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ゲノム編集とは何か [生物]


ゲノム編集とは何か 「DNAのメス」クリスパーの衝撃 (講談社現代新書)

ゲノム編集とは何か 「DNAのメス」クリスパーの衝撃 (講談社現代新書)

  • 作者: 小林 雅一
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2016/08/18
  • メディア: 新書



 もっと美しくなりたい。もっと頭がよくなりたい。もっと運動ができるようになりたい。もっと若くなりたい。病気になりたくない……。誰しもいろいろな願望があるだろう。

 そんな願望はかなわぬ夢にすぎない。人生甘くない。そんなふうに考えてはいないだろうか?

 でも、非現実的と思えるような願望であっても、ひょっとしたら近い将来に実現してしまうかもしれない。科学の力で夢がかなうかもしれない。そんなことが書かれているのが、本書「ゲノム編集とは何か」だ。

 タイトルにもある「ゲノム編集」とは、遺伝子の改変技術のことである。

 遺伝子の改変技術というと、これまでも遺伝子組み換え技術があった。遺伝子組み換え作物など、大きく騒がれたりもしていたが、実はあまり精度の高いものではなかったらしい。組み換えが成功するまでとても時間がかかるし、間違った場所に組み換えが起こってしまうことが多かった。

 だから、遺伝子組み換え技術はあまり成果が出なかったようなのだが、最近になって新たに「ゲノム編集」という技術が発見されるようになった。この技術は遺伝子を文字通りカット&ペーストすることのできる技術で、遺伝子組み換え技術のような精度の低いものではなく、ピンポイントで遺伝子を編集することのできる画期的な技術なのだ。

 この技術を使えば、害虫に強い作物などを作り出すことができるし、免疫細胞を編集することで病気を克服することもできる。若返りが可能かもしれないし、禿をなおすこともできるかもしれない。

 生殖細胞を編集すれば、これから生まれてくる子供の健康状態を改善することもできる。それどころか、子供の容姿や運動能力、知能を高めていくことだって可能になるだろう。子供の性質を、自分好みにデザインする時代がやってくるかもしれないという。

 難病治療など、技術が発展するといいねと思う反面、やはり恐ろしくもある。よく言われるフレーズだが、神の領域に踏み込んでいくような感覚。

 子どもをデザインする世界というのはどんなものだろう? 優秀な遺伝子をもった人間がそうでない人間を支配する。そんな遺伝子格差社会が生まれるのだろうか? 他の生物の能力をかけ合わせたようなミュータント的な人間が現れるのだろうか?

 そもそも子どもをデザインするというのはどこまで許されるのか? 遺伝子をいじくりまわした挙句に両親とは似ても似つかない子どもが生まれたら、親子関係はどうなってしまうのか?

 いろいろ想像を超えたような問題が起こってきそうである。なんだかすごい世界がやってくるなあと、夢があるのと同時に、漠然とした不安感を与えられる本でもあった。
タグ:小林雅一
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カラスの教科書 [生物]


カラスの教科書 (講談社文庫)

カラスの教科書 (講談社文庫)

  • 作者: 松原 始
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2016/03/15
  • メディア: 文庫



 道を歩いているとよく見かけるカラス。カラスがどんな生活を送っているかなんてあまり考えたことはなかったが、カラスの暮らしぶりも詳しく見ていくと結構興味深い。

「カラスの教科書」という本は、こうしたカラスの生態について詳しく解説した一冊である。

 都会に生物が住むというのはなかなか難しいそうだ。

 植物が育つには環境が大事なので、都会の特殊な環境下では育たない植物というのがある。また、そうした植物を餌にしている昆虫も都会では生きられない。昆虫を餌にしている動物も生きづらいということになるだろう。

 都会は生態系が乏しいので、住み着くことのできる生物には限りがあるのだ。

 カラスは都会で生活をすることのできる限られた生物のひとつである。なぜ彼らが生きることができるのかというと、雑食でありスカベンジャーであるからなんだそうだ。生きている餌だけではなくて、動物の死骸を食べて生きることができる。

 都会には死肉なんてないんじゃないかとも思えるが、実はカラスにとっては豊富な死肉が存在する。それは人間の出すゴミ袋である。ゴミ袋の中にはたくさんの食べ物が転がっている。

