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名を捨てた家族 [歴史小説(外国)]


名を捨てた家族: 1837 ― 38 年 ケベックの叛乱

名を捨てた家族: 1837 ― 38 年 ケベックの叛乱

  • 作者: ジュール ヴェルヌ
  • 出版社/メーカー: 彩流社
  • 発売日: 2016/11/10
  • メディア: 単行本



 カナダのケベックは、もともとフランス系住民たちが植民していた土地で、「ヌーヴェル・フランス」などと呼ばれていた。

 ところが、同じくアメリカ大陸での権益の拡大を目指していたイギリスもまた、虎視眈々とこの土地を狙っていた。英仏の利害対立は、北米の地を舞台に、幾度もの戦いを引き起こす。

 相次ぐ戦争の果てに勝利したのはイギリスだった。フレンチ・インディアン戦争のさなか、1759年にイギリス軍がケベックを制圧する。1763年には、英仏間で条約が交わされ、ルイ15世はカナダと周辺属領の独占所有権を譲渡する。こうしてケベックはイギリスの統治下に置かれることになった。

 だが、この土地には大勢のフランス系住民が住み着いていた。おいそれとイギリス支配に甘んじられるはずもない。フランス系住民たちの不満はくすぶり続け、各地で統治者たちとのいざこざが起こり始める。イギリス支配から脱却しようと、大規模な反乱の兆しも見え始めていた……。

 ジュール・ヴェルヌの小説「名を捨てた家族」は、このようなカナダの歴史背景をもとに描いた歴史小説である。イギリス支配に対抗すべく、フランス住民たちが引き起こした「ケベックの反乱」という実際に起こった史実を描いている。

 冒険物語で有名なヴェルヌが、どんなふうに歴史小説を書くのか興味があったのだが、読んでみるといかにもヴェルヌらしいドラマティックな内容に仕上がっていた。

 単に歴史を忠実になぞるのではなく、一部フィクションも交えながら生き生きと語っているところは見事。出てくる登場人物たちの織りなす人間ドラマが、歴史物語に幾層もの深みを与えている。

 とりわけ、反乱を主導する主人公「名無しのジャン」という人物の設定は非常にうまい。神出鬼没で正体がつかめず、イギリス軍を翻弄し、フランス系住民たちからは伝説の存在のように慕われる男。反乱軍の要ともいえる人物。
 
 だが、彼には誰にも話すことのできない隠された過去があった。「名無しのジャン」の隠された秘密は、やがて登場人物たちの運命を大きく揺るがすことになる。

 ケベックの反乱という興味深い史実を描いた物語で、歴史そのものの面白さがあることはもちろんなのだが、真に心を揺さぶられたのは、やはりそのような歴史に翻弄される人々のドラマのほうだった。

 ヴェルヌはSFや冒険小説の祖とか言われているけれど、ヴェルヌの面白さはそれだけじゃないよというのがよく分かる内容。ヴェルヌはやはり小説そのものが非常にうまい人、文学作家としても非常に優れた人だったのだ。

 ちなみに、本作は今回はじめて翻訳された知られざる作品。こんなに面白い話が翻訳されていなかったとはもったいない。ヴェルヌはまだまだ未訳のものが非常に多いので、どんどん翻訳していってほしいなあと思う。
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プークが丘の妖精パック [歴史小説(外国)]


プークが丘の妖精パック (光文社古典新訳文庫)

プークが丘の妖精パック (光文社古典新訳文庫)

  • 作者: キプリング
  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 2007/01/11
  • メディア: 文庫



 「ジャングル・ブック」などで知られる、ラドヤード・キプリングが書いた歴史小説。

 妖精などというタイトルだから、純然たるファンタジーかと思いきや、意外にも歴史もの。たしかに妖精が出てくるし、ファンタジックな場面もあるけれど、大部分はイギリスの歴史を再現した物語だった。

 丘の上で遊んでいた少年と少女。2人の前にパックと呼ばれる妖精が現れる。パックは不思議な力で歴史上の人物を2人の前に次々に呼び出す。現れたのは、騎士、百人隊長、図面ひき、ユダヤの老人……。彼らは自ら体験した歴史上の経験を生き生きと語って見せる。

