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24人のビリー・ミリガン [伝記(外国)]


24人のビリー・ミリガン〔新版〕上 (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)

24人のビリー・ミリガン〔新版〕上 (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)

  • 作者: ダニエル・キイス
  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2015/05/08
  • メディア: 文庫



 二重人格という話はときどき聞くけれど、なんと24人格も持ってしまった人の実話。

 1977年のオハイオ州で、複数の女性をレイプしたとしてビリー・ミリガン容疑者は逮捕された。この容疑者には、とても奇妙な雰囲気があった。面会人が話をしに行くたびに、話し方や態度ががらりと変わってしまうのだ。弁護士たちが面会を進めるうちに、ビリーの中には複数の人格が存在していることが次第に明らかとなってくる。

 それぞれの人格は、性格や話し方だけでなく、年齢、性別、国籍、得意分野にいたるまでバラバラ。3才の少女クリスティーン、リーダー的存在のアーサー、エレクトロニクスの天才トミー、弁舌さわやかなアレン、暴力と銃専門のレイゲン、レズビアンのアダラナ、絶えず周囲にいたずらを仕掛けるリー、継父の殺害計画ばかり考えているエイプリルなど。

 スポットと呼ばれる意識の舞台に、各人格が交代で現れ、時間を割り当てられるという仕組み。

 困った事態になるたびに、それぞれの得意分野を持った人格が現れて窮地を切り抜けていくというのは面白い。拘束されているときは、脱走の名人トミーが現れて、手錠でも鍵でも外してしまう。相手を説得しなければならないときは、口先のうまいアレンが現れる。暴力に巻き込まれたときにはレイゲンが現れて、相手をねじ伏せてしまう。

 それぞれの人格のキャラクターが際立っていて、チームで活躍していくドラマを見ているような感じで痛快だった。

 とはいえ、人格の交代が思わぬ時に起こったりもするので、トラブルになることが多かったようだ。大事な仕事中に幼い少年の人格が現れて台無しにしたり、犯罪性向のある人格が現れて周囲とトラブルになったり。各人格がやりたいこともてんでバラバラなので、一貫性のある行動をとることもできない。そういう苦労話も語られている。

 奇妙なエピソードが満載で、どのページをとっても実に驚くようなことばかり。人格ってそもそもなんなのかなあとか、誰でも程度の差はあれ人格のゆらぎみたいなものがあるんだろうかとか、人間の脳のメカニズムについてもいろいろ考えさせられた。
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世界一簡単な英語の大百科事典 [語学]


ビッグ・ファット・キャットの世界一簡単な英語の大百科事典

ビッグ・ファット・キャットの世界一簡単な英語の大百科事典

  • 作者: 向山 貴彦
  • 出版社/メーカー: 幻冬舎
  • 発売日: 2017/03/16
  • メディア: 単行本



 仕事で英語を使うので、英語関係の本をたまに読むのだが、この本はなかなかよかった。

 英語をイラストで解説した本で、たいへんイメージしやすい。

 とくに最初に書かれている基本法則「英語は3つの要素でてきている」という話は有益である。英語の文章には主役(主語)と脇役(目的語)がいて、その間に動作(動詞)がある。どんなに複雑に見える文章でも、せんじ詰めればこの3つの要素でできているという。

 英語を読んでいてつらくなるポイントは、長い文章がつらつらと繋がって、途中でわけが分からなくなることだろう。だが、難解に見えるこうした文章も、枝葉を切り落としていくと、実は単純な3つの要素で成り立っているのだ。

 さっそく本書のやり方で英文を読んでみると、たしかに読みやすい。無意識で考えていたことをうまく言語化してくれた感じ。意識的に3つの要素を探すだけで、英文が非常にクリアに見えてくる。

 他にも完了形の意味とか前置詞の話とかも、とても分かりやすかった。この本は最近読んだものの中で、一番実用的だったかもしれない。

 本好きとしては、最後に載っているお勧め洋書コーナーも楽しかった。こんな本を読んで初めて知った本などもあったので、かなりお得な本だった。
タグ:向山貴彦
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ゴールデンボーイ [ミステリ(外国)]