 カラスは動物の死骸をくちばしで突く要領でゴミ袋を突く。ゴミ袋を突いている行動は一見器用な行動に見えるが、カラスにとってはごく自然な行動だったのだ。

 カラスはそこら中にいるから、楽々生きているのかと言えばそうでもないらしい。生まれたひな鳥の中で巣立ちできるまで育つのはごく一部だし、巣立ちしてからも事故にあったり、食べ物にありつけなかったりで、死んでいく者がほとんど。子孫を残すことができるのはごくわずかの個体のみ。

 本書を読むと、カラスも都会で結構苦労しているんだなあということが分かることが書かれてあって、カラスが一気に身近なものに思えてくる。これからカラスを見たときには、結構頑張っているじゃないかと応援したくなってくるような本だった。
タグ:松原始
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星々の蝶 [SF(外国)]


星々の蝶

星々の蝶

  • 作者: ベルナール ヴェルベール
  • 出版社/メーカー: 日本放送出版協会
  • 発売日: 2008/07/25
  • メディア: 単行本



 「星々の蝶」は、ベルナール・ヴェルベールというフランスのSF作家が描いた小説である。

 SF小説のテーマのひとつに世代宇宙船ものというのがある。

 もし将来、地球が人口過密になったり、核戦争や環境破壊によって住みづらい環境になったらどうなるだろう? 人類は新しい住処を求めて惑星探査に乗り出すことになるのではないか?

 宇宙には地球と環境が似たハビタルプラネットがいくつも存在するという。もしそんな惑星に行くことができれば、植民地にして開発することができる。

 問題はそのような惑星が何光年も離れた遠いところにあるということ。そんな遠い場所に行くことは不可能に近い。ワープなどは空想的すぎるし、冷凍睡眠装置は人体の細胞を破壊してしまう。

 ただ、系外惑星に到達するための方策がないこともない。それは巨大な宇宙船を作ってしまうということ。大きな宇宙船の内部に地球環境をそっくりそのまま再現してしまう。その中で自給自足しながら新たな惑星めざして宇宙飛行するというやり方。目標までに何千年もかかる、世代交代を繰り返しながらの気長な旅だ。世代宇宙船と呼ばれる方法である。

 本作はまさにこの世代宇宙船をテーマにした作品なのである。

 世代宇宙船ものの作品というのは本作以外にもたくさん書かれているが、たいていは宇宙飛行の途中から描かれることが多い。既に地球を離れて何世代か時代が過ぎてからのドラマが描かれることが普通だ。

 本作が面白いのは、普通なら省略されるような世代宇宙船を作るところからきちんと描いていることである。巨大な宇宙船をどうやって建造するのか? 人工重力をどのように作るのか? 内部の環境をどのように再現するのか? 結構丁寧に描いている。土を敷き詰め、川や湖を作り、植物を植え、虫や動物を放つ。ミニサイズの地球を作る過程が楽しい。

 環境だけ作ればいいというものでもない。10万人以上の人間が生活することになるので、秩序も必要である。社会秩序を作るために法律を制定しルールを守らせる。政治的な意思決定機関を新たに作り出す。労働を分担させる。こうした社会環境の整備に関しても、細かく考えられているのである。

 もちろん、世代宇宙船建造のドラマだけでなく、その後の展開も面白い。世代交代の様子もしっかり描いていて、時代を経るごとに宇宙船内部は変貌していく。内部対立や戦争、病気の蔓延などの事態が起こる。当初の理想は失われ、宇宙船が何を目的にしていたのかも忘れさられてしまう。

 まるで架空の歴史物語を読んでいる感覚があって、人類社会をを風刺しているみたいで興味深かった。

 最後の最後にこういうオチになるのねという結末が待っていて、賛否両論あるようだが、全体的には楽しんで読める本だ。

 この作家のものは結構面白い作品が多いけれども、ある時点からふっつりと翻訳されなくなって久しい。まだまだ未訳の作品もあるので、翻訳出ないかなあと待ち望んでいる。やはりフランスの作家だから翻訳が難しいのだろうか? 現代SF作家の中で一番好きだったりするのに、非常に残念だ。
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Pixivリンク先 [お知らせ]

 お知らせです。

 Pixivという投稿サイトで、不定期に趣味のイラストを更新しています。

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超現代語訳戦国時代 [日本史]


