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教養としての「税法」入門 [法律]


教養としての「税法」入門

教養としての「税法」入門

  • 作者: 木山 泰嗣
  • 出版社/メーカー: 日本実業出版社
  • 発売日: 2017/07/27
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)



 国家を運営していくためには、膨大な資金が必要である。国民から税金をたくさん徴収しなければならない。

 昔のイギリスでは、国王に課税の決定権限があった。だが、自由に税金を徴収されてしまったのでは、国民もたまったものではない。きちんと国民の評議を経てもらわなければ、不安で仕方がないだろう。

 そんなわけで、13世紀のイギリスでマグナ・カルタという法典が制定されることとなった。国民の代表である議会の決定がなければ課税できないという内容だ。このマグナ・カルタの考えは、アメリカにも輸出され、独立戦争では「代表なくして課税なし」がスローガンになった。

 この考えは日本にも広まり、日本国憲法には「租税法律主義」というルールが定められ、税金を課すには、法律にきちんと明記しなければならない決まりとなった。

 ところで、課税のための要件を法律に明記するといっても、そう簡単にはいかない。とくに法律の文言の解釈が人によって割れてしまうような場合に問題が生じうる。

 たとえば、「日本に住所がある人」に課税ができるとした場合、日本に住所があるというのはどういう場合なのか? 日本と外国をしょっちゅう行ったり来たりしているような人には適用されないのか? 

 課税するための法律があったとしても、法律の解釈が割れてしまうと、争いになる。不当に税金を取られたということで税務訴訟にまで発展することも……。

 本書はこうした税金にまつわる制度について分かりやすくまとめた本である。これを読むと、税法の解釈を巡って様々な紛争が生じてきたことが見えてくる。どうやって徴税するかという国家の思惑と、いかにして租税を回避するかという国民の思惑との間の攻防だ。

 最初は仕事に役に立つのではないかと思って読み始めたのだが、読んでみたら意外と読みものとしても面白かった。
タグ:木山泰嗣
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憲法で読むアメリカ史 [法律]


憲法で読むアメリカ史(全) (ちくま学芸文庫)

憲法で読むアメリカ史(全) (ちくま学芸文庫)

  • 出版社/メーカー: 筑摩書房
  • 発売日: 2013/11/06
  • メディア: Kindle版



 イギリスから独立した当時のアメリカは、今とは政治体制が違っていた。各州がゆるやかに連合していただけで、それぞれの州が主権国家と言えた。

 これらの州が強固な統一政府を築くようになったのは、ゆるやかな連合の形では問題があったからだ。例えば、独立を果たしたはいいが、各州が独立して政策を決めていたので、各州は自分たちに有利な関税をかけようとした。州間で摩擦が生じ、通商活動が阻害されるようになった。

 州よりも大きな権限を持った組織が存在しないため、各州が問題を起こしても正すこともできなかった。独立戦争の戦費を支払わない州があっても、税を強制的に徴収することはできなかった。裁判所の判断を無視する州があっても、何も言えなかった。

 イギリスから独立したら、かえって通商関係がこじれたり、州内で暴動さえ起こるようになった。これはどうにかして解決しなければということで、各州がまとまって統一国家を作り上げようという動きが生まれた。こうして、1787年のフィラデルフィアで、憲法制定会議が幕を開けることになる。

 今の政治体制に落ち着くまでには議論がかなり紛糾したらしい。もともと独立心の強い人たちなのだ。連邦政府などを作り上げたら、各州の権限は当然弱まり、規制によって自由を奪われてしまう。州権論者は強い危機感を覚え、反対する。

 日本のような単一政府の中央集権国家にしようという考えもあったようだが、結局は今のような、連邦政府は存在するものの、州の力も強く残した形に落ち着いた。

 合衆国が誕生したら、すべてがうまくいったかと言えばそんなことはない。州権論者が懸念していたように、今度は、連邦政府が人々の自由を奪うようなケースも出てきてしまう。問題は次々に生じた。チェロキー族の迫害、黒人への差別、禁酒法、日系人の強制収容、冷戦下の赤狩りなど……。

 アメリカが素晴らしいなと思えるところは、いろいろ問題は多いながらも、問題が生じるたびに憲法の議論が活発に行われるところ。裁判所も憲法違反かどうかの判断を積極的に行い、結果的に国の在り方がどんどん変化していくところだ。主体的にみんなで国を作っていくダイナミックさがある。

