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タイム・リープ/あしたはきのう [SF(日本)]


タイム・リープ<上> あしたはきのう<タイム・リープ> (電撃文庫)

タイム・リープ<上> あしたはきのう<タイム・リープ> (電撃文庫)

  • 出版社/メーカー: KADOKAWA / アスキー・メディアワークス
  • メディア: Kindle版



 タイムトラベルを題材にしたSFが好きで、ときどき読むのだが、これにもいくつか種類があるらしい。

 主人公がタイムマシンで過去や未来に行くオーソドックスな話。過去の自分に戻って人生をやり直す話。同じ日が何度も繰り返される話。行き来はできないが、過去の人間と通信はできるという話。

 時間の順序がばらばらになってしまうという話もある。月曜日の次に木曜日がやってきて、そのあと日曜日に戻るといった時系列がランダムになる話だ。

 「シャッフル」というサンドラ・ブロックが出ている映画が、このランダムタイプだった。あの映画を見たときに、妙なことを考える人がいるなあと思ったものだが、「タイム・リープ/あしたはきのう」という本を読んだら、同じくランダムタイプの話だった。妙なことを考える人が日本にもいたのだ。

 話の内容は、高校生の少女がランダム現象に遭遇して、その謎を解いていくというもの。読んでみると、「シャッフル」よりもこっちのほうが面白かった。ジグソーパズルを解いていくような緻密な構成にはうならされたし、ランダム現象の原因もしっかり考えられている。

 何より結末の落とし方がいい。ランダム現象をうまく利用して、問題を解決していくのは爽快感がある。

 かなり理屈っぽい話で、本当にパズルみたいな小説だった。あちこちに伏線が張ってあるし、謎また謎の展開で、ミステリー小説を読んでいるような感覚。ミステリーが好きな人にも楽しめる小説だと思う。

 映画化もされているようなので、見てみたくなった。
タグ:高畑京一郎
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できそこない博物館 [SF(日本)]


できそこない博物館 (新潮文庫)

できそこない博物館 (新潮文庫)

  • 作者: 星 新一
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 1985/02
  • メディア: 文庫



 SF作家の星新一は、生涯に1001篇ものショートショートを書いたという。

 そんなにたくさん書いているくらいだから、アイデアが湯水のごとく沸いて出たのかなと思いきや、意外にも毎回書くのに苦しんでいたらしい。

 いやいやながらも机に向かってあれこれ思いつくまま書いていく。書いていくうちにメモのようなものがまとまって短編の種になっていく。そんな作業を繰り返していたんだそうだ。

 本書はそんな生みの苦しみの最中に、星新一があれこれと書いたメモを集めた珍しい本である。

 メモと言えどもあなどれない。すでに立派なショートショートと言えるようなものもたくさん混じっていて、どうしてメモのままで作品にしなかったんだろうと不思議なくらいだ。

 中にはなんだかよく分からないようなものも混じっている。こういうのも星新一が解説すると、話がどんどんふくらんでいって、なんだか漫談を聞いているみたいで面白い。

 星新一に言わせると、大事なのはシチュエーションだという。

 よく考えると、星新一の小説はほかの作家のものと決定的に異なるところがある。それはキャラクター性の希薄さである。星新一の作品の登場人物は無個性で、名前すら抽象的な「エヌ氏」だったりする。

 普通は個性的なキャラクターがいて、能動的にストーリーを引っ張っていくのが小説というもの。読者も共感できるキャラクターに感情移入するからこそ、最後まで読もうという気になる。なのに、星新一はキャラクターというものを自ら封印している。その代わりにシチュエーションの面白さだけで話を引っ張っていく。

 きっと並々ならぬ苦労があったに違いない。キャラクターという作家にとっての最大の武器を封印しているのだから。

 毎回うんうん頭をひねりながら、面白いシチュエーションを考えていく。ありふれたものでない、読者をあっと言わせるシチュエーションはないものか? そんなふうに苦しんだ結果が1001篇ものショートショートになったと考えると、気が遠くなる。

 星新一がどのようなことを考えて作品を作ってきたのかを垣間見ることのできる本。ショートショートの舞台裏を見ているみたいで面白かった。
タグ:星新一
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あたしの中の・・・・・・ [SF(日本)]


あたしの中の… (コバルト文庫)