笑って泣いてドラマチックに学ぶ 超現代語訳・戦国時代

笑って泣いてドラマチックに学ぶ 超現代語訳・戦国時代

  • 作者: 房野 史典
  • 出版社/メーカー: 幻冬舎
  • 発売日: 2016/09/08
  • メディア: 単行本



 お笑いコンビの「ブロードキャスト」として活躍する筆者が、戦後時代についてコント風に語った本。

 普段あまりバラエティ番組を見ないので、筆者のことは知らなかったのだが、歴史好きが高じてこのような本を出すようになったのだとか。コント風味なので、とにかく読んでいて面白い。軽い感じでさくさくと読み進めることができた。

 扱っている時代は、応仁の乱、関ケ原の戦い、真田三代。大河ドラマの「真田丸」と若干かぶっているが、「真田丸」には描かれていない部分もおさえられている。どういうふうに時代が流れていったのか、歴史的な変遷がつかめるように書かれているので、歴史の勉強をやり直すのにちょうどいい。

 ところどころ、史実と思われている箇所も実は諸説ありますということがしっかり指摘されているので、ああそうなのかととても参考になる。

 それにしても、いつも思うのだが、関ケ原の戦いって天下分け目というわりにはなんだかあっけない感じがする。一部に戦意が欠けていたり、いろいろ裏切りがあったりして、負けた西軍がかわいそうになってくるのである。

 物理的な合戦以前に、家康の策略があったり、石田三成の人望だったりが影響していたんだろう。戦いというのは、外交だとか情報戦も含めて戦いなんだなあというのがよく分かる史実だと思う。

 今回戦国時代の話が面白かったので、ぜひ別の時代のものも読んでみたくなった。
タグ:房野史典
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吉田松陰と久坂玄瑞 [伝記(日本)]


吉田松陰と久坂玄瑞 高杉晋作、伊藤博文、山県有朋らを輩出した松下村塾の秘密 (幻冬舎新書)

吉田松陰と久坂玄瑞 高杉晋作、伊藤博文、山県有朋らを輩出した松下村塾の秘密 (幻冬舎新書)

  • 作者: 河合 敦
  • 出版社/メーカー: 幻冬舎
  • 発売日: 2014/11/27
  • メディア: 新書



 吉田松陰というのも面白い人物である。

 とにかく本を読むのが大好きな人だった。1日平均2冊、年600冊を読破していたのだとか。当時の出版事情を考えてもすごいことだったのではないだろうか?

 黒船密航の罪で牢獄に入れられたときも、ひとり嬉々としていたようだ。これで晴れて自由に本が読めるぞと前向きに考えていたのだ。周りの囚人からも奇妙なやつが来たなと思われていたらしい。

 本を読むのが好きなだけでなくて、人に語ったりするのも大好き。孟子や孔子の訓話だとか本で読んだ話だとかを、人に話して聞かせていた。周りも最初は気味悪がって避けていたようだが、だんだん松陰の語り口に乗せられて、結構面白いじゃないかということで、感化されてしまう。

 他人の才能を見抜く力もあったようだ。獄中でも囚人たちの詩や習字の才能を見いだしては、「あなたの書体はすばらしい。弟子にしてください」などと言って、彼らの長所を伸ばしていったんだそう。人には誰にでも何かしらの才能があるというのが松陰の考えだった。

 囚人たちも世間のつまはじきにされた者たちばかりだったろうから、自分たちの才能を認められるのはさぞうれしかっただろう。囚人たちはこぞって松蔭に弟子入りし、牢獄の監督人までもが松蔭の講義を拝聴するようにまでなる。とうとう牢獄は松蔭の塾のように変貌してしまうのである。

 まさに生まれながらの教育者といえるだろう。こうした彼の教育者としての才能がさらに発揮されたのが、有名な松下村塾。わずか2年という短い期間のうちに、高杉晋作、伊藤博文、山県有朋といった偉人たちを輩出するようになったというから驚異的である。松蔭の教えがその後の明治維新の動きへとつながっていく。

 「吉田松陰と久坂玄瑞」を読むと、このあたりの話がふんだんに紹介されているし、当時の人間模様がわかりやすく描かれている。人が人に与える影響が歴史を変化させたんだということがわかるところが面白かった。

 松蔭は志半ばで処刑されてしまうが、彼の教えを受けた久坂玄瑞や高杉晋作が松蔭の意志を継いで、その後の日本を変えていくことになる。教育や人間同士の影響力というのも面白いものである。松蔭がいなかったら、明治維新も違った形になっていたのかもしれない。
タグ:河合敦
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ミスター・メルセデス [ミステリ(外国)]


