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最も危険なアメリカ映画 [映画]


最も危険なアメリカ映画 『國民の創生』 から 『バック・トゥ・ザ・フューチャー』 まで

最も危険なアメリカ映画 『國民の創生』 から 『バック・トゥ・ザ・フューチャー』 まで

  • 作者: 町山 智浩
  • 出版社/メーカー: 集英社インターナショナル
  • 発売日: 2016/10/26
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)



 よくできた映画は、現実の出来事や社会情勢を反映したものであることが多い。

 現実の出来事がそのままストーリーになっていることもあるし、背景としてのみ用いられることもある。

 映画というのは人間の生きざまを描くものだが、人がどんな風に生きるのかは、その人の置かれている社会情勢によって変化するもの。人間を掘り下げて描くためには、時代背景や社会がどのような状態であったのか、そのような社会情勢におかれた人々がどんな生き方をしてきたのかを踏まえる必要があるだろう。

 本書「最も危険なアメリカ映画」で紹介されている映画作品はまさに、アメリカで実際に起きた出来事や、時代背景を色濃く反映したような映画ばかりだ。

 KKKの時代を描いた「國民の創生」、先住民に対する差別的時代を描いた「滅び行く民族」、ウォルト・ディズニーが戦時中に東京大空襲を煽ったという「空軍力による勝利」、復員兵のPTSDの問題を扱った「光あれ」、冷戦期のマッカーシズムを描いた「影なき狙撃者」などなど。

 中には製作者の思想性が強すぎて、事実がゆがめられてしまっているようなものもあるけれど、そういう映画も含めて、アメリカを象徴する作品ばかり。

 読んでいくと、アメリカがこんな歴史をたどってきたのかという、アメリカの実態を知ることができる。アメリカンドリームなどというきらびやかなイメージの影で、暗黒の歴史をたどってきたことが分かる内容だ。

 まあとにかく各映画の解説の情報密度が濃い。背景事情が盛りだくさんに書かれているので、非常に読みごたえがある。普通に観ていたら絶対に知りえなかっただろうことがたくさん書かれているし、そもそもこんな映画観る機会ないよというのも混じっていて、いろいろな意味で驚かされた。
 
 こうして作品が並んでいるのを見ると、アメリカ映画というのも単なる娯楽を超えた、社会性のあるメディアなんだなあと改めて痛感。そのときどきの時代において、社会に何かを訴えかけようとした製作者たちの心意気には感動してしまった。
タグ:町山智浩
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コンテンツの秘密 [映画]


コンテンツの秘密―ぼくがジブリで考えたこと (NHK出版新書 458)

コンテンツの秘密―ぼくがジブリで考えたこと (NHK出版新書 458)

  • 作者: 川上 量生
  • 出版社/メーカー: NHK出版
  • 発売日: 2015/04/10
  • メディア: 新書



 ドワンゴの川上会長が書いたコンテンツ論。映画・小説・絵画・音楽・漫画・アニメ・ゲームなど、様々なジャンルのコンテンツのありようについて語っている。

 「ぼくがジブリで考えたこと」という副題がついているので、ジブリの内幕本なのかなと思ったら、けっこう本格的な作品論・コンテンツ論になっていて驚いた。

 筆者はジブリのプロデューサー見習いとして、宮崎駿や高畑勲といった天才クリエイターたちと直に接するうちに、よいコンテンツとは何か? クリエイターたちはどんなふうにコンテンツを作り出すのか? コンテンツについての様々な疑問が浮かんだんだそうだ。筆者はこれら疑問について、理屈でロジカルに解明しようとしている。

 こんな大それたテーマをどう論ずるのだろうと思ったが、意外にも明快にコンテンツの秘密を解説していて、「そういうことだったのか」と目からうろこが落ちたほど。

 アニメよりも実写の方が情報量は多いにもかかわらず、アニメに惹きつけられるというのはなぜなのか? そもそも人々はなんで好き好んでコンテンツを摂取しようとするのか? クリエイターはどうして表現にこだわりをもつのか? オリジナリティとはなにか? 前からもやもやと気になっていた疑問が晴れていく楽しさがある。

