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幸福の資本論 [人文]


幸福の「資本」論―――あなたの未来を決める「3つの資本」と「8つの人生パターン」

幸福の「資本」論―――あなたの未来を決める「3つの資本」と「8つの人生パターン」




 幸せになるのは容易なことではない。青い鳥は追いかけても追いかけてもするりと逃げてしまう。 

 「幸福の資本論」に、幸せの要素は「金融資産(お金)」「人的資本(自己実現)」「社会資本(家族・友人とのつながり)」の3つだと書かれていた。この3つが全部そろっていれば幸せだが、どれかが欠けると不幸の元になる。

 お金が大事なのは誰も否定しないだろう。だが、金持ちになれば幸せかというと、そう簡単にはいかない。金持ちは家族・友達がいなくて孤独になるケースも多いのだ。宝くじに大当たりしたとたん、家庭や友人関係が崩壊して破滅したなんていう話はよく聞く。

 じゃあ、自己実現を突き詰めていけば、幸せになれるだろうか? 仕事を極めて世間の注目を浴びて大スターになる。まさに夢の実現。誰もがうらやむ充実した人生。だけど、こうした人たちは人一倍プレッシャーがかかるし、注目を浴びるとスキャンダルに巻き込まれたりして、いろいろと苦労も多いのだ。

 結局、家族・友達に囲まれている人が一番幸せなんだろうか? お金や仕事がなくても、家族・友人が支えてくれれば幸せだろう。孤独とは無縁の世界だ。だが、家族・友人に依存することになるので、家族・友人が死んだり、コミュニティから排除されてしまうと生活が不安定になる。

 要はバランスが大事ということなんだろう。3つの要素をバランスよくそれなりに充実させれば、幸せな世界が待っている。

 「幸福の資本論」を読むと、幸福とはなにかについて細かく分析されていて頭の整理になる。言っていること自体は、まあそうだよねという当たり前の話なのではあるが、幸福・不幸にまつわる様々な事例がたくさん載せられている。金融の専門家が書いているので、とくに経済的な話が多くて、いろいろと勉強になった。

 とはいえ、この本を読んだからといってすぐに幸福になれるかというと、そんなに簡単にはいかないだろう。向かうべき方向性くらいは示してくれるけれども、幸せになるための具体的な方法論まで書かれてあるわけではない。お金が大事、友達が大事ということまでは分かるが、どうやってお金を増やすか、友達をつくるかということまでは書かれていない。

 置かれている環境も目的も様々なのだから、そもそも方法論など書くことはできないだろう。結局、幸せになるには各人が行動して努力するしかないし、近道があるわけではないのだ。
タグ:橘玲
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史上最強の哲学入門/東洋の哲人たち [人文]





 つらいなあとか苦しいなあとか、人間は日々悩む生き物である。あまりに悩みすぎて苦しくなったとき、思わず死んでしまいたくなってしまったとき、どうすればよいのだろう?

 ひとつには、理屈にすがるというやり方がある。ロジカルシンキングというか、問題点を掘り下げていって、原因を解決しようという試みだ。

 でも、このやり方には限界がある。理屈で原因を探ることができるかもしれないが、原因が分かっても問題解決が現実的に不可能なことだって多々あるのだ。いくら理論武装したからといって、不安から逃れることはできはしない。 

 また、神にすがるという人もいるだろう。しかし、日本人は無神論者が多くて、神にすがることも難しいかもしれない。

 こんなときに有効なのは、もしかしたら東洋哲学の考え方かもしれない。東洋の哲学者たちは古代より、苦しみとはなにか、この世界とは何かということについて考えてきた。しかも、理屈をこねくり回すだけではよしとせず、体感を重視してきた。真理に到達することで、あらゆる苦しみから解放されるという実践的な教えなのだ。

 じゃあ、東洋哲学とは具体的にどんな教えなのかということは、本書を読むとよく分かる。

 今までこの手の解説本は何冊か読んできたが、こんなに面白いものは初めて読んだ。難解な東洋哲学について、非常に分かりやすく解説してくれている。老子の言うタオって何なんだろうとか、念仏ってなんで唱えるんだろうとか、古代インドではなんで苦行なんてものをやっていたんだろうとか、前から気になっていたモヤモヤがこの本を読んでようやっと晴れた。

 とはいえ、この本を読んだからと言って、東洋哲学の真理に達することができるわけではもちろんない。東洋哲学の真理は理屈や知識で理解するものではなく、あくまでも体感が必要だからだ。実際に読んでみて、東洋哲学が何をゴールとしているのかを頭でイメージすることはできたが、実感するまでには至らなかった。真理に到達するためには、やはり修業が必要なのだろう。
タグ:飲茶
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法然親鸞一遍 [人文]


法然親鸞一遍 (新潮新書)

法然親鸞一遍 (新潮新書)




 仏教というのは、輪廻からの解脱のために、お坊さんが出家して厳しい修行を行うもの。悟りを開くのが目的。元来そんなイメージがある。

 ゴータマ・シッダールタの仏法はたしかにそのようなものだったのだろうけれど、教えが世界に広がるにつれてその内容も様々に変化していったらしい。

 とくに、日本では鎌倉時代の頃に仏教のニュームーブメントが起こる。法然や親鸞といった人物が現れて、仏教の新たなあり方を提示したのだ。

 彼らの考えは、それまでの出家者が厳しい修行をして悟りを開くという伝統的な立場を打ち壊すものだった。それは、別に出家者でなくても、念仏を唱えれば救われるというもの。悟りを目的としないので、方向性を大転換させたものといえるだろう。

