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ヒッコリー・ロードの殺人 [ミステリ(外国)]


ヒッコリー・ロードの殺人 (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)

ヒッコリー・ロードの殺人 (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)

  • 作者: アガサ・クリスティー
  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2004/07/15
  • メディア: 文庫



 「クリスマスにはクリスティーを」

 アガサ・クリスティーは毎年12月のクリスマスシーズンに合わせて新作を発表していたため、こんなキャッチコピーが生まれたらしい。

 この話を聞いたせいか、毎年クリスマスの季節になるとクリスティーが読みたくなるのである。今年もご多分に漏れず、クリスティーの本を手に取ってしまった。読んだのは、「ヒッコリー・ロードの殺人」という作品だ。

 学生寮を舞台にした話で、学生のひとりがモルヒネで毒殺されるというミステリー。

 大がかりなトリックがあるわけではないので、クリスティーの作品の中では地味なほうといえるだろう。だが、小粒ながらも魅力的な謎が潜んでいるので、非常に好きな作品なのである。

 冒頭、探偵のエルキュール・ポアロは学生寮で起こった奇妙な事件のことを耳にする。それは、学生たちの所持品が次々に盗まれるというもの。しかも、その盗まれたものというのが変わっている。金とか宝石とか高価なものではなくて、どこにでもあるようなありふれたものなのだ。

 夜会靴、ブレスレット、化粧品のコンパクト、口紅、聴診器、シガレットライター、古いズボン、電球、リュックサック、ホウ酸の粉末、料理の本などなど、価値のないものばかり。

 なんでこんなものを盗むのだろうというところが謎のポイント。それぞれの所持品に隠された秘密が用意されていて、読んでいてとても興味をそそられる。

 あまり指摘されないし、ジャンル分けがあるわけでもないが、「価値のないものが盗まれる」という類の話は、ミステリーの世界では結構定番だと思う。そのものずばり、価値のないものばかりを盗む「怪盗ニック」というシリーズがあるし、かのコナン・ドイルもガチョウが盗まれる事件やナポレオンの胸像が叩き壊される事件を描いている。アルセーヌ・ルパンのシリーズにも赤いスカーフが盗まれる話がある。

 ミステリーというのは何も殺人事件だけがミステリーなのではない。ありふれたものが盗まれるといったごく些細な謎こそがミステリーの本質なのかもしれない。

 「ヒッコリー・ロードの殺人」は派手さはないものの、こういう昔ながらのミステリーの香りがするところが非常によい。実はもう何度も読んでいるのだが、あまりにも面白のでまた読んでしまった。
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法然親鸞一遍 [人文]


法然親鸞一遍 (新潮新書)

法然親鸞一遍 (新潮新書)

  • 作者: 釈 徹宗
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2011/10
  • メディア: 単行本



 仏教というのは、輪廻からの解脱のために、お坊さんが出家して厳しい修行を行うもの。悟りを開くのが目的。元来そんなイメージがある。

 ゴータマ・シッダールタの仏法はたしかにそのようなものだったのだろうけれど、教えが世界に広がるにつれてその内容も様々に変化していったらしい。

 とくに、日本では鎌倉時代の頃に仏教のニュームーブメントが起こる。法然や親鸞といった人物が現れて、仏教の新たなあり方を提示したのだ。

 彼らの考えは、それまでの出家者が厳しい修行をして悟りを開くという伝統的な立場を打ち壊すものだった。それは、別に出家者でなくても、念仏を唱えれば救われるというもの。悟りを目的としないので、方向性を大転換させたものといえるだろう。

 念仏を唱えれば誰でも救われる。この新しい考えは、これまでの出家者を中心とした仏教を、庶民のための仏教に変えることになる。乱世の時代において苦境にある人々、世間から落ちこぼれた者なども仏教が包容し、多くの人々の拠り所となっていく。そして、この仏教のあり方は、現在に至るまで脈々と受け継がれていく。

