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天使の自立 [ミステリ(外国)]


天使の自立〈上〉

天使の自立〈上〉




 最近シドニイ・シェルダンにハマっている。

 疲れているせいか、あまり重たいものが読みたくない。シドニイ・シェルダンの本は、軽くサクサク読めるところがよいのだ。

 「天使の自立」もとても面白い話だった。主人公は資格を取ったばかりの弁護士ジェニファー。父親も弁護士だったので、法曹界には子供のころから憧れていた。司法試験も難なくクリアし、有名な法律事務所からはオファーが殺到する。

 刑事事件に興味を持っていたジェニファーは、ニューヨーク州検事局に入ることになったが、そこで思いもよらぬ事態が待ち受けていた。マフィアの罠にかかってしまい、公務執行妨害の濡れ衣を着せられてしまうのだ。

 せっかく夢見ていた世界に入ったのに、いきなりの人生転落。検事局からは追い出され、それどころか法曹資格までも剥奪されそうになる。悪評が立って、法律事務所の面接を受けても、軒並み拒絶されてしまう。

 ジェニファーはやむなく自分で法律事務所を開き、細々と仕事を始めることになる。やがて持ち前の優秀さが発揮され、弁護士として活躍を見せ始める……。

 若手弁護士のサクセスストーリー。負け犬だった主人公が、メキメキと頭角を現して、大成功を収める。ちょっと勝ちすぎなんじゃないかという感じもするが、とにかく読んでいてスカッとする内容だ。

 読んでいて気づいたのだが、シドニイ・シェルダンはひとつひとつのエピソードを描くのがうまい。エピソードごとに盛り上げる箇所があるし、最後に捻りのあるオチが用意されている。うまいジョークを聞いた時のような小気味よさがあるのだ。次はどんな楽しいエピソードが待っているんだろうと、ワクワクしながら読むことができるところがいい。

 アメリカの法曹界の裏話もたくさん書かれていて、こんな世界なのかというのが分かるところも面白かった。
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名画で読み解くハプスブルク家12の物語 [世界史]





 650年間にわたり、ヨーロッパの中心的存在として君臨し続けたハプスブルク家。世界史上の名門というだけあって、歴史の要所要所に一族の名前が出てくる。

 ハプスブルク家を世界帝国として勢いづかせたカール5世、エリザベス1世のイギリスと渡り合ったフェリペ2世、フランス革命で断頭台に消えたマリー・アントワネット、ナポレオンの息子ライヒシュタット公、第一次世界大戦の引き金ともなった暗殺事件の被害者フェルディナント。

 一族は650年もの間、どうやって君臨し続けたのだろう? 本書は名画を紐解きながら、ハプスブルク家の歴史をたどった一冊である。

 そもそもの始まりからして面白い。ハプスブルク家の始祖ともいえるルドルフ1世は、神聖ローマ帝国の皇帝。皇帝というと実力でのし上がる強者というイメージがあるが、ルドルフ1世の場合は違っていた。もともとスイスの田舎の貧しい一豪族にすぎなかった。

 当時のドイツは選帝侯という有力者らが、選挙で皇帝を選ぶシステム。群雄割拠状態でお互いにけん制しあっていたので、選帝侯たちはあまり突出した人物が皇帝になるのは避けたかった。そこで目をつけたのがルドルフ1世。誰からも無能な人間に見えたため、皇帝になっても問題は起こさないだろうという理由で選ばれたのだ。

 ところが、ルドルフ1世はいざ皇帝になってみると、意外な活躍を見せる。呆然とする選帝侯らを尻目に戦乱で勇猛に戦い抜き、領土を広げてしまうのだ。ここからハプスブルク家の活躍が始まることになる。

 勢力の拡大というとひたすら戦争をしていたのかなとも思うし、実際にカール5世などは戦乱に明け暮れていたようだが、ハプスブルク家のモットーはもっと別のところにあった。「戦争は他の者にまかせておくがいい。幸いなるかなオーストリアよ、汝は結婚すべし!」が家訓。つまり、政略結婚で周辺国との結びつきを強め、版図を広げていったのだ。

 選挙で選ばれる運の強さだったり、政略結婚だったりと、世界を征服する手段にもいろいろあるのだ。ハプスブルク家の歴史を眺めていると、帝国を広げるためのあの手この手が見えてくるのが面白い。