 大統領や議会が強大な権限を持っているとはいえ、国家が個人の人権を侵害して問題があるとなれば裁判所がちゃんと動いて、止めようとする動きが出てくる。三権分立が機能しているところは清々しい。

 ひるがえって、日本は憲法が議論になるといっても9条の解釈くらいだし、裁判所も違憲判断には及び腰。三権分立の意味があるのかとか、なんのための憲法や裁判所なのかと思ってしまう。もっと三権の間で緊迫した議論や対立があってしかるべきなんじゃないのか。なんだか生ぬるくてつまらない。

 本書はアメリカの歴史と憲法の関係をとても詳しく書いた本で、アメリカの歴史が憲法の議論とともに歩んできたことがよく分かる内容だ。国家というものはこういうふうにして創られていくのかということが見えてきて、とても興味深かった。
タグ:阿川尚之
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芸能人はなぜ干されるのか? [法律]


増補新版 芸能人はなぜ干されるのか

増補新版 芸能人はなぜ干されるのか

  • 作者: 星野 陽平
  • 出版社/メーカー: 鹿砦社
  • 発売日: 2016/09/24
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)



 SMAPや能年玲奈、清水富美加など、芸能人が事務所ともめて独立するという話は、ニュースなどでよく聞く。こうした芸能界トラブルの背景は、一体どうなっているんだろう?

 「芸能人はなぜ干されるのか?」を読むと、この辺りの事情が詳しく描かれていて、たいへん分かりやすい。鈴木あみ、セイン・カミユ、水野美紀、眞鍋かをり、沢尻エリカ等、所属事務所ともめた芸能人たちの顛末が具体的に描かれている。

 芸能人がもめている背景は何なのかなあと思っていたが、本書に掲載されていた契約書を見て、なんとなく事情が見えてきた。

 芸能人は芸能事務所に入るときに、専属契約を締結するのが一般的だ。この契約書を読むと、契約条件が芸能人にかなり不利な内容になっていることが分かる。例えば、一切の芸能活動には事務所の許可が必要だし、出演の権利や肖像権なども事務所に好都合になっている。

 とくに訴訟などでもめるのは、契約解除についてだろう。一般的な雇用契約であれば、労働者が退職しやすいルールになっているが、芸能事務所は多額の先行投資をしているのに、勝手に独立されたらたまったものではない。雇用契約とは異なる特殊な契約なのだから、途中解約は認めないと主張する。

 芸能事務所の言うように、途中解約が認められないとしたらどうなるだろう? 芸能人は最初に取り決めたわずかな報酬のみで、期間満了まで事務所にこき使われなければならないということになる。どんなにヒットを飛ばして、稼ぎ頭になったとしても、ほとんどの取り分は事務所に持っていかれてしまう。これでは納得できないのも当然だろう。

 実際には裁判では芸能人が勝訴して、契約解除が認められることが多いようだ。だが、そこから先が問題である。芸能人が独立して別の事務所に簡単に入れるかというと、そうではない。業界同士のつながりは強く、事務所を辞めた芸能人を雇うのはタブーになっているし、放送局や雑誌もそうした芸能人を排斥するのが慣例。徹底的につるし上げられた芸能人は、芸能界から追放されてしまう。

 結果的に、芸能人は事務所から独立することが怖くてできなくなる。ろくに睡眠もとれず朝から晩までこき使われ、私生活まで制限される。夢を追いかけたい気持ちにつけこんで、まるで奴隷のような扱いを受けているらしいのだ。

 こんなことは誰でも知っていることなのかもしれないが、芸能界に疎いので知らなかった。結構えげつないことがたくさん書かれていて、芸能界はこんなに酷いところかと読んでいてショックなほどである。

 最近ではよい流れも出てきている。日本でもハリウッドのように芸能人の労働組合を作ってはどうかという動きがあるし、不平等な契約が独占禁止法に違反するのではないかということで、公正取引委員会も動き始めている。また芸能事務所やテレビ業界に頼らない、インターネットを利用した活動の場というのも増えてきている。