 筆者はコンテンツとは現実のシュミレーションであると述べている。自分でも前からそんなふうに感じていたところもあったので、これは腑に落ちる内容であった。天才クリエイターと言われる人たちは、天才シュミレーターなんだと思う。優れたアニメーターは、鮮やかなイメージをシュミレートすることができる。優れた物語作家は、キャラクターの人生の選択肢をシュミレートして、劇的な展開を選び取ることができる。

 コンテンツを脳の観点から語っていて、最近はやりの脳関連本にも通じるようなところもあって興味深かった。

 軽い気持ちで読み始めたら、コンテンツについて真摯に研究されていて、非常に読みごたえのある本。思わぬ掘り出し物で面白かった。
タグ:川上量生
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ピクサー [映画]


ピクサー 早すぎた天才たちの大逆転劇 (ハヤカワ文庫NF)

ピクサー 早すぎた天才たちの大逆転劇 (ハヤカワ文庫NF)

  • 作者: デイヴィッド・A・プライス
  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2015/02/20
  • メディア: 文庫



 「トイ・ストーリー」「ウォーリー」「モンスターズ・インク」など、ヒット作を次々に作り続けるピクサー・アニメーション・スタジオ。本書は、そのピクサーが誕生するきっかけから、成功をつかむまでの軌跡を描いた本。

 ディズニー・スタジオをクビになり、途方に暮れるジョン・ラセター。アップル・コンピュータを追い出されたスティーヴ・ジョブズ。思わぬ壁にぶつかったふたりの人生が交差して、ピクサーを夢の会社に押し上げていく……。

 ピクサーも今でこそハリウッドのアニメーション界を牽引するヒットスタジオだが、その成功までの道のりは必ずしも順風満帆というわけではなかったようだ。本書を読むと、その苦難の歴史、紆余曲折の道のりを垣間見ることができる。

 もともとはルーカスフィルムのグラフィック部門だったピクサーは、スティーヴ・ジョブズによって買収されて独立企業となった。その当初の目的は、CGや画像処理に特化したソフトウェアを開発するという実用的なもの。今のような映画製作をする会社ではなかった。だが、ラセターの映画作りへの情熱は激しく、どうにかして映画が作れないものかと奮闘する。そして、最初はCGの実験映像、次はCM制作、短編映画と、じわりじわりとアニメーション作りを実現させていくのだ。

 ジョブズはこれに対して、内心穏やかではなかった。もともとのジョブズの目的にかなっていなかったし、アニメーション制作が毎年赤字ばかりを出し続けて、莫大な金が消えてしまっていたからだ。ジョブズは何度もアニメーション部門を閉鎖しようとしたようだ。

 しかし、ラセターの作る映像は徐々に関係者らから評価されるようになり、やがて短編アニメがアカデミー賞を受賞すると、ピクサーのアニメーションスタジオとしての認知度がにわかに高まっていく。ついには、ディズニーと協力して長編映画「トイ・ストーリー」の制作に乗り出すことになる。

 まさにサクセスストーリーを地で行くような内容で、読んでいて心が高鳴る話。CGアニメーションという新しい世界を切り開こうとする人々のパイオニア精神は、読んでいて実に感動的だ。

 ピクサーの映画は映像的にも見ごたえがあるけれども、ストーリーもディズニー風のお伽噺ではなくて、リアルで深みのある内容になっている。子どもだけでなく大人にもアピールする良質さがあるなとつねづね感じていた。本書を読むと、ピクサーが映画にどのような思いを込めようとしているのかが見えてきて、映画ファンとしてはそのあたりも面白かった。心躍るエンターテイメントの中に、制作者たちの人生が暗喩されていたりするから、見ている者を感動させるのかもしれない。

