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世にも不思議な物語 [ホラー]





 不思議な出来事にはなぜかひきつけられるものがある。昔から不思議話を見かけると、ついむさぼるように読んでしまう。

 不思議世界に飛び込んでいくファンタジー、不思議な出来事を解き明かしていくミステリー、科学の進歩が未知の世界(センス・オブ・ワンダー)を見せてくれるSFもの、不思議話が恐怖と結びついたホラーなど。世界でも人気のあるこれらのジャンルは、不思議世界という点ではどれも共通しているように思う。 

 誰の心の中にも、不思議なものに対する憧れや畏怖の念のようなものがあって、これらの物語は人々の未知のものに対する畏怖の念を呼び覚ますのかもしれない。

 本作は、まさにそんな不思議な話ばかりを集めたアンソロジー。世界中から選りすぐった、実際に起こった不思議な出来事が描かれた一冊だ。

 ごく普通の日常を送っていた人々が、突然奇妙な世界へと飛び込んでしまう。そんなゾクゾクするような逸話がたくさん詰まっている。

 突然他人の心を読めるようになった少女の悲劇(「魔女と呼ばないで」)、夢の中で夫が死ぬ場面を目撃してしまった女性の恐怖(「夢の結末」)、第二次大戦前後のドイツで起こった不思議な出来事(「再会」)、殺人を犯してしまったピアニストに迫る呪い(「血まみれの手」)、サーカスで起きた奇跡体験(「空中ぶらんこ」)……。

 中でもとくに面白かったのは、夜学の女教師ロイス・モリソンが体験したという不気味なエピソード。ロイスが授業中に黒板に文章を書いていると、チョークを持つ手が勝手に動き出して、自分でも意図しないような言葉を書き始めてしまう。それは、ロイスが今までに見たことのないような外国の言葉。その言葉には実は隠された意味が込められていて……(「クララからのメッセージ」)。

 こうしたアンソロジーの類は、玉石混交なことが多く、自分の好きな作品がごくわずかでもあればいいほうだが、本書に至ってはどの作品も水準以上で、ドツボにはまってしまった作品ばかり。単に不思議な出来事が起こるというだけでなく、背景にある登場人物たちのドラマもじっくりと描き出されていて、不思議な出来事に直面する彼らに思わず感情移入してしまうほど。

 世の中まだまだ謎が多い。分からないことが多いから面白い。本書は世界が謎に満ちていることを教えてくれる、興味深い一冊だった。
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トム・ゴードンに恋した少女 [ホラー]


トム・ゴードンに恋した少女 (新潮文庫)

トム・ゴードンに恋した少女 (新潮文庫)

  • 作者: スティーヴン キング
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2007/05/29
  • メディア: 文庫



 アメリカのメイン州に住む9歳の少女トリシア・マクファーランドは、母親と兄と一緒に恒例の週末旅行に出かけることになった。行き先は、アパラチア自然公園という森林地域。普通なら楽しいはずの家族旅行だが、いつものように母親と兄は喧嘩ばかり。いがみ合う二人を尻目に、用を足そうと、トリシアはひとり遊歩道から外れることに。だが、森の中に分け入るうちに、トリシアには帰り道が分からなくなってしまい……。

 小さな少女が巨大な森の中で迷子になってしまうという、サバイバルもの。本当にそれだけのシンプルな話なのに、非常に面白い。やはり、キングの表現力が圧倒的にうまいからであろう。

 子供が主人公の作品だが、スティーヴン・キングが書いているだけあって、容赦がない。森の虫や生き物、自然の脅威、飢えと渇き、行き先の分からない不安と絶望がトリシアを襲う。読んでいて、主人公と一緒に森の中をさまよっているような気分になってきて、本当にハラハラさせられる作品だ。

 トリシアは、川をたどっていけば海に出られるんじゃないかと考えるが、予想外の障害がつぎつぎ現れて、なかなか森から脱出できない。こういう主人公がじわじわと追い詰められていくところは、やはりキング・ホラーだなあと思う。

 いつものように、人物描写が丁寧なところもすばらしい。両親の離婚、引っ越しして学校になじめない兄の怒り、母親と兄の間でやきもきするトリシア。主人公がつらい現実を生きる姿には共感させられるし、そんな主人公が森の中でさらなる窮地に陥るというので、思わず応援してしまう。

