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大仏はなぜこれほど巨大なのか [日本史]





 東大寺の大仏はなぜあれほど巨大なのだろう? 歴史を紐解きながら、大仏に隠された秘密について解説した本。

 大仏建立の直前の時期、聖武天皇の即位した時代、日本では大きな災害が頻発していたという。

 730年以降、日照りが続いていた。川の水量は減り、凶作となった。飢饉が各地に広がり、人々の疲弊は止まらない。734年には大地震が発生。山は崩れ、川はせき止められ、人家は崩壊し、多数の死者が発生した。さらに追い打ちをかけるように、735年には疫病が蔓延。天然痘による死者が後を絶たない状態となった。

 こうした不安の続く社会情勢の下で、聖武天皇は日本各地の神々に疫病の鎮静化と五穀豊穣を祈願する。しかし、一向に災いは止む気配はない。天皇は在来の神々に祈願するだけでは足りないのではないかと考えるに至り、仏教に帰依するようになった。そして、仏教の力で民を救うべく、大仏建立という国家プロジェクトが生まれる。

 大仏の建立の背景には、壮大な世界観の転換があったようだ。仏教の世界観とこれまでの在来の神々の世界観とは当然に異なっている。仏教に帰依するということは、新たに仏教的な世界観を取り入れていくということ。そして、その世界観というのは、倫理的な教えというにとどまらず、世界はどのように始まり、どのように成り立っているのかという、宇宙観のことでもあった。

 当時日本に伝わっていた華厳経の宇宙観は荘厳なもので、宇宙は多数の小宇宙が階層上に集まったものというものだった。まるで現代物理の多元宇宙論を先取りしたかのような世界観といえるだろう。そして、こうした宇宙観をハスのイメージとして具現化したのが大仏なのだという。

 大仏そのものも荘厳なものではあるけれど、本書を読むと、大仏のデザインの中にさらに壮大な宇宙観が込められていることが分かって圧倒される。大仏のデザインに、こんな宇宙規模の意味があるとは知らなかったので驚いた。大仏に目を惹かれるのが普通かもしれないけれども、実は台座のハスのほうに宇宙的な意味が込められているそうなのだ。

 大仏に限らず、本書はインドのストゥーパだとか、ローマ時代のパンテオンなどにも話が及んでいて、歴史上の建築の背景に隠れた意味を教えてくれている。初めて聞くような話ばかりだったので、かなり勉強になる内容だ。

 観光に行っても何気なく見て終わってしまうことが多かったが、細かなところに様々な象徴が隠されているというのは面白い。象徴が分かれば、今まではただの建築物にしか見えなかったものも、宇宙とつながるような神秘的な場所に見えてくるのかもしれない。
タグ:武澤秀一
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糖質制限の真実 [医学]





 この前、健康診断に行ったら、血糖値が高めだと言われてしまった。糖尿病になるのも怖いので、それ以来、糖分を採りすぎないように注意していて、甘いものはなるべく控えるようになったのだが、どうもそれだけではだめらしい。

 甘くなくてもたとえばポテトチップスなどは炭水化物なので糖質になってしまうし、主食のごはんやパンだって糖質になってしまう。カレーのとろみにまで糖質が含まれているらしいのだ。今まで食べてきたものの多くが糖質であることに気づいて、愕然とさせられたものだ。

 糖分を採らずに生活するのって、無理なんじゃないの? どのくらいまでなら糖質をとってもよいのだろう? どんな食事をとったらいいのか、わけもわからなくなっていたところ、見つけたのがこの本「糖質制限の真実」であった。

 本書は、血糖管理をよくするためのロカボという食事法を紹介している。ゆるやかな糖質制限で、健康的でありながら、無理せず続けやすい食生活を目指そうという試みである。

 本書によると、日本人というのは、元来、血糖が上がりやすい民族なんだそうだ。欧米の人はインスリンを出す力が強くて、太らなければ糖尿病になるリスクは少ない。これに対して、日本人はインスリンを出す力が弱く、肥満になる前に血糖が上がってしまうのだそう。

 じゃあ、血糖をあげないためにはどんなことに気をつけたらいいのか? どんな食事がよいのか? 本書は手取り足取り教えてくれている。カロリー制限に意味はあるのか、脂質はとっても良いのかなど、前から気になっていた点も書かれていて、本書を読んで栄養学の最新情報が分かって随分ためになった。

 安直な統計に拠るのではなくて、比較試験などを経た科学的なエビデンスに基づいた記載になっているので、かなり読みごたえがある。

 ちょうど血糖を管理する方法を模索していたところだったので、本書はよいガイドラインになりそう。一日の糖質を130グラムに抑えるということが大事なようなので、どうにか実践していきたいと思った。
タグ:山田悟
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クレオパトラ [伝記(外国)]


クレオパトラ

クレオパトラ




 クレオパトラの生涯を描いた伝記本。

 クレオパトラは、舞台、映画小説、漫画と様々な媒体で繰り返し描かれ続けているけれども、その実像は謎に包まれている。クレオパトラについて言及した史料がふんだんにあるわけでもなく、歴史家は限られた情報からイメージを組み立てていかざるを得ないからだ。

 残されている史料を見ても、クレオパトラに会ったこともない人物が書いていたり、むやみに脚色されていたりして、容易に信用がおけない。クレオパトラと敵対する人物が残した史料などは、当然のことながら、クレオパトラを悪女として描いていて、偏ったイメージを広めてしまう。

 つまるところ、虚飾の混じった伝説のようなイメージだけが残ってしまい、その実像はベールに隠れてしまっているのだ。

 本書はそんな謎の人物であるクレオパトラについて、様々な史料の中からできるだけ公正で信頼に足るものを重視して、その真相に迫った本である。

 クレオパトラというと、持ち前の美貌で男を惑わす恥知らずな妖婦といったイメージも伝わっているけれども、本書では、より威厳のある人物として描かれている。当時としては最高の教育を受けた才女で、知略に富んだ頭の回転の速い人物でもあったし、権謀術策にも長けていた。民衆の心をつかむのもうまく、様々な宗教的な演出をほどこす才能にも恵まれてもいたそうだ。

 当時の女王を取り巻く環境というのは、想像以上に厳しい世界だった。ローマ帝国がエジプトを属国化してしまう可能性があって、外からの圧力に対応する必要があった。ローマと同盟関係を結ぼうとしても、帝国では内紛が続いていて、誰を信用していいかまるで分らない。かたや、エジプトのプトレマイオス家内部でも、親族間で暗殺が横行していて、成人まで生き延びられればいいほう。弟すらも信用できなかった。

 クレオパトラはぐるりと敵に囲まれているようなものだったが、戦略家の才を発揮して、どうにか生き延びていく。むしろカエサルやアントニウスといったローマの権力者を手玉に取って、自らの地位を確固たるものにしてしまう。様々な危難が次々に訪れるわけだが、周囲をあっと言わせてピンチをチャンスに変えてしまうところなどは、読んでいて痛快だった。

 伝説になるだけあって、まさに波乱万丈の生涯である。ひとりの人生というだけでなくて、その生き方が世界を巻き込んでしまうところがすごい。本当に個人が歴史を動かしていた時代があったんだなあと圧倒されてしまう一冊だった。
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