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アレルギー医療革命 [医学]


アレルギー医療革命 花粉症も食物アレルギーも治せる時代に!

アレルギー医療革命 花粉症も食物アレルギーも治せる時代に!




 最近、花粉症がつらい。鼻がむずむずして仕方がない。くしゃみも止まらない。さぞかしたくさんの花粉が飛び交っているのであろう。

 花粉症には数年前にかかったばかりなのだが、まさかこんなに大変なものだとは思わなかった。いざかかってみて初めて実感できるつらさ。他人事だった頃が懐かしい限りだ。

 花粉症にかかってみて、なんでこんな症状が出るのかというメカニズムにも俄然興味が沸いてきた。どうしてこんな症状が出るのか、どのような対応をすればよいのか? 気になっていた時に読んだのがこの本「アレルギー医療革命」である。

 花粉症を含めたアレルギー全般について書かれた本で、NHKの特集番組の取材をまとめた内容。この本を読むと、アレルギー治療の世界で、現在めまぐるしい進歩が起きていることが見えてくる。どうも、アレルギーに関してこれまでにない新たな発見があったらしい。

 そもそもアレルギーが起こるのは、免疫細胞が働いているからである。人間の身体には外から侵入した異物を排除するシステムがある。外から細胞やら異物やらが侵入すると、免疫細胞という軍隊のような組織が迎え撃つ。T細胞という司令塔のような免疫細胞がいて、異物が侵入したのを見つけると、実働部隊に命じてせん滅する。

 ところが、このT細胞、ときどき判断ミスを犯すらしい。本来害のないはずの花粉だとか、ピーナッツだとか、卵だとか、そんなものまで誤って敵とみなしてしまう。T細胞は花粉を敵とみなして、実働部隊に攻撃命令を出す。攻撃反応が続くと、様々な炎症症状が引き起こされて、くしゃみや鼻水が出ることになる。

 これがアレルギー反応のメカニズムで、ここまでは今までも分かっていたことであるが、最近になって、これ以上に新たなメカニズムが発見されたらしい。Tレグ細胞と呼ばれる細胞の発見だ。

 従来は免疫の司令塔は、T細胞だけだと思われていたのだが、実はもうひとりTレグ細胞という司令塔がいたのだ。T細胞の攻撃を抑止して、誤った攻撃が起きないように阻止する働きがあるんだとか。

 T細胞は花粉や食べ物など、害のないものに対しても攻撃命令を出してしまうことがあるが、Tレグ細胞はこのT細胞の攻撃命令を中止させて、アレルギー反応を回避することができる。花粉への攻撃を止めるTレグ、小麦への攻撃を止めるTレグ、卵への攻撃を止めるTレグなどと、たくさんの種類があるらしい。

 問題は、このTレグ細胞、個人個人によってその保有する数に違いがあるということ。どんな環境で育ったのか、どんな食べ物を摂取してきたのかによって、Tレグ細胞の保有数に個人差が出てくる。たとえば、アメリカで昔ながらの生活を送るアーミッシュの人々などは、なぜかこのTレグ細胞をたくさん持っている人が多いため、アレルギーになる人がほとんどいないらしい。

 Tレグ細胞という新しい細胞の発見によって、医学会は沸き立っている。そのダイナミックな現状が書かれてあって、非常に興味深い内容だった。Tレグ細胞をどうにか利用して生かすことができれば、アレルギー治療は格段に進歩するだろう。アレルギーに限らず、がん治療や臓器移植にもこのTレグ細胞の知見が役に立つというから驚きだ。

 医学界にこんな大発見があったとはまったく知らなかった。何気なく読み始めたのだが、結構すごいことが書かれていて、今後の医療の進歩が楽しみになってきた。
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鳥人計画 [ミステリ(日本)]


鳥人計画 (角川文庫)

鳥人計画 (角川文庫)




 東野圭吾が書いたスキージャンプ界を舞台にしたミステリー

 スキージャンプの選手が毒殺されるという謎解きものなのだが、殺人事件の謎以外にも平行していくつもの謎解きが進行しているところが面白い。これでもかというくらいにいろいろな仕掛けが施されていて、もうなにがなんやら。それでも複雑に絡み合った謎が最後にはきれいに解けるのだから、あまりのうまさに仰天させられた。

 単に謎が多いだけではなくて、ひとつひとつの謎の解決部分も非常に精巧だ。毒殺の方法もひねりがきいていて、トリック自体もかなり秀逸なものだったのだが、犯罪の動機に関連するスキー界の裏側に潜む謎解きも、社会派ミステリーのような重厚感で迫ってくる。ドーピングとか選手同士の軋轢とか、スキー界の闇の部分が徐々に暴かれていく感じがスリリングだった。

 一番驚いたのは、犯人が割と早い段階で明かされてしまうところだろう。謎の密告者の登場で、犯人は警察に捕まってしまう。普通はミステリーというと犯人捜しが筋書きになるものだが、本書は犯人ではなく謎の密告者の正体を探すという話にシフトしていく。このへんはパット・マガーという作家の「探偵を捜せ!」という本みたいだなあと思った。

 ……と思いきや、あとからさらなる予想外のどんでん返しが待っているのだから、まったく油断がならない。

 二転三転というのはこういうことを言うのかという、手本のような作品である。ミステリーをこんなに夢中になって読んだのも久しぶりだ。よく知らなかったスキーの世界も詳しく書かれていて、こんなふうになっているのかと興味深くもあった。
タグ:東野圭吾
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平の将門 [歴史小説(日本)]


平の将門 (吉川英治歴史時代文庫)

平の将門 (吉川英治歴史時代文庫)




