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あなたの体は9割が細菌 [医学]


あなたの体は9割が細菌: 微生物の生態系が崩れはじめた

あなたの体は9割が細菌: 微生物の生態系が崩れはじめた

  • 作者: アランナ コリン
  • 出版社/メーカー: 河出書房新社
  • 発売日: 2016/08/10
  • メディア: 単行本



 肥満、糖尿病、鬱病、自閉症、アレルギーといった現代病は、遺伝とか生活習慣が関係しているのかなあとなんとなく思っていた。

 しかし、本書「あなたの体は9割が細菌」を読むと、実は他の原因もあるんじゃないかということが見えてくる。その原因というのは、体内の細菌の生態系が変化したこと――。

 人間というのは、孤立して生きているわけではない。普段は気づかないかもしれないが、人間の体のうち、人間の細胞は10%にすぎない。人間の細胞1個につき9個の微生物の細胞が乗っかっている。たとえば、人間の腸内には100兆個もの微生物が住んでいる。

 細菌といっても病気を引き起こすのではなくて、むしろ、人間の免疫を強めてくれたり、食物からエネルギーを取り出すときに補佐してくれる。人間の心強い味方なのだ。

 人間と共生関係にある細菌だが、近年その種類の組成に変化が見られるという。人々の生活習慣が劇的に変わり、抗生物質や抗菌剤を使うようになったり、食生活も変わってきた。こうした人々の変化は、体内にいる細菌の生態系に変化をもたらすことになる。

 そして、こうした生態系の変化によって、人間の免疫システムに変化が生じたり、肥満を生み出しやすい細菌の割合が増えたりするようになった。その結果、アレルギーや肥満、自閉症といった現代病が増加するようになったのではないか?

 本書を読むと、このようなこれまで考えなかったような観点の話がたくさん出てきて驚いた。そんなにたくさんの細菌が体の中に住んでいるとは思わなかったし、肥満などの原因として細菌が考えられるという説は初めて聞いたので、この考えを知ることができただけでも読んだ価値はあるだろう。

 今まで考えたこともなかったけれど、人間の体というのは、たくさんの細菌市民が住んでいる都市のようなものだったのだ。細菌市民たちが体のために毎日せっせと働いてくれていたのである。人間は細菌市民たちが飢え死にしないように、適切な食べ物を補給してあげる必要があるだろう。とくに、細菌市民にとって最も大事な食物と言われている食物繊維を。

 野菜をしっかり食べて腸内細菌を活性化させる。大事なことが自覚できていなかったんだなあと反省。今年は、本書で得た知識にしたがって、充実した野菜生活を続けて、現代病を克服していきたいと思った。
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アレルギー医療革命 [医学]


アレルギー医療革命 花粉症も食物アレルギーも治せる時代に!

アレルギー医療革命 花粉症も食物アレルギーも治せる時代に!

  • 作者: NHKスペシャル取材班
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2016/03/25
  • メディア: 単行本



 最近、花粉症がつらい。鼻がむずむずして仕方がない。くしゃみも止まらない。さぞかしたくさんの花粉が飛び交っているのであろう。

 花粉症には数年前にかかったばかりなのだが、まさかこんなに大変なものだとは思わなかった。いざかかってみて初めて実感できるつらさ。他人事だった頃が懐かしい限りだ。

 花粉症にかかってみて、なんでこんな症状が出るのかというメカニズムにも俄然興味が沸いてきた。どうしてこんな症状が出るのか、どのような対応をすればよいのか? 気になっていた時に読んだのがこの本「アレルギー医療革命」である。

 花粉症を含めたアレルギー全般について書かれた本で、NHKの特集番組の取材をまとめた内容。この本を読むと、アレルギー治療の世界で、現在めまぐるしい進歩が起きていることが見えてくる。どうも、アレルギーに関してこれまでにない新たな発見があったらしい。