ミスター・メルセデス 上

ミスター・メルセデス 上

  • 作者: スティーヴン・キング
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2016/08/22
  • メディア: 単行本



 スティーヴン・キングの新刊が出た。キングには珍しい純粋なミステリーもの。伝統あるエドガー賞を受賞したというから内容もお墨付きの作品だ。

 物語は合同就職フェアの場面から始まる。2009年の不景気のさなか、求職者たちが列をなして開場を待っている。そこに突然、メルセデス・ベンツが猛烈なスピードをあげて突っ込んでくる。人々は次々に車にはね飛ばされ、多数の死傷者が出る。犯人はピエロのマスクをかぶった謎の人物だったが、捕まらずに逃げおおせてしまう。

 犯人解明への手がかりは乏しく、事件の捜査は頓挫。このままでは迷宮入りになろうかというとき、主人公の元刑事のところに「メルセデス・キラー」から挑発する内容の手紙が届き、新たな展開が始まる。

 ミステリーではあるけれども、犯人は割と早いうちに明かされている。犯人が分かっているから面白くないかと言えばそうではない。

 犯人が分かっているけれども、主人公たちが犯人に一歩ずつ近づいていく推理の面白さはきっちりとおさえられている。また、犯人が分かっているので、かえって主人公との対決色が鮮明になり、いかにも退職刑事対異常殺人者のバトルという感じの緊張感ある内容になっている。

 ストーリーも面白いのだけれど、なによりキャラクターがたっているところが見事。キングの作品はこれに限らないのだけれど、異常者の心理を描くのが非常にうまい。どこか頭のネジがぶっとんだ人物が出てきて悪事を働くのだけれど、本当に実在するかのようなリアリティがある。

 今回も「メルセデス・キラー」の目線での場面が出てきて、犯人がどんなことを考えているのかという内面の描写が事細かに描かれているし、人物がどのような背景を持っているのかまで丁寧に書かれている。異常者なんだけれど、単に異常者というレッテルで終わらせるのではなくて、異常者なりの論理があるというところまで丁寧に描かれているところが迫力があった。

 刑事目線での推理ものとしての面白さ、犯人目線でのクライムサスペンスとしての面白さ、ふたつの面白さが交互に味わえるという非常に濃厚な作品。最近読んだミステリーではこれが一番面白かった。3部作になるようなので、次回作も楽しみになった。
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物語の役割 [文学]


物語の役割 (ちくまプリマー新書)

物語の役割 (ちくまプリマー新書)

  • 作者: 小川 洋子
  • 出版社/メーカー: 筑摩書房
  • 発売日: 2007/02
  • メディア: 新書



 「博士の愛した数式」などを書いた小川洋子が、物語について語った本。

 普段から映画を見たり小説を読んだりするのが好きなのだが、そもそもなんで物語が必要なのか、なんで物語を見たり聞いたりするのかあまり考えたことなかった・・・・・・。

 本書の中で筆者は、物語というのは重要な役割があると言っている。それは、人が現実を受け入れる際に物語の形にして取り込んでいるということ。

 誰しもうれしいことがあったりつらいことがあったりするけれど、起きた出来事をありのまま記憶するわけではない。うれしいことは膨らませて記憶したり、つらいことは脚色して記憶したりするものだ。とくに受け入れがたいような現実に直面したときには、フィクションの形にしてオブラートにくるまなければ自我が崩壊してしまいかねない。

 作家だけが物語を作っているのではなくて、誰でも物語を作り出しているということで、たしかにそうなのかもしれないと思った。

 自分の経験でも、日々のいろいろな出来事を自分の中に取り込むときに、原因と結果というか因果律を考えて物語という形に変換して取り込むことはよくある。その際、物語化した段階で出来事が多かれ少なかれ変容してしまい、現実とは異なるものになってしまうのだろう。

 じゃあ、自分の物語ではなく、他人の物語を取り込むことにはどんな意味があるのだろう? おそらく、自分で何でもかんでも体験できるわけではないので、他人の物語を知るということも重要になってくるからではないか? いわゆる疑似体験というものだ。

 映画を見たり小説を読んだりするのも、内的に世界観を作るためという意味があるかもしれない。こんな出来事があるのかというのを物語の形で取り込むことで、世界を理解しようとする。こんな生き方をした人がいるというのを物語の形で取り込んで、人生の奥深さを知る。