ゴールデンボーイ―恐怖の四季 春夏編 (新潮文庫)

ゴールデンボーイ―恐怖の四季 春夏編 (新潮文庫)

  • 作者: スティーヴン キング
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 1988/03/30
  • メディア: 文庫



 「ゴールデンボーイ」は、スティーヴン・キングの恐怖の四季シリーズの一遍。

 主人公の高校生トッド・ボウデンは、第二次大戦中の古い写真を手がかりに、同じ町に住む老人がナチの戦犯であると見抜く。戦争秘話に目がないトッドは、老人に近づいて無理矢理昔話を聞き出すが、次第にトッドと老人の間に奇妙な関係が築き上げられる。そして、トッドの人生は思いもよらない方向へとねじ曲がっていく……。

 「転落の夏」という副題がついている通り、主人公が真っ逆さまに転落していくダークな話だった。主人公の転落っぷりがひどすぎて、読んでいて辛くなるような話。

 前に一度読んだことがあったのだが、どんな筋だったかすっかり忘れていて、善玉の少年が悪玉の元ナチの老人にだんだんと追い詰められていくサスペンスのようなものだったかなあと勝手に思い込んでいた。でも、実際に読み返してみたら、そんなに単純な話ではなかった。

 むしろ、主人公の少年自体がナチの老人に感化されたのか、もともと素質があったのか、どんどん怪物みたいなものに変貌していくという話なのである。ナチの老人も凶暴さを取り戻していって、お互い似たもの同士みたいになっていく。

 キングが書いているので、とにかく話が面白くて読ませる。ナチの戦犯を追い詰める調査員が登場してスリリングだし、お互いに敵視している老人と少年が、自分たちの身を守るために外部に対して奇妙な共同戦線を張らなければならなくなるというのも皮肉が効いている。

 とはいえ、こんなにおぞましい話はないし、主人公の少年にはなにひとつ共感できないのは残念だった。正直なところ、キング作品の中ではあまり好きな話ではない。

 話がダークなのはいいのだけれど、主人公に感情移入できないと面白さが半減するなあ。そういう意味では、「春は希望の泉」と銘打たれた、同時併録の「刑務所のリタ・ヘイワ―ス」のほうがすがすがしくてよかった。
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ノックの音が [ミステリ(日本)]


ノックの音が (新潮文庫)

ノックの音が (新潮文庫)

  • 作者: 星 新一
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 1985/09/27
  • メディア: 文庫



 「ノックの音がした」という一文から始まる、星新一のショートショート集。

 主人公がドアを開けると、様々な事件が巻き起こるという話。一遍一遍読んでいくと、「次はどんなことが起こるんだろう」と、楽しみになってくる作品集だ。

 本当に部屋の中だけで話が終始してしまうところがすごい。空間が限定されているのに、意外な出来事が次々に発生。主人公が窮地に追い込まれるサスペンスフルな展開で、かなり読ませる。

 短い話ながらも、毎回サプライズエンディングも出てくる。オー・ヘンリーやヘンリー・スレッサーを彷彿とさせるうまさ。登場人物の意外な正体が分かったり、思わぬ計略が隠されていたり、思わずにやりとさせられる話が多かった。

 星新一だけれど、ほとんどはミステリーだった。「金色のピン」「人形」の2作はホラー風味の作品。どちらも「魔法のランプ」ものというか願いごとを叶える話で、願いごとは叶うのに恐ろしい結末が待っているというブラックな笑いのある話だ。

 久しぶりに星新一のショートショートを読んだ。読み始めは独特の文体が読みづらく感じたのだが、ストーリー展開がひとひねりもふたひねりもしてあって、だんだん話に引き込まれていった。今度はぜひSFショートショートのほうも読んでみたい。
タグ:星新一
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還らざる道 [ミステリ(日本)]


還らざる道 (文春文庫)

還らざる道 (文春文庫)

  • 作者: 内田 康夫
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2014/11/07
  • メディア: 文庫