 東京の大手町に平将門の首塚というものがある。

 伝承によると、平将門は朝廷に反旗を翻すが、藤原家の討伐軍に敗れ、京の三条河原でさらし首になってしまう。将門の首は「身体とつながって、もう一戦交えよう!」と夜な夜な叫んでは夜空に舞い上がり、京の町から生国の関東にも飛んで帰ってきたのだとか。首の落ちた場所として有名なのが、大手町の首塚なのだ。

 首塚には怨念やら祟りの逸話がいくつも残っていて、この土地に大蔵省の仮庁舎を建てようとしたら関係者が次々に病死したとか、進駐軍が土地整備をしようとしたら運転手が亡くなったとか、不可解な出来事も起きたらしい。

 そんな恐ろしい伝承がたくさんあるし、日本の三大怨霊などとも呼ばれているので、将門は随分怖い人だったんだなあというイメージがあった。

 しかし、本書を読むと、そのイメージは刷新される。吉川英治は、平将門を人を信じやすい純朴な人物で、強きを挫き弱きを助ける、愛すべき人物として描いているのだ。

 桓武天皇の系譜に連なる由緒ある生まれでありながら、叔父たちの策謀によって一族から目の敵にされ、父の土地や財産を奪われ、不遇の時を過ごす将門。やがて血族間のいざこざは生死をかけた血みどろの争いへと発展していく。

 将門は素朴に親の土地を受け継いで、家業を発展させたかっただけであったが、周囲の仕打ちがあまりにも非道で、将門を殺そうとしたりもするので、争いにならざるを得なかった。戦に勝利して勢いづくと、今度は将門を脅威とみなした勢力が将門を征伐しようとやっきになる。

 この本を読んでいると、将門はかわいそうな人だったんだなあと、将門をつい応援したくなってくる。復讐に燃える将門に感情移入してしまう。そんなふうにうまく書かれている。

 平安時代というのは随分物騒な時代だったというのも見えてくる。貴族的な優雅な世界なのかなと思っていたが、優雅なのは藤原家などの貴族階級だけで、一般庶民は貧窮にあえいでいたし、人身売買なども普通にあったらしい。華やかに見える京の都も、その裏側には群盗が跋扈する奇怪な世界が広がっていたんだとか。当時の時代の雰囲気はこんなだったのかというのが分かるところが面白い。

 世界観は現代とはかなり異なるのだけれど、今の時代にも通じるような人々の思いというのもあって、今も昔も変わらないものがあるのだということを教えてくれる本。過去の時代の人々の息遣いが生々しく描かれていて、うまく書かれているなあと感嘆してしまった。
タグ:吉川英治
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生きるための選択 [国際]


生きるための選択 ―少女は13歳のとき、脱北することを決意して川を渡った

生きるための選択 ―少女は13歳のとき、脱北することを決意して川を渡った

  • 作者: パク・ヨンミ
  • 出版社/メーカー: 辰巳出版
  • 発売日: 2015/11/20
  • メディア: 単行本



 北朝鮮から中国に脱北した女性の手記。

 生まれ育った北朝鮮、脱北した先の中国、最後にたどりついた韓国と、3部に分かれて書かれている。脱北者というのはニュースなどではよく耳にするけれど、本書を読むと脱北者の置かれている状況が生々しく描かれており、こういう生活をしているのかというのが分かる。想像以上に壮絶なもので、衝撃的な本だった。

 冷戦のころは北朝鮮の生活も今とは違っていたらしい。ソ連や中国からの支援が続いていたので、配給制が維持され、飢えるようなこともなかった。自然と民衆も国家に依存心を抱くようになる。

 だが、冷戦が終わると事態は一変する。外国からの支援が乏しくなり、支援があったとしても軍に回されてしまう。計画経済が崩壊し、配給制度は維持できなくなった。民衆は主体的に活動せざるを得なくなり、誰もが商売を始めるようになり、闇市が拡大する。

 飢え死にする人々も多数出るようになり、国家に対する疑問を持つようなものも増えていく。中には北朝鮮を脱出しようという人々も。

 筆者もまた食べるものもなく生きるか死ぬかの瀬戸際に立たされ、ついに脱北を決意する。国境警備員に賄賂を渡して国境を渡り、中国人のブローカーを頼って中国へ。

 だが、脱北したから理想的な生活が待っていたかといえばそうでもない。中国では脱北者は見つけ次第、国に強制送還することになっているので、脱北者は自由に行動することができない。脱北者は弱い立場につけこまれて、人身売買の対象になったり、ブローカーたちにレイプされたりする。筆者も生き残るために、ブローカーの愛人とならざるを得なくなったという。

 やはり当人の目から描かれた本というのは迫力がある。北朝鮮の生活の苦しさだったり、中国での壮絶の生活だったり、外から見ただけではわからないようなことが書かれている本だった。

 北朝鮮というと、外部から遮断されていて、外国からの情報がシャットアウトされているようなイメージもあったが、本書を読むと意外とそうでもない。インターネットなどは使えないけれど、闇市に行くとテレビや外国のDVDなどが売られていて、北朝鮮の子供たちも当局に見つからないようにハリウッド映画を見たり、スーパーマリオで遊んだりしているらしい。中国や韓国の番組がテレビで見られることもあるようだ。

 北朝鮮、中国、韓国と様々な世界を見聞きした筆者は、次々に苦難に遭遇しながらも壁を乗り越えていく。タイトルのとおり、生きるために様々な選択をし続けた人生といえるだろう。絶望的な状況に突き落とされても、何とか生き延びようと奮闘する姿は読んでいて勇気づけられるものがある。日本で飢えることもない生活を送っている自分の悩みなんて、ちっぽけなものかもしれないなあと気づかされた。
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