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泥棒刑事 [犯罪]


泥棒刑事 (宝島社新書)

泥棒刑事 (宝島社新書)




 神奈川県警捜査三課は、窃盗事件を専門的に扱う通称「泥棒刑事」たちの仕事場。本書は彼らが見聞きした体験をつづった、泥棒たちの摩訶不思議な事件簿である。

 泥棒というと、空き巣を狙ってドアをピッキングして開け、机やタンスの引き出しから金目の物を奪っていく。そんなイメージがある。

 たしかに、イメージ通りの泥棒も多いようだが、泥棒というのは手口が千差万別らしい。中には、警備員がいる建物に堂々と忍び込む大胆不敵な輩もいるという。警備員が見回りに行ったり、居眠りしている隙を突いての犯行。用意周到な計画である。

 ジャッキー・チェン並みの脅威の身体能力を持った泥棒というのも出てくる。高層アパートの屋上から壁伝いに這い降り、ベランダからベランダに飛びついて侵入する手口。身軽な体を活かした犯行だ。

 ある外国人窃盗団は、こっそり忍び込むというより、白昼堂々と家財道具から一切合切持ち運ぶ手口。たしかに、引っ越し業者のふりをすれば、容易には泥棒とは気づかれないかもしれない。

 とまあ、様々な泥棒の手口が出てきて驚かされる本である。手口が分かるだけでなく、泥棒はこんな家を狙っているという、泥棒に狙われやすい家の特徴なども書かれている。

 泥棒が狙うのは、交通の便の良い場所。一軒家よりもアパート。塀や生垣の高い住宅。アパートの1階と最上階が狙われやすいという。泥棒も簡単に捕まりたくないので、逃走ルートを確保する必要があるし、人と鉢合わせする確率の低いアパートのほうが狙い目。塀が高ければ犯行中に外からの目を気にする必要がないし、1階と最上階が最も侵入しやすい。

 泥棒目線で考えれば当たり前の話だが、普段こういう発想はなかったので、結構参考になった。

 泥棒の中には、身体能力が高かったり、手先が器用だったりと、かなりの技能を持った者もいるようである。せっかくの才能を泥棒なんかに使ってもったいないなあというのが、本書を読んでの正直な感想だった。
タグ:小川泰平
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偽装死で別の人生を生きる [犯罪]


偽装死で別の人生を生きる

偽装死で別の人生を生きる




 死んだと思っていた人が実は生きていたーー。

 ミステリーではお馴染みの筋立てだ。もっとも有名なのは、シャーロック・ホームズだろう。モリアーティ教授と格闘してライヘンバッハの滝つぼに消えた名探偵。死んだと思いきや、本当は生きていたことが発覚する。

 「顔のない死体」というのもある。ミステリーではよく首なし死体とか顔をつぶされた死体というのが出てくる。たいていは別人の替え玉だったことが分かる。
 
 このようにフィクションには偽装死の例は事欠かない。では、現実に死んだと思わせるなんていうことが可能なのだろうか? 

 「偽装死で別の人生を生きる」を読むとそのあたりの実情がよく分かる。実際に偽装死をもくろんだ人々の顛末が集められているのだ。

 人はさまざまな理由で失踪したくなるものらしい。借金で首が回らなくなった。愛人ができて家庭生活が嫌になった。DV夫から逃れたかった。顧客の金を持ち逃げしたくなった。死んだふりをして生命保険をせしめたかった……。

 だが偽装死を実行するとなると、かなりハードルは高い。誰でも容易に思いつくのは、「溺死」だろう。船が転覆して死体が海に流されたと見せかける。たしかに筋は通っているが、死体が見つからないと警察は不審に思う。厳格な捜査の末に、あえなく捕まるということになる。

 溺死以外にも、飛行機が墜落したとか、火事に巻き込まれたとか、森で動物に襲われとか、いろいろ方法はあるだろう。いずれにしても死体が出てこない以上は、疑いを招くことにはなる。

 偽の死体を用意するという強者もいる。フィリピンくんだりでは、結構簡単に死体が手に入るものらしい。おまけに偽の葬儀や参列者も用意できる。本物そっくりの死亡診断書まで入手可能だ。お手軽に死んだふりができてしまうのだ。

 とはいえ、死の偽装に成功してもそこからの生活が難しい。別人として生きるには偽の身分証がいるし、新たな仕事を見つけるのも難しい。知人と会わないように、人目を避けなければならなくなる。