 そもそもアレルギーが起こるのは、免疫細胞が働いているからである。人間の身体には外から侵入した異物を排除するシステムがある。外から細胞やら異物やらが侵入すると、免疫細胞という軍隊のような組織が迎え撃つ。T細胞という司令塔のような免疫細胞がいて、異物が侵入したのを見つけると、実働部隊に命じてせん滅する。

 ところが、このT細胞、ときどき判断ミスを犯すらしい。本来害のないはずの花粉だとか、ピーナッツだとか、卵だとか、そんなものまで誤って敵とみなしてしまう。T細胞は花粉を敵とみなして、実働部隊に攻撃命令を出す。攻撃反応が続くと、様々な炎症症状が引き起こされて、くしゃみや鼻水が出ることになる。

 これがアレルギー反応のメカニズムで、ここまでは今までも分かっていたことであるが、最近になって、これ以上に新たなメカニズムが発見されたらしい。Tレグ細胞と呼ばれる細胞の発見だ。

 従来は免疫の司令塔は、T細胞だけだと思われていたのだが、実はもうひとりTレグ細胞という司令塔がいたのだ。T細胞の攻撃を抑止して、誤った攻撃が起きないように阻止する働きがあるんだとか。

 T細胞は花粉や食べ物など、害のないものに対しても攻撃命令を出してしまうことがあるが、Tレグ細胞はこのT細胞の攻撃命令を中止させて、アレルギー反応を回避することができる。花粉への攻撃を止めるTレグ、小麦への攻撃を止めるTレグ、卵への攻撃を止めるTレグなどと、たくさんの種類があるらしい。

 問題は、このTレグ細胞、個人個人によってその保有する数に違いがあるということ。どんな環境で育ったのか、どんな食べ物を摂取してきたのかによって、Tレグ細胞の保有数に個人差が出てくる。たとえば、アメリカで昔ながらの生活を送るアーミッシュの人々などは、なぜかこのTレグ細胞をたくさん持っている人が多いため、アレルギーになる人がほとんどいないらしい。

 Tレグ細胞という新しい細胞の発見によって、医学会は沸き立っている。そのダイナミックな現状が書かれてあって、非常に興味深い内容だった。Tレグ細胞をどうにか利用して生かすことができれば、アレルギー治療は格段に進歩するだろう。アレルギーに限らず、がん治療や臓器移植にもこのTレグ細胞の知見が役に立つというから驚きだ。

 医学界にこんな大発見があったとはまったく知らなかった。何気なく読み始めたのだが、結構すごいことが書かれていて、今後の医療の進歩が楽しみになってきた。
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糖質制限の真実 [医学]


糖質制限の真実 日本人を救う革命的食事法ロカボのすべ て (幻冬舎新書)

糖質制限の真実 日本人を救う革命的食事法ロカボのすべ て (幻冬舎新書)

  • 作者: 山田 悟
  • 出版社/メーカー: 幻冬舎
  • 発売日: 2015/11/12
  • メディア: 新書



 この前、健康診断に行ったら、血糖値が高めだと言われてしまった。糖尿病になるのも怖いので、それ以来、糖分を採りすぎないように注意していて、甘いものはなるべく控えるようになったのだが、どうもそれだけではだめらしい。

 甘くなくてもたとえばポテトチップスなどは炭水化物なので糖質になってしまうし、主食のごはんやパンだって糖質になってしまう。カレーのとろみにまで糖質が含まれているらしいのだ。今まで食べてきたものの多くが糖質であることに気づいて、愕然とさせられたものだ。

 糖分を採らずに生活するのって、無理なんじゃないの? どのくらいまでなら糖質をとってもよいのだろう? どんな食事をとったらいいのか、わけもわからなくなっていたところ、見つけたのがこの本「糖質制限の真実」であった。

 本書は、血糖管理をよくするためのロカボという食事法を紹介している。ゆるやかな糖質制限で、健康的でありながら、無理せず続けやすい食生活を目指そうという試みである。

 本書によると、日本人というのは、元来、血糖が上がりやすい民族なんだそうだ。欧米の人はインスリンを出す力が強くて、太らなければ糖尿病になるリスクは少ない。これに対して、日本人はインスリンを出す力が弱く、肥満になる前に血糖が上がってしまうのだそう。

