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人工知能は人間を超えるか [IT]





 人工知能研究のこれまでと今後の展望について解説した本。

 門外漢にもわかるようにかみ砕いて書かれていて、非常に読みやすい。人工知能がどのような仕組みになっているのか、初歩の初歩から説明してくれている。

 人工知能の研究もこれまで何度かブームがあったのだが、そのつどブームがしぼんでいったらしい。人工知能が世界を席巻するというような話が何度かあったが、結局尻すぼみに終わっていった。

 問題になったのは、人間であれば当たり前に理解できるような、例えば「猫」といった単純な概念ですら、人工知能に認識させることが難しかったこと。ある動物が犬なのか猫なのかキリンなのか、人間なら瞬時に見分けられるようなことも、機械に判別させることは難問だった。「猫」にどんな特徴があるのかを人間がいちいち機械に教えなければならなかったし、どうやって特徴を教え込むのかもやっかいだった。

 他にも難問がいくつもあって、人工知能研究は頓挫してしまっていたのだが、最近になって人工知能研究にも光明がさしてきたという。ディープラーニングという新しいアプローチが登場して、これまで問題だった点を解決してくれたのだ。

 ディープラーニングの方法では、人間がいちいち「猫」の特徴を教え込むのではなく、人工知能が数多くの画像を見ながら、「猫」の特徴を自分で抽出していく。「猫」を特徴づける要素を自分で勝手に見つけ出して、「猫」の概念を自ら抽象化して、覚え込んでいく。これは、よちよち歩きの赤ちゃんが周囲の環境を見ながら、少しずつ世界を理解していくのと同じアプローチといえるだろう。

 様々な概念を判別したり理解できるようになれば、人工知能も膨大な情報を吸収するようになって、人間社会の様々なルールも覚え込むことができる。より環境に適した行動をとることができるようになる。これまで壁にぶち当たっていた人工知能研究に突破口が生まれたのである。

 この本を読んで、ひょっとしたら人工知能に人間が追い越されてしまう、そんな未来がもう目の前に迫っているのかもしれないなあと感じるようになった。空想の世界というレベルではなくて、現実に実現してもおかしくない基盤があるのだなということに気づかされた。

 自動運転車、農業の自動化、物流の自動化、インフラの管理、通訳・翻訳の機械化、医学・法律・税務などの専門知識の機械的カウンセリング新聞記事の機械作成、家事や介護の機械化、行政事務の機械化など、社会のあらゆる分野が自動化していくのだろう。これまで人間がやってきたあらゆる活動が機械化され、人間よりもずっとうまく正確に行ってくれる未来。

 人間の仕事は当然に奪われてしまうのだろうけれど、その代わりに食料の配給、生活の保障、医療サービスに余暇のサービスなど、身の回りの世話も機械が全部してくれるようになるのだろう。

 そんな社会が来たら人間はもはや用済み。人間よりも機械にすべて任せたほうが便利という時代がやってきそうだ。人間はただただ仕事もせずに余暇をすごすばかり。映画「WALL・E」に出てくる、遊んでばかりいる人間たちの世界のように……。

 なんでも機械任せで人間は何もしなくていい。ある種のユートピアみたいだが、同時にとても悲しい世界でもある。何をやっても人間は人工知能に勝てないのだから。人間の存在意義は何かということが問題になってきそう。何のために生きていくのかという生きがい探しみたいなことが大事になってくるんだろうな。

 未来が楽しみでもある半面、便利になると人間どんどんダメになっていくんじゃないかなあという虚しさを感じさせる本でもあった。
タグ:松尾豊
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ウェアラブルは何を変えるのか? [IT]


ウェアラブルは何を変えるのか?

ウェアラブルは何を変えるのか?