 念仏を唱えれば誰でも救われる。この新しい考えは、これまでの出家者を中心とした仏教を、庶民のための仏教に変えることになる。乱世の時代において苦境にある人々、世間から落ちこぼれた者なども仏教が包容し、多くの人々の拠り所となっていく。そして、この仏教のあり方は、現在に至るまで脈々と受け継がれていく。

 本書は、こうした仏教の新たなムーブメント、浄土仏教を提示した主な3人の人物、法然・親鸞・一遍について解説した本である。

 ヨーロッパの歴史を見ると、キリスト教の宗教改革という話が出てくるけれども、日本でもパラレルに宗教的な改革が行われていたわけである。伝統的な仏教の立場との対立もあったそうで、法然らは仏教徒からの批判にさらされている。本書にはそのあたりの顛末が書かれていて興味深い。

 浄土仏教の考えは、現代の人の生活の中に溶け込んでいて、当たり前のようになってしまっているが、元々はこういう深い対立があったのである。

 社会には様々なルールがある。法律はもとより、社会的な慣習だったり、世間体といったものもあるだろう。しかし、こうした社会ルールに不適合な者、落ちこぼれ、そういった人間であっても仏法の世界はつまはじきにしたりはしない。はぐれ者であっても救済するのが浄土仏教の世界。

 元々の仏教のあり方からは随分と違うものになってしまっているようにも見えるけれども、はぐれ者さえも包容するというこの考えにはいたく感動してしまった。社会や世間のこうあるべきだというルールとは異なる世界観があるというのは、とても救われる気がするのだ。

 鎌倉時代の人々のみならず、現代の人々にも通用するような部分もあるのではないかと思った。
タグ:釈徹宗
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仏教思想のゼロポイント [人文]


仏教思想のゼロポイント: 「悟り」とは何か

仏教思想のゼロポイント: 「悟り」とは何か




 仏教徒たちは何を目標にして厳しい修行を行っているのだろう? ブッダの言っていた「解脱・涅槃」とはどういう意味なんだろう? 

 仏教の教えについて根本的なところから分かりやすく解説したのがこの本、「仏教思想のゼロポイント」だ。

 生きるということは苦難の連続である。死や病気の苦しみというものがあるし、離別の苦しみというのもある。本来楽しいはずの快楽から来る苦しみもある。好き嫌いやこだわりのあまり、いつまでも満足できずに苦しむ。「本当ならこうだったはずなのに……」などと、あるべき理想の姿と現実とのギャップに絶望してしまう。

 このような苦しみが一生の問題なのであれば、死ぬことによって苦しみは終わるはずである。どうにかこうにか死ぬまで我慢すればいい。

 だが、仏教の基盤は輪廻転生の世界観である。死んだら終わりではなく、生と死を何度も繰り返すというのが仏教の基本的な考え方だ。だから、死んだ後も終わりのない苦しみが未来永劫繰り返されるのだ。

 ブッダはこうした苦しみ(煩悩)から解放される方法について実践し続けたのだとか。どうやったら苦しみの連鎖から逃れることができるのだろう? 本書はブッダのいう煩悩からの解放について、「悟り」「解脱」「涅槃」とは何なのかについて、詳しく説明している。

 仏教にはわりと現実的なところがあるので、現世を生き抜くための自己啓発書のようなものなのかなあと考えていたが、本書を読んでそれは仏教の本質からするとかなり違うことが分かった。

 仏教は正しく生きるための道を説いているわけではない。むしろ、出家者は労働をしてはいけないことになっているし、異性に対して興味を持ってもいけないことになっている。社会を成り立たせているものを否定するわけだから、正しく生きる道というものとは随分異なっているのである。

 出家者に求められるレベルの仏教修行のようなものは、とても厳しすぎてなかなか実践できないだろう。ただ、苦しみのプロセスを観察する、煩悩の原因を追及するというくらいのゆるい実践であれば、自分にもできそうだと思った。

 元来信心深くなかったのだが、最近なぜか宗教などに興味が出てきたので、仏教の本質についてわかりやすく解説されていて面白い本だった。
タグ:魚川祐司
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「幸せ」について知っておきたい5つのこと [人文]


「幸せ」について知っておきたい5つのこと NHK「幸福学」白熱教室

「幸せ」について知っておきたい5つのこと NHK「幸福学」白熱教室




 幸せって何だろう?
 
 お金があれば幸せなんだろうか? 仕事があれば、家庭があれば幸せだろうか? どんなふうにしたら幸せになれるだろう?

 本書はそんな幸せについて学術的に研究した結果をまとめたもの。よりよい生き方をするためのヒントが詰まった一冊だ。

 「お金」「仕事」「逆境」「人間関係」とテーマを分けて、各項目と幸せとの関係を探っていく。

 「高収入だからといって幸福とは限らない」「幸福感は長続きしない」「モノを買うよりも経験を買うべし」「仕事で幸福感を得るには報酬や地位ではなく、社会に役に立っているという意識が必要」「悲しいことが起きたら、目の前にある幸福に感謝する」などなど、参考になるようなことがたくさん書かれている。

 本書を読むと、幸せというのはお金があるからとか地位があるからとか、そんな単純なものではないんだなあということが見えてくる。客観的に幸せそうに見えてもそうでないことがあるらしい。宝くじに大当たりしても不幸になる人間はいる。お金や権力を求めてどんどん上昇していけば幸せになるというわけにもいかないらしい。