 それにしても、電通といい、アニメ業界といい、外国人労働者といい、芸能事務所といい、日本の労働社会は知れば知るほど闇が広がっているのを感じる。日本って人権意識が低すぎるよなあ。一体どこか先進国なのやら。
タグ:星野陽平
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どこまでやったらクビになるか [法律]


どこまでやったらクビになるか―サラリーマンのための労働法入門 (新潮新書)

どこまでやったらクビになるか―サラリーマンのための労働法入門 (新潮新書)

  • 作者: 大内 伸哉
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2008/08
  • メディア: 新書



 電通の社員が過労自殺するという報道が前にあった。長時間労働やパワハラが常態化していたんだという。

 ニュースを聞いていて本当に残念だなあと思った問題だったし、久しぶりに怒りを感じたほどだ。電通みたいな大手企業でもこのようなことが起こったのだから、他にも起きてもおかしくないというところも恐ろしい。
 
 会社と労働者の関係は、労働者が労働して会社が賃金を支払うという労働契約上の関係だ。給料をもらっている以上は、労働者も一生懸命サービスしなければならない。せっせと働く必要があるのはたしかだろう。

 とはいえ、労働者は会社の奴隷ではない。何でもかんでも我慢しなければならないわけではない。

 労働者が我慢しなければならないラインというものがあるだろう。具体的には、こうしたラインは労働法や裁判例の積み重ねによって判断されてきた。どのくらいの残業が許されるのかとか、解雇するための基準とか、どういう言動がパワハラに当たるのかとか、労災の要件とかだ。

 「どこまでやったらクビになるか」という本を読むとそのあたりの基準がよくわかる。労働法の議論をまとめた本で、実際に会社と労働者が裁判で争って積みあがった事例がたくさん載っている。軽い読み物という感じであっさり読める割には、結構内容は充実している。
 
 たとえば、労働者が副業をした場合、どういう副業だったら会社は解雇することができるのだろうということが書かれてある。裁判所がこういう要素に着目しているのかという肝の部分が丁寧に解説されている。

 電通のやっていたことなどは違法なわけで、どこにラインがあるのか知っておくことは、労働者にとっても会社にとっても大事なことだろうと思う。何も知らなければ、違法なことが当たり前みたいになってしまうのだから。
タグ:大内伸哉
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警察手帳 [法律]


警察手帳 (新潮新書)

警察手帳 (新潮新書)

  • 作者: 古野 まほろ
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2017/03/16
  • メディア: 新書



 推理小説を読んでいると、ときどき年季の入った刑事が、引退間際になって迷宮入り事件の捜査に乗り出すという話が出てくる。たった一人で日本全国を行脚してホシを追う執念のデカ。

 でも、実際、そんな単独行動ができるものなんだろうか。たいていは2人1組で動くものなんじゃないか? 管轄とかどうなっているんだろう?
 
 警視、警部、警部補というのも何が違うんだろう? 階級が違うと仕事の中身も違ってくるものなんだろうか?

 マスコミ対応などもどうするのだろう? 本当に「64」みたいな激しい戦いがあるものなんだろうか?

 実際のところはどうなのかと疑問が次々わいてきたので、本書を見かけてつい読んでしまった。警察という組織全体について、実際にどんな組織なのか、どんな生活を送っているのかをまとめた本である。警察出身者が書いているだけあって、警察の世界の裏事情がつぶさに書かれている。

 読んでみて、一口に警察と言っても千差万別。どこに配属されるのかとか、どんな階級かによって、仕事の内容も性格もかなり違うのだなあということがよく分かる。ミステリーによく出てくるのは捜査一課の刑事だが、警察の仕事も刑事部門、生活安全部門、交通部門、警備部門という区分があって、それぞれに独自の世界があるようなのだ。

 部署によって違いはあるけれども、警察官になるような人は正義感が強いという点では共通しているのだそう。犯罪を憎み、困っている人を助けたい。そんな善意の気持ちが原動力になっている。本書にもいろいろな警察官が登場するが、メンタリティは共通しているようだ。

 それにしても、これだけ階級がはっきりした組織だと、いろいろ上下関係や組織間で揉めることもあるのだろうな。警察官も捜査だけしていればいいというものでもなくて、組織人でもある。組織として働く悩みというのは警察官にもありそうだ。