 グーグルのグーグル・グラス、アップルのiWatchをはじめ、身体に装着して利用するコンピュータ、「ウェアラブル・コンピュータ」が話題になっている。今後、様々な形態のウェアラブル・デバイスがぞくぞくと登場してくるだろうとも言われている。

 だが、そのメリットについては正直いまいちよく分からないところもあった。単に、眼鏡型デバイス写真が簡単に撮れるとか、進路表示を出してくれるとか、SNSのメッセージが画面に表示されるとか……。その程度の機能だったら、スマホで十分なんじゃあないか?

 ついそのように考えてしまって、ウェアラブル・コンピュータは話題にはなっていても、あまり自分で使いたいとは思わなかったのだけれど、本書を読んで少し考えが変わった。

 本書は、ITジャーナリストの佐々木俊尚が、タイトルにもあるとおり、ウェアラブル・コンピュータが我々の生活をどのように変えていくのかについて書いた本。ウェアラブル・コンピュータは今後どのように利用されるのか? その具体的なビジョンが描き出されている。

 本書を読むと、「こんな使い方もあるし、あんな使い方もある」という例が次々に出てきて、今まで気づかなかったような幅広い利用方法があることが見えてくる。その未来世界の生活のイメージは、SF小説を読むような楽しさがあった。

 ウェアラブル・コンピュータの一番の特徴は、情報収集とフィードバックにあるといえそうだ。たとえば、ウェアラブル・コンピュータで身体の体温・発汗・心拍数・摂取カロリーなどの情報を集め、フィードバックとしてユーザーに健康情報を教えてくれる。眼鏡型のコンピュータを通して、視界に入ってくる情報を集めて、場所がレストランなら勝手に食事のカロリー計算を行ってくれるし、工事現場なら建物の完成予想図を見せてくれるし、外国なら英語の文字を勝手に翻訳して日本語を表示してくれる。

 身に着けているユーザーの行動に合わせて、勝手にデバイスが情報を収集して、ユーザーがほしいような情報を自動的に送ってくれる仕組み、それがウェアラブルの未来なのだ。

 その可能性は無限に広がっていて、この本に書かれていること以外にもいくらでも利用方法はありうるだろうし、想像していた以上に便利なデバイスなのかもしれないなあと思ってしまった。

 スマホでも位置情報や行動履歴を通したおすすめ機能などのフィードバックはあったけれども、ウェアラブル・コンピュータではさらにその機能が拡大していって、ますます正確にユーザーの傾向を把握できるようになって、より最適化された情報を与えてくれるようになるのだろう。

 究極的には、目の前にいる人の顔をグラスが認識して、その人の個人の情報が目の前に表示されるなどという機能も出てくるかもしれない。属性、経歴、能力、健康状態、はてはその人の評判まで表示されてしまう世界。面白いような怖いような、すごい世界が広がっていくなあと、本書を読んで未来の世界についていろいろと考えさせられた。
タグ:佐々木俊尚

「Chikirinの日記」の育て方 [IT]


「Chikirinの日記」の育て方

「Chikirinの日記」の育て方

  • 出版社/メーカー: ちきりんブックス
  • 発売日: 2013/11/26
  • メディア: Kindle版




 どんなブログが面白いといえるだろう? 面白いブログの条件とは何ぞや?

 たとえば、筆者の特異な経験や知識を語ったものは面白いにちがいない。めったに行けない国の現地情報、珍しい職業の人の業界ネタ、学者の最新の研究成果など。こういう話は、素材自体が特殊なもので、一般的にあまり知られていない、なかなか手に入らない情報なので、思わず目を引かれてしまう。

 逆に、話題自体はごく日常にある、ありふれたものだけれど、独自の視点で切り込んだようなブログも面白い。ありふれたニュースをかみくだいて分かりやすく説明する、人気映画に鋭い分析を加える、社会の出来事を独自の視点で読み解く。普段当たり前に見える光景も、見方を変えることで、別の世界が開けてくるといった面白さだ。

 それから、イラスト・音楽・映画・写真・小説・工作などの芸術系。突出した作品を載せているブログは、作品の力だけで輝いて見える。

 さて、自分がよく訪れるブログに、「Chikirinの日記」というのがある。ちきりんという匿名のブロガーが書いている人気ブログで、あまりにも人気が出すぎてしまって、出版社から本を出すようにもなったり、講演会を開いたり、有名人と対談をするようになったりするくらい。