 恵まれた環境にいるのに不幸な人間がいる。逆境のただ中にいるのに幸せな人もいる。幸せというのは、一筋縄でいかないところが分かって面白かった。

 そもそも、幸福について研究している人がいるのかというところも興味深い。幸福というのは測定することができなくて主観的なところがあるので、研究するのも苦労するだろうな。

 さらっと読めるけれど、いろいろ人生について考えさせられる含蓄のある本。本書に書かれていることを参考にして、幸せになれたらいいなと思った。
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運のいい人の法則 [人文]


運のいい人の法則 (角川文庫)

運のいい人の法則 (角川文庫)

  • 作者: リチャード・ワイズマン博士
  • 出版社/メーカー: 角川書店(角川グループパブリッシング)
  • 発売日: 2011/10/25
  • メディア: 文庫



 人生で成功を収めるには、才能というものも重要だろうけれど、運のよさも必要だろう。とくに秀でた才能の持ち主であれば、向こうのほうからどんどんチャンスがやってくのかもしれないけれど、凡人の場合、ごくたまにやってくるチャンスをうまくつかみ取る必要がある。

 では、そうしたチャンスをうまく見つけたり、運を高めたりする方法というのはあるのだろうか? 運・不運というものはある程度自分でコントロールすることはできるのだろうか?

 本書「運のいい人の法則」は、まさにそうした運の良さについて研究した本。イギリスのハートフォードシャー大学の心理学者である筆者は、数百人の人間を調査したり、心理学の実験を行ったりして、どうすれば運のいい人間になれるのかを、つきとめようとしている。

 本書によると、運のいい人間にはいくつかの共通パターンが見られるという。それは、①チャンスを広げる努力をしていること、②自分の直感を大切にしていること、③将来への期待感を持っていること、④失敗にへこたれない力の4つ。

 最初はなんじゃこれはと思ったけれど、よくよく読んだら、確かにそうだなあとも思えてきた。

 まず、挑戦する回数を増やすということ(①)。「下手な鉄砲数打ちゃ当たる」戦法である。運のいい人というのは、意識するとしないにかかわらず、人よりも多く挑戦しているから、成功する確率が高くなっているのだという。言われてみれば当たり前の話だ。チャンスを得るためには、チャンスを得るための機会にたくさん遭遇する必要があるのだから。

 また、直感を大事にするということ(②)。せっかくいいチャンスが来ているのに、気づかなければ意味はない。成功につながる機会を見逃さない眼力が必要だし、意外なところにあるチャンスを見過ごさないように、普段から肩の力を抜いて生きることが大事。

 将来に期待する、夢や目標を持つということも大事だろう(③)。目標意識がある人間とない人間とで比べたら、やはりモチベーションが相当違ってくる。目的意識がはっきりしないとすぐにあきらめてしまうが、強靭な目的意識があれば、苦労や失敗にもめげずに何度も挑戦することができる。

 不運をバネにする力というのも重要だ(④)。どんな分野でも1回で成功できるわけはない。何度も繰り返し失敗した後で、ようやく成功できるのが普通だ。とすれば、失敗をおそれないことが大事だし、同じ失敗を繰り返さず、失敗から学ぶ努力も必要になってくる。

 人生というのは、偶然性の連続である。未来を完璧にコントロールすることなどできない。避けられない事故や事件に巻き込まれてしまうことだってある。

 だが、すべてが偶然というわけでもなくて、ある程度は努力をすることで、未来を少しでも切り開いていくことができるのかもしれない。幸運の女神は、自ら行動する人間に微笑む。幸運が降ってくるのをただ指をくわえて待っているのではなくて、自分から幸運を呼び寄せることが大事で、努力をすれば少しは人生をよい方向に変化させることができるのかもしれない。

 本書にはそんな幸運を得るためのヒントがたくさん書かれていて、苦難に立ち向かう勇気をくれる、前向きな気分にさせてくれる一冊だった。
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選択の科学 [人文]


選択の科学 コロンビア大学ビジネススクール特別講義 (文春文庫)

選択の科学 コロンビア大学ビジネススクール特別講義 (文春文庫)




 人生は選択の連続である。

 次から次にさまざまな分岐点が現れて、どの道を進むか選び取っていかなければならない。どんな学校に入るのか? どんな仕事に就くのか? どんな人と結婚するのか? 無数の選択をしてたどりついた結果が現在の自分であるといえるだろう。

 でも、ときどき考えてしまうこともある。もしもあのとき他の選択をしていたらどうなっていただろう? 人生は今とは違ったものになっていただろうかと。

 選択とはたくさんの可能性の中から、ひとつの道を選び取ること。他の可能性を切り捨てることになってしまうから、選択するということはけっこう悩ましいものである。

 本書「選択の科学」は、まさにそうした選択をテーマに書かれた本。選択にまつわるさまざまな疑問に答えてくれる一冊だ。

 選択を行う方法は人によって違うのか? 出身や生い立ちが選択にどのような影響を及ぼすのか? 選択肢が多いことはいいことなのか? 選択を他人にゆだねるべきときはあるのか? 選択をより効果的に行う方法とは? 選択肢が無数にあるときにはどうするか? 選択をめぐって、興味深い話題が満載だ。

 本書を読むと、選択そのものについていろいろと誤解していたことにも気づかされる。

 たとえば、選択などというと、選択肢がたくさんあればあるほど幸せなんだと思ってきた。単純に可能性が多いほうがいいんじゃないかとつい考えてしまっていた。でも、実際には、選択肢が多すぎるとかえって不利益になるという実験報告があるそうだ。むしろ選択肢の乏しいほうが利益になることがあるという。