 じゃあ、血糖をあげないためにはどんなことに気をつけたらいいのか? どんな食事がよいのか? 本書は手取り足取り教えてくれている。カロリー制限に意味はあるのか、脂質はとっても良いのかなど、前から気になっていた点も書かれていて、本書を読んで栄養学の最新情報が分かって随分ためになった。

 安直な統計に拠るのではなくて、比較試験などを経た科学的なエビデンスに基づいた記載になっているので、かなり読みごたえがある。

 ちょうど血糖を管理する方法を模索していたところだったので、本書はよいガイドラインになりそう。一日の糖質を130グラムに抑えるということが大事なようなので、どうにか実践していきたいと思った。
タグ:山田悟
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奇跡の脳 [医学]


奇跡の脳―脳科学者の脳が壊れたとき (新潮文庫)

奇跡の脳―脳科学者の脳が壊れたとき (新潮文庫)

  • 作者: ジル・ボルト テイラー
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2012/03/28
  • メディア: 文庫



 脳卒中になった脳科学者が、その体験をつづった手記。

 筆者のジル・ボルト・テイラーは、ハーバード医学校で脳と神経の研究をしている30代半ばの神経解剖学者。1996年のある朝、自宅で目が覚めると頭に突き刺すような激しい痛みを感じる。ズキズキする痛みが続くとともに、身体の様子までおかしい。思考は明晰なのに身体が言うことを聞かない。緩慢なぎくしゃくした動きになってしまう。

 思考の方も徐々に不安定になっていく。意識が途切れがちになる。頭の中の情報処理ができなくなってしまう。記憶していたことが思い出せず、言語による思考ができなくなる……。

 そのとき、筆者の頭は脳卒中によって機能損傷を受けていた。頭の中に先天性の脳動脈奇形があって、ここから大量の血液が大脳の左半球に吐き出された。左脳の思考中枢の領域で出血したために、言語能力、身体を動かす能力、空間や時間をつかさどる能力が失われてしまったのだ。

 筆者は脳科学者ということもあって、このときの状況を鋭く観察して、脳卒中になった時の状況、徐々に脳の機能が壊れていく様子を詳しく描いている。脳卒中になった人の頭の中ではこんな感覚が広がっているのかということが、体感できるような内容だ。

 興味深いのは、脳卒中になった筆者が、なぜか平穏な幸福感に包まれているような感覚になったというところ。身体の境界線がなくなり、身体が流体のように感じ、宇宙と融合するような感覚になる。神秘的にも感じられる奇妙な恍惚感……。左脳を出血して、左脳の情報処理機能を損なった結果、右脳の持っている安らぎの感覚が強まったのだそうだ。

 右脳左脳の違いの話など、これまでどうも漠然としてよく分からなかったのだけれど、本書を読むと右脳世界と左脳世界の違いが具体的なイメージとして見えてくる。人間の頭の中ってこんな感じになっているのかというのが分かって驚かされた。

 脳卒中から立ち直る経緯も興味深い。言語機能や身体能力を取り戻すために、並々ならぬ努力をしたらしい。筆者の脳は損傷によって、脳のニューロン同士の結合が壊れてしまっていた。失われた能力を取り戻すには、脳の細胞が死滅する前にニューロンを活性化させて、新たな回路のつなぎ変えをしなければならない。筆者は周囲の手助けを受けながら、言葉の使い方、運動技巧、認知処理等を回復するため、リハビリの長い道のりを一歩一歩進んでいく。

 言語化してものを考えられなかった筆者が徐々に回復して、思考能力を取り戻していくところなどは感動的。計算したり、記憶したり、ものを考えたり、当たり前だと思っていることが実はすごい力なんだなあということに気づかされる。

 脳内世界の不思議さに触れることができる一冊。誰の頭の中にもこんな驚異の世界が広がっているのかと思うと面白かった。
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脳内麻薬 [医学]


脳内麻薬 人間を支配する快楽物質ドーパミンの正体 (幻冬舎新書)