 このブログの何が面白いかというと、上述した2番目のタイプ。社会の事象を独自の思考で読み解いているところ。身近な生活だったり社会の出来事を、図式化したり、ロジカルに展開したり、深く掘り下げてみたり。読んでいて、日常的な出来事の中に新たな発見があったり、自分の生き方について考えさせられたりもするブログなのだ。

 個人の書くブログというのは、独りよがりなものになりがちである。出版社や放送局のように大勢の人間が関わって喧々諤々の議論をしながら作っているわけではないので、本などに比べるとどうしてもクオリティが下がって見えるのは仕方がない。

 だが、「Chikirinの日記」は、そういった素人くささがなく、個人ブログであるにもかかわらず、ハイクオリティを保っているところがすごい。そのまま新書にして出版しても遜色ない出来栄えなのだ。

 ブログを訪れるたびに常々感心させられてきたが、本書を読んで、その秘密の一端を垣間見た気がする。本書は、「Chikirinの日記」の舞台裏を明らかにしたもので、ちきりんがどのようにブログを運用しているのか、どんなポリシーを持っているのかを知ることができる本。

 これを読むと、筆者がブログのターゲット層を明確に意識していたり、伝えたいメッセージをどのように組み立てるのかというノウハウがあったり、自分のメディア空間を作るという目的があったりと、明快な指針を作って運用していることが見えてくる。これだけ自己分析・自己研磨ができているから、クオリティの高いブログに仕上がっているのだろう。

 そもそもブログを書く目的は人それぞれだし、価値観も人によって違うので、この本に書いてあることをそのまままねても仕方がない。だが、自己研磨を怠らない姿勢には学ぶべきところがあるし、もっと自分なりのポリシーをもつ必要があるなあと、本書を読んで気づかされた。

 なお、この本はセルフパブリッシングという形で、筆者自らが電子書籍の形で出版している。しかも、通常の紙の書籍と同じような価格。実験的な試みといえるわけだが、時代の最先端を行っているし、出版にもこういうやり方が出てきたことが分かって驚いた。
タグ:ちきりん

2045年問題 [IT]


2045年問題 コンピュータが人類を超える日 (廣済堂新書)

2045年問題 コンピュータが人類を超える日 (廣済堂新書)




 2045年にコンピュータの能力が人類の能力を超えるという、2045年問題について書かれた本。

 IBMのコンピュータ「ワトソン」が人間のクイズ王に勝利したり、1980年代のコンピュータに比べて1000万倍ものスピードがあるスーパーコンピュータ「京」が登場したりと、驚くべきスピードで進歩を遂げるコンピュータ技術。その進歩の仕方は、上昇カーブを描くような急激なものであって、やがてコンピュータの能力は、人類の知的能力をはるかに凌駕するだろうとも言われている。

 このような、コンピュータが人類の能力を超える時点は「技術的特異点」と呼ばれ、アメリカの人工知能研究者レイ・カーツワイルは、その時点が2045年になるだろうと予見している。この「2045年問題」「特異点問題」は、アメリカでは盛んに論議されていて、アメリカ政府、NASA、グーグルなどが真剣に研究しているのだそうだ。

 本書は、この特異点の問題がどのようなものであるのかを、コンピュータ技術の歴史や人工知能開発の現在を紹介しながら、分かりやすく解説している。特異点以後の、人類とコンピュータとの関係についても書かれていて、人類がコンピュータに支配されるとか、人間が肉体を捨てて意識だけをコンピュータの中に送り込んで共存するようになるとか、いろいろなシナリオが模索されている。

 SF小説の中には、驚異的な能力を持ったロボットや人工知能の話がよく出てくるけれども、もうそんな時代がすぐそこにまで来ているのかと驚くような内容で、自分が生きている間に特異点が来るかもしれないと思ってぞくぞくした。「ターミネーター」や「マトリックス」の世界が、目の前にやってくるかもしれないというのだからすごい。