 本書を読むと、こうした死の偽装にまつわる信じられないようなエピソードが山ほど出てくる。計画を実行したものの、とんでもないへまをして捕まった話だとか、失踪人を世界の果てまで追いかける探偵の話とか、失踪した家族が生きていたと分かってショックを受ける家族の話とか。

 世の中、面白い人生を歩んでいる人がいるんだなあと驚かされた。本書に出てくるのは外国の事例なので、日本でも同じようなことがあるのだろうかと調べてみたくなった。
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人間はウソをつく動物である [犯罪]





 むかし観た映画に「深夜の告白」という作品がある。

 主人公が人妻と不倫関係になって、愛に狂った挙句に愛人の夫を殺害する計画を立てる。鉄道車両から転落死したように見せかけて、生命保険金をかすめ取ろうという寸法だ。

 かくて計画は実行され、うまくいったかに見えたが、主人公の友人である保険会社の調査員が事件のことを調べ始める。刑事コロンボばりに執拗に犯罪計画の矛盾を突いていき、主人公と愛人は次第に追い詰められていく……。

 この映画のイメージがあったせいか、保険会社の調査というと、とても厳しいものだと勝手に思っていた。何事も見逃さないチェックが入るものなのかと。

 だが、実際にはそこまででもないらしいということが、「人間はウソをつく動物である」という本に書いてあった。損害保険の調査員が書いた、保険調査を巡る様々な経験談を集めた本である。

 厳しい審査が難しい理由は、保険会社もビジネスだからだ。あまり厳しい審査をすると、営業が難しくなる。とくに継続して取引をしている顧客の場合、保険金の支払いでもめてしまうと、他の取引まで引き上げられてしまう。競争の激しい保険業界にあっては、多少疑惑がある事案でも保険金を支払ってしまったほうが、かえって保険会社の利益につながるというケースがままあるのだ。

 なるほど世の中に知らないことは多いものである。本を読んでいると、こういう自分では絶対に体験できない世界が描かれているから面白い。

 知らないといえば、保険金詐欺をたくらむ者たちの心境というのも書かれてあって面白かった。盗難保険、自動車保険、火災保険、傷害保険と、あらゆる種類の保険について詐欺の事例が集められているのだが、犯行を行うに至った心境も垣間見えてくる。

 たとえば、会社経営が困難になって犯行に及ぶ者の例などがいくつか出てきた。借金がかさんで、従業員に給料を支払う金もない。会社が焼けて火災保険がおりれば再起を図ることができる。やむにやまれずの犯行。

 こういう事例を見ると、なんだか妙に同情してしまうのである。人間というのは追いつめられると、誰でも犯罪者になりえてしまうんじゃないか。犯罪者とそうでない人を分ける線というのは、とてもか細いものなのではないかと思えてくるのである。

 人間味のあふれるエピソードが満載だし、こういう風にして犯罪が暴かれていくのかというところも丁寧に描かれていて、短編ミステリーを読むような味わいのある本でもあった。
タグ:伊野上裕伸
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メキシコ麻薬戦争 [犯罪]


メキシコ麻薬戦争: アメリカ大陸を引き裂く「犯罪者」たちの叛乱

メキシコ麻薬戦争: アメリカ大陸を引き裂く「犯罪者」たちの叛乱




 「麻薬」「南米」といえば、昔はコロンビアが有名だったものだが、最近ではメキシコが力を伸ばしてきたらしい。アメリカをはじめとして、世界中への麻薬密売に絡むようになった。

 本書「メキシコ麻薬戦争」を読むと、そのあたりの経緯がよく分かる。

 まあとにかく利益率の高いビジネスらしい。原価はそんなにかからない割に、アメリカに売ると驚くような高値に変わる。もちろん、警察に捕まるリスクがあるのだが、莫大な金が手に入るとあって、収まる気配はない。

 上がった利益で投資をして大きくなるのは普通の会社と同じメカニズムである。麻薬組織も儲けた金で周りの組織を取り込んで、ぐんぐん拡大していく。やがて一大産業といえるまで膨らんでいく。そうこうしているうちに、メキシコカルテルはとうとうコロンビアカルテルを追い抜いてしまい、南米一体を取り仕切る大ボスになってしまった。

 組織同士で抗争が起こることもしばしば。縄張り争いがいともたやすく殺し合いに発展する。とにかく金を持っているから、兵士を雇って武装組織を作るのもたやすいだろう。特殊部隊を作り上げて、軍隊さながらの戦力を持つようになる。こうなるともう戦争に近い。まさにタイトルの通り「メキシコ麻薬戦争」そのままだ。

