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海賊船ハンター [世界史]


海賊船ハンター ―カリブ海に沈む「伝説」を探せ―

海賊船ハンター ―カリブ海に沈む「伝説」を探せ―




 17世紀、ロンドンとジャマイカを行き来して、船荷を運ぶ仕事をしていたバニスターというイギリス人の船長がいた。彼はたいへん評判のいい船乗りだったが、ある日突然ゴールデンフリース(金の羊毛)号という帆船を乗っ取り、海賊行為に手を染め始めてしまう。

 彼はカリブ海のあちこちに出没しては、略奪を繰り返し、イギリス王室のお尋ね者になっていった。イギリス海軍はバニスターをとらえようと追跡し、居所を突き止めたものの、バニスターは大砲とマスケット銃を手にして反撃。イギリス海軍を叩きのめしてしまう。

 暗躍を続けるバニスターだったが、最後の時がとうとうやってきた。再度イギリス海軍と戦闘状態になり、ゴールデン・フリース号は炎上、バニスターも死を迎えることになった……。

 それから300年以上も経った現代。沈没船の引き上げを夢見るトレジャーハンターたちが、ゴールデン・フリース号がドミニカ共和国のサマナ湾に沈没しているという話を聞きつける。彼らは私財を投げ打って、わずかな手がかりに悪戦苦闘しながら海賊船の沈没場所を探し始める。

 海賊というと、イギリスも影ながら支援をしていた歴史があると聞いたことがある。当時はスペインと交戦状態にあったから、海賊によるスペイン船からの略奪品は、イギリスにとってもよい収入源となったのだ。

 だが、スペインと平和条約を結ぶようになると、海賊たちの残虐行為は目に余るようになってきた。反海賊行為の法律が制定され、海賊たちへの取り締まりも厳しくなる。バニスターが海賊行為を行っていたのもこの頃で、イギリス海軍の目の敵になっていったらしい。本書を読むと、このあたりのイギリスと海賊たちの歴史が詳細に描かれていて、けっこう歴史の勉強になる。

 トレジャーハンティングというと一獲千金のイメージがあるけれど、実際に沈没船を発見するのは容易なことではない。宝のありかを示した、Xマークのついた地図が残されているなんていうことはないのだ。

 運まかせで広い海洋を探し回るわけにはいかないから、トレジャーハンターたちは、歴史をひもといて、自分たちで沈没個所を探さなければならない。古い文書を読み漁り、沈没したときの記録を探し、ときには船員たちの気持ちになって航海ルートを推測しなければならない。

 本書でも、わずかな手がかりからどのように海賊の沈没場所を特定していくのか、というところがトレジャーハンターたちの最大の障壁であったし、一番の読みどころでもあった。まさに歴史ミステリーという感じのスリルがある。

 トレジャーハンターについても、なにか夢を追いかける荒くれものというイメージがあったが、本書を読んで教養のある人たちなんだなあと感心させられた。海賊のことならなんでも知っているという海賊オタクと言ってもいい。

 トレジャーハンターたちが実際にどうやって沈没船を探すのかとか、資金的なことはどうしているのかとか、手に入れた財宝の権利は誰が手にするのかとか、現実的なところも丁寧に描かれていて面白かった。
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山田先生とマネー番組をはじめたら、株で300万円儲かった [ビジネス]





 株式投資でも始めてみようかと思っている。

 宝くじやパチンコなどとちがって、社会と結びついているところがいい。ただのお金儲けではなくて、「この業界の景気はどうか」「世界経済の動きはどうなっているのか」などと、投資活動を通して世界の仕組みが見えてくる。社会勉強になるところがよさそうなのだ。

 さっそく初心者向けの本書を読んでみた。投資とギャンブルの違い、株を選ぶ時のポイント、株はどういうときに値動きするのかなど、なるほどと思えることがたくさん書かれていた。初心者に向けた注意点なども書かれていて、まさに手取り足取り。よい入門書であった。

 それにしても、この投資という考え方は面白い。よく考えたら、投資というのはお金に限った話ではない。どんなことに時間を費やすのか、どんな人と付き合うのか、こういうのも投資の一種だろう。