 トリシアを元気づけるのは、ウォークマンから聞こえてくる野球の試合。トリシアが憧れるボストン・レッドソックスの投手、トム・ゴードンの活躍ぶりだった。

 最初は一種の現実逃避ともいえるものだったのが、いつしかトリシアは、単なる想像を超えて、トム・ゴードンが目の前にいるかのような、一緒に会話をしているような幻影を見る。そして、危機的状況に陥った時に、トム・ゴードンが道筋を教えてくれるのだった。トム・ゴードンの存在が、本書に単なるサバイバルものではない、不思議な幻想的な雰囲気をもたらしていて、いかにもキングらしい作品になっている。

 キング曰く「世界には歯があって、油断していると噛みつかれる」。キングの小説は、主人公が突然サバイバル状態に置かれてしまうけっこう悲惨な話が多いけれど、本当に誰しも、いつ何時同じような目に合わないとも限らない。思わぬ形で生きるか死ぬかの世界に置かれてしまった少女のたくましさに、思わず感動してしまった。
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夜がはじまるとき [ホラー]


夜がはじまるとき (文春文庫)

夜がはじまるとき (文春文庫)




 スティーヴン・キングの短編集『Just After Sunset』を翻訳したもの。『夕暮れをすぎて』と2分冊になったもののパート2。

 『夕暮れをすぎて』と同じく、ホラー色の強いものと、心温まるファンタジー調のものが混じっている。

 「N」

 自殺した精神科医が残した診療記録。そこに書かれていたのは、「N」という強迫性障害の患者の体験。「N」は、アッカ―マンズ・フィールドという空き地で、輪になって突き出た奇妙な岩を目撃する。その岩には神秘的な力が働いていて……。

 異世界に通じる不思議な空き地の話。恐怖小説なのだが、じわじわと内側から浸食されていくような、薄気味の悪い雰囲気のある怖さ。目に見えない何かが伝染していく感じが、ぞっとしてしまう。

 「ニューヨークタイムズを特別割引料金で」

 アニーのもとにかかってきた電話。それは、911のテロの事件で亡くなったはずの夫からの電話だった。

 死後の世界からの通信という幽霊物語なのだが、パート1の「彼らが残したもの」と同じく、怖いというよりも悲しい作品。短いながらも、911の事件がキング流に描き出されていて、独自の幻想的な雰囲気に引き込まれてしまう。

 「アヤーナ」

 膵癌の診断を受けて、病院ベッドで苦しんでいる老人。彼の目の前に、どこからともなく小さい黒人の少女が現れて、老人に触れると、みるみるうちにその症状が治っていって……。

 不思議な力で病気を治してしまう奇跡の物語。『グリーン・マイル』という作品にちょっと似ている。ファンタジックな雰囲気がとても良い。

 「どんづまりの窮地」

 株式トレーダーのカーティス・ジョンスンは、タートル島に邸宅を構えているが、悩みの種は隣人のティム・グリュンフォルドという男。隣人トラブルがこじれて、長きにわたって法廷闘争にまで発展していた。ある日、カーティスはティムから和解の提案をされて隣地に向かうが、それは悪意のある罠だった。カーティスはティムの用意した仮設トイレに閉じ込められて、誰の助けも求めることができず、絶体絶命の窮地に陥ってしまう。

 仮設トイレに監禁されてしまった男の壮絶なる脱出劇。いままで読んだどのホラー小説よりも怖かった。悪い夢を見てしまうそうな作品。

 『ミザリー』もそうだけれども、キングはよくこういう作品を書いている。閉じ込められることへの恐怖というのがあるようだ。エドガー・ポーの「早まった埋葬」の現代版といえよう。いかに窮地を脱するかというサスペンスが面白かった。
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夕暮れをすぎて [ホラー]


夕暮れをすぎて (文春文庫)

夕暮れをすぎて (文春文庫)

  • 作者: スティーヴン キング
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2009/09/04
  • メディア: ペーパーバック



 スティーヴン・キングの短編集。

 キングはホラー作家として有名だけれども、トワイライトゾーン風のファンタジーが得意な作家でもある。日常生活の風景の中に、異次元に通じる隙間がぽっかりと空いていて、普通の生活を送っていた主人公たちはいつの間にやら異常な世界へと引きこまれてしまう。

 本作は、そうしたファンタジー寄りの作品が多く収められた短編集だ。

「ウィラ」

 列車が脱線して駅舎に置き去りにされてしまった乗客たち。主人公のデイヴィッドは、婚約者のウィラの姿がないのに気づき、あとを追いかけて夜の大地を歩き始める。やがて明らかになるウィラの秘密……。

 レイ・ブラッドベリ風の幻想味のある作品。ラストのダンスシーンがしっとりとした雰囲気があって印象的だ。人生の悲哀を感じさせる一遍で、本短編集ではこれが一番のお気に入り