 自分の論理と組織の論理が合わなかったらどうするんだろうとか、自分は警察官でもないのに、読んでいてなんだか身につまされるような気分になった。
タグ:古野まほろ
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集団的自衛権の深層 [法律]


集団的自衛権の深層 (平凡社新書)

集団的自衛権の深層 (平凡社新書)

  • 作者: 松竹 伸幸
  • 出版社/メーカー: 平凡社
  • 発売日: 2013/09/17
  • メディア: 新書



 安保法案に関連して集団的自衛権が話題になっている。だけど、そもそも世界では集団的自衛権はどのように使われてきたのだろう? 基本的なところがよくわかっていなかったので、読んでみたのがこの本「集団的自衛権の深層」である。

 本書の中で、集団的自衛権が使われた例がざっとまとめられている。ソ連によるハンガリー、チェコスロバキア、アフガニスタン介入。アメリカによるグレナダ、ニカラグア介入。イギリスによるイエメン介入。フランスのチャド介入などなど。有名なのは、アメリカによるベトナム侵攻と対テロ・アフガン戦争だろう。

 冷戦期には、大国はかなり濫用気味に使ってきたらしい。実際には侵略行為のようなものも、集団的自衛権を口実にして行われて、のちのち国連総会で世界各国から糾弾されたこともしばしばだったとか。大国のやることは怖いなあという事例がたくさん出てくる。冷戦後も、たとえば、アメリカによるアフガン戦争について、その正当性が問題となったらしい。

 各事例について、どのような経緯で自衛権が用いられ、後に国際的にどのように評価されたのかが紹介されていて分かりやすい。集団的自衛権という概念自体がどのように生まれてきたのかも解説されていて、そうだったのかと歴史の勉強になった。

 日本で集団的自衛権を容認する立場は、中国の脅威が強まっているので、日本が侵略されるようなことがないように、アメリカとの同盟関係を強化して抑止力を強める必要がある。日米関係を強化するためには、基地の提供や金銭の支出や後方支援をするというだけでは、足りないということだろう。現状のままでは、抑止力にならないというのだけれど、どうなんだろう?

 それよりも、本書のようなものを読むと、今まで大国は他国への強引な介入をくり返してきたようなので、日本も集団的自衛権を行使することで、ベトナムとかアフガン戦争みたいなアメリカの戦争に巻き込まれるリスクが高まるんじゃないだろうか。

 集団的自衛権が必要だという立場に立ったとしても、決め方にも問題があって、違憲の疑いが強いのに憲法改正しないで、解釈だけで認めてしまうことは立憲主義の否定になってしまう。これを許容したら、国家による人権侵害などなんでもできてしまうのでは? 

 まだまだ考えがまとまっていなくて、わからないことも多いのだが、本書は集団的自衛権について全般的に解説されていて、あれこれ考えるうえでの参考になる。本書を読むまで、基本がよく理解できていなかったことがわかった。
タグ:松竹伸幸
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日本はなぜ、「基地」と「原発」を止められないのか [法律]


日本はなぜ、「基地」と「原発」を止められないのか

日本はなぜ、「基地」と「原発」を止められないのか

  • 作者: 矢部 宏治
  • 出版社/メーカー: 集英社インターナショナル
  • 発売日: 2014/10/24
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)



 戦後から続く日本とアメリカの関係を読み解いた本。

 日本は太平洋戦争に負けてアメリカの占領下に入って、そのあと1952年に独立を回復したことになっている。でも、実はいまだにアメリカの日本に対する影響力というのは非常に強固で、国家の中枢にまでアメリカが関わっているということが書かれている。

 沖縄や横田の基地周辺の空域をアメリカが支配していることや、米軍が事故を起こしたときに事故現場が治外法権エリアになってしまうこと。核兵器持ち込みや米兵の裁判権放棄などに関する日米間の密約についてなど。読んでいると、アメリカが具体的にどのような形で影響力を行使しているのかが見えてくる内容だ。

 日本は最高法規の憲法があって、アメリカとの間の条約などよりも憲法が優先されるので、本来であれば国民の権利を侵害するような憲法違反の条約や法律があった場合にはこれは認められないはずだ。憲法の番人ともいえる最高裁判所が違憲の判断をして、歯止めをかけることになっている。