 また、人が選択をするとき、自由な意思で選び取っているように感じてしまうが、実際にはそうでもないらしい。極端に奇抜な選択肢は無意識のうちに排除されるし、周囲にどうみられるのかとか、流行はどうかとか、いろいろ考えあわせるうちに選択肢が絞られていって、選択の幅は小さくなっていく。自由な意思で選択したように見えて、実は強制的に選ばされているのかもしれない。

 そもそも何を選択ととらえるのかという選択に対する見方も、文化によって異なる。欧米人とアジア人を比較すると、選択についてのとらえ方が大きく違ってくるという。

 今まで当たり前のように考えてきたことが、ガラガラと崩れていく面白さ。これまで無意識のうちに選択してしまっていたことが多くて、あまり深く考えてこなかったが、本書を読んで選択ということについて意識的に考えさせられてしまった。

 どんな選択をするかが、人生の大局を左右してしまうことだってある。これからも様々な分かれ道がやってくるだろうけれど、選択肢が現れた時にはこの本に書かれていたことをふと思い出してしまいそう。それくらい示唆に富んだ、生きるヒントになるような一冊だった。
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一神教と国家 [人文]





 世界に広がるイスラム世界をテーマに、イスラム学者の中田考と思想家の内田樹が語り合った対談本。

 現代はグローバル化の時代といわれている。全世界の市場を開放して、アメリカ型の価値観を広めて、世界中に似たような政治体制を確立して、英語を公用語にして、みんなが同じ商品を買って、同じようなものを食べてという、世界のフラット化が到来しようとしている。

 日本も含めて世界中の国々がこのグローバルの波に乗っかろうとしているのだけれど、貧富の差の拡大、環境や文化の破壊など、問題点があることも指摘されている。

 アメリカを先陣にグローバル化が推進される中で、この流れを押しとどめようという勢力も存在しているという。それが、本書のテーマでもあるイスラム世界。

 イスラムの古くからの慣習や信仰は、アメリカ的な世界観とは異質なものだ。こうした文化的な価値観の違いは世界のあちこちで衝突を生み出している。世界中で起きている紛争のいくつかは、こうしたグローバリズムとイスラム世界との衝突が原因になっているんじゃないかというのが筆者らの意見。

 本書を読むと、世界で起きている大きな潮流が見えてきて面白い。アメリカを中心とするグローバル勢力とイスラム世界との文明の衝突。世界で点在する出来事がひとつながりに見えてくるような感覚がしてくる。

 グローバル時代というけれども、その先陣を切っているアメリカ自身が二極化して苦しんでいたりするので、何が正しいのやら。もともと親米だった国がイスラムの原点に回帰する例なども出てきて、ますます世界は混迷を深めている。

 一つの価値観だけじゃなくて、世界には多様な価値観があることに気づかせてくれる本。世界を俯瞰することのできるダイナミックな一冊で、面白かった。
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「自分」の壁 [人文]


「自分」の壁 (新潮新書)

「自分」の壁 (新潮新書)




 解剖学者の養老孟司が「自分」という問題について語った本。

 「個性の発揮」とか「自己実現」とか、現代社会は「個」がおおはやりである。ビジネス書や成功本などを読んでも、「自己啓発」が、ひとつのジャンルになっているほど。個人主義の時代なのだ。

 でも、この「個」というもの。日本ではもともとそれほど大切にしてこられなかった。もともと日本はムラ社会で、「世間」のルールが重視されてきた。共同体意識の強い国だったのである。

 個人主義がはじまったのは、明治以降、西洋から「近代的自我」という考えが入ってきてからのこと。戦後になると、戦争の反省からか、ますます「自己」が大事ということになって、「世間」というものを徐々に解体する方向で進んでいった。

 それでも、「世間」の役割を会社が一部担っていたが、現代では会社のあり方も変わりつつあって、完全な個人主義の時代に入りはじめている。

 筆者は、日本人がこうして個人主義をもてはやしてきた結果、人間関係が希薄になって、個人個人がバラバラになってしまった。日本は、人間的な絆が壊れてしまった、さもしい世界になってしまったんじゃないかと述べている。その結果、様々な現代的な問題が発生しているのではないかと。

 あまり今まで意識したことはなかったが、確かに言われてみればという感じで、面白い話だった。

 一方では「自分探し」「個性の確立」というプレッシャーをかけられると同時に、他方では「絆を大切に」というプレッシャーをかけられて、矛盾するメッセージが飛び交う中を右往左往。「個人」と「共同体」の間で引き裂かれているのが、現代の日本人の姿なのかも。

 絆が大事といっても、世間が解体されて、個人個人がばらばらに生きていて、共同体に帰属しようにもどこへ行ったらいいのやら。共同体を探してあてどなくさまよわざるをえない。なんとも生きづらい世界になったものである。

 いくら「世間」は煩わしいとはいっても、どこかに帰属することで安心感を得られるのも事実であるし、意外なコストの削減にもつながるので経済的なメリットもある。失敗しても、「自己責任だ」と切り捨てるのではなくて、共同体の中でケアしていく。本書を読んで、共同体に所属することの意味は想像以上に大きいのかもしれないと感じた。

 「個」を大切にするのか、「世間」と折り合うのか、まだ明確に整理がついていないところはあるけれども、新たな視点を与えてくれたようで、面白い一冊だった。
タグ:養老孟司
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嫌われる勇気 [人文]