 なんだかメキシコもすごいことになっているんだなあと、本書を読んで驚かされる。

 トランプ大統領が国境沿いに壁を作ると言っているけれど、壁を作ってもざるみたいなものなんじゃないか? 国境地帯の距離があまりにも長くて警備は難しいうえ、海から侵入したり、飛行機を飛ばしたり、トンネル掘ったりもできるのだ。この本に出てくる密輸のあの手この手を見ていると、国境警備の難しさが理解できる。

 麻薬合法化の議論というのも面白かった。いっそのこと麻薬を合法化してしまえば、麻薬組織の利益がなくなるので、犯罪撲滅のメリットがあるというものだ。麻薬の害悪とどちらがよいかという究極の選択になるだろう。 
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密入国ブローカー [犯罪]


密入国ブローカー悪党人生

密入国ブローカー悪党人生




 外国人は日本政府によって許可された在留資格と在留期間の下でのみ、日本に滞在することができる。

 だから、普通はビザをとって日本に滞在し、在留期間が来たら帰国することになる。
 
 ところが、中には在留資格もなく日本に住みたい、期間が過ぎても日本に滞在し続けたいという外国人もいる。生まれた国が貧しかったり、政治的な問題があったりして、日本で働きたいという外国人が大勢いるのだ。

 在留許可が出なかったり、短期の滞在しか認められなかったり、正規のルートでは日本に住めない以上は、裏のルートを使うしかない。そこで登場するのが外国人の密入国を手助けする、密入国ブローカーだ。

 本書は実際にこの密入国ブローカーと接触をして取材した本である。密入国の実態について解説している。かねてから外国人が具体的にどうやって密入国しているのか気になっていたので、読んでいてとても参考になった。

 日本は島国だから、密入国と聞いて真っ先に思いつくのは、船で密航するルートだろう。漁船などに見せかけて、沿岸警備の目をかいくぐる方法だ。実際にも、中国などから密航船が出ていて、ときどき摘発されたりするらしい。

 パスポートを悪用する手もある。偽造パスポートを用意したり、他人に成りすましたり。古くからおこなわれている手だ。

 このくらいは本書を読まなくても想像がつくが、入国管理法の穴をついた巧妙な手段もあるらしい。飛行機で堂々と日本に降り立ち、入国審査の前をすり抜ける方法が……。

 あの手この手で日本に潜入する記録が書かれていて、よくもまあいろいろと考えるものである。結構簡単に密入国できてしまうものなのねといささか驚いた。

 密入国の話だけでなく、日本に滞在している外国人たちがどのような暮らしをしているのか、その実態についても詳しく取材がされている。身近なところに知らない世界が広がっていたんだなあと読んでいて興味深かった。
タグ:相川俊英
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ピカソになりきった男 [犯罪]


ピカソになりきった男

ピカソになりきった男




 娼館で生まれ、暴力的な父親から逃れるように家を出て、路上生活を始めた少年ギィ。

 彼にはひとつの才能があった。デッサンや絵を描く才能が。絹織物の図柄を創作する工房に入ることになったギィは、そこで絵の才能をめきめきと伸ばしていく。

 水彩画を路上で販売したり、個展を開いたりして、ギィは自身の創作活動も続けていく。しかし、同時に何か物足りなさも感じ始める。彼の描く絵はそこそこ売れるものの、市場での評価は伸び悩んでいたのだ。

 自分には何が足りないんだろう? ひょっとしたら、偉大な巨匠たちの作風をまねてみたら何かが掴めるかもしれない。そんな考えから巨匠たちの作品を模倣し始めてみる。

 巨匠のあらゆる作品を研究し、巨匠の思いをくみ取り、しまいには巨匠の作品そっくりに絵を描けるようにまで成長する。

 しかし、彼のその才能に目を付けた画商たちが、彼をアートの裏世界に彼を引きずり込んでいく。贋作という犯罪世界に。ギィはいつの間にか、贋作のエキスパートとなり、ピカソ、シャガール、ダリ、マティスといった画家たちの贋作を次々に描いては、本物として市場に流して大金を稼ぎ始めるようになってしまう……。

 贋作絵画を大量に描いた画家ギィ・リブによる自伝。贋作の世界というのはこんななのかという裏話がたくさん書かれていて興味深い。贋作画家だけでなく、画商やら鑑定士やらも贋作の流通に一役買っていることが見えてきて、アート界の裏事情を知ることができる。

