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最も危険なアメリカ映画 [映画]





 よくできた映画は、現実の出来事や社会情勢を反映したものであることが多い。

 現実の出来事がそのままストーリーになっていることもあるし、背景としてのみ用いられることもある。

 映画というのは人間の生きざまを描くものだが、人がどんな風に生きるのかは、その人の置かれている社会情勢によって変化するもの。人間を掘り下げて描くためには、時代背景や社会がどのような状態であったのか、そのような社会情勢におかれた人々がどんな生き方をしてきたのかを踏まえる必要があるだろう。

 本書「最も危険なアメリカ映画」で紹介されている映画作品はまさに、アメリカで実際に起きた出来事や、時代背景を色濃く反映したような映画ばかりだ。

 KKKの時代を描いた「國民の創生」、先住民に対する差別的時代を描いた「滅び行く民族」、ウォルト・ディズニーが戦時中に東京大空襲を煽ったという「空軍力による勝利」、復員兵のPTSDの問題を扱った「光あれ」、冷戦期のマッカーシズムを描いた「影なき狙撃者」などなど。

 中には製作者の思想性が強すぎて、事実がゆがめられてしまっているようなものもあるけれど、そういう映画も含めて、アメリカを象徴する作品ばかり。

 読んでいくと、アメリカがこんな歴史をたどってきたのかという、アメリカの実態を知ることができる。アメリカンドリームなどというきらびやかなイメージの影で、暗黒の歴史をたどってきたことが分かる内容だ。

 まあとにかく各映画の解説の情報密度が濃い。背景事情が盛りだくさんに書かれているので、非常に読みごたえがある。普通に観ていたら絶対に知りえなかっただろうことがたくさん書かれているし、そもそもこんな映画観る機会ないよというのも混じっていて、いろいろな意味で驚かされた。
 
 こうして作品が並んでいるのを見ると、アメリカ映画というのも単なる娯楽を超えた、社会性のあるメディアなんだなあと改めて痛感。そのときどきの時代において、社会に何かを訴えかけようとした製作者たちの心意気には感動してしまった。
タグ:町山智浩
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十二夜 [演劇]




 
 主人公が誰かと入れかわったり、誰かに成りすましたりすることで、大騒動が起こるという話は古今東西たくさんある。

 ケストナーの「ふたりのロッテ」は双子の姉妹が入れかわる話だし、マーク・トウェインの「王子と乞食」は王子と乞食が入れかわる話だった。「デーヴ」という映画では、モノマネ俳優がアメリカ大統領に成りすまして活躍する。

 周囲に勘違いが広がっていって、物事が思わぬ方向に進んでいく可笑しさ。コメディの定番中の定番かもしれないが、この種の話は何度読んでも楽しい。

 なかでもウィリアム・シェイクスピアの「十二夜」はこの種の物語の先駆的作品といえるだろう。さすがにシェイクスピアが書いているだけあって、完成度が高い。

 物語の主人公は船が難破して生き別れになった双子の兄と妹。妹のヴァイオラはひょんなことから男装してイリリアの領主オーシーノの下に仕えることになる。

 ヴァイオラはすっかりオーシーノの魅力にとりつかれてしまうが、オーシーノはすでにオリヴィアという別の女性に恋い焦がれていた。オーシーノがオリヴィアに求婚しようとしたところ、思いもよらず、オリヴィアは使いとしてやってきた男装したヴァイオラに一目ぼれしてしまう。

 そこに生き別れになったヴァイオラの兄のセバスチャンがやってくる。

 登場人物がたくさん出てきて、その誰もが何かしらの勘違いをしているところが見事。たたみかけるように勘違いが積み重なっていく。そして、そうした勘違いが人物たちの行動を狂わせ、各自おかしな運命をたどっていく。

 脇役がいないというか、どの人物にも見せ場があるところもよかった。それぞれの人物の思いがきちんと書き分けられているから、可笑しみが増すのだろう。

 てんやわんやの騒動になっていくので、どうやって話をまとめるのだろうと思いながら読んだ。最後はきっちりとまとめていて、読後感も爽快。さすがに古典と呼ばれるだけあって、面白かった。
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タイム・リープ/あしたはきのう [SF(日本)]





 タイムトラベルを題材にしたSFが好きで、ときどき読むのだが、これにもいくつか種類があるらしい。

 主人公がタイムマシンで過去や未来に行くオーソドックスな話。過去の自分に戻って人生をやり直す話。同じ日が何度も繰り返される話。行き来はできないが、過去の人間と通信はできるという話。

 時間の順序がばらばらになってしまうという話もある。月曜日の次に木曜日がやってきて、そのあと日曜日に戻るといった時系列がランダムになる話だ。

 「シャッフル」というサンドラブロックが出ている映画が、このランダムタイプだった。あの映画を見たときに、妙なことを考える人がいるなあと思ったものだが、「タイム・リープ/あしたはきのう」という本を読んだら、同じくランダムタイプの話だった。妙なことを考える人が日本にもいたのだ。