 ビジネス面、技術面、芸術面、3つの側面で苦難を味わってきたピクサー。本書はピクサーがその苦難にどのように立ち向かって、壁を乗り越えてきたのかを描きだしている。ハリウッドのアニメーション業界の裏話をどっさり聞くことのできる楽しい一冊だった。
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SAVE THE CATの法則 [映画]


SAVE THE CATの法則 本当に売れる脚本術

SAVE THE CATの法則 本当に売れる脚本術

  • 作者: ブレイク・スナイダー
  • 出版社/メーカー: フィルムアート社
  • 発売日: 2010/10/22
  • メディア: 単行本



 ハリウッド映画の脚本家が書いた、脚本術についての本。

 映画の脚本はこんな風にして書かれているのかと、映画製作の裏側を覗くことができる内容。よい文章に構成があるように、映画にも構成がある。物語を盛り上げるための手順というものがあって、本書にはそうした構成の妙技について明かしている。

 本書の中で、とりわけ面白いのは、映画のストーリーを10種類に分類しているところだろう。

 それは、①家のなかのモンスター(「ジョーズ」「エイリアン」)、②金の羊毛(「スターウォーズ」「オズの魔法使い」)、③魔法のランプ(「フォーチュン・クッキー」)、④難題に直面した平凡な奴(「ダイ・ハード」)、⑤人生の節目(「普通の人々」「酒とバラの日々」)、⑥バディとの友情(「レインマン」)、⑦なぜやったか?(「チャイナタウン」「インサイダー」)、⑧バカの勝利(「フォレスト・ガンプ」)、⑨組織のなかで(「ゴッドファーザー」)、⑩スーパーヒーロー(「グラディエーター」)の10種類。

 筆者によると、あらゆる映画のストーリーはこのように分類されるという。最初読んだときはなんじゃこりゃと思ったが、よく考えてみると、じわじわと沁みてきて目からうろこが落ちた。実際に頭の中でいろいろな映画のストーリーを思い浮かべてみると、本当にこの10種類の中にあてはまってしまうのだ。

 ハリウッドには、似たような話が多いことはなんとなく感じていたが、これほどわかりやすく分類したものは見たことがなかったので、なるほどなあと驚いた。

 意識的にしろ無意識的にしろ、映画の製作者たちは、これら10種類のストーリーを繰り返し語ってきたのだろう。これらのフォーマットを使って、手を変え品を変え、物語を紡ぎだしてきた。映画に限らないかもしれない。これら10種類のストーリーは、太古の昔から人々の本能に訴えかけるような要素を含んでいるのだろう。

 もちろん、物語の大筋の流れが似たり寄ったりでも、登場人物や背景、会話や個々の場面は映画によってさまざま。同じフォーマットを使っていても、細部の組み合わせによって、無数のバリエーションが生まれてくる。10種類の骨組みしかなかったとしても、どういう肉付けをしていくのかは脚本家の腕次第。創造性は細部に発揮されるのかもしれない。

 映画業界の裏側を知れて、映画好きにとってはうれしい本。これから映画を観るときに、非常に参考になりそうな一冊だった。
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ジブリの世界を創る [映画]


ジブリの世界を創る (角川oneテーマ21)

ジブリの世界を創る (角川oneテーマ21)

  • 出版社/メーカー: KADOKAWA / 角川書店
  • 発売日: 2014/07/31
  • メディア: Kindle版



 映画において、脚本やストーリーが重要であることはもちろんだが、それと同じくらい大事なのが背景美術。

 背景に写るものは、その映画の世界観を決定づけ、空気感を伝え、映画のトーンを決め、ときには登場人物の心象をも反映する。どんなに脚本がよくても、背景に力がないと、映画としてはB級に見えてしまうことだってある。逆に背景美術が優れた映画は、話が多少退屈でも、何か特別な世界に触れたような気がしてくる。背景美術は、観客を映画の世界に入り込ませるための、重要な要素なのだ。

 本書は、そんな背景美術の世界で活躍する筆者が、自らの仕事にかける思いを存分に語った本。とくに最新作「思い出のマーニー」では、初のアニメーションの美術にも関わっており、制作上の苦労話なども書かれている。