 どんな創作も模倣から始まるというけれど、模倣を極めてしまったらどうなるんだろうという創作的な観点から見ても面白い。贋作というのも自分を押し殺してしまうようなイメージがあったが、実際にはそうでもないらしい。自分自身の感動をプラスアルファとして入れていかないと、作品に魂がこもらないのだとか。贋作が本物として認められることにも独特の喜びがあるらしいというのも知らなかった。

 犯罪は犯罪だが、ここまでのレベルになると職人芸という気もしてくる。ギィは最後には捕まってしまうけれども、最後の最後に思わぬ大逆転がある。芸は身を助けるというのはまさにこのことかと思った。
タグ:ギィ・リブ
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ムンクを追え! [犯罪]


ムンクを追え! 『叫び』奪還に賭けたロンドン警視庁美術特捜班の100日

ムンクを追え! 『叫び』奪還に賭けたロンドン警視庁美術特捜班の100日




 1994年の夜明け前、ノルウェー国立美術館に2人の男が近づき、ハシゴを立てかけたうえで2階の窓を割って侵入。館内に展示されていた、エドヴァルド・ムンクの代表的絵画「叫び」を盗み出した。美術館の警備の隙を突いた、迅速な犯行だった。現場には一枚の絵葉書が残されていて、そこには不敵なメッセージが書かれていた。「手薄な警備に感謝する」

 ノルウェーの警察も美術館も必死に犯人を捜そうとするが、その行方は杳として知れない。入念に犯行計画が練られていたようで、犯行現場に残された手がかりは乏しく、犯行に使われた車両も盗難車で、犯人につながるものは何も見つからなかったのだ。

 ところが、思わぬところから、絵画奪還に向けた道が開け始める。ロンドンの美術特捜班と呼ばれるチームが、ノルウェー警察に協力してくれるというのだ。特捜班のチャーリー・ヒルは絵画の盗難事件のプロ。これまでも、盗まれたフェルメールやゴヤなどの名作を取り戻した実績があるという。

 本書は、この「叫び」盗難事件を巡る、チャーリー・ヒルの活躍を描いたノンフィクションである。事件発生から、犯人追跡、絵画奪還までの経緯を描いたスリリングな内容だ。

 手がかりがないのに、どうやって犯人にたどりつくのだろうと思ったが、「おとり捜査」という手法を使って犯人を追いつめていた。

 絵画の盗難などというと、怪盗ルパンとかトーマスクラウンとかおしゃれ泥棒を思い浮かべてしまうが、現実にはそんなに優雅なものではないらしい。普段は麻薬の密売だとか、マネーロンダリングだとかに手を染めるような凶悪なギャングが盗難事件を起こしている。

 犯人も絵画それ自体を自分で鑑賞したいというわけではなくて、金に換金する目的がほとんど。だから、盗品売買を生業とする業者の世界におとり捜査を送り込むことで、犯人をいぶりだすことも可能になる。

 本書には、ヒル捜査官が美術商に扮して違法取引の世界に潜入捜査する様子が描かれていて、本当にスリラー映画みたいな世界があるのだなと分かって興味深い。美術の知識をどっさりたくわえて、犯罪者たちの裏をかこうとする様子など、まるで火花の散るコンゲームを見ているかのようだ。

 美術犯罪は闇市場では、麻薬や武器に次ぐほどの大市場になっているという話だったり、意外と警備が手薄であるという話だったり。美術犯罪を巡るさまざまなエピソードもふんだんに出てきて、優雅な世界の裏側でこんなことが行われているのかと驚いた。

 スリリングな追跡ものとして読んでも面白いし、美術の世界を巡るうんちくも楽しむことのできるもりだくさんな内容。ムンクの叫びにこんなにいろいろなドラマがあったのかというのを知ることもできて、ムンク好きとしても読みごたえのある一冊だった。
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サイバー・クライム [犯罪]


サイバー・クライム

サイバー・クライム

  • 作者: ジョセフ・メン
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2011/10/13
  • メディア: 単行本



 コスタリカに拠点を置くブックメーカー(ギャンブル運営会社)、ベットクリス社のもとに一通のメールが届く。それは、4万ドルの支払いを求める脅迫メール。要求に従わなければ、会社のサイトを攻撃して、アクセス不能にしてしまうというものだった。

 これはDDoS攻撃と呼ばれるサイバー犯罪の手口で、コンピュータウィルスによって乗っ取られた世界中に点在する無数のコンピュータ(ボット)から、いっせいに特定のサイトにアクセスして、サイトをパンクさせてしまうというやり方だ。

