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愛は戦渦を駆け抜けて [写真]


愛は戦渦を駆け抜けて 報道カメラマンとして、女として、母として

愛は戦渦を駆け抜けて 報道カメラマンとして、女として、母として

  • 作者: リンジー・アダリオ
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA
  • 発売日: 2016/10/01
  • メディア: 単行本



 「撮った写真が満足いかないのは、被写体に十分に近づいていないからだ」とは写真家ロバート・キャパの言葉。

 真に迫った写真を撮るためには、被写体に近づく必要がある。遠くから眺めているだけでは、見えてこない世界がある。被写体に近づくことで、その人物の喜びや悲しみ、その街の様子が初めて見えてくる。

 このことは報道カメラマンの場合によく当てはまるだろう。起こっている事件や災害も、現場に近づかなければ真実は分からない。

 本書を書いたリンジー・アダリオは報道写真家だ。彼女はまさに、このキャパの言葉を忠実になぞっている人だといえる。「ニューヨーク・タイムズ」や「タイム」、「ナショナルジオグラフィック」などから依頼を受け、世界中のどんな場所にでも駆けつけ、現場の中心にまで入り込んではそこで起きている出来事を伝え続けているのだ。

 彼女の問題は、逆にあまりにも被写体に近づきすぎてしまうというところにあるだろう。治安のいい場所ならいくら近づいてもいいかもしれないが、彼女の向かう先はほとんどが戦場。アフガニスタン、イラク、スーダン、リビアといった戦渦の中だ。被写体に近づくために、砲弾や銃弾の中をかいくぐる日々を送っている。

 すぐ近くで爆発が起きたり、目の前で人が死んでいくのを見たり、武装集団に拉致されたりもする。死と隣り合わせの危険な仕事だ。

 どうしてそんなにまでして写真を撮ろうとするのだろう? 自分の命を懸けてまで撮る価値のある写真などあるのだろうか?

 彼女も別に死ぬことが怖くないというわけではない。危険な目に合うのは避けたいに決まっている。しかし、どんなに危険な目に合うとわかっていても、戦渦の中に飛び込んでいって、そこで起こっている出来事を伝えたいという思いがあるのだという。

 たった一枚の写真が、世界の真実を伝える役目を果たすかもしれない。世界をより良い方向に変えるかもしれない。そういうものすごい力が写真にはあるという信念を持っているのだ。

 この本は計り知れない信念を貫いた女性の手記である。苦難と葛藤しながらも危険な世界に飛び込んでいく姿に、心底感服させられた。こういう人たちがいなければ、世界は闇に包まれたままだ。
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ちょっとピンぼけ [写真]


ちょっとピンぼけ (文春文庫)

ちょっとピンぼけ (文春文庫)

  • 作者: ロバート・キャパ
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 1979/05
  • メディア: 文庫



 報道写真家ロバート・キャパは第二次大戦中、アメリカ軍とともに北アフリカやヨーロッパを渡り歩いた。本書は、従軍カメラマンとしての活動と戦争の様子を描いた、キャパ自身による手記である。

 当時の報道カメラマンがどのような活動をしていたのかが目に見える内容で興味深い。

 写真家であって兵隊ではないとは言っても、戦場の様子を被写体におさめるには実際に戦地に赴かなければならない。戦争の様子を臨場感をもって伝えるためには、兵隊と一緒に戦火をくぐりぬける必要がある。命を懸けた危険な任務であることは兵隊と何らかわりはないのだ。

 実際に、キャパはアメリカ兵とともに前線に向かったり、輸送機に乗り込んで落下傘で飛び降りたりと、死と隣り合わせの行動をとっている。

 有名なノルマンディー上陸作戦では、攻撃部隊の先鋒とともにずぶぬれになりながらフランスへと上陸。砲弾や弾丸が飛びかう中を、浜辺に這いつくばって、戦場の様子を写真に撮ったそうだ。

 本書にもいくつか掲載されているが、命がけで撮影されたキャパの写真は、その時間と場所でしか撮れない瞬間を捉えている。まさに歴史の一場面を後世に伝える貴重なものといえるだろう。