 投資というのは、「将来の自分の利益のために、今持っている財を投げ打つこと」だそうだ。この定義は時間にも当てはまる。どんなことに時間を費やすかによって、将来の自分に何が返ってくるのかが違ってくる。費やした努力が見事に実る場合もあるし、無駄なことに時間を費やしすぎてろくな結果が得られないことだってある。

 誰しもが、せっせと財や時間を費やして生活をしている。意識するしないにかかわらず、過去に費やしたお金や時間は、将来になって結果となって反映される。人生とはすべからく投資なのだ。

 この人生の投資活動に、株式投資の考えが役に立つことがある。たとえば、リスク分散の考え方。ひとつのことにのめり込みすぎると、その分野が立ち行かなくなった時に困ったことになるけれど、複数の物事に時間を費やしておけば、緊急事態を回避することができる。そもそも、自分のこれまで知らなかったことに時間を費やすことは、世界が広がることにもつながるだろう。

 お金にしても時間にしても、貴重な資源であることは同じ。株式投資には、資源を有効活用するためのノウハウがつまっているんじゃないか。そう考えると、俄然と興味がわいてきた。

 将来どんな自分になりたいのかによって、何に時間やお金を費やすべきかが変わってくる。投資はいわば、将来の自分へのプレゼント。将来の自分に何を送りたいのか、たまにはじっくり考えることも大切かもしれない。
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自分の時間を取り戻そう [ビジネス]


自分の時間を取り戻そう―――ゆとりも成功も手に入れられるたった1つの考え方

自分の時間を取り戻そう―――ゆとりも成功も手に入れられるたった1つの考え方




 時間というものは貴重である。

 仕事に追われてばかりの生活を続けているせいか、最近とみにそのことを考えるようになった。生活に余裕がないと、気分まで落ち込む。気分が落ち込むと、体調まで悪くなり、仕事もはかどらなくなる。

 そんな悪循環に陥っていたから、時間を取り戻すというのは自分の最近の最大のテーマになっていた。だから、本書を目にしたときにはまさに自分のために書かれたんじゃないかと思えたほど。

 時間を取り戻そうというタイトルだから、仕事を効率よく回すコツが書かれているのかと思ったら、それだけではなかった。本書が対象にしているのは、仕事だけでなく、家事、育児、趣味、レジャー学習と、生活全般に及んでいる。

 どうやったら、生活時間をうまくやりくりして、自分の一番好きな時間に回すことができるのかが書かれているのだ。

 大前提は、何が大事かは人によって違うということ。バリバリ働くのが好きな人もいるし、家でのんびりするのが好きな人もいる。料理をしているのが好きな人もいれば、旅行をするのが好きな人もいる。好きなことは人それぞれだし、好きなライフスタイルも人それぞれだ。
 
 ただ、共通して言えるのは、自分の一番したいことに時間を回すことができればそれにこしたことはないということだろう。本書に書かれているのは、そのための極意なんである。

 本書を読んでいろいろと気づきがあった。一番大きな気づきは、余った時間で何をすべきなのか? 自分が一番何をしたいのかを考えるべきということ。そもそも何をしたいのかということを明確にしないと、せっかく時間が余っても無駄にぐーたらしてしまうだけ。

 まずは自分のしたいこと「To Do リスト」を作って、自分のやりたいことを見える化すべきだったのだ。そうして自分のやりたいことに優先順位をつけていき、余った時間を当てていく。仕事の時間を減らすことを考える前に、まずは余暇の時間を効率的に使うべきだったのだ。

 仕事の効率化のコツのようなことも書かれているけれども、そういうノウハウ的なことよりも、時間というものを意識的に考えるきっかけになったことが、本書の一番の収穫だった。
タグ:ちきりん
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井伊直虎 [伝記(日本)]


井伊直虎 (歴史新書y)

井伊直虎 (歴史新書y)