 過去からよみがえった人物たちがひとりひとり歴史上の物語を語っていくという、連作短編集のようなスタイル。キプリングはこの本を子どもたちのために書いたのだとか。だから、この本を読んでいくと、イギリスの歴史を一通りわかりやすく俯瞰できるようになっている。

 たとえば、「荘園のふたりの若者」という話は、ノルマン征服のころの話。11世紀当時、イングランドにはサクソン人が各地に住み着いていた。しかし、ここにノルマン人のウィリアム王がやってきて、サクソン人たちと戦い、イングランドを征服してしまう。この作品では、突然荘園を経営しなければならなくなった青年騎士の苦心が描かれている。

 「ペベンシーの年寄りたち」という話では、さらに時代が下る。ウィリアム王の亡きあと、イングランドをヘンリー王が支配していたが、ヘンリーの兄であるノルマンディー公ロベールはこれが許せなかった。イングランドの命運をかけた陰謀の物語。

 「宝と法」はさらに時代が下ったジョン王のころの話。圧政を敷いたジョン王に対する貴族や庶民からの不満が高まり、反乱がおきると、ジョン王は不満を抑えるために和解をすることになる。マグナ・カルタと呼ばれる大憲章の調印である。マグナ・カルタ調印の裏側にどのような出来事があったのか、フィクションを交えて歴史上のドラマが描かれる。

 一番面白かったのは、「第三十軍団の百人隊長」という話。時代はうんとさかのぼって、ローマ帝国時代のイングランド。当時、ローマ帝国の権勢はイングランドにも及んでいた。そして、外敵の侵入を防ぐために、「ハドリアヌスの長城」と呼ばれる防壁が建っていた。物語の中では、この防壁を守ることになった百人隊長の若者の戦いが描かれる。

 よくできた歴史物語で、ひとつひとつの話が実に面白い。こんなに面白い話がまだ未訳だったというのが信じられないほどの出来栄え。本書を読むと、イギリスの歴史についていろいろ知りたくなるので、かなり勉強になる本だった。
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王妃マルゴ [歴史小説(外国)]


王妃マルゴ〈下〉 (河出文庫)

王妃マルゴ〈下〉 (河出文庫)

  • 作者: アレクサンドル デュマ
  • 出版社/メーカー: 河出書房新社
  • 発売日: 1994/10
  • メディア: 文庫



 「三銃士」で有名なアレクサンドル・デュマが描いた歴史小説。

 1572年、パリのルーヴル宮で盛大な祝宴が開かれる。フランス国王シャルル9世の妹マルゴとナヴァール王アンリ・ド・ブルボンとの婚礼の儀が執り行われたのだ。

 だが、この結婚は愛のある結婚ではなく、政略結婚だった。

 当時、フランスでは2つの勢力の間で争いが勃発していた。カトリック教徒とユグノーと呼ばれるプロテスタント教徒との間の戦いである。お互い憎しみあう2つの勢力だったが、カトリックのマルゴとユグノーのアンリが結婚すれば、フランスをひとつにまとめることができるのではないか。そういう目論見もあって、ふたりは結婚することに。

 しかし、それだけで争いが収束するはずもなく、カトリックとユグノーの争いはさらに激化。アンリを暗殺しようとする企みが着々と進行する。

 ユグノー派が虐殺された、聖バルテルミーの虐殺事件を題材にした作品。史実をベースにした話だけれど、デュマが書いているので、非常に劇的な物語展開を見せる。

 アンリを暗殺しようとするカトリーヌ・ド・メディシス、アンリを守ろうとするマルゴ、王座を狙おうとする国王の弟アランソン公、様々な勢力の間で揺れ動く国王シャルル9世、群像劇というか、それぞれの登場人物たちが各々の思惑を持って独自に行動するところが面白い。各キャラクターたちの企みは衝突するのだけれど、思いもよらない方向へと発展していくところなども見ごたえがある。

 義母であるカトリーヌ・ド・メディシスがことあるごとにアンリを毒殺しようとするところとか、昔のフランスはこんなにドロドロとした世界だったのかと、恐ろしくなるような話。身近な人間ですら信用できない世界だったんだなあと。

 こういうドロドロ陰謀劇のようなものを書かせるとデュマの右に出るものはいない。様々な企みにあふれた傑作だった。
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大聖堂 [歴史小説(外国)]