 ベットクリス社は、オンラインギャンブルも扱っていて、短時間サイトが閉鎖するだけでも、莫大な額の損害が生じ、顧客の信頼は失墜してしまう。DDoS攻撃は、ブックメーカーの弱みを突いた、巧妙な犯行といえる。

 この困難な事態の解決に向けて、白羽の矢が立てられたのが、ネットセキュリティの専門家バーレット・ライアンだった。バーレットは、ベットクリス社のCEOからの依頼を受けて、脅迫者の攻撃を防止するための計画を立て、激しい攻防を繰り広げる。そして、脅迫者の正体を突き止めようと、手がかりを探り始める――。

 インターネットの世界を舞台に、サイバー犯罪を繰り返す犯罪者らと、彼らの正体を突き止めようとする捜査官たちとの戦いを描いたノンフィクション。映画のようなスリリングな展開に、目が離せなくなるような内容の本だ。

 本書を読むと、サイバー犯罪を取り締まることがいかに難しいかがよく分かる。

 犯罪者の正体を突き止めるためのルートは2つあるだろう。ひとつは、ネット上のアクセスをたどっていって、どうにか脅迫者のIPアドレスを突き止めていくやり方。もうひとつは、脅迫者宛に振り込まれた金のルートをたどっていくやり方。

 だが、世界中の捜査機関を見渡してみても、最先端のネットセキュリティには疎いことが多く、犯罪者の使う複雑な手口に対応することはなかなか難しい。また、たとえ犯罪者の居所が分かったとしても、海外にいるケースが多く、外国の捜査機関の協力を仰がなければならない。しかし、外国の機関と早急に連携を図るというのは、なかなかできるものでもないのだ。

 本書に出てくるネット・セキュリティの専門家バーレットと、イギリス人捜査官アンディは、こうしたネット犯罪の捜査につきまとう困難に挑戦した勇敢な人たち。じりじりと犯罪者を追い詰め、コスタリカ、アメリカ、イギリス、ラトビア、ロシアと世界を股にかけて、犯人を追いかけていく。徐々に犯人の正体が明るみになっていくところなどは、スリラー小説を読むようなドキドキ感があって面白い。

 最先端の捜査の実情が分かって興味深いとともに、サイバー犯罪の流行についてざっと分かるところもよかった。犯罪者の手口は年々巧妙化しているようで、スパムメールにはじまり、DDoS攻撃、個人情報を抜き取る方法、ウィルスを使った政府施設の破壊など、徐々に変化しているようだ。

 のんきにネットサーフィンなどしていたが、知らないところで見えない戦いが繰り広げられていたんだなあと驚嘆。ネット社会の裏事情についていろいろ分かって、非常にためになる一冊だった。
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振り込め犯罪結社 [犯罪]


振り込め犯罪結社 200億円詐欺市場に生きる人々

振り込め犯罪結社 200億円詐欺市場に生きる人々




 近年世間を騒がしている振り込め詐欺。本書はその詐欺集団の実態に迫ったドキュメント。

 筆者は実際に振り込め詐欺を行ったことのある複数の経験者たちに取材を重ね、振り込め詐欺のメンバーはどういう人たちなのか、どんな組織になっているのか、実際に行う犯罪行為の中身について、その詳細を明らかにしている。読んでいくうちに分かってくるのは、振り込め詐欺集団が想像以上に巧妙に組織化されていて、その規模も広範囲に及んでいるということだった。

 振り込め詐欺のメンバーにも役割分担があって、まず、携帯電話、振込用銀行口座、ターゲットの名簿を用意する「道具屋」がいる。実際に電話をかけるのは「プレイヤー」と呼ばれる人たちで、言葉巧みに、ときには集団の劇場型スタイルで詐欺を行う。騙された人が銀行口座にお金を支払うと、「ダシ子」と呼ばれるメンバーが口座から即座に金を引き出す。これらのメンバーを「番頭」という人たちが統括管理していて、金銭管理やメンバー間の調整などを行う。さらに上には「オーナー」と呼ばれる初期費用の出資者が君臨していて、詐欺行為によって出た収益の一部を吸い上げている。

 各メンバーがどのように集められるのかとか、各自がどんな役割を果たすのかが詳しく書かれていて、こんな組織になっているのかと驚くような内容。暴力団組織と異なり、組織が分断されていて、摘発が難しいのだそうだ。暴力団組織であれば縦構造が分かりやすいので、下っ端を捕まえれば、芋づる式に組織の上のほうまでたどっていけるけれども、振り込め詐欺組織は、メンバー同士が分断されているので、端役を捕まえても容易に上までたどることが難しくなる。報復などを恐れることもあって、トップの情報などは漏れない仕組みになっているという。