 もちろんいつも順風満帆というわけではなくて、中には言動のおかしな王様も出てくるし、世継ぎが生まれなかったりもする。一族の栄光を維持するのもかなり大変なんだなということもよく分かる本だった。
タグ:中野京子
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偽装死で別の人生を生きる [犯罪]


偽装死で別の人生を生きる

偽装死で別の人生を生きる




 死んだと思っていた人が実は生きていたーー。

 ミステリーではお馴染みの筋立てだ。もっとも有名なのは、シャーロック・ホームズだろう。モリアーティ教授と格闘してライヘンバッハの滝つぼに消えた名探偵。死んだと思いきや、本当は生きていたことが発覚する。

 「顔のない死体」というのもある。ミステリーではよく首なし死体とか顔をつぶされた死体というのが出てくる。たいていは別人の替え玉だったことが分かる。
 
 このようにフィクションには偽装死の例は事欠かない。では、現実に死んだと思わせるなんていうことが可能なのだろうか? 

 「偽装死で別の人生を生きる」を読むとそのあたりの実情がよく分かる。実際に偽装死をもくろんだ人々の顛末が集められているのだ。

 人はさまざまな理由で失踪したくなるものらしい。借金で首が回らなくなった。愛人ができて家庭生活が嫌になった。DV夫から逃れたかった。顧客の金を持ち逃げしたくなった。死んだふりをして生命保険をせしめたかった……。

 だが偽装死を実行するとなると、かなりハードルは高い。誰でも容易に思いつくのは、「溺死」だろう。船が転覆して死体が海に流されたと見せかける。たしかに筋は通っているが、死体が見つからないと警察は不審に思う。厳格な捜査の末に、あえなく捕まるということになる。

 溺死以外にも、飛行機が墜落したとか、火事に巻き込まれたとか、森で動物に襲われとか、いろいろ方法はあるだろう。いずれにしても死体が出てこない以上は、疑いを招くことにはなる。

 偽の死体を用意するという強者もいる。フィリピンくんだりでは、結構簡単に死体が手に入るものらしい。おまけに偽の葬儀や参列者も用意できる。本物そっくりの死亡診断書まで入手可能だ。お手軽に死んだふりができてしまうのだ。

 とはいえ、死の偽装に成功してもそこからの生活が難しい。別人として生きるには偽の身分証がいるし、新たな仕事を見つけるのも難しい。知人と会わないように、人目を避けなければならなくなる。

 本書を読むと、こうした死の偽装にまつわる信じられないようなエピソードが山ほど出てくる。計画を実行したものの、とんでもないへまをして捕まった話だとか、失踪人を世界の果てまで追いかける探偵の話とか、失踪した家族が生きていたと分かってショックを受ける家族の話とか。

 世の中、面白い人生を歩んでいる人がいるんだなあと驚かされた。本書に出てくるのは外国の事例なので、日本でも同じようなことがあるのだろうかと調べてみたくなった。
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ロボットの時代 [SF(外国)]





 SFとは何かということについて、様々な言い方がされてきた。SFとは「センス・オブ・ワンダーである」「Ifの発想である」「根源に対する疑問である」など。

 いろいろな言い方ができるけれども、SFを分解してみると、「科学テクノロジーの進歩」×「ドラマ」×「テーマ性」でできているのではないか。

 空想科学というくらいだから、科学の進歩を描くのがSFの役割だろう。しかし、科学の進歩一辺倒で、ドラマ性がなければ単なる科学論文になってしまう。科学の進歩によってどのようなドラマが巻き起こるのかが描かれる必要がある。

 逆に不思議な出来事だけ起こって、科学の進歩が描かれていなければ、科学的根拠のないファンタジーになってしまう。またたとえ科学が描かれていても、それが現実の科学に終始していて空想の飛躍のないものは、リアルフィクションであって、SFとは言えないだろう。

 さらに言えば、科学の進歩によるストーリーを描いていても、それがなんのテーマ性も持たなければ、エンタメとしては面白いかもしれないけれど、気の抜けたものになってしまう。