 今年の大河ドラマの主人公は、井伊直虎という女城主。

 浜松出身なので、たいへん興味がある題材ではあるが、正直なところドラマ放映が決まるまではこの人物についてはなにも知らなかった。

 俄然興味がわいてきて、井伊直虎関連本を何冊か読んでみたところ、たしかにドラマの題材にはふさわしい波乱の人生を歩んだ人だとわかった。

 遠江の井伊領は、今川・武田・徳川・織田といった巨大勢力の狭間に置かれていた。今川義元の重臣という立場にあって、今川氏の戦いの急先鋒として参加しなければならなかった井伊氏。今川義元が桶狭間の戦いで織田信長に敗れると、今度は徳川・武田・織田といった勢力が、遠江の支配をめぐって策略を巡らせ始める。

 そんな戦乱の世の中にあって、男性の跡継ぎを次々に失った井伊氏は、出家していた直虎を城主に担ぎ上げて苦難を乗り切ろうとする。こうして女城主直虎の悪戦苦闘が始まる。

 歴史の話を聞いていて一番面白いのは、思わぬ試練に直面した人が出てくるところ。運命に直面した人々がどのようにして苦難を乗り越えようとしたのか、その生きざまを見るのが一番の醍醐味だ。

 だから、織田や徳川といった巨大勢力の渦の中にあって、井伊氏がどのようにして生き延びていったのかというテーマは、まさに歴史の面白さが凝縮されているといえる。

 非常に残念なのは、文献が少ないため、井伊直虎の人生のほとんどの部分が分かっていないということ。謎の部分は推測で埋めていくしかない。大河ドラマも、かなりの部分は想像を膨らませて作っているのではないだろうか。

 洋泉社歴史新書から出ている本書「井伊直虎」は、井伊直虎の生涯について、井伊家の置かれていた立場から果たした役割に至るまで、分かりやすく説明されている本である。文献の引用も豊富で、直虎の人物像が文献でどの程度明らかになっているのかということが詳しく書かれているところがよかった。
タグ:小和田哲男
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第一次世界大戦 [世界史]


第一次世界大戦 (ちくま新書)

第一次世界大戦 (ちくま新書)




 第一次世界大戦というと、映画などによく出てくる塹壕戦が思い浮かぶ。

 フランス軍とドイツ軍が塹壕の中から、砲弾ででこぼこになった大地をはさんでにらみ合う。隙を見て塹壕から一斉に兵士たちが飛び出し、敵陣をめざして這うようにして進む。銃撃と砲撃がひっきりなしに飛び交い、大勢の兵士が倒れていく。そんなイメージ

 だけど、そもそも彼らはなんで戦っているのか? なんで大規模な戦いにまで発展したのか? なんだかよく分からないなあとつねづね疑問だった。

 サラエボを訪問中のオーストリアの皇太子がセルビア人に暗殺されたのが発端だったという説明はよく聞く。その後、オーストリアがセルビアに報復すると、ロシアがセルビア側について介入しはじめる。すると、今度はオーストリアと同盟国であるドイツが、オーストリア側について参戦する。ドイツはフランスと敵対していたからフランスとの戦いになる。これを見てドイツの侵攻を恐れたイギリスも参戦し、フランスの支援をする。

 こんなふうに雪だるま式に膨れあがっていったというような説明があるのだけれど、分かったようで分からない。オーストリアはセルビア人になんでそんなに恨まれていたのか? もともとオーストリアとセルビアのいざこざだった話が、なんで他国がこぞって介入してくるのか? ドイツはなんで急にフランスに侵攻したのか? 細かいつながりがどうにもつかみどころがない。

 そんなあやふやな知識しかなかったから、本書「第一次世界大戦」を読んでとても興味深かったのである。数々の疑問に対して、丁寧に答えてくれていたからだ。超俯瞰といった印象で、第一次世界大戦が起こった経緯や、どのように発展していったのかというメカニズムについて細かに分析してくれている。