 集められている人材は必ずしも暴力団関係や不良少年ばかりではなくて、ワーキングプアや失業者、身体障害者などの社会的な弱者であることも多い。金に困った人々が、携帯電話を大量に購入して詐欺の道具として売ったり、正業で入手した顧客名簿を売ったり、あるいは「プレイヤー」や「ダシ子」になったりする。本書を読むうちに、日本の貧困問題が振り込め詐欺を生み出している構造が見えてくる。

 格差問題などは、アメリカのあとを追うようにして、これから日本でますます問題が広がっていくだろう。振り込め詐欺の人材要員の多くが社会的弱者から集められていることを考えると、こうした格差社会が振り込め詐欺の規模を大きなものにしているといえるのだ。社会の構造の問題なので、容易に解決は難しい。個々のメンバーを捕まえても、別の人材が次々投入されるだけだし、何らかの規制をかけても続々新たな手口が出てきて、するりとかわされてしまう。

 格差社会という社会構造の問題を解決しないと、根本的な解決にはならないだろうなあと思った。結局は、経済や政治の問題に行き着く。想像以上に根が深くて、難しい問題なんだということがよく分かって、興味深い一冊だった。
タグ:鈴木大介
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「盗まれた世界の名画」美術館 [犯罪]


「盗まれた世界の名画」美術館

「盗まれた世界の名画」美術館

  • 作者: サイモン・フープト
  • 出版社/メーカー: 創元社
  • 発売日: 2011/08/22
  • メディア: 単行本



 古来より人々を魅了し、収集の対象となり、繁栄の象徴にもなってきた絵画や彫刻などの美術品の数々。過去数十年でますますその価値は高まり、取引価格は急騰。サザビーズやクリスティーズなどの競売会社の売り上げは50億ドルにも達するようになった。

 これだけの莫大な価値をもっているため、美術品は犯罪者や征服者らによる盗難や略奪のターゲットにもなってきた。歴史的にも遺跡や墓を狙う墓荒らしは後を絶たないし、ナポレオンやヒトラーなどの例にあるように権力者は進軍するごとにその土地の財宝を略奪した。近年では美術館やギャラリーから絵画が盗まれる事件も多発するようになり、闇市場では麻薬・武器輸出に次いで第3位の市場にもなっている。

 優雅な美術の世界には、その裏面史としての美術犯罪が存在し、犯罪者と捜索者の戦いは今なお続いている。本書は、このような美術犯罪の世界に目を向けた一冊で、美術犯罪の歴史、絵画盗難の手口、盗まれた美術品を見つけだそうとする警察たちの活躍などを紹介している。

 本書を読むと、想像以上に美術犯罪というものが横行していることが分かる。盗まれた絵画のリストを見ても、レンブラント、ルノワール、マネ、モネ、セザンヌ、マティス、シャガール、ゴッホ、ピカソ、フェルメールなどそうそうたる顔ぶれ。これらの絵画は今でも行方不明になっていて、世界のどこに眠っているのか美術界のミステリーになっているそうだ。

 盗まれた絵画や彫刻を集めただけでも、それだけで立派な美術展が開けるくらいの被害の数々。本書には盗まれた美術品がカラーでふんだんに掲載されていて、画集として目で見て楽しむことができるようにもなっている。本当に美術館に足を踏み入れたかのような雰囲気があって、すっかり魅了されてしまった。

 盗みを働くものと警察との間の戦いも興味深い。

 映画などでは「おしゃれ泥棒」や「トーマスクラウン・アフェア」など、紳士的な犯罪として描かれることの多い美術犯罪であるが、実際にはそんなに優雅なものではなくて、銀行強盗と変わらないような荒々しい手口のものがほとんどであることがわかる。その動機も闇市場に流すとか、美術館に買い戻させるとか、金目当ての犯行が多い。

 こうして盗まれた美術品を取り戻すために、手がかりを追う警察や私立探偵たち。盗難品を扱う業者に扮装しておとり捜査を仕掛ける警官たちの話などは、映画を見ているようで、非常にスリリングだ。

 消えた美術品とそれらを追う人々を描いたドキュメント。美術犯罪について、俯瞰的に眺めることができて、たいへん勉強になる一冊。消えた世界の名画はどこに行ったのだろう? と美術の世界の謎に引き込まれるような興味深い本だった。