 だが、軍事基地をめぐって問題となった砂川事件という裁判で、最高裁は高度に政治的な内容をもつ問題については法的判断をしないという判決を出した。統治行為論などと呼ばれる理屈が裁判所のスタンスになって、憲法違反の疑いのある条約や法律などがあった場合でも、日米問題のような政治問題が関わると裁判所は及び腰になる。

 結局、司法権による立法・行政の監視機能が制約されるため、アメリカが日本に対してかなりの部分で影響力を行使できるシステムになっているようなのだ。同じ構図が原子力政策についても言えて、日米原子力協定があって、日本の原子力政策にもやはりアメリカの意向が反映される。

 アメリカの日本への影響力が大きいことは分かってはいたものの、読んでいるとまさかここまでとはという内容で驚く。独立したとはいっても、まだまだアメリカに占領されているようなものなんだなあと。よく日本は51番目の州とか言われるけど、本当にそんな気がしてくる内容だった。

 日本はアメリカからこれまで経済面や安全保障の面で恩恵を受けてきたのだろうけれど、アメリカは世界中で紛争の火種を撒いていて、アメリカが世界でやっていることがすべて正しいとは思えなくて。日本がアメリカに尻尾を振って、何でもかんでも大人しくホイホイついていくのもどうなのかと思う。

 戦後からのアメリカと日本の関係が詳しく書かれていて、戦後史の勉強になる本である。沖縄の問題とか今までしっかり考えてこなかったけれど、そりゃ沖縄の人も怒るよなあということがたくさん書かれていて、こんなことになっているのかといろいろ驚かされた。
タグ:矢部宏治
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憲法主義 [法律]


憲法主義:条文には書かれていない本質

憲法主義:条文には書かれていない本質

  • 作者: 内山 奈月
  • 出版社/メーカー: PHP研究所
  • 発売日: 2014/07/16
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)



 憲法学者がアイドル歌手に憲法を解くという異色の本。

 キワモノかと思いきや、非常にしっかりした憲法の解説書になっている。憲法のしくみについて、その歴史的背景や制度の意味が丁寧に解説されていて、これ一冊で憲法の全体像をつかむことができる。アイドルも、憲法を暗唱するくらい知識豊富で、講義の内容もすらすら理解していて、頭がいいんだなあとびっくりさせられた。

 憲法というのは、国家権力を縛るためのしくみである。国家権力というものは、放っておくと暴走しがちである。歴史をひも解いていくと、国家機関は様々な問題行動を繰り返してきた。独裁に走ったり、思想・言論統制を行ったり、不平等な扱いをしたり、少数派を虐殺したり、他国を侵略したり。多くの人々の犠牲が生じた。

 民衆も黙ってばかりいたわけではない。人々はこうした国家の暴走や傲慢に対して業を煮やし、自ら立ち上がって、アメリカ独立戦争、フランス革命など、反乱を起こすこともしばしば。国家対人民をめぐる闘争の中で、多くの血が流れた。

 こうした様々な歴史的な紆余曲折があるなかで、人々はどんな国家が理想か、どんなシステムがよりよいものになるのかを考えるようになった。そして、国家を理想的なシステムにすべく、憲法にその設計図を組み込んだのだ。

 日本の憲法は、GHQが草案をつくっているので、こうした世界史の背景が踏まえられている。人権規定にしても、国民主権にしても、違憲審査制にしても、それぞれに歴史的な由来があって規定されたもの。歴史上の様々な悲劇を繰り返さないよう、先人たちの知恵を集結したものといえるだろう。

 本書を読むと、それぞれの仕組みの大元がどこにあるのか、どんな思想でこのようなシステムが作られたのかがよく分かって大変興味深い。完璧なシステムなどあるわけがないし、日本の憲法にもいろいろなデメリットはあるようだが、他のシステムに比べたら大分ましなんじゃないかということが見えてくる。時事的な問題についても語られていて、大いに勉強になる一冊だ。
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2円で刑務所、5億で執行猶予 [法律]


2円で刑務所、5億で執行猶予 (光文社新書)

2円で刑務所、5億で執行猶予 (光文社新書)

  • 作者: 浜井浩一
  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 2009/10/16
  • メディア: 新書