嫌われる勇気―――自己啓発の源流「アドラー」の教え

嫌われる勇気―――自己啓発の源流「アドラー」の教え




 人生の途上において、同じところを足踏みしているだけじゃなくて、新しい世界が開けたらいいのになあと思うことがある。新しい能力を身につけたり、悪い部分を改善したりして、自分を変えることができたらいいのにと。今とはちがう自分になりたいという変身願望である。

 だが、実際には自分を変えようと思っても、容易にはいかない。いろいろな不安が出てきて、心の中での抵抗が出てくる。自分が変わって、新しい苦労・競争にさらされたらどうしよう? 新しいことを始めて誰かに嫌われたらどうしよう? などなど……。

 本書は、こうした心の変化について書かれた本である。誰でも変化することができるということや、心理的抵抗というのは自分が作り出した幻想であるということなどが書かれている。「他人と競争することは無意味」、「嫌われる勇気を持つべき」、「過去のトラウマなんて存在しない」など、一見するとなんだこれはというような刺激的な話がたくさん出てくる。

 本書のベースになっているのは、アルフレッド・アドラーという心理学者の考え方。心理学の世界では、フロイト、ユングが日本では有名だが、欧米では彼らと並んで第三の巨頭として、アドラーの名前が広く知られているそうだ。本書はアドラーの心理学についてまとめられていて、アドラー心理学を支持する哲学者と、彼を論破しようとする青年との対話という形式で書かれている。

 アドラー心理学というのは知らなかったので、非常に興味深かった。読んでみると、いろいろな自己啓発書で言われているようなエッセンスが散見されて、人生論について先端を行っていたのだなあと驚かされた。新たな気づきもたくさん見つかった。

 心の変化の話から始まって、人生の意味にまで話が波及。数々の名言が書かれていて、大いに勉強になる。「人は怒りをねつ造する」「承認欲求は捨てるべし」「人を育てるには、ほめても叱ってもいけない」「変えられる部分を変える勇気を持ち、変えられない部分は受け入れる」「大事なのは共同体感覚」「他人の課題と自分の課題を区別する」「過去でも未来でもなく今を生きる」などなど、気になる言葉がいっぱい。

 読んだばかりでまだまだ未消化なところも多いのだが、もろに影響を受けてしまった。人生のスタンスとして使えそう。もっとじっくり読みなおしてみて、生きる糧にしようと思った。人生観が変わってしまうような、心が揺さぶられる刺激的な一冊だった。
タグ:岸見一郎
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君たちはどう生きるか [人文]


君たちはどう生きるか (岩波文庫)

君たちはどう生きるか (岩波文庫)


 

 中学2年生のコペル君の日常を通して、人生をいかにして生きるべきかを問いかけた本。

 コペル君は、学校でさまざまな経験をする。勉強はもちろんのこと、友達との交流、喧嘩騒動、上級生との軋轢……。多くの経験を通して、楽しい友情であったり、苦しい悩みだったりと、いろいろな感情がわきあがってくる。

 たとえば、友人が上級生にどやされて苦しんでいるときに何もしてあげられなかったときなど、コペル君は自己嫌悪に陥って寝込んでしまうようなことさえあった。どうしたらいいのか頭の中にもやもやしたものが残って、整理がつかない状態。

 そんなときにいつもヒントを与えてくれるのは、コペル君の叔父さん。叔父さんは、コペル君が体験した出来事をもとに、それがコペル君の人生にとって、周りの人々にとって、世界にとってどんな意味があるのかを導きだしてしまう。叔父さんはコペル君に、世界はこんな風に見るといいよと、多くの新鮮な見方を教えてくれるのだった。

 真実の体験とは何か? 偉大な人物とはどういう人か? 貧しさについてどのように考えるのか? 人間はどうして悩むのか? コペル君は人生の本質を学ぶことになる。

 本書を読んで、最初は昔の中学生の日常が淡々と描かれていて、これはなんだろうと思ったが、叔父さんとの対話を通して人生について語られる部分を読んで、大いに考えさせられてしまった。まさに人生の真理を突いていて、ああこういうことだったのかと今更ながら気づかされるところも多かった。

 どうやって生きたらいいのか、どういう風に世界を見たらいいのか? そのヒントを与えてくれる本で、人生の糧になるような内容。文体は小学生でも読めるような軽いものだが、書かれている言葉は大人が読んでもずっしりと心に響くような深みがある。

 生活の中で起こる様々な出来事。ちょっとした出来事でも、じっくり観察して深く考えることで、普遍的な真理に近づくことができるのかもしれない。身の回りの出来事をもっと大事に見なければいけないなあと、本書を読んで反省させられてしまった。
タグ:吉野源三郎

世界を変えたいなら一度“武器”を捨ててしまおう [人文]


世界を変えたいなら一度

世界を変えたいなら一度"武器"を捨ててしまおう




 地政学・戦略学者である筆者が教える戦略学の世界。「戦略」の概念を解説するとともに、人生戦略を練るためのヒントを教えてくれる本。

 「戦略をたてる」とか「作戦を練る」とかいう言葉が日常の生活の中でもよく使われているけれども、当然のことながらもともとは軍事上の概念である。

 1800年頃、ヨーロッパでナポレオン戦争が起こっていた時期、プロシアの軍人カール・フォン・クラウゼヴィッツが独自の戦争論を展開した。彼はひとくちに「戦略」といっても、「戦術」「戦略」「政策」というように、複数の階層があるということを提唱。「戦略」というのは、相手国に「政策」を「戦術」という武力手段で押し通すための概念であると考えた。