 自分の経験にしても他人の経験にしても、あるいは作られたフィクションにしても、物語というものは世界を理解したり、世界観を作り上げるうえでなくてはならないものだ。人間の頭が物語を欲するようにできているのだろう。

 物語というのは単なる娯楽なのかと思っていたが、本書を読んでもっと根源的な、生きていく上で欠かせないものなのかもしれないなあと感じるようになった。
タグ:小川洋子
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あたしの中の・・・・・・ [SF(日本)]


あたしの中の… (コバルト文庫)

あたしの中の… (コバルト文庫)

  • 作者: 新井 素子
  • 出版社/メーカー: 集英社
  • 発売日: 2005/12/22
  • メディア: 文庫



 SF作家の新井素子の作品集。

 この本の中に収められている「大きな壁の中と外」という中編が面白かった。

 話の舞台は、第3次世界大戦後の世界。核戦争によって人口が激減した人類は、各地に小都市を設置し、農業・畜産・工業・教育・政治などを一切コンピュータにゆだねることになった。人々は子供を産む権利も認められず、コンピュータが各人の遺伝子を見極めて人工授精させ、人工子宮内で養育するようになる。

 そんな時代に生まれた立木あゆみという主人公は、C棟と呼ばれる施設内で生活をしている。C棟は外の都市で社会生活を送ることができない者を隔離するための施設だった。

 何人かのドロップアウトした人間たちがC棟で暮らしていたが、あるときそこにミュウと呼ばれる新入りが入ってきて、C棟に不穏な出来事が次々と起こるようになる・・・・・・。

 SF小説を読んでいるとときどき出てくるパターンのひとつに、話の設定が最後まで謎になっているというものがある。主人公が置かれている状況が秘密になっていて、主人公はその謎を探ろうとする。そして、最後の最後に世界観が明らかとなる。

 SFにミステリーとしての面白さが加味されて、好奇心が刺激されるといったタイプの話だ。

 本作品もそういったたぐいの話で、収容施設の外にどのような世界が広がっているのか、施設に何の意味があるのかが最後まで秘密になっている。

 収容所の壁にはどんな意味があるのだろう? 最後にその意味が明らかとなり、「なるほどー」と感心させられた。

 こういう作品は最後のオチが肩すかしに終わることもあるけれど、本作はその点納得できる内容になっている。コンピュータ社会の行き着く先に何が起こるのか? そのあたりが深く掘り下げられているところが納得のポイントだったと思う。

 やはりよく考えが練り込まれた作品というのは読み応えがある。思索としての面白さ、スペキュレーティブ・フィクションとしての面白さが感じられる。もちろんフィクションなんだけれど、ひょっとしたらこういうことも起こりうるかもねとぞっとさせられるようなところがある。

 ほかの作品も含めて、新井素子はこういう思索をフィクションの形にまとめあげるのがとてもうまい。設定自体も興味深いし、その話の設定を使って物語を盛り上げるのもうまい。
タグ:新井素子
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気象学入門 [地学]


図解・気象学入門―原理からわかる雲・雨・気温・風・天気図 (ブルーバックス)

図解・気象学入門―原理からわかる雲・雨・気温・風・天気図 (ブルーバックス)

  • 作者: 古川 武彦
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2011/03/23
  • メディア: 新書



 さまざまな気象のしくみを解説したブルーバックスの本。

 雲はどのようにしてできるのか? ジェット気流って何? 台風はどうやって発達するの? 気温の変化はどのようにして起こるの?

 本書ではこうした日常の数々の疑問に答えてくれている。一読して、自然現象について「どういう仕組みでこういう現象が起こるのか?」というメカニズムの解説が本当にわかりやすい。現象が起こるまでのロジックが丁寧に詰められている感じ。

 「雲のしくみ」「雨と雪のしくみ」「気温のしくみ」「気温のしくみ」「台風のしくみ」などと章ごとにテーマが変わるところも読みやすかった。

 わかりやすいと言っても、子供向けの本というわけではなくて、グラフや数字、天気図などが駆使されていて、本格的に気象を勉強するのにも役に立つのではないかと思う。

 とにかく読んでいていろいろと頭の整理になって、すっきりと爽快感のある本である。これを読んでから、空を眺めたり天気予報を見たりするのがやたらと楽しくなってきた。
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