 本書を読んでいて、疑問に思ったところもあって、たとえば、人類の能力を超えたコンピュータが人類に対して反乱を起こして人類を滅ぼしてしまうかもしれないという見方について。映画や小説なんかにはよく出てくるような話だけれども、人間よりもはるかに知能の高いコンピュータから見たら、人間の存在は無価値に等しいのだから、わざわざ悪意を持って滅ぼそうとするのかなと思った。

 コンピュータが仕事を奪うという話も出てきて、医療、教育、金融、芸術にいたるまで、人間のあらゆる仕事が機械に置き換わっていくということが書かれてもいる。仕事の数がますます減って、競争が激しくなるから、競争に負けないようにしようという考えもあるけれど、どんどん先細りしていくだけなので、いずれは、ほとんどの仕事がなくなることを前提にした、新たな社会システムを作る必要に迫られるのではないか。その辺りの議論というのはアメリカではなされていないのかなと知りたくなった。
タグ:松田卓也

MAKERS [IT]


MAKERS―21世紀の産業革命が始まる

MAKERS―21世紀の産業革命が始まる

  • 作者: クリス・アンダーソン
  • 出版社/メーカー: NHK出版
  • 発売日: 2012/10/23
  • メディア: 単行本



 雑誌「ワイアード」US版編集長のクリス・アンダーソンが、製造業の未来像について描きだした本。

 インターネットが出現して、それまで放送局や出版社しか持ちえなかった出版・放送・通信といった情報発信手段が民主化されると、アマチュアやセミプロたちはこぞって、ユーチューブやフェイスブック、ブログといったツールを活用しはじめ、あらゆる人々が手軽に情報を発信し始めるようになった。その結果、ウェブは、プロとアマチュアがひしめき合う、ロングテールと呼ばれる場となっている。

 筆者はこうした情報手段の民主化と社会の変化について「ロングテール」という本に表したが、今回出版された「MAKERS」という本の中で、今度は、同じことが製造業の分野でも起きようとしているということを書いている。それはいわばモノのロングテールと呼ばれる状況だ。

 従来、製造業の世界というのは、大量生産を行うために、莫大な初期投資、技術と設備が必要で、大企業や熟練工でなければ成り立たない、参入障壁の大きな分野だった。だが、技術の発達により、3Dプリンタと呼ばれる装置が登場し、マウスピースから、電子機器、食品、臓器にいたるまで、様々な素材のものをプリンタ装置で出力することができるようになりつつある。また、世界中の工場は開かれつつあり、製造業者の工業インフラの一部を利用させてもらい、必要な分の試作品を作り出すということも可能になってきた。工場や会社を作るまでもなく、アマチュアやセミプロでも製造業の世界に算入できる土台がだんだんと出来上がりつつあるのだという。

 本書は、こうしたモノのロングテールともいうべき新たな世界が生まれつつある状況について、新しいツールである3DプリンタやCNC装置、新たな工場の形、スタートアップ企業の資金調達手段としてのクラウドファンディングなどを紹介しながら解説。どのようにしてセミプロでも参入が可能となるのか? その結果どのような世界が広がるのか? 今後やってくるであろう製造業の未来像を描き出している。

 製造業の分野というと、アメリカでも日本でも勢いを失っているなどというような暗いニュースばかりよく聞かされるけれども、実際には劇的な形で変貌しつつあることがよく分かる、新鮮なことがたくさん書かれている。これまではコスト削減のために中国の工場で製造することが多かったが、今後は生産拠点をアメリカに戻そうとする動きもあるといことについても書かれていて、経済の話として読んでも面白いトピックが出てくる。

 新しいイノベーションが生まれる可能性だったり、誰でも参入できるようになる可能性だったりと、躍動感のあるわくわくさせられる内容。今まで聞いたこともないようなことがたくさん書かれていて、非常に興味深い本だった。