くにも許可を得なければならない。私物の持ち込みも原則禁止。食事をするときの私語も禁止。ガス抜きと称して、子どもたちはとにかく走らされ、へとへとになる。勉強時間も少なく、学力も追いつかなくなる。

 児童相談所がこんな場所だったとは全然知らなかった。もっと学校みたいな場所だと思っていたから、結構ショックである。一昔前までは、体罰まで横行していたらしい。

 人手不足だったり、閉鎖的で外部の評価制度が整っていないことが問題の根本にあるようだ。中には環境もよく、子どもたちからも評判の高い施設もあるとのこと。それなら、評判の高い施設のやり方を他の施設も踏襲すればいいのになと思う。筆者も指摘しているけれど、外部の監査機関を設けるべきなのだ。

 こういう本を読むと、日本ってつくづく人に優しくない社会だなと感じる。少子化だとか、子どもを産むのが大事だというのなら、もっと子どもの貧困に目を向けたり、予算を回したりすべきなんじゃないだろうか?
タグ:慎泰俊
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ルポ 消えた子どもたち [社会]


ルポ 消えた子どもたち 虐待・監禁の深層に迫る (NHK出版新書)

ルポ 消えた子どもたち 虐待・監禁の深層に迫る (NHK出版新書)

  • 作者: NHKスペシャル「消えた子どもたち」取材班
  • 出版社/メーカー: NHK出版
  • 発売日: 2015/12/09
  • メディア: 新書



 ときどきニュースなどで、子供が虐待されて亡くなったというような事件が報じられるけれど、周りの人たちとか行政とかが助けられなかったのかなと、いつも残念に思うのである。

 そもそも、こういう虐待やネグレクトがあった場合、行政的にどういう対応がとられるのだろう? なんで最悪の事態になるまで放っておかれるのだろう?

 いろいろ気になって、手始めに読んでみたのが「消えた子どもたち」という本だった。

 本書はNHKの取材班が、児童相談所、児童養護施設、情緒障害児短期治療施設など、1000を超える施設を対象に大規模調査を実施したもの。虐待や貧困、ネグレクトが原因で、学校にも通えず、社会とのつながりが断たれてしまった、「消えた子どもたち」の実態をまとめている。

 知らなかったのは、こういう子どもたちの所在とか、登校状況とか、行政が管理しているのかと思っていたが、そうでもないということだ。

 厚労省が所在不明となっている子どもについて、全国的な調査をしたことはあるようだが、単発的なものだし、住民票があるものの家庭と一切連絡がとれないようなケースだけが対象で、住民票がなかったり、DV保護者が意図的に子どもを隔離したりしているケースは調査の対象から外れているのだ。

 そもそも子どもの生活状況を把握できていなければ、対応もしようがないだろう。

 また、子どもの所在は分かっていたとしても、虐待されている子どもを助けるのもハードルがある。教育機関や児童相談所にも、虐待かどうかはっきりしないのに家庭に深入りできないとかいろいろ言い分があるらしいのだ。

 本書の中で、親に長年監禁生活を強いられ、家を逃げ出した女性が取材に応じている。ときどき学校の人などが自宅を訪れるけれども、結局学校も児童相談所も何もしてくれなかったのがとてもつらかったのだとか。こういう話を聞くと、周囲の対応の程度で子どもが救われるケースもあるんじゃないか。

 行政の人を責めても仕方ないんだけれど、もっといい仕組みができないのかなとは思ってしまう。家庭訪問の際に親だけでなく子どもからも聞き取りするとか。体制強化という面で、改善の余地はたくさんありそうだと思った。
タグ:NHK取材班
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コンスタンティノープルの陥落 [歴史小説(外国)]


コンスタンティノープルの陥落 (新潮文庫)

コンスタンティノープルの陥落 (新潮文庫)

  • 作者: 塩野 七生
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 1991/04/29
  • メディア: 文庫



 東ローマ帝国の首都として栄えたコンスタンティノープルが、オスマン・トルコの攻撃を受けて、陥落するまでを描いた小説。

 実際に当時の様子を記録に残していた人たちがいたようで、それらの現場証人たちの記録に基づいて書かれたものらしい。どこまで著者の創作が入っているのかは不明だが、その場に居合わせたかのような臨場感があって、かなり迫力がある。