 ミステリーの女王アガサ・クリスティーによると、殺人の動機には3種類あるという。

 ひとつめは「金」。単純な強盗殺人のようなものもあるし、保険金目当てで夫が妻を殺すとか、自分に有利な遺言書を書き換えられる前に子が親を殺すといったものもある。利益を得るための殺人だ。

 ふたつめは「復讐」。過去に婚約者を殺された女が犯人を殺すとか、密告されて刑務所に入った男が出所後に密告者を殺すとか、財産を奪われた男が略奪者を殺すといった話だ。

 みっつめは「秘密」。帳簿をごまかしている人間が事態を知った者を口封じに殺すとか、政治家がスキャンダルの暴露を恐れて脅迫者を殺すとかいった話。

 このうち「復讐」と「秘密」については、過去が重要なポイントになっている。過去の悪事に対する復讐、過去の秘密に対する口封じだから。

 そのため、ミステリーでは被害者の過去を探っていく話が多い。殺人事件が起こって、被害者が生前にどういう行動をとっていたのかという、過去の行動を追いかけていく。その過程で、だんだんと被害者が殺された理由、過去の悪事、過去の秘密が明らかになっていく。

 内田康夫の「還らざる道」はまさにそうした被害者の過去を探っていくミステリーだ。

 インテリア会社会長が一人旅のさなか、首を絞められて殺される事件が起こる。被害者は人当たりのいい誰にも恨まれないような人物。なぜ殺されなければならなかったのか? 被害者は何を目的に旅をしていたのか? 被害者の孫娘とルポライターの浅見光彦が真相を追う。

 浅見が被害者の足跡を追いかけていくのだが、その過程で被害者の過去がだんだんと浮かび上がっていくという話。派手なトリックを見せるわけではなく、動機を探っていくだけの話なのであるが、これが結構読ませる。浅見シリーズはこういう過去の因縁みたいな話がとてもうまい。

 ページを追うごとに、少しずつ情報が明かされていくところがミソなんだろう。だんだんと秘密のヴェールの裏側が見えてきて、好奇心を掻き立てられた。
タグ:内田康夫
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残酷な王と悲しみの王妃 [世界史]


残酷な王と悲しみの王妃 (集英社文庫)

残酷な王と悲しみの王妃 (集英社文庫)

  • 作者: 中野 京子
  • 出版社/メーカー: 集英社
  • 発売日: 2013/10/18
  • メディア: 文庫



 最近興味を持っているのは、アン・ブーリン。歴史上の人物で、イギリス・テューダー朝の王ヘンリー8世の王妃だ。

 興味を持ったのは、壮絶な人生を歩んだ人ということもあるし、世界の歴史を変えてしまった人でもあるから。

 ヘンリー8世がアン・ブーリンと出会ったとき、すでにヘンリー8世にはキャサリンという王妃がいた。カトリック教会では離婚が認められていなかったので、本来であればアンは王妃になることはできず、愛人という立場に甘んじざるを得なかったはず。

 にもかかわらず、アンは王妃になることを切望し、ヘンリー8世はやむなく教皇にキャサリンとの婚姻の無効を訴えることになる。

 結果は不認可。教皇は婚姻の無効を認めなかった。ヘンリー8世は激怒し、カトリック教会との訣別を決意する。そして、キャサリン王妃との離婚を認める独自の教会を作り上げてしまう。これがイギリス国教会となる。

 ひとりの女性の熱望が、イギリスの宗教を改革してしまった瞬間である。

 しかも、アンが産んだ女児はのちにエリザベス1世として世界に君臨することになるのだから、アン・ブーリンの世界史に与えた影響は相当なものだろう。ひとりの人間が歴史の流れを変えてしまうということが本当にあるのだ。

 王妃になってアン・ブーリンが幸せになったかというと、そうでもない。なにしろ、ヘンリー8世は気まぐれな暴君。ヘンリー8世はアン・ブーリンが男児を生まなかったことに怒り、姦通の罪を着せてアンの首をはねてしまう。