「ジンジャーブレッド・ガール」

 赤ん坊を亡くしたばかりのエミリー。ふとしたきっかけでランニングをはじめ、悲しみと絶望から逃げるかのように、がむしゃらに走リ続ける……。ヴァーミリオン島の別荘に滞在して、ビーチを走るようにもなったが、エミリーはそこで思いもよらないものを目にする。それは、メルセデスのトランクに横たわった若い女性の死体。

 サイコキラーに狙われた女性を描いたホラーの真髄。

 キングはこんなことを言っていた。ホラーとはモンスターのことではない。自分の知人や愛する人の身の上に災難が降りかかろうとするのを知ること。それがホラーなんだと。

 キングの小説に惹きつけられるのは、登場人物の背景がしっかり書き込まれているから。主人公の身の上を知ることで、読んでいて思わず感情移入してしまう。単なる面白い話というだけでなくて、人生の一部を切り取っているから、恐怖もするし感動もする。

 本作もエミリーの悲しい過去を知るところから始まる。エミリーの心情がじっくりと描かれることで、物語が深みのあるものになっている。

エアロバイク

 アーティストのシフキッツの最近の悩みはメタボ。彼はエアロバイクを購入して自宅の地下室に設置して、筋肉トレーニングに励みはじめる。シフキッツは同時に、地下の壁に絵を描き始める。それは、自分の体内にいて、食べ物をせっせと処分してくれる小人たちの絵。新陳代謝を擬人化した絵だった。エアロバイクの効果で、彼のメタボはみるみる改善するが、なぜか彼の描いた絵にも奇妙な変化が現れ始める……。

 絵画奇談ともいうべき作品。キングはときどきこういう作品を書いている。妄想が現実のように迫ってくる怖さ。ホラーでもあり、ユーモラスでもある作品だった。

「彼らが残したもの」

 リサーチャーのステイリーの自宅にどこからともなく現れた奇妙な品々。ハート型のサングラス野球のバット、ブーブークッション、コンク貝の貝殻……。それらは、かつての同僚たちの所持していた品々だった。911のテロの事件で亡くなった同僚たちの……。

 911の事件がアメリカの人々に与えた苦悩を描いた作品。キングはこれをファンタジーの形にしたためている。キング独特の暖かいような人間味に満ちた作品だった。
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幸運の25セント硬貨 [ホラー]


幸運の25セント硬貨 (新潮文庫)

幸運の25セント硬貨 (新潮文庫)

  • 作者: スティーヴン キング
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2004/05/28
  • メディア: 文庫



 スティーヴン・キングの短編集。ホラーを中心に、不思議な出来事を扱った短編が7つ収められている。

 短編とはいえ、キングらしい濃厚な内容で、読み応え十分な作品ばかり。とくに面白かったのは以下の作品群だ。

 「なにもかもが究極的」

 ディンクという若者のもつ特殊な能力。それは、奇妙な記号や名前を記すだけで、特定の人間を抹殺してしまえる不思議な力。ディンクはその才能を買われて、ある機関から組織と敵対する標的を暗殺するよう頼まれることに。だが、やがて、ディンクはその機関のたくらみに疑問を感じ始め……。

 キングの小説によく出てくる、特殊能力を持った主人公の話。いつもはテレキネシスだったり、テレパシーだったり、予知能力だったりするが、本作に出てくるのは他人を暗殺する恐ろしい力。

 秀でた能力があるというのはうらやむべきことだが、反面、迫害されることもあるし、他人に利用されてしまうこともある。その能力の大きさゆえに、自分の身を滅ぼしてしまうことさえも……。本作では、ディンクが組織に利用され、やがて組織の陰謀と対峙する様子が描かれていて、能力者を囲い込もうとする組織と主人公の対決というドラマティックな構図になっている。

 大きな物語の冒頭部分を読むような雰囲気で、まだまだ先に続いてもおかしくない内容だった。

 「道路ウィルスは北にむかう」

 作家のリチャード・キンネルは、自動車旅行中に、ガレージセールで奇妙な水彩画の絵を見つける。凶暴な男がスポーツカーを運転する光景を描いた絵。キンネルは気になってその作品を購入するが、移動中にある事実に気づく。その絵は、移動するごとにだんだんと変化していたのだ。

 絵画奇譚ともいうべき作品で、絵が徐々に変化して、やがてその絵に書かれた怪物が自分を追いかけてきている事実に気づくというホラー。どうにかして苦境を逃れようとする主人公の恐怖がスピーディに描かれていて、とても面白かった。

