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夜の翼 [SF(外国)]


夜の翼 (ハヤカワ文庫 SF 250)

夜の翼 (ハヤカワ文庫 SF 250)

  • 作者: ロバート・シルヴァーバーグ
  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 1977/07
  • メディア: 文庫



 遠い未来には、どのような世界が待っているのだろう? これまでSF作家たちはさまざまな未来のイメージを描いてきた。

 人工知能が農業、工業、サービス、インフラなどあらゆるシステムを管理し、ロボットが人間の肉体労働の代わりとなって、人間はただ遊んで暮らしているだけの世界。医学が発達してもはや病気という概念がなくなり、あらゆる肉体のパーツは交換可能となり、老いてもすぐに若返りが可能となる世界。恒星間旅行が可能となり、他の銀河へと進出し、星々の間で惑星連合を作り上げている世界……。

 こんな世界になったらいいなあという、まるでユートピアのような世界観である。

 だが、SF作家たちの本当のすごさは、このような理想のイメージだけでは満足しなかったところにあるのではないか。ユートピアのような未来の行きつく先に、さらにどんな未来が待っているのかというところまで掘り下げて描いているところが面白いのである。

 技術はどんどん発達するけれども、人間自身の本質は何も変わらない。テクノロジーの進歩のスピードに、人間の進化のスピードが追いつくわけではない。せっかく夢のような世界を手に入れても、満足しきれないし、いがみ合いを続けるばかり。そんな皮肉な世界が描かれることが多い。

 ロバート・シルヴァーバーグの「夜の翼」は、まさにそんな作品だった。

 人類文明が頂点に達し、その後、何周期かのサイクルを経た挙句に、なぜか荒廃した中世の暗黒時代のような世界が広がっている。人々は「記憶者」「監視者」「翔人」「巡礼者」などといったギルドに別れて生活している。他の星からの外敵が今にも来るのではないかと、びくびくと怯えながらひっそりと暮らす日々……。

 かつて人類の誇った高度な文明は、過去のテクノロジーとして忘れ去られたものもあるし、温存されたものもある。中世のような古めかしい世界観と、高度なテクノロジーの名残が共存する不思議な世界観だ。

 最初は謎のような世界が、だんだん読んでいくうちに、なんでこのような世界になったのかという歴史が分かってくるというしかけ。

 テクノロジーがどんどん進歩して、人類は前に進んでいるようにみえるけれども、文明というのは脆いもの。ふとしたきっかけで、いつ何時滅んでしまうかもしれないのだということを思い起こさせる痛烈な本だった。

 派手な展開があるわけではないが、この不思議な世界観と壮大さが気に入った。主人公とともに、見たこともない世界を放浪しているような気分になる小説だ。
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