 ということで、「科学テクノロジーの進歩」×「ドラマ」×「テーマ性」という3要素の掛け合わせが重要だと思うのだ。

 こういう定義をしたうえで、アイザック・アシモフの「ロボットの時代」を読んでみたのだが、まさにこの3要素がぴったりとそろった作品だった。

 「ロボットの時代」というタイトルだから、「科学テクノロジーの進歩=ロボット」なわけだが、ひとくちにロボットといってもいろいろバリエーションがある。人が行くことのできないような過酷な環境(例えば、木星など)で働く産業用ロボット、料理をする家庭用ロボット、体内に爆弾を埋め込まれて敵国に送られる兵器ロボット、大学でテスト採点や校正の事務作業を行う頭脳型ロボットなど。ロボット工学が発展すると、様々な分野に応用が可能なことがわかる。

 また、こうした多様なタイプのロボットが現れるということは、多様な「ドラマ」が生まれるということでもある。本書でも「ロボットが故障してトラブル発生」という定番のドラマもあれば、戦争ものもある。一見するとロボットと結びつきそうにない恋愛ドラマのようなものもあるし、スパイものの話もある。ロボットが人間社会に入り込むことで、思いもよらなかったドラマが生まれるということを描いている。

 現代でも立派に通用するような「テーマ性」も隠れている。人間よりもうまく仕事をこなしてしまうロボットが大量に投入されることで、人間たちは仕事を奪われてしまう。どんな仕事もロボットに置き換えられてしまったら、人間の存在意義はどうなるのだろうという問題が、すでに50年以上も前に書かれているのだ。ロボットが軍需産業に用いられた場合の危険さだったり、家庭用ロボットが人間心理に与える影響などという問題まで提起されている。

 前にも読んだことのある本だったが、改めて3要素を取り出して読んでみたら、すごい本だなとあらためて気づかされた。テクノロジーの進歩が細部に至るまで描かれているし、どんな問題が起こりうるのかという鋭い洞察に満ちている。「われはロボット」のほうが有名かもしれないが、続編のほうもかなり読みごたえがある一冊だった。
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演技と演出のレッスン [演劇]


演技と演出のレッスン ─ 魅力的な俳優になるために

演技と演出のレッスン ─ 魅力的な俳優になるために




 鴻上尚史の「演技と演出のレッスン」は演技の入門書である。

 映画が好きでよく観ている割には、我ながら演技のことがよく分かっていなかったので、ふと読んでみたのだが、これが結構ためになった。

 本書を読むと、俳優がどんな風なステップを踏んで演技を行っているのか、映画や演劇の中で俳優がどんな役割を果たしているのかがよく分かる。

 映画や演劇の台本にも、俳優のする行動について何でもかんでも書かれているわけではないそうだ。セリフと必要最低限のト書きがあるだけで、具体的な動作などは俳優が自ら考えなければならない。

 俳優というのは、演出家や台本の指示に従って動くだけの人形ではなくて、自ら役柄のふるまいを決定していく主体的な存在だという。

 能動的に動いていくために、俳優は自らの役柄を詳細にイメージする。どんな性格なのか、どんな目的があるのか、どんな家族がいてどんな家に住んでいるのかなど、台本に書かれていない部分を埋めていく。与えられた役柄をより実在感のある、生き生きとしたものにしていく。キャラクターを創りあげていくのが俳優の役割なのだ。

 キャラクターが固まったら、それぞれの場面で「もしこのキャラクターがこんな状況に置かれたら、どう行動する?」という問題提起をする。「もし~だったら」という空想を膨らませて、具体的な行動を決めていく。

 かように俳優というのは想像力が試される仕事だったのだ。
 
 本書を読むと、俳優の役割の重要さに気づかされる。俳優の力量によって、作品のリアリティのレベルが上がったり下がったりもする。これから映画やドラマを見るときには、俳優の演技にももっと着目してみたくなった。
タグ:鴻上尚史
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24人のビリー・ミリガン [伝記(外国)]





 二重人格という話はときどき聞くけれど、なんと24人格も持ってしまった人の実話。

 1977年のオハイオ州で、複数の女性をレイプしたとしてビリー・ミリガン容疑者は逮捕された。この容疑者には、とても奇妙な雰囲気があった。面会人が話をしに行くたびに、話し方や態度ががらりと変わってしまうのだ。弁護士たちが面会を進めるうちに、ビリーの中には複数の人格が存在していることが次第に明らかとなってくる。