大聖堂 (上) (ソフトバンク文庫)

大聖堂 (上) (ソフトバンク文庫)

  • 作者: ケン・フォレット
  • 出版社/メーカー: ソフトバンク クリエイティブ
  • 発売日: 2005/12/17
  • メディア: 文庫



 ケン・フォレットの小説「大聖堂」は12世紀のイングランドを舞台に、大聖堂建築に命をささげた人々を、壮大に描いた歴史小説である。

 当時のイングランドは、ヘンリー1世亡き後の時代。ヘンリー1世の嫡子が海難事故で亡くなったため、世継ぎ問題が起こっていた。ヘンリー1世の甥のスティーブンとヘンリー1世の娘マティルダとが、権力の座を巡って激しく対立する。

 そんな不穏な時代にあって、トム・ビルダーという石工がキングズブリッジという町にやってくる。彼は優秀な職人であったが、仕事がなく各地を放浪して働き口を探していた。あるとき、この町の聖堂が大炎上して崩壊する事件が起こり、トムにチャンスが舞い込む。新たな聖堂を建築する必要が出てきたのだ。修道院長のフィリップはトムの優秀な能力を見込んで、大聖堂建築を依頼する。

 だが、大聖堂建築は簡単にはいかない。建築には多くの資金が必要であるし、建築工学上の難しさもある。さらには、王位継承権やら様々な権力闘争を巡って、建築を妨害しようとする黒い勢力も現れ始める。大聖堂建設の陰で様々に激しくドラマが展開する。

 石工のトム、修道院長のフィリップ、没落した伯爵の娘アリエナ、権力の座を握り悪のかぎりをつくすウィリアム、秘密を抱えた女性エリンとその息子ジャックなどなど、それぞれに野望や思いを秘めた数多くの登場人物たち。彼らが入り乱れて、様々に衝突しながら話が進んでいく群像劇になっている。

 今では高層ビルなんて当たり前のように建っているから、とくに気にもしなかったけれど、当然のことながら、高い建物を建てるにも高度な技術がいるのだ。力関係を計算しないと、重みに耐えきれずに建物は崩壊してしまう。聖堂なので線の長さの比率などの美的要素も考慮する必要がある。大聖堂の話だから、このあたりの苦労話がかなり詳しく書かれていて面白い。

 建築の歴史的な背景も丁寧。当時はロマネスク様式からゴシック様式に移り変わっていった時代。登場人物たちはフランスに渡って、イングランドではまだ珍しかったゴシック様式の建築物を見て、その斬新さに驚愕する。大きな窓を壁にはめ込むだけでも、当時としては画期的だったらしいのである。

 ケン・フォレットの小説は初めて読んだが、話の運び方が抜群にうまい。次から次に事件が起こって、一難去ってまた一難という感じで息つくひまもない。1巻500ページ以上が3巻もある長大な話なのに、続きが気になって一気に読んでしまった。
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紅はこべ [歴史小説(外国)]


紅はこべ (創元推理文庫 507-1)

紅はこべ (創元推理文庫 507-1)

  • 作者: バロネス・オルツィ
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 1970/05
  • メディア: 文庫



 1792年のパリ、フランス革命が進行するにつれて、急進的な勢力が力を持つようになると、恐怖政治が蔓延するようになった。

 貴族たちは次々に死刑台へと送られ、ギロチンで首をはねられていく。国王と王妃も、幽閉生活を余儀なくされてしまう。貴族たちは危険を逃れるため、続々と国外への逃亡を図ろうとする。女は男に、若者は老人に、金持ちは乞食に変装して、関門をくぐり抜けようとする。だが、目ざとい軍曹たちが貴族たちの変装を見破り、逮捕して死刑台へと送ってしまう。

 そんな恐怖の支配する中、人々の間で不思議な噂が広まり始める。貴族たちの逃亡を助ける秘密の結社があるというのだ。なんとも鮮やかな手口で、見張りの目をかすめ、関門を突破してしまうのだとか。その神出鬼没の一団の正体はようとして知れない。ただ、彼らが象徴として用いている小さな星形の花の名前をとって、「紅はこべ」と呼ばれていること以外は……。