あたしの中の… (コバルト文庫)

  • 作者: 新井 素子
  • 出版社/メーカー: 集英社
  • 発売日: 2005/12/22
  • メディア: 文庫



 SF作家の新井素子の作品集。

 この本の中に収められている「大きな壁の中と外」という中編が面白かった。

 話の舞台は、第3次世界大戦後の世界。核戦争によって人口が激減した人類は、各地に小都市を設置し、農業・畜産・工業・教育・政治などを一切コンピュータにゆだねることになった。人々は子供を産む権利も認められず、コンピュータが各人の遺伝子を見極めて人工授精させ、人工子宮内で養育するようになる。

 そんな時代に生まれた立木あゆみという主人公は、C棟と呼ばれる施設内で生活をしている。C棟は外の都市で社会生活を送ることができない者を隔離するための施設だった。

 何人かのドロップアウトした人間たちがC棟で暮らしていたが、あるときそこにミュウと呼ばれる新入りが入ってきて、C棟に不穏な出来事が次々と起こるようになる・・・・・・。

 SF小説を読んでいるとときどき出てくるパターンのひとつに、話の設定が最後まで謎になっているというものがある。主人公が置かれている状況が秘密になっていて、主人公はその謎を探ろうとする。そして、最後の最後に世界観が明らかとなる。

 SFにミステリーとしての面白さが加味されて、好奇心が刺激されるといったタイプの話だ。

 本作品もそういったたぐいの話で、収容施設の外にどのような世界が広がっているのか、施設に何の意味があるのかが最後まで秘密になっている。

 収容所の壁にはどんな意味があるのだろう? 最後にその意味が明らかとなり、「なるほどー」と感心させられた。

 こういう作品は最後のオチが肩すかしに終わることもあるけれど、本作はその点納得できる内容になっている。コンピュータ社会の行き着く先に何が起こるのか? そのあたりが深く掘り下げられているところが納得のポイントだったと思う。

 やはりよく考えが練り込まれた作品というのは読み応えがある。思索としての面白さ、スペキュレーティブ・フィクションとしての面白さが感じられる。もちろんフィクションなんだけれど、ひょっとしたらこういうことも起こりうるかもねとぞっとさせられるようなところがある。

 ほかの作品も含めて、新井素子はこういう思索をフィクションの形にまとめあげるのがとてもうまい。設定自体も興味深いし、その話の設定を使って物語を盛り上げるのもうまい。
タグ:新井素子
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エクソダス症候群 [SF(日本)]


エクソダス症候群 (創元日本SF叢書)

エクソダス症候群 (創元日本SF叢書)

  • 作者: 宮内 悠介
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2015/06/29
  • メディア: 単行本



 火星開拓地を舞台にしたSF小説。

 火星唯一の精神病院であるゾネンシュタイン病院に赴任した青年医師カズキが、そこで働くうちに昔に病院で起こった秘密を解き明かしていく――というミステリータッチの作品だ。

 未来の話だけれど、テーマは精神医療史。フロイトやらロボトミーやら抗精神病薬やらといった、現代にも通じるような話が出てきて驚いた。

 火星に住めるくらいの未来になったら、医療技術も発達して、いろいろな病気も克服されて、精神病なんかもなくなっているんじゃないの? などとつい楽観的に考えてしまう。だから、火星の精神病棟という設定は意外だったのだが、本書を読むうちにそう単純にはいかないことが分かってくる。

 人間の脳や精神といったものは、いまだに謎が多い分野だ。機械でのぞいたからといって単純に機能が分かるものでもない。精神剤があるとはいっても、個体差はあるし、その効用のほどは計り知れない。脳は人体のブラックボックスといえる。

 だから、精神医療というのは、こうすればこうなるという判断が難しい分野ともいえる。他の科学技術が発達しても、精神病というのはそう簡単に克服できるものではないのかもしれない。

 本書にも画像診断や機械による自働診断といった未来のテクノロジーが出てきて、精神病もある程度克服されているのだが、新種の症例が現れて、医師たちを悩ませ始める……。

 精神医学の世界は全くといっていいほど知らなかったので、本書に詳しく書かれた精神医療史の話は興味深かった。精神医療の歴史がひととおり書かれていて、こんな風に進歩してきたのかということが分かるようになっている。科学と迷信との間を行ったり来たりしながら歩んできたことが見えてくる。