 本書は、こうした仏教の新たなムーブメント、浄土仏教を提示した主な3人の人物、法然・親鸞・一遍について解説した本である。

 ヨーロッパの歴史を見ると、キリスト教の宗教改革という話が出てくるけれども、日本でもパラレルに宗教的な改革が行われていたわけである。伝統的な仏教の立場との対立もあったそうで、法然らは仏教徒からの批判にさらされている。本書にはそのあたりの顛末が書かれていて興味深い。

 浄土仏教の考えは、現代の人の生活の中に溶け込んでいて、当たり前のようになってしまっているが、元々はこういう深い対立があったのである。

 社会には様々なルールがある。法律はもとより、社会的な慣習だったり、世間体といったものもあるだろう。しかし、こうした社会ルールに不適合な者、落ちこぼれ、そういった人間であっても仏法の世界はつまはじきにしたりはしない。はぐれ者であっても救済するのが浄土仏教の世界。

 元々の仏教のあり方からは随分と違うものになってしまっているようにも見えるけれども、はぐれ者さえも包容するというこの考えにはいたく感動してしまった。社会や世間のこうあるべきだというルールとは異なる世界観があるというのは、とても救われる気がするのだ。

 鎌倉時代の人々のみならず、現代の人々にも通用するような部分もあるのではないかと思った。
タグ:釈徹宗
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後白河法皇 [伝記(日本)]


後白河法皇 (幻冬舎新書)

後白河法皇 (幻冬舎新書)

  • 作者: 河合 敦
  • 出版社/メーカー: 幻冬舎
  • 発売日: 2012/01/28
  • メディア: 新書



 後白河法皇は、源氏と平氏が戦っていた頃の時代、貴族社会から武士の社会に移り変わる頃、権力を握り続けた人物。激動の時代をどのように生き抜いたのか、本書にはその尋常ならざる生きざまが描かれている。

 そもそも後白河法皇が皇位を継承したのは、極めて意外なことだったらしい。後白河法皇は、鳥羽上皇の子ではあるが、彼は第4皇子だったのだ。

 いったんは第1皇子の崇徳天皇が皇位を継いだので、崇徳天皇の子が次の天皇になるのが順当だろう。もしくは、第2皇子、第3皇子が皇位を継ぐのが本来だろう。

 だが、実際には、崇徳天皇が退位した後、後白河法皇が皇位を継承している。

 これは、第2皇子が生まれつき目が見えず、第3皇子が生まれつき歩くことができなかったからである。

 また、鳥羽上皇と崇徳天皇の間には親子の確執があった。実は鳥羽上皇と崇徳天皇は実の親子ではない可能性があったのだ。

 鳥羽上皇の妻は鳥羽上皇の祖父である白河法皇と不倫をしていた。その結果、生まれたのが崇徳天皇である。宮中をそういう噂が流れていたのだ。そのため、鳥羽上皇は形式的には自身の第1皇子であるはずの崇徳天皇を「叔父子」などと呼んで忌み嫌っていたという。

 このような鳥羽上皇と崇徳天皇の確執があって、鳥羽上皇の策略で崇徳天皇の子は皇位を継ぐことができなくなり、後白河法皇が皇位を継ぐことになってしまった。そして、この流れは、やがて後白河法皇と崇徳天皇との間の対立という形となって現れ、保元の乱という戦にまで発展するのだった。

 本書を読み進めると、この時代には、こういうドロドロとした権力の座を巡る諍いがずっと続いていたんだなあということが見えてくる。そして、貴族同士の権力をめぐる争いに勝つための武力装置として、平氏や源氏といった武士たちが現れるのだ。武士も最初は貴族の道具のような用いられ方だったのに、その武士の力がだんだん強まっていって、やがては貴族社会を崩壊させるに至ってしまった。歴史というのは皮肉なものだ。