脳内麻薬 人間を支配する快楽物質ドーパミンの正体 (幻冬舎新書)

  • 作者: 中野 信子
  • 出版社/メーカー: 幻冬舎
  • 発売日: 2014/01/30
  • メディア: 新書



 人が快感を感じるときに放出される脳内麻薬について書かれた本。

 楽しいことをしているとき、おいしいものを食べているとき、褒めてもらったとき、何かいいことがあったときに人が快感を感じるのは、脳の中で快楽物質が放出されているからなんだそうだ。それは、ドーパミンという神経伝達物質で、脳の中脳という部分から放出され、神経細胞を通じて、脳の各部分に伝わっていく。

 獲得すべき報酬のようなもので、食欲や性欲などの生物的な欲求に関わっているのだが、それだけではなくて、ギャンブルにはまるとか、ネットが楽しいとか、努力して何かを成し遂げるとか、趣味にはまったり社会的に成功したりする場合にもドーパミンが放出されるのだという。

 必ずしも生存に直結しないような場面にも放出されるので、ドーパミンはときどき人間をあらぬ方向に走らせしまう怖い存在ともいえるだろう。ギャンブルやネットゲームに夢中になりすぎて生活に支障を来したり、ドーパミンを増大させるドラッグの中毒になってしまったり。快感を求めるあまり、本来優先すべき生存や社会生活を犠牲にしてまでドーパミンを欲してしまう……。

 本書を読むと、ドーパミンという物質が人間のあらゆる活動に根幹に存在していることが見えてきて面白い。ほんの小さな化学物質が、良くも悪くも人々を動かしていて、ときには文明社会の構築に役立ったり、ときには人生を狂わせたりもする。

 人が幸福を感じるのはどんな時か? ドラッグやタバコに依存するのはどういうメカニズムによるのか? オンラインゲームにはまる理由はなぜか? 結婚生活と脳内物質がどのように関わっているのか? などなど、人間の生活のあらゆる側面をドーパミンの作用という観点から説明していて、なるほどという感じでためになる一冊。

 自分も読書中毒、ネット中毒など、様々な中毒が甚だしいのだが、これもドーパミンの作用なんだろうか? 化学物質に操られているかと思うと、読んでいて何かちょっと情けない気持ちにもなった……。
タグ:中野信子
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ホット・ゾーン [医学]


ホット・ゾーン――「エボラ出血熱」制圧に命を懸けた人々

ホット・ゾーン――「エボラ出血熱」制圧に命を懸けた人々

  • 作者: リチャード・プレストン
  • 出版社/メーカー: 飛鳥新社
  • 発売日: 2014/09/25
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)



 1989年、ヴァージニア州レストンにある霊長類検疫所で奇妙な出来事が起こる。実験用に輸入されたサルたちが次々に死に始めたのだ。脾臓が拡大し、各種の臓器からは出血が見られるという奇病。死亡したサルの肉が陸軍の研究所へ送られて、研究者たちがこれを調べると、細胞の中にウィルスが入り込んでいるのが確認できたという。それは、体内で急速に増殖する脅威のウィルス、エボラ・ウイルスだった。

 昨今話題となっているエボラ・ウィルスについて書かれたノンフィクション。1980年代以降、世界各地で突発的に起こったエボラ騒動をまとめている。

 医学系のノンフィクションだから、淡々と医学情報を追いかけていくのかと思ったら、そうではなかった。エボラに関わる様々な人々、エボラ患者、医療従事者、研究者、軍人などについてその背景や人となりまでかなり詳しく描かれていてドラマティック。小説を読むような感覚で事実経緯を知ることができるのだ。

 エボラが発見された最初のころの経緯はとくに興味深い。当初は、当然のことながらウィルスかどうかさえも分かっておらず、アフリカでは謎の奇病というふうに扱われていた。感染病ということも知られていなかったので、患者を普通に旅客機に乗せて大病院に連れて行くこともあったそうだ。医療従事者たちも何なのかよく分からず、不用意に患者の体液に触れていまい、感染が拡大することになる。