 第一次大戦がなんだかよく分からなかった原因のひとつとして、帝国という概念がからんでいたことも挙げられるだろう。今では日本を含めて国民国家が当たり前だが、当時はそうではなかった。帝国というものが世界の中心に君臨していた。オーストリア帝国、ロシア帝国、オスマン帝国……。国民国家ではなく、様々な民族を内包した巨大な存在。

 当時はそういう帝国という巨大なもの同士がぶつかりあったり、内部の民族問題とかで紛糾していた時代だった。そして、第一次世界大戦というのは、そうした帝国が解体して、国民国家が完成するきっかけとなった戦争だったのである。

 第一次世界大戦は、日本人にとってはあまりなじみのない戦争である。しかし、本書を読んでいくと、この戦争はまさに現代社会のルーツを作り出していることが分かるし、このときの問題がいまだに尾を引いていて紛争の火種になっていることも分かる。

 現代まで連なる歴史の因果の流れが見えてくるような内容で、歴史の醍醐味を味合わせてくれる本だった。
タグ:木村靖二
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20歳の自分に受けさせたい文章講義 [実用]


20歳の自分に受けさせたい文章講義 (星海社新書)

20歳の自分に受けさせたい文章講義 (星海社新書)




 文章を書くのは難しい。

 仕事にしても趣味にしても、文章を書く機会はたくさんある。毎日何かしら書いているにもかかわらず、いまだに書き方のコツがよく分からない。日々悪戦苦闘、手探り状態である。

 普段から何も考えずに書き散らしていたのであるが、最近になってさすがに適当すぎるんじゃないかと反省して、文章の書き方を勉強してみることにした。手始めに読んでみたのがこの本、「20歳の自分に受けさせたい文章講義」だった。

 筆者は「嫌われる勇気」というベストセラーを出している人。経験豊富な実力派と言っていいだろう。実際に読んでみると、文章が読みやすいというだけでなく、よい文章を書くための心得がぎっしり詰まっている。こんなに濃密な内容が1000円足らずで読めるとはすごい。

 もっとも印象に残ったのは、「考えるために書きなさい」という記述。

 書くという作業は、考えていることを理路整然と書き落とすものではない。頭の中のもやもやとした気持ちを、文章にする過程で再構築して理解を深めていくことが、書くことなのだという。

 これはほんとにそうだと思う。実際に文章を書いていると、頭の中でばらばらに飛び交っている情報が整理されることがよくある。新たな発見をすることもある。頭の中の信号はくるくる回転していてとらえどころがないのだけれど、なぜかアウトプットすることで整理されるようなのだ。

 人と話すことで、悩みが晴れることがあるというのも同じような効用だろう。

 書いたり人に話したりという作業を経ないで、頭の中だけで考えるのはかなり無理があるんじゃないか。せっかくいい考えを思いついてもどこかに飛んで行ってしまう。飛び交う情報をとらえて離さないためには、どうしても書くという作業が必要なのだ。

 つまり、書くということは考えるということなのである。だから、よい文章はよく考え抜かれた結果ともいえる。本書を読んだ一番の収穫は、自分にはこの考えるという作業が圧倒的に不足していたことに気づかされたことかもしれない。
タグ:古賀史健
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賞味期限のウソ [料理]





 日本では毎日、食品メーカーやスーパーマーケット、コンビニ、家庭などから大量に食品がゴミとして捨てられている。食品ロスなどと呼ばれていて、中にはまだ食べられるものも山ほど捨てられているんだそうだ。

 もったいないなと思うし、なんで食べられるものが捨てられてしまうのかと疑問に思えてくるけれど、これにはいくつかの事情があるらしい。

 まず、タイトルにもある賞味期限の問題。賞味期限と消費期限とは別物で、賞味期限というのはあくまでもおいしさの目安。あえて短めに設定されてもいる。賞味期限が過ぎたからといって、食べられなくなるわけではない。けれども、賞味期限を1日でも過ぎたからということで、捨てられてしまうことがある。

 また、食品業界には3分の1ルールという商慣習がある。賞味期限の3分の1を納品期限、3分の2を販売期限としている。納品期限を過ぎた食品は小売からメーカーに返品されてしまうし、販売期限を過ぎた食品は店頭から撤去されてしまう。