 話の内容は、高校生の少女がランダム現象に遭遇して、その謎を解いていくというもの。読んでみると、「シャッフル」よりもこっちのほうが面白かった。ジグソーパズルを解いていくような緻密な構成にはうならされたし、ランダム現象の原因もしっかり考えられている。

 何より結末の落とし方がいい。ランダム現象をうまく利用して、問題を解決していくのは爽快感がある。

 かなり理屈っぽい話で、本当にパズルみたいな小説だった。あちこちに伏線が張ってあるし、謎また謎の展開で、ミステリー小説を読んでいるような感覚。ミステリーが好きな人にも楽しめる小説だと思う。

 映画化もされているようなので、見てみたくなった。
タグ:高畑京一郎
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世界はなぜ月をめざすのか [地学]


世界はなぜ月をめざすのか (ブルーバックス)

世界はなぜ月をめざすのか (ブルーバックス)




 アポロ計画終了から40年が経ち、月に対する人々の関心も薄らいでいったように見える。

 しかし、最近になって、再度月に関心が集まり始めているんだそうだ。各国は月にロケットを飛ばし、探査車を送り込んだり、人工衛星で観測したりしているのだとか。

 技術の進歩によって、月に行きやすくなったというのもあるし、月にいくつか資源があることが分かったからというのも理由の一つだ。

 アメリカなどは一足先に月の権利を手に入れようと奮闘しているし、他国も負けじとその後を追う。月を舞台に熾烈な競争が繰り広げられ始めているらしい。

 月と言えば、SF作家のロバート・A・ハインラインを思い出す。ハインラインは、月世界を舞台にした作品をいくつも残していた。月面にルナ・シティと呼ばれる月面都市が作られ、そこを舞台に様々な冒険が展開するといった物語だった。

 そんなわくわくするような世界が本当にやってくるのかもしれない。本書を読んで、現実がSFに追いつく瞬間を目撃しているようで驚かされた。

 もし現実に月面に基地を作るとなれば、どんなイメージになるだろう? 月には大気がないので、隕石が大気による減速なしにもろに降り注いでしまう。また、宇宙からやってくる人体に有害な放射線も大気が遮断してくれるわけでもない。

 地表に基地を作るには危険がたくさんあるので、地下の溶岩洞を改造してモグラのように住み着くことになるのではないか? そうすれば、分厚い地殻が隕石や放射線の危害から守ってくれる。人々は必要に応じて外に出て、天体観測や宇宙実験、資源の開発に取り組むことになるのだろう。

 月面への探査はほかの惑星探査への足がかりに過ぎないともいえる。月面基地の次は火星に行って、火星に基地が作られることになるだろう。その後は、木星や土星への探検だ。

 月に世界各国がこぞって進出しているというのは朗報だと思う。ルナ・シティが本当に見られる日が来るのかもしれないと思うと、なんとも夢のある話ではないか。
タグ:佐伯和人
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できそこない博物館 [SF(日本)]


できそこない博物館 (新潮文庫)

できそこない博物館 (新潮文庫)




 SF作家の星新一は、生涯に1001篇ものショートショートを書いたという。

 そんなにたくさん書いているくらいだから、アイデアが湯水のごとく沸いて出たのかなと思いきや、意外にも毎回書くのに苦しんでいたらしい。

 いやいやながらも机に向かってあれこれ思いつくまま書いていく。書いていくうちにメモのようなものがまとまって短編の種になっていく。そんな作業を繰り返していたんだそうだ。

 本書はそんな生みの苦しみの最中に、星新一があれこれと書いたメモを集めた珍しい本である。

 メモと言えどもあなどれない。すでに立派なショートショートと言えるようなものもたくさん混じっていて、どうしてメモのままで作品にしなかったんだろうと不思議なくらいだ。

 中にはなんだかよく分からないようなものも混じっている。こういうのも星新一が解説すると、話がどんどんふくらんでいって、なんだか漫談を聞いているみたいで面白い。

 星新一に言わせると、大事なのはシチュエーションだという。

 よく考えると、星新一の小説はほかの作家のものと決定的に異なるところがある。それはキャラクター性の希薄さである。星新一の作品の登場人物は無個性で、名前すら抽象的な「エヌ氏」だったりする。

 普通は個性的なキャラクターがいて、能動的にストーリーを引っ張っていくのが小説というもの。読者も共感できるキャラクターに感情移入するからこそ、最後まで読もうという気になる。なのに、星新一はキャラクターというものを自ら封印している。その代わりにシチュエーションの面白さだけで話を引っ張っていく。

 きっと並々ならぬ苦労があったに違いない。キャラクターという作家にとっての最大の武器を封印しているのだから。

 毎回うんうん頭をひねりながら、面白いシチュエーションを考えていく。ありふれたものでない、読者をあっと言わせるシチュエーションはないものか? そんなふうに苦しんだ結果が1001篇ものショートショートになったと考えると、気が遠くなる。

 星新一がどのようなことを考えて作品を作ってきたのかを垣間見ることのできる本。ショートショートの舞台裏を見ているみたいで面白かった。
タグ:星新一
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