 それぞれの人格は、性格や話し方だけでなく、年齢、性別、国籍、得意分野にいたるまでバラバラ。3才の少女クリスティーン、リーダー的存在のアーサー、エレクトロニクスの天才トミー、弁舌さわやかなアレン、暴力と銃専門のレイゲン、レズビアンのアダラナ、絶えず周囲にいたずらを仕掛けるリー、継父の殺害計画ばかり考えているエイプリルなど。

 スポットと呼ばれる意識の舞台に、各人格が交代で現れ、時間を割り当てられるという仕組み。

 困った事態になるたびに、それぞれの得意分野を持った人格が現れて窮地を切り抜けていくというのは面白い。拘束されているときは、脱走の名人トミーが現れて、手錠でも鍵でも外してしまう。相手を説得しなければならないときは、口先のうまいアレンが現れる。暴力に巻き込まれたときにはレイゲンが現れて、相手をねじ伏せてしまう。

 それぞれの人格のキャラクターが際立っていて、チームで活躍していくドラマを見ているような感じで痛快だった。

 とはいえ、人格の交代が思わぬ時に起こったりもするので、トラブルになることが多かったようだ。大事な仕事中に幼い少年の人格が現れて台無しにしたり、犯罪性向のある人格が現れて周囲とトラブルになったり。各人格がやりたいこともてんでバラバラなので、一貫性のある行動をとることもできない。そういう苦労話も語られている。

 奇妙なエピソードが満載で、どのページをとっても実に驚くようなことばかり。人格ってそもそもなんなのかなあとか、誰でも程度の差はあれ人格のゆらぎみたいなものがあるんだろうかとか、人間の脳のメカニズムについてもいろいろ考えさせられた。
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世界一簡単な英語の大百科事典 [語学]





 仕事で英語を使うので、英語関係の本をたまに読むのだが、この本はなかなかよかった。

 英語をイラストで解説した本で、たいへんイメージしやすい。

 とくに最初に書かれている基本法則「英語は3つの要素でてきている」という話は有益である。英語の文章には主役(主語)と脇役(目的語)がいて、その間に動作(動詞)がある。どんなに複雑に見える文章でも、せんじ詰めればこの3つの要素でできているという。

 英語を読んでいてつらくなるポイントは、長い文章がつらつらと繋がって、途中でわけが分からなくなることだろう。だが、難解に見えるこうした文章も、枝葉を切り落としていくと、実は単純な3つの要素で成り立っているのだ。

 さっそく本書のやり方で英文を読んでみると、たしかに読みやすい。無意識で考えていたことをうまく言語化してくれた感じ。意識的に3つの要素を探すだけで、英文が非常にクリアに見えてくる。

 他にも完了形の意味とか前置詞の話とかも、とても分かりやすかった。この本は最近読んだものの中で、一番実用的だったかもしれない。

 本好きとしては、最後に載っているお勧め洋書コーナーも楽しかった。こんな本を読んで初めて知った本などもあったので、かなりお得な本だった。
タグ:向山貴彦
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ゴールデンボーイ [ミステリ(外国)]





 「ゴールデンボーイ」は、スティーヴン・キングの恐怖の四季シリーズの一遍。

 主人公の高校生トッド・ボウデンは、第二次大戦中の古い写真を手がかりに、同じ町に住む老人がナチの戦犯であると見抜く。戦争秘話に目がないトッドは、老人に近づいて無理矢理昔話を聞き出すが、次第にトッドと老人の間に奇妙な関係が築き上げられる。そして、トッドの人生は思いもよらない方向へとねじ曲がっていく……。

 「転落の夏」という副題がついている通り、主人公が真っ逆さまに転落していくダークな話だった。主人公の転落っぷりがひどすぎて、読んでいて辛くなるような話。

 前に一度読んだことがあったのだが、どんな筋だったかすっかり忘れていて、善玉の少年が悪玉の元ナチの老人にだんだんと追い詰められていくサスペンスのようなものだったかなあと勝手に思い込んでいた。でも、実際に読み返してみたら、そんなに単純な話ではなかった。

 むしろ、主人公の少年自体がナチの老人に感化されたのか、もともと素質があったのか、どんどん怪物みたいなものに変貌していくという話なのである。ナチの老人も凶暴さを取り戻していって、お互い似たもの同士みたいになっていく。