 フランス革命の時代のイギリスとフランスの2つの都市を舞台に、秘密の団体「紅はこべ」の活躍を描いた冒険活劇。

 「紅はこべ」の正体を見破ろうとフランス政府大使ショーヴランという男が、手がかりをたぐり寄せてぐんぐん包囲網を狭めていき、「紅はこべ」の正体に迫っていく。追いかけるショーヴランと、するりと逃げる「紅はこべ」。追いつ追われつの物語がスリリングだ。

 一体誰が「紅はこべ」の首領なのか? 登場人物の中からその正体を探していくくだりは、怪盗ルパンみたいなところもあって、ミステリーとして読んでも面白い。実際、「紅はこべ」は次々にいろいろな人間に変装したりして、人々を欺くので、奇術的な味わいも楽しめる作品になっている。

 現代でいうスパイスリラーのようなものだろう。初めから終わりまで、機略に富んだ内容で、陰謀の世界が描かれていて面白かった。最後の最後まで手に汗握る展開で、けっこう昔の本なのに、物語の中に引き込まれてしまった。
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パイレーツ/掠奪海域 [歴史小説(外国)]


パイレーツ―掠奪海域― (ハヤカワ文庫NV)

パイレーツ―掠奪海域― (ハヤカワ文庫NV)

  • 作者: マイクル クライトン
  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2012/03/05
  • メディア: 文庫



 1665年、ジャマイカのポートロイヤルの町、私掠人のチャールズ・ハンターは、財宝を積んだスペイン船がカリブ海の島マタンセロスに停泊しているという噂を耳にする。ハンターはジャマイカ総督からの後押しを受けて、このスペイン船を襲撃して、財宝を奪い取る計画を立てる。だが、マタンセロスは沿岸部を大砲が囲み、大勢の兵士が駐留している難攻不落の要塞。ハンターは様々な道の専門家たちを仲間に連れて、スペイン人を相手にした危険な計画を実行する。

 作家マイクル・クライトンは「ジュラシック・パーク」などで有名だが、2008年に喉頭がんで亡くなった。この「パイレーツ」という作品は、クライトンの死後、自宅のコンピュータから発見された遺稿である。

 クライトンらしい、冒険心とサスペンスに満ちた、スケールの大きな海賊アドベンチャー作品。

 物語の舞台となる1665年というのは、スペインが海洋国家として権勢を誇り、イギリスと熾烈な戦いを繰り広げていた時代だ。当時、スペイン人は、南アメリカの銀山などから金銀を回収してスペインに持ち運んで、国家財政を潤わせていた。その航路の途上にあるのが、カリブ海だった。

 スペイン人の財宝の運搬も安全なものではなかった。カリブ海には海賊たちが跋扈していて、スペイン船を襲うということが頻発していたからだ。とくに、イギリスはひそかにこれを公認していて、スペイン船から掠奪した財宝を国家財政の基盤にまでしていた。

 略奪を行っていたのは私掠人という人たちで、実際にやっていることは海賊行為なのだが、国家の免状を得て行っていたので、イギリス本国からは罰せられない。本作は、まさにこの私掠人のことを描いた小説で、主人公のハンターによる海賊行為の活躍が描かれている。

 実際に読んでみると、「ミッション・インポッシブル」をほうふつとさせるような、チームで困難な任務に挑戦するというサスペンスフルな作品だった。チームのメンバーもひと癖ある人物ばかり。火薬の専門家のユダヤ人、天才的な航海士、抜群の視力を誇る水先案内人、冷酷な殺し屋、怪力の持ち主のムーア人。それぞれの持ち味を生かしながら、次々に襲い掛かってくる危機的状況を乗り越えていく。

 スペインへ兵との戦い、要塞への侵入、自然の驚異との戦い、そして意外な裏切りなど、手に汗握る展開が待ち受けていて、一難去ってまた一難という感じ。サスペンスの盛り上げ方がうまいなあと思った。

 当時の社会風俗なども詳細に描かれていて、真面目なクライトンらしさが出ていて、細かい描写にまでこだわっている。歴史の一時代が生き生きと描かれ、本当にその場に居合わせたかのような臨場感。こんな時代だったのかというのが見えてきて興味深い。

 映画化企画も進んでいるようで、たしかにこれは娯楽大作として映画にしたら面白そう。原作をどのようにアレンジするのか、今から観るのが楽しみだ。
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