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ウイルス・プラネット [生物]


ウイルス・プラネット (ポピュラーサイエンス)

ウイルス・プラネット (ポピュラーサイエンス)




 ウイルスというのも、不思議な存在である。

 遺伝子とタンパク質の殻だけでできた、シンプルな構造。自分自身は細胞を持たないので、エネルギーを産出することもせず、単独で複製することもできない。

 こんなものが生物なのかという気もするが、ウイルスは宿主に寄生すると、宿主細胞に自分のコピーを大量に作らせる。そして、宿主細胞ははち切れて死んでしまう。つまり、ウイルスは他の生物を乗っ取ることで生きる寄生生物なのだ。

 なんとも異質な存在であるし、かぜ、インフルエンザ、エイズ、エボラやSARSといった感染病を引き起こすから、ウイルスに対しては悪いイメージしかなかった。だが、「ウイルス・プラネット」という本を読むと、ウイルスが単なる脅威というだけでもないということに気づかされる。むしろ、人間と切っても切れない関係でもあるようなのだ。

 長い生命の歴史の中で、ウイルスたちは他の生物への寄生を繰り返していった。そのうちに他の生物の生殖器の細胞にも感染して、宿主の遺伝子の中にウイルスの遺伝情報が組み込まれるということも生じたそうだ。

 人間の遺伝子も例外ではない。実はヒトゲノムの中にも、ウイルス由来のDNA断片が8%も含まれているらしい。なんだが不気味な気もするが、子宮内で赤ちゃんを育てられるのも、このウイルスのDNAのおかげだというから悪いことばかりではない。

 人間の細胞の中に入り込む様々なウイルスのタイプが出てきて、なかなか読み応えのある本である。こんなちっぽけなウイルスが人間の生き死にを左右してしまうのだから、自然というのは侮れない。人間も結局自然のメカニズムの一部なんだなあという当たり前のことに気づかされた。