 それにしても、後白河法皇という人物は一風変わっている。戦が続いたり自ら幽閉されたりしている中で、呑気に流行歌に熱中したり、祭りをしたり、絵画の収集に励んだりと、趣味の世界にエネルギッシュに没頭していたそうだ。一体何を考えているのだろうという感じだが、こんなに脳天気そうに見える人が、乱世の時代を誰よりもうまく生き延びていったのだから、人生とはわからないものだ。

 保元・平治の乱などというと、教科書などではさらっと済んでしまうような話であるが、詳しく話を聞いていくといろいろと深いいきさつがあることが分かって面白い。源氏と平氏がどうして戦うに至ったのか? そのあたりのことも詳しく触れられていて、なかなか勉強になる本だ。
タグ:河合敦
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茶色の服の男 [ミステリ(外国)]


茶色の服の男 (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)

茶色の服の男 (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)

  • 作者: アガサ クリスティー
  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2004/01
  • メディア: 文庫



 「茶色の服の男」は、ミステリーの女王アガサ・クリスティーが書いた冒険小説である。

 クリスティーはいわゆるクローズド・サークルものが得意な作家として有名だ。絶海の孤島だとか、雪の山荘だとか、大きな屋敷だとか、列車の上だとか、閉鎖された空間で殺人事件が起こるという話ばかり書いてきた。限られた登場人物の中に犯人がいるというスリル。そして、その犯人の意外性。閉鎖空間という状況を最大限に活かす作家という印象だ。

 閉鎖状況を得意としているから、クリスティーのクローズドサークルものにほとんどはずれがないのに対して、冒険もの、スパイものといった、主人公が世界を股にかけて活躍するようなオープンな話になると、正直なところ期待外れに終わることも多い。いつものクリスティーの面白さが半減したように感じられてしまうのだ。

 ポアロが世界的な犯罪組織と戦う「ビッグ4」やノンシリーズのスパイもの「フランクフルトへの乗客」などは、オープンにした結果、うまくいかなかった例といえるだろう。

 とはいえ、クリスティーの冒険ものがすべてつまらないわけでもない。数は少ないものの、これは面白いという傑作もいくつか存在するのだ。トミーとタペンスのシリーズに面白いものがあるし、本作「茶色の服の男」もまたクリスティーの冒険ものの中でもきらりと光る作品といえるだろう。

 考古学者の娘であるアンは、ロンドンの地下鉄で男が事故死するのを目撃する。男が所持していた紙切れをたまたま手にすることになったアンは、冒険心をくすぐられ紙片の謎を追いかけるうちに、謎の国際的な陰謀の渦へと巻き込まれていく。話の舞台もロンドンから南アフリカへと移り変わり、ダイヤモンドを巡る陰謀事件の謎を解決していくことになる。

 ただの紙切れ一枚から始まって、国際的な犯罪組織を巡る物語に広がっていくところがすごい。謎の事件を追って主人公が殺人現場を訪れたり、ためらいもなく船旅に出ることになったり、南アフリカでは危険な目に遭遇したりと、冒険のロマンにあふれているところがとてもいい。クリスティーの冒険ものも面白いじゃないかと思わせてくれる。

 主人公のアンはクリスティーの小説にたびたび登場する、冒険をこよなく愛し、危難の中に無鉄砲にも飛び込んでいく意志の強い女流冒険家タイプ。クリスティーも世界中あちこち冒険して回っていたようだから、クリスティー自身にもこういう側面があったのかもしれないなあと思った。
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われらの父の父 [ミステリ(外国)]


われらの父の父

われらの父の父

  • 作者: ベルナール ヴェルベール
  • 出版社/メーカー: 日本放送出版協会
  • 発売日: 1999/11
  • メディア: 単行本



 人類は猿から進化したなどというけれど、人類進化の過程についてみると化石が見つからないことが多くて、原始的な霊長類と人類との間のつながりの部分が欠けているんだそうだ。