 欠品ペナルティというものもある。コンビニやスーパーマーケットなどの小売店は品揃えを気にするから、棚に空きがあると困る。だから、いつでも棚が埋まっている状態を保つように、メーカーに対して欠品ペナルティ(欠品が起きた時の金銭補償)を課している。メーカーはそのために大量に生産せざるを得なくなるので、食品ロスが増える。

 季節もの限定商品の問題もある。恵方巻き、土用の丑の日、クリスマスケーキ、バレンタインチョコなど、在庫が出た場合、イベントを一日でも過ぎると売れなくなってしまう。

 こういう様々な要因がからんで、食品ロスが大量に生まれ続けているのだ。

 かたや、食べ物が食べられなくて餓死した家族のニュースなどもある。ゴミにして捨てるくらいなら、食べ物に困っている人にあげればよいのになあと思うけれど、実際、フードバンクという取り組みが始まっているらしい。事情があって販売できないがまだ食べられる食品を、貧困家庭などに配布する仕組みだ。

 この本を読んでいると、食品ロスが生まれる理由や食品業界の様々な裏側が分かって興味深い。なにより、消費者も食品業界も、完全な安全性を追いかけるあまり、食品ロスが増えてしまっているんだなあということがよく分かる。安全性は大事だけれど、むやみに慎重すぎるのもどうなのだろう。仕組みを変えれば、安全性の範囲内でまだまだ食品ロスを抑えられそうに感じた。
タグ:井出留美
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メキシコ麻薬戦争 [犯罪]


メキシコ麻薬戦争: アメリカ大陸を引き裂く「犯罪者」たちの叛乱

メキシコ麻薬戦争: アメリカ大陸を引き裂く「犯罪者」たちの叛乱




 「麻薬」「南米」といえば、昔はコロンビアが有名だったものだが、最近ではメキシコが力を伸ばしてきたらしい。アメリカをはじめとして、世界中への麻薬密売に絡むようになった。

 本書「メキシコ麻薬戦争」を読むと、そのあたりの経緯がよく分かる。

 まあとにかく利益率の高いビジネスらしい。原価はそんなにかからない割に、アメリカに売ると驚くような高値に変わる。もちろん、警察に捕まるリスクがあるのだが、莫大な金が手に入るとあって、収まる気配はない。

 上がった利益で投資をして大きくなるのは普通の会社と同じメカニズムである。麻薬組織も儲けた金で周りの組織を取り込んで、ぐんぐん拡大していく。やがて一大産業といえるまで膨らんでいく。そうこうしているうちに、メキシコカルテルはとうとうコロンビアカルテルを追い抜いてしまい、南米一体を取り仕切る大ボスになってしまった。

 組織同士で抗争が起こることもしばしば。縄張り争いがいともたやすく殺し合いに発展する。とにかく金を持っているから、兵士を雇って武装組織を作るのもたやすいだろう。特殊部隊を作り上げて、軍隊さながらの戦力を持つようになる。こうなるともう戦争に近い。まさにタイトルの通り「メキシコ麻薬戦争」そのままだ。

 なんだかメキシコもすごいことになっているんだなあと、本書を読んで驚かされる。

 トランプ大統領が国境沿いに壁を作ると言っているけれど、壁を作ってもざるみたいなものなんじゃないか? 国境地帯の距離があまりにも長くて警備は難しいうえ、海から侵入したり、飛行機を飛ばしたり、トンネル掘ったりもできるのだ。この本に出てくる密輸のあの手この手を見ていると、国境警備の難しさが理解できる。

 麻薬合法化の議論というのも面白かった。いっそのこと麻薬を合法化してしまえば、麻薬組織の利益がなくなるので、犯罪撲滅のメリットがあるというものだ。麻薬の害悪とどちらがよいかという究極の選択になるだろう。 
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百万ドルをとり返せ! [ミステリ(外国)]


百万ドルをとり返せ! (新潮文庫)

百万ドルをとり返せ! (新潮文庫)