 こうした精神医療の歴史とリンクするように、登場人物たちはエクソダス症候群という新しい症例に右往左往する。何が正しくて、何が間違っているのか、だんだん分からなくなっていく。正気と狂気との境界があいまいになっていく感じがおそろしい。

 火星と精神医療史という不思議な取り合わせであったが、うまくミックスしている。病院の謎や主人公の抱える秘密など、ミステリー部分もよく練られていて面白かった。
タグ:宮内悠介
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イン・ザ・ヘブン [SF(日本)]


イン・ザ・ヘブン

イン・ザ・ヘブン

  • 作者: 新井 素子
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2013/10/31
  • メディア: 単行本



 SF作家、新井素子の短編集。

 天国論を展開した表題作(「イン・ザ・ヘブン」)、輪廻転生をめぐる大騒動(「つつがなきよう」)、なんでも願いがかなってしまうドロップの物語(「あけみちゃん」)、細菌戦争が引き起こす人類の終末(「ノックの音が」)、人類を懲らしめようとする神様と人々との対決(「ゲーム」)などなど、楽しい話が満載。

 星新一を敬愛している作家ということで、まさに星新一の作品を想起させるような話ばかり。現実味と空想との間のはざまにある世界。からっとした爽やかさ。空想科学な世界が広がっていて、そのポップな文体とクールな雰囲気に完全に魅了されてしまった。

 「もしも~だったら?」というところから出発して、理詰めで話が転がっていく面白さ。「もしも神様が怒ったら?」「もしも天国があったら?」「もしも人工知能が発達したら?」という疑問から、「どうなる? どうなる?」を繰り返していくうちに、どんどんと話が意外な方向に話が転がっていって、とうとう思わぬところに行きついてしまう驚き。

 壮大なほら話として読んでも楽しいし、意外にも社会についてあれこれ考えさせられたり、今まで当たり前と思っていた価値観ががらりと崩れてしまったり。人類の文明についてのパロディになっている。これぞまさにSF小説の醍醐味といえるだろう。

 こういう本を読むと、頭のネジが外れるというか、固定観念を外してくれるようなところがあって、頭がすっきりしていい。こんな世界の見方もあるんだよと教えてくれる感じ。読後感のすがすがしい一冊だった。
タグ:新井素子
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声の網 [SF(日本)]


声の網 (角川文庫)

声の網 (角川文庫)

  • 作者: 星 新一
  • 出版社/メーカー: 角川書店
  • 発売日: 2006/01/25
  • メディア: 文庫



 コンピュータの発達によって、商品の説明から、伝票の作成、病気の診断、情報管理、秘密の懺悔、ジュークボックスまで、何でも対応してくれる万能の機能を持った「電話」が普及した近未来社会。メロン・マンションでは、住民たちが日々この電話を使って便利な生活を謳歌していた。だが、ある日、住民たちのもとに見知らぬ人物から奇妙な電話がかかってきて……。

 SF作家・星新一が描くコンピュータ社会の未来。メロン・マンションの住民たちをめぐる12の物語で構成された連作短編集で、回を追うごとに奇妙な電話の正体が明らかになってくる。

 昔に書かれた本なので、使われている装置が「電話」なのだが、これは現代でいえば、「インターネット」「ウェブ」にあたるものと言えるだろう。1970年に書かれたものなのに、すでにインターネット社会を予見したかのような描写があちこちに散見されて衝撃を受けた。

 「声の網」が大量のデータを蓄積し始めたり、人々の持っているプライバシーを侵し始めたり。現代にも通じるような問題が提起されていて、星新一の先見性には驚かされてしまう。

 コンピュータ社会の末路のようなものも描かれている。SF小説でよくあるテーマが登場するのだが、その結末は新鮮で、こんな終わり方を迎えるのかという圧巻のラストだった。

 物語自体も面白いけれども、随所に文明論みたいなものも出てきて、なかなか考えさせられる味わいのある作品。決して古びることなく、今でも新鮮に感じられる内容で、これから世界がどういう風に進んでいくのかを現実とリンクして考えさせられる。フィクションとしての面白さだけでなく、文明の行く末という大きなテーマ持った深みのある作品だった。
タグ:星新一
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