 クラウゼヴィッツのこの考え方は、後世の人々によってさらに発展させられ、戦略の階層はさらに細かく分類されるようになった。今では、戦略には7つの階層があるとされ、上から「世界観」→「政策」→「大戦略」→「軍事戦略」→「作戦」→「戦術」→「技術」というピラミッド構造にまとめられている。

 欧米諸国ではこの戦略の階層構造について自覚的で、「世界観」としてキリスト教がバックボーンになっているし、「戦略」を練るのも得意だが、対して、日本は「戦術」や「技術」には長けているけれども、「世界観」があいまいだったり、そもそも「戦略」の階層構造の理解に乏しいという特徴があるという。その結果、日本人は与えられた環境やルールの中で「技術」を磨くことにかけては超一流だけれども、諸外国によって勝手にルールを変えられてしまって、結局いいところを全部もって行かれてしまうという憂き目を見ることも。

 たとえば、ITの分野でアマゾンやアップルが流通のしくみを全部支配して日本が太刀打ちできなかったり、金融分野でBIS規制という国際基準が作られてしまい日本の銀行が崩れていったりしたのも、日本と外国との間の戦略に対する考え方の差なんじゃないかというのが筆者の考え。

 では、こうした戦略階層を人生に当てはめていったらどんなことになるのかというのが本書のテーマである。読者に向けた人生戦略の構築法。ビジネス語学勉強などを例にとりながら、戦略的に生きることの重要性について説いている。

 これまで「作戦」も「戦略」もいっしょくたに考えていて、戦略の構造という考えは全く知らなかったので、本書を読んでなるほどという感じがして面白かった。むやみやたらに「戦略」を練ってもしかたがなくて、まずは「世界観」を構築することが必要なんだなということが見えてくる。そういえば、アップルだったりアマゾンだったりグーグルだったり、いまをときめく大企業というのは「世界観」がはっきりしていて、「こんな未来にしたい」という明確な未来ヴィジョンがあって、そのヴィジョンに向けて「戦略」を練っているイメージがあるので、ヴィジョンを持っていることの強みというのはたしかにあるよなあと思った。

 これからグローバル社会がやってきて、国際的にサバイバルする能力が必要になるなどといわれることが多いけれども、やみくもに語学や資格などの「技術」を磨くだけではダメで、もっと俯瞰的な「作戦」「戦略」を練る必要があるし、自分の中で「世界観」たるヴィジョンをもつ必要があることを考えさせられた。「どんな自分になりたいのか?」「どんな世界に生きたいのか?」「そのためにはどんなことをする必要があるのか?」自分の中で様々な問いかけをしていく必要があるんじゃないか。

 「戦略」とはそもそもどんなもので、どんな階層があるのか、どのように「戦略」を組み立てていけばいいのか、そのヒントを教えてくれる一冊。本書を読んで「戦略」という概念がよくわかったので、ちょうど年初でもあるので、新年の抱負というか、こうありたいという未来の姿をじっくり考えてみたいと思った。
タグ:奥山真司

池上彰と考える、仏教って何ですか? [人文]


池上彰と考える、仏教って何ですか?

池上彰と考える、仏教って何ですか?




 人生、苦難の連続である。

 次から次に壁が現れては、乗り越えなければならなくなる。健康、お金、仕事、人間関係……。悩みがひとつ解決したと思ったら、すぐまた別の悩みが生じる。まさに、一難去ってまた一難といったところ。

 もしこんな苦しみから逃れる方法があったら、どんなにかありがたいことだろう。悩みを克服する良い方法はないものなのか?

 紀元前5世紀のインドで、すでにこのような人生の苦しみについて、思索にふけっていた人がいたという。ゴータマ・シッダッタ(ブッダ)。シャカ国の王子。のちに悟りを開いてその考えを広め、その教えは仏教と呼ばれるようになる。

 ブッダは、王子として宮殿の中で何不自由ない生活をしていたにもかかわらず、思索的な性格からか物思いにふける日々を送っていた。ある日、外出先で老人、病人、死者を目にし、その人生のはかなさや苦しみに衝撃を受けると、こうした苦しみを逃れる方法を見つけることが自らの人生の目的なんだと考え、宮殿を飛び出して修行の道に入ってしまう。そして、ついに人生の真理にたどり着くことになるのだ。

 本書は、そんなブッダの人生とその教え、仏教伝来の経緯について、ジャーナリストの池上彰が分かりやすく解説した本である。入門的な本ながらも、仏教について幅広く知ることのできる良書。ダライ・ラマ14世との対談も載せられている。

 ブッダによると、この世の苦しみの原因は「煩悩」にあるんだそうだ。限度のない欲望を抱いたり、他人に怒りをぶつけてしまったり。人生思う通りにいかないのが当たり前なのに、なんでもうまくいくと期待してしまう。そして、期待通りにいかないことがあると、苦悩を感じてしまうのだ。

 ブッダはこうした「煩悩」を取り除く方法はないものかと、思索を続け、その考えを弟子たちに教えていった。その教えが脈々と語り継がれていって、仏教の教えとして現代にまで残される。

 悩みを抱えていたのは、現代人も昔の人も同じ。時代は異なっていても、同じ人間である。悩みが生じるメカニズムは同じようなものに違いない。だから、仏教の教えは今なお役に立つものといえる。