 詐欺師が出てくる話が大好きである。

 コンゲームものの映画小説があると、つい手が出てしまう。騙し騙されの虚々実々の世界の面白さ。

 詐欺は犯罪で悪いことなのに、「うまく騙してみせてくれよ」と、いつの間にか詐欺師の主人公をつい応援してしまっている自分がいる。知略をかけた戦いにわくわくしてしまう。

 本書「百万ドルをとり返せ!」はそうしたコンゲームの傑作として知られた古典的作品だ。

 物話は、ハーヴェイ・メトカーフという大富豪が株価操作を行うところから始まる。北海油田の開発を業とする会社を設立したハーヴェイは、いかにも開発が成功するかのような宣伝をし、それらしい地質調査報告書まででっちあげる。

 有望な株だと見込んだ人々はこの会社の株をこぞって買い、株価がどんどんあがっていく。だが、実際には、油田の開発など真っ赤な嘘で、会社の実体すらなかった。ハーヴェイは株価が上昇した段階で、自分の保有している株を売り払い、雲隠れしてしまう。会社は全く稼働していないから、その後、株価は大暴落。多くの人々が大損をすることになった。

 その中に、全財産を賭けて無一文になってしまった4人の男たちがいた。数学者、医者、画商、貴族の4人。彼らは、自分たちがハーヴェイに騙されたことを知るや、お互いに計画を立てる。それぞれの持ち味を生かして、ハーヴェイから百万ドルをとり返すという計画を……。

 4人の男が考える4つの詐欺の手口。どれも鮮やかな手口でまるで手品みたい。最後の最後には、思わぬどんでん返しも待っていて、なんとおしゃれな作品なんだろうと。

 詐欺、手品、芝居……。よく考えたら、これらはどれも似たようなものではないだろうか? 実際にはありもしないことを、あたかも本当のことのように観客に信じ込ませてしまう点において。詐欺の場合には、さらにお金が絡んでくる。詐欺師はカモが思わずお金を払ってしまうような、巧みな偽のシチュエーションをでっちあげてしまう。

 嘘は悪いというけれど、巧みな嘘は人を魅了する強い力があると思う。本書に出てくる嘘はまさにそんな珠玉の嘘。最初から最後まで、大いに楽しませてくれた。
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演劇入門 [演劇]


演劇入門 (講談社現代新書)

演劇入門 (講談社現代新書)




 演劇の面白いところは、物語が会話によって展開するということだろう。

 登場人物たちが会話をしている場面の積み重ねによって、ストーリーが進行し、人物たちの人となりが明らかになる。会話から、人物たちの関係性や、直面している問題、人物たちの考えが見えてくる。

 もし会話ではなく、ナレーションだけで話が進んでしまったとしたら、単なるあらすじになってしまう。新聞記事のような客観的な媒体であれば、それでもよいのかもしれないが、演劇の場合にはそうはいかないのだ。

 演劇では会話によって観客に情報を提供することが重要になるわけだけれども、台詞が説明的になってもいけない。情報を提供しつつも自然な会話に見える必要がある。

 たとえば、話の舞台がホテルだったとして、登場人物が開口一番「いいホテルだなあ」などと言うのはあまりにも説明的である。人物たちが雑談などをしている中で、あくまでもさりげない形でホテルであるという情報を示す必要があるのだ。

 本書「演劇入門」は、そんな演劇の基本的なルールについて書かれた本である。演劇のリアルとは何か? よい台詞とは何? 演技者の善し悪しはどう決まるのか? 演劇人としての豊富な経験からの見解が述べられている。

 言われてみればそうだよなあという話のオンパレード。演劇やら映画やら小説やらにこれまでたくさん触れてきていたわりには、気づかなかったことも多かったので、目から鱗が落ちた。

 話が演劇だけにとどまらないところもよい。人は普段どんなふうに会話をしているのかといった、生活の基本的な事柄についても深い考察がされている。世界観をあらためてくれるような本ともいえるだろう。

 さらっと読める本なのではあったが、自分にとっては今後かなり影響がありそうだ。
タグ:平田オリザ
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