 なんだかわからず、対策の打ち方も不明のものが、どんどん広がって人間社会に侵入していく感じが、非常に怖い。
 
 先進国のアメリカでも一度サルの間で感染が広がって、人間にも染るんじゃないかとパニックになったのだそう。陸軍とCDC(疾病対策センター)は、エボラの拡大をくいとめようとバイオハザード作戦を展開する。

 アメリカの話だから、厳重に管理体制を敷いて、水も漏らさないような密閉空間を作るのかと思ったら、読んでみたら意外とそうでもなかった。エボラと分かってからも、CDCが感染の可能性のある人物を自由に移動させたりしていたり、エボラサンプルの扱いも結構隙があって、アメリカと言えども万全な体制にあったわけではなく、いろいろちぐはぐなことをしていたことが見えてくる。

 人間も我が物顔で世界を支配しているように見えるけれども、実は小さなウイルスがとんでもない攻撃を仕掛けてくるという話。人間も自然の一部であり、いざというときは自然も牙をむくという当たり前のことを再認識させられる内容。自然をなめてはいけないなあと、読んでいて思わずゾッとしてしまった。
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脳はバカ、腸はかしこい [医学]


脳はバカ、腸はかしこい

脳はバカ、腸はかしこい

  • 作者: 藤田 紘一郎
  • 出版社/メーカー: 三五館
  • 発売日: 2012/10/20
  • メディア: 単行本



 腸が人間の身体に果たす役割について詳しく紹介するとともに、腸を健康に保つための秘訣を述べた本。

 脳ブームとかで、脳に関する本はよく見かけるけれど、腸に関して力説する本というのは珍しい。筆者は、脳を鍛えるよりも、腸を健康に保つことのほうが重要なのだと述べている。

 腸が果たしている役割というものは重要で、たとえば、脳内幸せ物質であるセロトニンやドーパミンを合成しているのが腸であるし、腸内細菌が身体の免疫力に関わってもいる。腸の健康状態が悪いと、うつ病などの心の病気にかかったり、アレルギー性疾患になったりしてしまうのだそうだ。

 さらに、腸の思考力は脳よりも上だという。腸は勘違いをせず、合理的な判断を下すけれど、脳はすぐに勘違いをしたり欺いたりする。安全でない食べ物が入ってくると、腸はすぐに拒絶反応を出して、下痢をさせたり吐き出させたりするけれど、脳はおいしそうだと感じると無理にでも食べるように仕向けてしまう。長い目で見れば損になるようなことでも、目先の快楽のために、人におかしな行動をとらせてしまうのだ。

 これまで腸のことなど微塵も考えたことがなかったので、本書を読んで、目からうろこがぽろぽろ落ちた。自分が今まで、腸の健康に悪いことばかりしてきたことが分かって、反省してしまった。脳の命令に支配されてしまっていて、腸の健康をまったく考慮していなかったのだ。

 本書の中ほどに、セロトニン不足のチェックテストがついていたので、さっそくやってみたところ、セロトニンが著しく不足していることが判明。どうりで幸せ感が足りないわけだ。

 幸いなことに、本書の中に腸を健康にするための方法がいくつか紹介されていたので、さっそく実践して腸を大事にして、幸せになりたいなあと思った。

 人間社会は文明が発達しすぎて無菌状態になってしまい、これは腸にとってはよくないということも書かれている。養老先生がよく言っている「脳化社会」という話にもつながることで、もっと日本人も自然の中に融和していくことが大事なのかも。腸の話から広がって文明論まで考えさせられる、非常に面白い本だった。
タグ:藤田紘一郎

妻を帽子とまちがえた男 [医学]


妻を帽子とまちがえた男 (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)

妻を帽子とまちがえた男 (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)

  • 作者: オリヴァー サックス
  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2009/07/05
  • メディア: 文庫