 刑事政策の専門家である筆者が、犯罪予防や司法制度に関わるおかしな常識や犯罪神話にメスを入れ、事実に即した解決策を提案した本。

 統計データや実験研究に基づいて、犯罪をめぐる様々な政策や制度について、説得的にその実態を分析している。割れ窓理論や防犯カメラの犯罪抑止効果が思ったほどではないことが書かれていたり、無期懲役が終身刑化しているという話など、これまで持ち続けてきた間違った常識を覆してくれるようなところが興味深かった。

 治安の状況の推移、財産犯の被害回復率と起訴猶予率の関係、受刑者の再犯状況などが、統計データで示されていて、犯罪をめぐる様々な状況をチャートなどで概観できて、とても頭がすっきりする内容でもある。

 犯罪者などというと、いかにも凶悪な人間をイメージしてしまうけれども、本書を読むと、実際には身寄りがなかったり、仕事がなかったり、高齢であったりと、社会的に弱い立場にいる人間が受刑者となってしまうケースが多いことが分かる。そして、一度刑務所を出所したあとに、社会に出ようとしても、やはり仕事がなかったり世間とのつながりがなかったりして、再度犯罪を犯してしまうという負の連鎖に陥ってしまうのだ。

 全く別の世界の人間などではなくて、同じような境遇に立たされたら誰でも犯罪者になりえてしまうんじゃないかなあなどと考えてしまった。弱者を切り捨てる社会が犯罪者を生みだしてしまっているとも言える。

 犯罪対策や犯罪者の更正を図っていくにしても、こうしたデータに即した解決策をとらなければ、とんちんかんで意味のない結果がもたらされるだけ。むしろ害悪にすらなりうる。本書は、どんな刑事政策に本当に意味があるのか、どんな刑事司法制度が望ましいのかについてヒントを与えてくれる有益な本だった。
タグ:浜井浩一

「ネットの自由」vs.著作権 [法律]


「ネットの自由」vs.著作権: TPPは、終わりの始まりなのか (光文社新書 604)

「ネットの自由」vs.著作権: TPPは、終わりの始まりなのか (光文社新書 604)

  • 作者: 福井健策
  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 2012/09/14
  • メディア: 新書



 著作権法を専門とする弁護士が書いた、現代社会におけるインターネットの自由と著作権とのせめぎあいについての本。

 いま世界では、SOPA(オンライン海賊行為防止法)、ATCA(模倣品・海賊版拡散防止条約)、TPP(環太平洋経済連携協定)といった、知的財産権に関する取り決めをめぐって論争が巻き起こっている。これらの取り決めには、世界的な海賊版の広がりをくい止める狙いがあると言われているが、それはネット上の検閲であってユーザーの自由が侵害されてしまうのではないか、アメリカのスタンダードの国際化ではないのかといった指摘がなされ、世界中でデモや抗議運動が起きている。

 本書ではこうした世界で起きているインターネットと知的財産権の論争をたどるとともに、日本で大きく話題となっているTPPの知的財産に関する条項案について、詳細にその内容を検証している。知的財産権とインターネットの自由の対立が起こる背景とその解決策の模索についても書かれている。

 TPPや違法ダウンロード刑罰化など、タイムリーな話題について丁寧な解説がなされていて、どこに問題があったり、どのような対立軸があったりするのかが明確に分かる内容で、非常に参考になる本だ。新聞やテレビではあまり詳しく取り上げない分野なので、常々もっと詳しく知りたいなと思っていたのだが、これ一冊で論争のポイントと背景がある程度分かるようになっている。TPPについては、リークされた条項案を1条ずつ解説していて、これ以上詳しい解説は他には見当たらないだろう。

 デジタル社会の普及によって、海賊版が横行したり、有名無名のユーザーによる無数の無料コンテンツの発信ということが行われたりして、コンテンツ産業は競争が激化し、コンテンツで収益を上げるのが難しくなっている。知財強化の動きというものも、こうした既存のコンテンツ産業の危機意識が背景になっているそうだ。どのようにマネタイズを行うのか、フリーの商品とどのように対抗するのかといった、現在問題になっている大きな社会のうねりのようなものが見えてくる本で、とても興味深い。著作権に限らず、インターネット社会を考えるための材料がたくさん詰まった良書ではないかと思った。
タグ:福井健策