 本書を読んで、仏教は宗教といっても意外と現実的で、心理学のような雰囲気さえあることが分かって面白かった。現代人にも受け入れられやすそうな、実践的な内容である。悩みを抱えているときなどに、何か良いヒントを教えてくれそうで、もっといろいろと仏教について知りたいと思った。
タグ:池上彰

非常識な成功法則 [人文]


非常識な成功法則【新装版】

非常識な成功法則【新装版】




 人生の目標を達成するための方法について書かれた本だが、一風変わっている。

 巷で見かけるビジネス書でよくあるのは、成功者のサクセスストーリーを語って、その成功への道筋を法則として導き出そうというようなものである。だが、その成功者が成功したのは、たまたまその時代にその環境にいたからだったり、もともと持ち合わせている生まれ持った才能が原因であったりする。

 ある人が成功したからといって、そもそも成功の原因が明確でないので、簡単に法則化できるものでもない。単純な作業マニュアルのようなものであれば、再現可能かもしれないけれど、人生をかけたようなロングスパンでの成功について、法則化して同じように再現することは難しいだろう。

 だから、自己啓発本のたぐいは読んでいて腑に落ちないことも多いのだが、本書に書かれている成功法則は、上記のようなものとはアプローチが異なっている。しかもかなりぶっ飛んだ予想外のものであったので、読んでみてちょっとびっくりした。

 それは、自分のかなえたい夢なり目標なりをただ紙に書いて、ときどき眺めるというもの。紙に書いて、目標を可視化してみる。すると脳の潜在意識が働きだして、勝手に目的達成に必要な情報を集め始める。そして、いつの間にやら自分の立てた夢がかなってしまうというのだ。

 「ホントかなあ?」と半信半疑になってしまうが、でも、ただ紙に目標を書いただけで夢がかなってしまうのであれば、こんなにラッキーなことはない。そもそも元手はいらない。紙とペンさえあればいい。やってみてうまくいかなくても何にも損はないのだ。

 他人の成功を真似しようというものではなくて、あくまでも自分の置かれた環境や持っている条件に応じて、自分の力で目標を達成しようというメソッドであるので、他人の成功体験をまねるよりも理にかなっているようにも感じる。自分の夢は何だろうと考えること、夢に向かって一歩踏み出すこと。それだけでも、何もせずに足踏みを続けるよりもずっと成功への可能性を広げてくれる。

 科学的な根拠があるわけでもないし、やってみないと分からないたぐいの内容なのだか、夢に向かうきっかけを与えてくれる、楽しい気分にさせてくれる本ではある。読み終わって、さっそくガサゴソと机をあさって、紙とペンを探してしまった。
タグ:神田昌典

「いいひと」戦略 [人文]


超情報化社会におけるサバイバル術   「いいひと」戦略

超情報化社会におけるサバイバル術 「いいひと」戦略




 高度に発達した情報社会・ネット社会の中では、どのような生き方をするのが最適なのかを論考し、その解答として「いいひと」戦略というモデルを提唱した本。

 インターネットが発達して、大量の情報が溢れるようになった現代社会。人々の様々な意見が可視化されたり、ライフログが残ったりするようになってきた。

 結果として、人々の評価というものも可視化されるようになって、たとえば、アマゾンで本の評価がレビューや星の数として表示されたり、食べログでお店の評価が格付けされるということも起こってきた。あるアルバイトのマッチングサイトでは、バイトの人間の働きぶりや評価が表示されるというシステムも存在するそうだ。

 これがさらに進むとどうなるか? 就職活動の際に、会社側があらかじめ就職希望者の格付け情報を入手して、評価の高い人間を優先して採用するようになる。部屋を借りる際に、大家さんが入居申込者の評価情報を入手して、借り手として評判のよい人間だけを入れようとしたりする、といったことが生じてくるかもしれない。

 ネットの発達によって、人々はお互いに格付けしてレビューする社会、評価が可視化された社会というものが到来し、評価の高い人間は得をするけれども、評価の低い人間は損をするという評価経済社会がやってくるというのだ。

 そして、このような評価経済社会の中では、「有能」であることよりも、「いいひと」であることが最適な戦略ではないかというのが筆者の見立て。本書において、高度情報化社会における「いいひと」戦略をどのように実践すべきなのかを解説している。

 相互にレビューし合い、レビューの結果がネット上に残ってしまう、ある意味恐ろしい社会が着々と進行しつつあることが具体的な事例とともに書かれていて、社会の流れの変化を知ることのできる興味深い内容。世の中もうこんな風になっているのかとか、こんな人がいるのかという事例がいくつか出てきて面白かった。

 このような評価経済社会においては、自己啓発本にあるような「お金持ちになる」「頭がよくなる」「情報通になる」といったことがだんだんと意味を失ってくるかもしれないという指摘もなされていて、どのような生き方をしたらよいのか考えさせられる。本題の「いいひと」戦略についても、助走から始まって6つのフェーズを経て完成するように、段階を踏んだ戦略が練られていて、実践しやすくできている。

 筆者は以前「評価経済社会」という本を書いていたが、本書はその実践編のような内容になっている。前作が面白かったので、本作はさらに具体的に踏み込んであって、なかなか読みがいがあった。
タグ:岡田斗司夫

スマートノート [人文]


あなたを天才にするスマートノート

あなたを天才にするスマートノート




 ノートに毎日少しずつ書き込みをすることで、人生に好影響を与えることができる。そんな不思議な効果のあるノートの書き方、ノート術について解説した本。

 どんなに頭のいい人でも、脳内で記憶したり情報を処理したりすることには限界がある。記憶したことをどんどん忘れてしまうし、せっかくいいアイデアが浮かんでもあとで思い出せなくなったりする。悩んでいることがあるときなども、頭の中で同じ問題を何度もぐるぐる回転させて、堂々巡りするばかりで一向に解決しない。頭の中だけで物事を解決しようとすると、多大な困難に直面してしまうのだ。