 脳神経科医のオリヴァー・サックスによる医学エッセイ。

 筆者がこれまでに診た24人の患者たちの不思議な症例が紹介されていて、その謎を探求するとともに、奇妙な症状で悩む患者の姿をあたたかく描き出している。

 人の顔を顔として認識できない音楽家(「妻を帽子とまちがえた男」)、新しい記憶が保持できずに、19歳のとき以降の記憶がぷっつり途絶えてしまっているジミー・G(「ただよう船乗り」)、自分の身体に対するイメージが失われてしまったコンピュータ・プログラマー(「からだのないクリスチーナ」)、頭の中からとつぜんアイルランドの歌が聞こえてくるC夫人(「追想」)、数に対する驚異的な能力と膨大な記憶量を持つ、知的障害の双子(「双子の兄弟」)など。

 奇妙な症例が次々に紹介され、まさに「事実は小説より奇なり」といった内容。読んでいて、世の中にはこんな不思議なことがあるのかと驚かされる。

 症例の謎を解きあかしていく探求の書でもあり、患者を検査するうちに、奇妙な症例の原因がだんだんと明らかになるところは、医学ミステリーとも言えるような面白さだった。

 紹介されている患者たちは、突然今まで当たり前のように持っていた能力を喪失したり、不気味な現象に悩まされたり。おのおの、思わぬ壁にぶち当たってしまう。筆者はこうした患者たちが、障害と戦いながら立ち直っていく姿を生き生きと描いていて、ただの症例解説をこえた人間味にあふれた本になっている。

 奇妙な症例にそれぞれの方法で立ち向かい、どんなにつらい状況でも精一杯生きようとする姿が感動的。奇妙な症例について知りたくて読み始めたつもりが、意外にも人生についてまで考えさせられてしまうような深みのある本だった。

死体は語る [医学]


死体は語る (文春文庫)

死体は語る (文春文庫)

  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2001/10/10
  • メディア: Kindle版



 東京都監察医務院で、30年以上、監察医として勤務してきた筆者によるノンフィクション。自身が手がけた事件を紹介しながら、法医学の世界と人の死の背景にある人間模様を描き出している。

 人が亡くなった場合、病死の場合には医師が死亡診断書を発行し、犯罪死の場合には検事の指揮下で司法解剖が行われる。だが、中には、その中間の病死なのか犯罪死なのか不明な場合というものがある。こうした場合には、異状死体として警察への届け出がなされ、医師の検死が行われるが、この異状死体の取り扱いを定めた制度が監察医制度である。

 筆者はもともと医学部を卒業した後、臨床医になることも考えたが、生きることの意義や死とは何かということを勉強するのもよいと思い、法医学教室に入ったのだそう。その後、東京都の監察医務院の監察医となり、数々の異状死体の検死に立ち会ってきた。

 いろいろな死者をみるうちに、死者が雄弁に語りかけてくる瞬間に遭遇したこともあるそうだ。じっくりと検死を行っていくうちに、関係者らが話すことと死体所見とが食いちがう場合というのが出てくる。殺人事件を自殺に見せかけたり、保険金自殺を事故に見せかけたり。さまざまな犯罪や偽装工作が存在することを、死者が教えてくれるのだという。

 本書はまさにそうした、死体が語りかけてきた事例の数々を紹介した本で、検死によって意外な事実が明らかになったケースを多数取り上げている。法医学の話だけでなくて、死者をめぐる人間関係についても書かれていて、そこに出てくる人間ドラマは、まさに事実は小説よりも奇なりといった内容。こんなこともあるのかと驚くような話ばかりで、人間というものが実に不思議な存在であることを改めて知らされた。

 死因の究明だけでなく、死亡推定時刻の話や、親子鑑定、個人識別、労災認定など、法医学がかかわる分野について幅広いトピックについて書かれていて、とても興味深い。もちろん、死因の究明そのものについても、推理小説を読むような意外性があって、引き込まれるようにして読んでしまった。

 検死の裏側を見せるとともに、人間の持つ不思議さを描いていたり、監察医制度のあり方などの社会問題にも触れていたりと、法医学について多角的な見地から見ることのできる良書。死者に対する筆者の優しい視線が伝わってくるところもよかった。
タグ:上野正彦