 キングが書いているので、とにかく話が面白くて読ませる。ナチの戦犯を追い詰める調査員が登場してスリリングだし、お互いに敵視している老人と少年が、自分たちの身を守るために外部に対して奇妙な共同戦線を張らなければならなくなるというのも皮肉が効いている。

 とはいえ、こんなにおぞましい話はないし、主人公の少年にはなにひとつ共感できないのは残念だった。正直なところ、キング作品の中ではあまり好きな話ではない。

 話がダークなのはいいのだけれど、主人公に感情移入できないと面白さが半減するなあ。そういう意味では、「春は希望の泉」と銘打たれた、同時併録の「刑務所のリタ・ヘイワ―ス」のほうがすがすがしくてよかった。
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ノックの音が [ミステリ(日本)]


ノックの音が (新潮文庫)

ノックの音が (新潮文庫)




 「ノックの音がした」という一文から始まる、星新一のショートショート集。

 主人公がドアを開けると、様々な事件が巻き起こるという話。一遍一遍読んでいくと、「次はどんなことが起こるんだろう」と、楽しみになってくる作品集だ。

 本当に部屋の中だけで話が終始してしまうところがすごい。空間が限定されているのに、意外な出来事が次々に発生。主人公が窮地に追い込まれるサスペンスフルな展開で、かなり読ませる。

 短い話ながらも、毎回サプライズエンディングも出てくる。オー・ヘンリーやヘンリー・スレッサーを彷彿とさせるうまさ。登場人物の意外な正体が分かったり、思わぬ計略が隠されていたり、思わずにやりとさせられる話が多かった。

 星新一だけれど、ほとんどはミステリーだった。「金色のピン」「人形」の2作はホラー風味の作品。どちらも「魔法のランプ」ものというか願いごとを叶える話で、願いごとは叶うのに恐ろしい結末が待っているというブラックな笑いのある話だ。

 久しぶりに星新一のショートショートを読んだ。読み始めは独特の文体が読みづらく感じたのだが、ストーリー展開がひとひねりもふたひねりもしてあって、だんだん話に引き込まれていった。今度はぜひSFショートショートのほうも読んでみたい。
タグ:星新一
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還らざる道 [ミステリ(日本)]


還らざる道 (文春文庫)

還らざる道 (文春文庫)




 ミステリーの女王アガサ・クリスティーによると、殺人の動機には3種類あるという。

 ひとつめは「金」。単純な強盗殺人のようなものもあるし、保険金目当てで夫が妻を殺すとか、自分に有利な遺言書を書き換えられる前に子が親を殺すといったものもある。利益を得るための殺人だ。

 ふたつめは「復讐」。過去に婚約者を殺された女が犯人を殺すとか、密告されて刑務所に入った男が出所後に密告者を殺すとか、財産を奪われた男が略奪者を殺すといった話だ。

 みっつめは「秘密」。帳簿をごまかしている人間が事態を知った者を口封じに殺すとか、政治家がスキャンダルの暴露を恐れて脅迫者を殺すとかいった話。

 このうち「復讐」と「秘密」については、過去が重要なポイントになっている。過去の悪事に対する復讐、過去の秘密に対する口封じだから。

 そのため、ミステリーでは被害者の過去を探っていく話が多い。殺人事件が起こって、被害者が生前にどういう行動をとっていたのかという、過去の行動を追いかけていく。その過程で、だんだんと被害者が殺された理由、過去の悪事、過去の秘密が明らかになっていく。

 内田康夫の「還らざる道」はまさにそうした被害者の過去を探っていくミステリーだ。

 インテリア会社会長が一人旅のさなか、首を絞められて殺される事件が起こる。被害者は人当たりのいい誰にも恨まれないような人物。なぜ殺されなければならなかったのか? 被害者は何を目的に旅をしていたのか? 被害者の孫娘とルポライターの浅見光彦が真相を追う。

 浅見が被害者の足跡を追いかけていくのだが、その過程で被害者の過去がだんだんと浮かび上がっていくという話。派手なトリックを見せるわけではなく、動機を探っていくだけの話なのであるが、これが結構読ませる。浅見シリーズはこういう過去の因縁みたいな話がとてもうまい。

 ページを追うごとに、少しずつ情報が明かされていくところがミソなんだろう。だんだんと秘密のヴェールの裏側が見えてきて、好奇心を掻き立てられた。
タグ:内田康夫
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