 進化の鎖の輪が欠けてしまっているということで、「ミッシングリンク(失われた輪)」などと言われている。

 人類はどんなふうな道筋をたどって、現在のような形に進化したのだろう? 輪が欠けてしまっている以上は、空想するほかないだろう。多くの人々がミッシングリンクのミステリーを解明しようと、いろいろな説を唱えてきた。

 単に偶然が積み重なって人間に進化した? 努力して新たな能力を獲得した? 人類はもともと水中に棲んでいた? 飢餓状態になって食生活が変わったことが原因? などなど……。

 本書「われらの父の父」もまた、そんなミッシングリンクの魅力にとりつかれたような作品だ。

 人類の起源を研究する古人類学者のアジュミアン教授が自宅で殺害される。残されたメモによると、教授は人類発祥の謎、ミッシングリンクの謎をついに解明したのだという。犯人は教授の口をふさぐために殺害したのだろうか? なぜそのような犯行に及んだのだろう? そして人類進化のミステリーの真相は一体……?

 殺人事件の謎を追いかけていくミステリーで、女性記者と科学者がコンビを組んで奮闘する。

 最初のうちは殺人事件の真相はどんなふうに解決するだろうという興味で読み始め、なんとなく読み進めて、終盤だれるなあなんて思いながら読んでいた。つまらなくなって途中でやめようかなんて思いつつ、つらつらと惰性で読んでいたら、終盤になってがーんと頭を殴られるような衝撃が!

 殺人事件の真相なんていうものではない。問題は人類進化の謎のほう。人類の起源の謎について、衝撃的な解答が用意されているのだ。誰も想像だにしなかったであろう解答が。

 人類進化について想像のはるか上を行く答えが書かれた前代未聞の本だった。ベルナール・ヴェルベールは本当に発想がぶっ飛んでいて面白い作家だと思う。もっと翻訳されればいいのになあと思える、知られざる作家だ。
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名を捨てた家族 [歴史小説(外国)]


名を捨てた家族: 1837 ― 38 年 ケベックの叛乱

名を捨てた家族: 1837 ― 38 年 ケベックの叛乱

  • 作者: ジュール ヴェルヌ
  • 出版社/メーカー: 彩流社
  • 発売日: 2016/11/10
  • メディア: 単行本



 カナダのケベックは、もともとフランス系住民たちが植民していた土地で、「ヌーヴェル・フランス」などと呼ばれていた。

 ところが、同じくアメリカ大陸での権益の拡大を目指していたイギリスもまた、虎視眈々とこの土地を狙っていた。英仏の利害対立は、北米の地を舞台に、幾度もの戦いを引き起こす。

 相次ぐ戦争の果てに勝利したのはイギリスだった。フレンチ・インディアン戦争のさなか、1759年にイギリス軍がケベックを制圧する。1763年には、英仏間で条約が交わされ、ルイ15世はカナダと周辺属領の独占所有権を譲渡する。こうしてケベックはイギリスの統治下に置かれることになった。

 だが、この土地には大勢のフランス系住民が住み着いていた。おいそれとイギリス支配に甘んじられるはずもない。フランス系住民たちの不満はくすぶり続け、各地で統治者たちとのいざこざが起こり始める。イギリス支配から脱却しようと、大規模な反乱の兆しも見え始めていた……。

 ジュール・ヴェルヌの小説「名を捨てた家族」は、このようなカナダの歴史背景をもとに描いた歴史小説である。イギリス支配に対抗すべく、フランス住民たちが引き起こした「ケベックの反乱」という実際に起こった史実を描いている。

 冒険物語で有名なヴェルヌが、どんなふうに歴史小説を書くのか興味があったのだが、読んでみるといかにもヴェルヌらしいドラマティックな内容に仕上がっていた。

 単に歴史を忠実になぞるのではなく、一部フィクションも交えながら生き生きと語っているところは見事。出てくる登場人物たちの織りなす人間ドラマが、歴史物語に幾層もの深みを与えている。