 「1408号室」

 作家のマイク・エンズリンは、幽霊屋敷を訪ねては、その報告をまとめて本にすることを生業にしている人物。ニューヨークのドルフィンホテルの1408号室で怪奇現象が起こるという噂をききつけたマイクは、ホテルを訪れることに。支配人はその部屋で過去に起きた恐ろしい出来事の数々を語って聞かせて、必死に止めようとするが、結局マイクは説得を振り切ってその部屋で一夜を明かすことになる。

 古典的とも言える幽霊屋敷もの。いわくつきのホテルに泊まった主人公を怪異現象が襲う。心霊現象そのものよりも、部屋が過去に引き起こした数々の事件の話が恐ろしかった。

 映画化もされた作品。

 「幸運の25セント硬貨」

 ホテルの客室係のダーリーンは、子供治療費を稼ぐのもやっとの苦しい生活を送っていた。あるとき、ダーリーンは、客室におかれた封筒の中に、25セントのチップが入っていることに気づく。それには、「幸運の25セント硬貨」と書かれたメモが添えられていた。ダーリーンは、何気なくその硬貨をホテル・ロビーのスロットマシーンに入れてみるが……。

 この作品だけはホラーではなく、幸運の出来事を描いたちょっといい話だった。

 キングはこういう人間の悲哀のようなものを描かせると本当にうまい作家だなあと思う。主人公の背負っている苦労が、目の前に浮かぶように描かれていて、思わず感情移入してしまう。主人公の不幸な境遇が丁寧に書かれているので、その後につづく出来事がより際立って奇跡的なものに感じられてくる。

 短い作品なのに、ひねりも効いているし、ストーリーも面白いし、印象深い作品。他の作品のホラーテイストと違って、すがすがしい感動を味わうことのできるヒューマンドラマ。本作品集で、これが一番面白かった。

丘の屋敷 [ホラー]


丘の屋敷 (創元推理文庫 F シ 5-1)

丘の屋敷 (創元推理文庫 F シ 5-1)




 人里はなれた小高い丘にそびえる一軒の屋敷。建てられてから80年以上たつその屋敷は、邪悪な雰囲気が漂い、人の住めない家として20年も存在し続け、いつしか「幽霊屋敷」と称されるようになっていた。心霊学研究家のモンタギュー博士は、その噂を聞きつけ、〈丘の屋敷〉に泊り込んで屋敷の謎を解明する計画を立てる。同行するメンバーは、ポルターガイスト現象の経験者エレーナ、透視能力を持つセオドラ、屋敷の所有者の甥のルーク。4人は屋敷にやってきて、調査を始めるが、やがて彼らの前で次々に奇怪な現象が起こり始める。

 恐怖小説の古典的名作。幽霊屋敷を舞台に、謎の怪奇現象と対峙する4人の人物の不思議な体験を描く。

 ホラーの分野にときどき出てくる「幽霊屋敷もの」。本書はその原点とも言うべき作品で、たとえば、スティーヴン・キングの「シャイニング」という恐怖小説にも影響を与えたらしく、キング自身も本作を絶賛している。古典と呼ばれるだけあって、シンプルながらも明快なコンセプトがあるし、ただおどろおどろしいだけではなくて人物の心理描写が繊細に描き出されている。

 読んでいて、まず屋敷の持っている異様な雰囲気がとても怖い。建物の内部は迷宮のようにいりくんでいて、あちこちに奇妙な小部屋があったり、光が隅々まで届かず、絶えず薄暗かったり、異常な冷気を感じさせるポイントがあったり。筆者が細密に屋敷の様子を描写していて、背筋がぞくぞくするような不気味な雰囲気が醸し出されていて、こんなところには絶対住みたくないなあという気分になった。

 幽霊屋敷というだけあって、いろいろな怪現象も起こるのだが、怪奇現象そのものはそれほど怖いとは感じなかった。それよりもむしろ、幽霊屋敷に住み込むことによって、だんだんと登場人物たちが狂気にさいなまれていく様子、屋敷の邪悪さがじわじわと人物たちを内側から蝕んでいく感じが恐ろしい。

 とくにエレーナという人物は、もともと不遇な境遇を送ってきた経緯もあってか、幽霊屋敷に来ることがむしろ人生の楽しみになっている側面もあって、だんだんと屋敷の雰囲気に魅了されたようになっていく。エレーナがだんだんと変貌する様子が、巧みな心理描写を織り交ぜながら描かれていて、このあたりの心理描写の見事さが本書の見所だと思った。

 最後に衝撃の場面もあって、最後まで気が抜けない作品。どちらかというと静かな雰囲気があって、仰々しさは控えめなのだが、ひたひたととり憑いてくるようなところがある。一度読んだら忘れられないような、なんとも不思議な味わいの小説だった。
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