 「残酷な王と悲しみの王妃」という本には、こうしたアン・ブーリンに関する逸話が豊富に書かれていた。

 プリンセスなどというと、華やかなイメージがある。おとぎ話では、王子様と結婚してめでたしめでたしとなるのが普通だ。だが、アン・ブーリンの例にも見られるように、現実の王妃の地位というのはそんなに生やさしいものではなかったようだ。

 政略結婚に利用されたり、暴君の犠牲になったり、ときには暗殺の対象にまでなってしまう。おとぎ話の華やかなイメージとは真逆の、ドロドロした世界が広がっているのだ。

 本書にはアン・ブーリンのほかにも、エリザベス1世と争うことになるメアリー・ステュアートや、ヘンリー8世をも遙かにしのぐ暴君イヴァン雷帝の7人の妻についても書かれている。王妃という立場が華やかであこがれの的である反面、いかに危ういものであったかが分かる、興味深い本だった。
タグ:中野京子
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ロシア革命史入門 [世界史]


ロシア革命史入門 (インターナショナル新書)

ロシア革命史入門 (インターナショナル新書)

  • 作者: 広瀬 隆
  • 出版社/メーカー: 集英社インターナショナル
  • 発売日: 2017/02/07
  • メディア: 新書



 およそ革命家というのは、並々ならぬ理想を持った人たちなんだろう。暴虐極まる支配者を打倒したい。苦境にあえぐ人々を救いたい。そんな正義感に根ざした人たちなのではないか。

 ロシア革命のときのレーニンもそうだった。

 レーニンが登場したころ、ロシアではロマノフ王朝による帝国支配が続いていた。資産家が貧しい民衆を酷使するという格差社会である。

 当時、ロシアは第一次世界大戦に参戦していた。総力戦が行われ、物資・人員はこぞって戦争につぎこまれる。民衆は物資が不足してますます貧困にあえぐようになったうえ、戦争にまで駆り出されて疲弊していた。だんだん敵国の人間までもが同じような境遇に見えてくる。貧しい者同士が、資本家たちの戦いに巻き込まれて戦っているだけなんじゃないか。お互い犠牲者なんじゃないかと。

 こんな状況の中で、民衆の中から政府に対する不満が噴出はじめる。民衆の権利を保護すべきだ。くだらない戦争はすぐに止めるべきだ。そんな声が聞こえだす。

 レーニンは、そうした民衆の不満をくみ取った。戦争からさっさと撤退して、貧困を撲滅しよう。為政者に対する怒りという民衆のごく自然な感情を踏まえ、崇高な理想を掲げて行われた運動だった。

 レーニンの計画は、地上にユートピアを作ろうという正義が根本にあったのだと思う。

 最終的に、レーニンは革命を成功させる。戦争から撤退し、ロシア帝国は打倒され、世界初の社会主義国家ソヴィエトが誕生する。さあこれでいよいよ理想国家が生まれるのか。民衆は不幸から解放されるのか。

 結局のところ、そうはならなかったのは歴史が示すとおりだ。結局、新政権発足後も物資不足は解消されず、むしろ大飢饉になっていった。物資不足への対応として、レーニンは農民から物資を奪い取り、処刑や弾圧を行った。民衆たちの苦しみは止むことはなかった。

 レーニン亡き後のソ連も同じ。粛清に次ぐ粛清で、独裁国家の道を突き進んでいったのだ。

 なんでこんなことになってしまったのだろう? 当初の理想はどこに行ってしまったのか? ロシア革命の話を聞くと、ついこんな疑問が生じてくる。正義を掲げた人々が変貌し、これまで倒そうとしていた権力者そっくりになってしまう。正しいことをしていたはずなのに、いつの間にやらとんでもないところに行きついてしまう。理想主義が敗北してしまう悲劇がそこにはあると思う。

 広瀬隆の「ロシア革命史入門」は、まさにそうした歴史の皮肉な側面を描き出した本である。レーニンの行動を軸に、ロシア革命がどのような経緯をたどったのかを克明に記している。時代の流れは一筋縄ではいかないということが分かる興味深い本だった。
タグ:広瀬隆
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