 「思い出のマーニー」は原作が好きな話だったので、どんなふうに映像化するのか楽しみだったのだが、実際に映画を観てみたら、北海道に舞台を移していながらも、雰囲気のある洋館などが出てきて、原作のイギリスのイメージをうまく伝えていた。いつもながらジブリの想像力の豊かさには驚かされる。

 いつもであれば、宮崎駿監督のイマジネーションによるところが大きかったようであるが、今回は筆者が美術監督として関わることで、実写映画の手法が取り込まれているとのこと。北海道に実際にロケーションに行ったり、様々な建築のパーツを組み合わせて洋館のイメージを作り上げあり、舞台の模型を作ってみたり。原作本のもつイメージをどのようにふくらませて、具体的な絵に持っていくのか? その過程が見えてきて、非常に興味深い。こんな風に映画は作られているのかと、映画の製作現場をのぞき見るような内容だ。

 実写とアニメーションに両方の世界に身を置いた筆者ならではの経験談で、アニメーションと実写映画の制作上の違いについても語られていて、同じ映画でもやはり分野によって違いがあることもわかる。

 映画背景については、これまで漠然としか見てこなかったけれど、本書を読んで、これから映画を観るときにはもっと背景美術にも注目してきたいと思うようになった。映画製作者たちが意外と背景に細かな演出を施していたりもするようなので、映画がより重層的に見えてくるかもしれない。
タグ:種田陽平
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荒木飛呂彦の超偏愛!映画の掟 [映画]


荒木飛呂彦の超偏愛! 映画の掟 (集英社新書)

荒木飛呂彦の超偏愛! 映画の掟 (集英社新書)

  • 作者: 荒木 飛呂彦
  • 出版社/メーカー: 集英社
  • 発売日: 2013/05/17
  • メディア: 新書



 「ジョジョの奇妙な冒険」でおなじみ、漫画家荒木飛呂彦による映画論。前作ではホラー映画について論じていた筆者が、今度はサスペンス映画の面白さについて語っている。

 筆者は漫画家を志した若いころに、物語の「面白さとは何か?」ということを考えるようになり、その正体をつかむためにたくさんの映画を観ながら研究したのだそうだ。ノートを広げて映画を分析し、キャラクターやサスペンス、アイテムがどのように効果的に使われているのかを学んでいったという。

 そして、行きついた結論が、面白い物語、エンターテイメントの基本にはサスペンスがあるということ。ミステリーだけでなく、コメディでも、ラブストーリーでも、子供向けの話でも、サスペンスの要素がないと面白くならないということだった。

 本書は、こうした筆者の映画研究から得られた結論、サスペンスの重要性、よいサスペンスの5つの条件など、物語が面白くなるための仕掛けについて、様々な映画を引き合いに出しながら語りつくしている。ヒッチコックやブライアン・デ・パルマのように、いかにもサスペンスという作品も出てくるし、「シュレック」や「フロスト☓ニクソン」といった、一見すると別ジャンルの映画のようなものについてもサスペンスという観点から紹介していて面白い。

 カメラワークをワンショットごとに分析していたり、サスペンスの条件を戦力分析表のような形であらわしたり、キャラクターの描き方について論じたりと、かなり詳細に作品が分析されていて、さすが荒木先生と思わず圧倒されてしまう。名作の条件は、男が泣けることだということで、「男泣きサスペンス」というジャンルがあることも本書を読んで初めて知ったので、こういう見方があるのかと驚いた。

 とにかく嬉々としてサスペンスについて語っている感じが伝わってきて、とても楽しい本。よほどサスペンスが好きなんだろうなというのがよくわかる内容。

 筆者の映画に対するこだわり、映画愛が伝わってくるとても楽しい一冊。知らなかった映画もたくさんあったし、知っている映画でもこんな見方をするのかというのがあって、これから映画を観るのに非常に参考になりそうな本だった。
タグ:荒木飛呂彦