 そこで筆者が考えたのが、スマートノートという手法。日々考えたことや見聞きしたことをノートに書きつけていき、頭の中にあることを外に吐き出していく。そうすることで、自分の思考が客観化されて頭の整理になったり、悩んでいたことが楽になったりする。ときには、自分でも思いもよらなかったようなアイデアが浮かんでくることもあるという。

 最初からたくさん書くのは難しいので、はじめは日々起きたことを5行で日記のようなものを書く。だんだんと難易度を上げていって、起きた出来事を点数で評価したり、論理展開を組み立てたりと、全部で6つの段階に分けて進めていくやり方だ。

 1年前くらいにこの本を読んで、途切れ途切れに続けてまだ第3フェーズにしか至っていないが、それでも自分でやってみてとても役立っている。頭の中だけで考えるとはっきりしないことが、紙に落とすことで見えてくることがたくさんある。物事を整理したり分類してみたり。複雑でもつれている思考を整理するのに最適なツールではないかと思った。

 続けていくうちに、自分の価値観の傾向だったり、自分のもっているテーマみたいなものがだんだんと見えてくるところも面白い。自分はこんなことに興味を持っていたのかという、自分を知る、自己分析にも使えるツールなのではないかと思った。
タグ:岡田斗司夫

オタクの息子に悩んでます [人文]





 朝日新聞の人生相談コーナー「悩みのるつぼ」で、相談者からの様々な悩みに回答してきた筆者が、その思考過程を公開。問題に直面した場合にどのように考えていけばよいのか、その秘訣を教えてくれている。

 人はなぜ悩みに陥るのか? それは、複数の問題がこんがらがって、頭の中で「ああでもないこうでもない」と、ぐるぐる同じところを回ってしまうからだという。個々の問題は単純かもしれないが、それが絡まりあうと複雑な結び目が出来上がってしまう。

 だから、悩みを解決しようと思ったら、抱えている問題をまずはいったん整理して、複雑な問題を因数分解するように単純な1つ1つのパーツに仕分ける必要があるのだ。本書においては、問題の整理をどのようにしておこなっていくべきなのか、その具体的な方法が書かれている。

 相談に答えるのにここまで考えていたのかと驚くような内容で、単純に知識・経験だけからさらっと答えるのではなく、問題の本質に迫るところまで深く深く掘り下げていっているところが印象的。相談のサンプルがいくつか出てくるのだが、相談者に寄り添って相談者が本当に役に立つような回答になっているし、相談者のみならず人が共通して抱えている問題点にまで視点が広がっていて、相談者でなくても読んでいて面白い。

 相談者の質問自体を疑う姿勢というのも興味深かった。相談者自身、問題点を整理できているわけではなく、文章のプロでもないので、見当ちがいな質問をすることだってある。相談者が質問を通して本当は何が聞きたいのか、本当の悩みはどこにあるのかが分析されていて、よく考えられているなあと驚いた。

 自分自身でも悩むことは多いし、人から相談を受けることもあるので、本書の問題解決のメソッドは非常に実践的で役に立ちそうだ。後半で紹介されている11の思考ツール(分析、仕分け、潜行、アナロジー、メーター、ピラミッドなど)は、応用が利きそうなのでさっそく使ってみたいし、何より問題を短絡的に解決しようとするのではなくて、もっと深いところまで考えるという姿勢を見習いたいと思った。
タグ:岡田斗司夫

池上彰の宗教がわかれば世界が見える [人文]


池上彰の宗教がわかれば世界が見える (文春新書)

池上彰の宗教がわかれば世界が見える (文春新書)

  • 作者: 池上 彰
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2011/07
  • メディア: 単行本



 ジャーナリストの池上彰が、宗教をテーマに7人の宗教の専門家と対談した本。

 仏教、ユダヤ教、キリスト教、イスラム教、神道など、世界の宗教をめぐって、その起源から伝承の経緯、現在における意義までを語らう。

 日本に住んでいると外国の宗教のことは分かりづらいけれども、たとえば中東情勢やアメリカの大統領選挙など、国際問題の背景に宗教が深く関わっていることも多い。各国の歴史や文化も宗教を抜きに語ることはできないだろう。宗教というものを知ることによって、世界がどのように成り立っているかをはじめて知ることができる。

 本書はそのためのヒントを与えてくれる本で、専門家との対談を通して、各宗教の大まかなイメージや歴史的に宗教がどのように変化してきたのかを教えてくれる。分かりやすい解説でおなじみの池上彰らしく、基本のキから話題が始まっていて、宗教を学ぶのに最適な入門書になっている。

 特に興味深かったのは、日本人の宗教観の話。日本人は無宗教の人が多いなどと言われているけれども、実は独自の宗教観を持っているのではないかという指摘。対談を通じて、徐々に日本人の宗教のあり方が浮かび上がってきて面白かった。

 また、最後には養老孟司との対談もあって、解剖学者から見た宗教という独自の視点も知ることができる。

 宗教を通して世界のあり方を学ぶのと同時に、宗教の教えである人間の生死のあり方についても考えさせられる本。宗教についてはまだまだ知らないことが多いので、本書を入り口にどんどん深く学んでいきたいと思った。
タグ:池上彰