山中伸弥先生に、人生とiPS細胞について聞いてみた [医学]


山中伸弥先生に、人生とiPS細胞について聞いてみた

山中伸弥先生に、人生とiPS細胞について聞いてみた

  • 作者: 山中 伸弥
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2012/10/11
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)



 2012年にノーベル医学・生理学賞を受賞した山中伸弥教授自らが、iPS細胞作製にいたる経緯をふりかえるとともに、iPS細胞によってどのようなことが可能となるのかについて語った一冊。

 もともと臨床医を目指していた教授は、整形外科の研修医として国立大阪病院に勤務し、そこで様々な患者と出会う。患者の中には、リウマチや癌、脊髄損傷といった難病に苦しむ人もいて、患者たちと接するうちに教授は、難病を治す方法を探したいと考えるようになったのだそう。研修が終わるころには、基礎医学への興味が芽生え、進路を変更。研究者としての道を歩みはじめる。

 薬理学教室に入って実験を始めたのがはじまりで、その後、遺伝子改変マウスの研究のためにアメリカに留学したり、知られていなかった遺伝子を発見したり、ES細胞の研究をしたり。研究者としての紆余曲折が順次語られていて、iPS細胞作製にいたるまでの流れがとても分かりやすく書かれている。

 「そもそもiPS細胞とはどのようなものなのか?」という科学的解説もあって、これも丁寧で分かりやすかった。iPS細胞を用いることで、ES細胞の持っていた倫理的な問題や移植の際の免疫拒絶問題をクリアすることができるということがよく理解できる内容。

 iPS細胞がどのような可能性を持っているのかも挙げられていて、たとえばiPS細胞から心臓細胞を作り出して臓器移植に用いたり、体外で培養した細胞に病気を再現させることで病気の原因を解明できたり、薬の作用を確かめたりすることもできるという。

 わりと短めであっという間に読めてしまう本ではあるけれども、内容は充実している。本書を読んで、世界を一変させるような偉大な発見がどのようになされたのかを目の当たりにできたのと同時に、iPS細胞作製にいたるまでに様々な紆余曲折や苦労があったことも分かり、研究者の人生を描いた伝記本としても楽しむことができた。
タグ:山中伸弥

のうだま [医学]


のうだま―やる気の秘密

のうだま―やる気の秘密

  • 作者: 上大岡 トメ
  • 出版社/メーカー: 幻冬舎
  • 発売日: 2008/12
  • メディア: 単行本



 脳研究者池谷裕二とイラストレーター上大岡トメの共著。やる気を出すためのコツについて解説した本。

 三日坊主という言葉があるけれども、人間の脳はもともとあきっぽくできていて、マンネリ化するのも生きていくために必要な反応なんだそうだ。大脳皮質が関わる馴化と呼ばれる作用により、脳は最初は大きな感動をするけれども、一度見たものをだんだんと当たり前のものと捉えてしまう。

 だから、飽きっぽかったり、三日坊主だったりすることを嘆く必要はなくて、それは自然の作用なのだと考えるべきなのだろう。

 本書によると、脳をうまく騙すことによって、このような三日坊主を乗り越えることも可能であるという。それは、やる気が出るときに活性化する淡蒼球と呼ばれる部位を動かす方法で、「身体を動かす」「いつもと違うことをする」「ご褒美を与える」「なりきる」という4つのスイッチがあるのだそうだ。それぞれの方法について、その意味と淡蒼球が活性化するメカニズムが分かりやすく解説されていた。

 非常に薄くて、あっという間に読めてしまうけれど、やる気を出すためのコツがわかりやすく書かれていて、得るところが多い本である。実際に自分でもやる気の出ない時に、まず何も考えずに動いてみるということをやってみたら、本当にやる気が出てきて、効果てきめんだった。

 池谷先生の本は、理論的な部分を読むのも面白いけれども、書いてあることを実際にやってみると本当に役に立つことがあって驚かされることが多い。
タグ:池谷裕二