 長い文明が崩壊してしまった場面を描いているわけで、歴史的に見ても読みがいのある作品とも言えるだろう。

 ただし、コンスタンティノープルの視点で読むと、なかなか辛いものがある。タイトルからも結末が示唆されている通り、基本的には悲劇的な終末に向かっていくという話なのである。

 コンスタンティノープルがオスマン・トルコを苦しませる場面も出てくるのだけれど、兵の数では圧倒的な差があった。そもそも戦う前から周りをトルコに囲まれてしまっているし、周囲の国々の援軍も乏しい状況で、コンスタンティノープルは不利な戦いを強いられていたらしい。

 スタートから風前の灯火のような状況から始まり、弱っているところを息の根を止められるわけで、なんだか可哀想になってくる。現実に起こった出来事なのだし、戦争なんてフェアプレイではないので仕方ないのだけれど、読んでいてどうしても力関係のバランスが気になってしまった。

 城というのはこういう風に攻略するのかとか、当時の海戦はこんなだったのかとか、戦術的なところも詳しく書かれているところは興味深かった。
タグ:塩野七生
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民族で読み解く世界史 [世界史]


「民族」で読み解く世界史

「民族」で読み解く世界史

  • 作者: 宇山 卓栄
  • 出版社/メーカー: 日本実業出版社
  • 発売日: 2018/01/25
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)



 世界史の本を読んでいると、「ゲルマン人の大移動」だの、「フン族の脅威」だの、「匈奴と戦った」だのと、いろんな種類の民族が出てくる。こういう記述が出てくるたびに、つい引っかかってしまう。急に登場してきたけれど、そもそもこの民族は何者なんだろう。どこからやってきたんだろうと。

 西洋史でも東洋史でも、主要なトピックと比較して、周辺民族に関する説明は少ない。だから、「フン族」なんていう民族がいたんだなあというおぼろげな記憶だけが残る。でも、本当はこうした脇役扱いされている民族にも歴史があり、ドラマがあるはずなのである。

 「民族で読み解く世界史」を読むと、そのあたりのことが詳しく書かれている。およそ世界史に出てくる数多くの民族たちが網羅されていて、そのルーツや世界史に与えた影響がまとめられているのだ。

 これを読んでいると、名前だけ知っていたあの民族はこういう人たちだったのかというのが、次々に明らかになって、爽快感がある。

 例えば、インド・ヨーロッパ語族と呼ばれる人たちは、「アーリア人」とも呼ばれ、もともと中央アジアに住んでいた。このアーリア人が紀元前2000年ごろに寒冷化を避けて大移動をした。西を目指した人たちは中東を経由してヨーロッパに至り、南を目指した人たちはインドに至った。一部の人たちは中東のイランに定住した。つまり、今では別々の国になっているけれども、もともとは同じルーツを持っていたことが分かる。

 アーリア人に限らず、日本人などもそのルーツが書かれているし、様々な民族の移動経路が書かれていて、世界がどのようにして今の状態に至ったのかが見えてくる内容。

 東洋民族の行動が西洋の歴史に影響を与えていたということも書かれていて、世界史を横断的に眺めることができるところもいい。例えば、中国北部で王国を築いていた突厥という部族がいるけれども、6世紀に隋・唐が成立すると、突厥はモンゴル高原を捨て、西方へと大移動する。移動の先々で、突厥はウイグル、キルギスと名前を変えていき、トルコにまで至り、セルジューク・トルコを建国する。セルジューク・トルコはやがて分裂し、オスマン帝国に変貌。東ローマ帝国を滅ぼし、勢力を誇り、現在のトルコ共和国へとつながる。

 トルコと中国、距離的にはかなり離れているので、東洋史と西洋史をつい分けて考えてしまっていたが、実は歴史的にみると深いつながりがあるのだ。

 この本を読んでいると、世界で起こっている紛争がなんだか虚しく思えてくる。お互いに酷い殺し合いが続いているけれども、それぞれのルーツをたどっていくと、同じ人種、民族だったりするのである。同じ先祖を持った兄弟たちがいがみ合っているようなもので、もっと仲良くすればいいのになあと素朴に思ってしまった。
タグ:宇山卓栄
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