 とりわけ、反乱を主導する主人公「名無しのジャン」という人物の設定は非常にうまい。神出鬼没で正体がつかめず、イギリス軍を翻弄し、フランス系住民たちからは伝説の存在のように慕われる男。反乱軍の要ともいえる人物。
 
 だが、彼には誰にも話すことのできない隠された過去があった。「名無しのジャン」の隠された秘密は、やがて登場人物たちの運命を大きく揺るがすことになる。

 ケベックの反乱という興味深い史実を描いた物語で、歴史そのものの面白さがあることはもちろんなのだが、真に心を揺さぶられたのは、やはりそのような歴史に翻弄される人々のドラマのほうだった。

 ヴェルヌはSFや冒険小説の祖とか言われているけれど、ヴェルヌの面白さはそれだけじゃないよというのがよく分かる内容。ヴェルヌはやはり小説そのものが非常にうまい人、文学作家としても非常に優れた人だったのだ。

 ちなみに、本作は今回はじめて翻訳された知られざる作品。こんなに面白い話が翻訳されていなかったとはもったいない。ヴェルヌはまだまだ未訳のものが非常に多いので、どんどん翻訳していってほしいなあと思う。
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後鳥羽伝説殺人事件 [ミステリ(日本)]


後鳥羽伝説殺人事件 (角川文庫 (5976))

後鳥羽伝説殺人事件 (角川文庫 (5976))

  • 作者: 内田 康夫
  • 出版社/メーカー: 角川書店
  • 発売日: 1985/01
  • メディア: 文庫



 1221年の日本では、東国の鎌倉幕府と西国の朝廷との間で対立が起こっていた。

 幕府が全国に地頭を置くようになったため、皇室の直轄領の荘園にまで地頭がやってきて、勝手に税を取り立てたり土地を支配するようになった。このことで自分たちの支配権を侵害された朝廷は、当然、幕府に対して不満を覚える。

 当時、院政を敷いていた後鳥羽上皇もまた、幕府に不満を持つ一人だった。彼は諸国から武士を集めて、幕府を倒そうと挙兵する。

 いざ戦いが始まれば、武士たちも朝廷軍に味方するだろうと上皇は考えていたが、ここに大誤算が起こる。北条政子らの活躍によって幕府軍が団結して、朝廷軍を抑え込んでしまったのだ。結局、後鳥羽上皇は大敗北を喫し、隠岐の島に配流となる。承久の乱と呼ばれる出来事である。

 ところで、この後鳥羽上皇がどのようなルートをたどって隠岐へ送られたのかということについて、ある伝説が存在する。

 この歴史上の伝説をもとに描かれたのが、本書「後鳥羽伝説殺人事件」である。

 後鳥羽上皇が歩んだ道筋をたどって、広島を旅していた女性が、駅で何者かによって殺害される。彼女が持っていた後鳥羽上皇に関する本がなぜかなくなっていた。一体、誰が何の目的で犯行に及んだのか? 

 後鳥羽伝説という歴史の興味が絡んできて、歴史好きにはたまらない一冊といえるだろう。後鳥羽伝説なんて本書を読むまでまるで知らなかったので、ひとつ勉強になってよかった。旅情があって、登場人物たちと一緒に広島を旅している気分になるところなどもよい。

 もちろん、ミステリーとしてもよくできている。警察の地道な捜査によって、少しずつ視界が開けてくる感じは、松本清張の小説を彷彿とさせるものがあるし、最後の犯人の正体には誰でも唖然とさせられるはずだ。

 名探偵役はおなじみの浅見光彦。テレビドラマでやっているのをよく見ていたけれど、今回、原作を初めて読んでみて驚いた。浅見光彦がいっこうに出てこないのである。途中まではこつこつとした警察の捜査が続いて、もう出てこないんじゃないかと思い始めた時にようやく浅見が登場する。最初はこんな登場だったのか。

 警察の捜査の部分とか真に迫っている感じで、なかなか読みごたえがあった。他の伝説ものもぜひ読んでみなければ。
タグ:内田康夫
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