 本書を読むと、その撮影の舞台裏が、ときにはユーモラスにときには悲哀をもって描き出されていて、非常に読みごたえがある。当時の戦争の様子や戦時下に生きる人々の様子が浮かび上がってくるような内容だ。

 負傷兵を写すことへの心理的抵抗や、戦地へ赴くことへの恐怖。写真家としての正直な思いもつづられていて、キャパがこんなことを考えながら写真を撮ったのかということが分かるのも興味深かった。

こびとの住む街 [写真]


こびとの住む街1

こびとの住む街1

  • 作者: スリンカチュ
  • 出版社/メーカー: 創元社
  • 発売日: 2013/01/09
  • メディア: 単行本



 ロンドンを拠点に活躍するアーティスト、スリンカチュによる小人の世界をテーマにした写真集。

 ロンドンの風景の一角に小さな人形を置いて、カメラの被写体にして、地面すれすれのところから撮影。小人の目線で世界を捉えている。子供目線とか猫目線で写真を撮る人はいるけれど、小人目線というのは珍しい。借りぐらしのアリエッティやガリバー旅行記のような世界観に、思わず引き込まれてしまう。

 見開きで、左側にヒト目線の写真、右側に小人目線の写真が掲載されていて、そのギャップが面白い。日常的などこにでもあるような風景も、小人の目線から見ると、全くの異世界に見えてくる。

 たばこの吸い殻がベンチになり、マンホールの水たまりがプールになり、雨どいが住処になり、昆虫が怪物になる。スケール感が揺さぶられるような不思議な感覚だ。

 現実の見慣れた風景が、写真に撮ると全然違ったものに見えてくるというのが、写真の面白さのひとつだけれど、本書に出てくる小人写真は、まさに、そうした写真の面白さが発揮された作品になっていて、なかなか観ていて飽きさせない。

 続編もあるようで、今度はロンドンを離れて、世界に飛び出すそう。ぜひまた観てみたいと思ったし、自分でもたまに写真を撮るので、小人写真をまねしてみたくなった。

プロの撮り方 完全マスター [写真]


ナショナル ジオグラフィック プロの撮り方 完全マスター (ナショナル・ジオグラフィック)

ナショナル ジオグラフィック プロの撮り方 完全マスター (ナショナル・ジオグラフィック)

  • 作者: ジェームズ・P・ブレア他
  • 出版社/メーカー: 日経ナショナルジオグラフィック社
  • 発売日: 2012/04/05
  • メディア: 単行本



 アメリカの地理雑誌「ナショナル・ジオグラフィック」の写真家たちが、写真撮影の極意について解説した本。

 カメラの技術的基礎から、構図のとり方、レンズの使い分け、光の取り入れ方など、写真を撮るうえで必要な知識がまとめられている。応用編として、人、風景、旅行、夜景など、場面ごとの撮り方も紹介されていて、多様な場面でどのように撮影したらよいのか、注意点が分かる構成にもなっている。

 写真部分の割合が多く、文章ひとつひとつの解説は簡潔で割とあっさりしているのだが、あまりくどくどと詳しすぎるものよりも手に取りやすい分量。自分のような未熟者には基礎的知識を頭に入れるのにちょうど良い内容で、手元において時々見返したいと思っている。

 何よりもこの本の良いところは、掲載されている写真が素晴らしいことだろう。さすがに「ナショナル・ジオグラフィック」の写真家が撮影しているだけあって、一枚一枚の写真のレベルが高く、神ワザのような写真がたくさん載せられている。絶妙なタイミングを狙っていたり、大胆な構図があったり、色彩が見事だったりと、ぱらぱらと写真を眺めているだけでも楽しい一冊だ。

 とてもここに載せられているような写真は自分では撮ることはできないが、写真技術を向上させるためのヒントがたくさん詰まっている。書かれている解説を読んだり、写真を見たりして、これから写真を撮るうえでの参考にしていきたいと思った。