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日本の歴史をよみなおす [日本史]


日本の歴史をよみなおす (全) (ちくま学芸文庫)

日本の歴史をよみなおす (全) (ちくま学芸文庫)

  • 作者: 網野 善彦
  • 出版社/メーカー: 筑摩書房
  • 発売日: 2005/07/06
  • メディア: 文庫



 日本の歴史などというと、原始、古代、中世、近世、近代などと時代区分するやり方が一般だ。政治的な権力闘争の流れ、権力をつかんでいった者たちの栄枯盛衰で眺めることが多い。

 だけれども、もっと別の枠組みで歴史をとらえる見方もあるんじゃないか。たとえば、人々の自然との関わり方で見てみたらどうだろう? 日本の歴史はより深く見えてくるのではなかろうか。

 そんな歴史のつかみ方に新たな視点を持ち込んだのが、本書「日本の歴史をよみなおす」である。教科書的な歴史とは違った裏の歴史が見えてくる内容だ。

 人間社会と自然との関わりで歴史を紐解いていくと、南北朝動乱期、14世紀ごろに大きな大転換期があったことがわかってくる。13世紀以前の日本と15世紀以後の日本とでは、根本的な社会のありかたが違っているようなのだ。

 13世紀以前の日本では自然に対する畏怖の念がかなり強く、神聖なものとしてとらえられていた。井戸を掘ったり石や樹木を動かしたりといった自然に変更を加えることには慎重で、様々なマジカルな儀式を必要としたし、自然に何らかの形でかかわる職業は畏敬の念をもって扱われていた。

 だが、南北朝動乱期以降に自然とのかかわり方に変化が生じると、社会のあり方も根本的に変わってくる。これまで神聖なものととらえられてきた様々な人々が、むしろ蔑視されるようになり、穢れたものとして差別の対象となっていく。

 こうした社会の変化は貨幣経済、様々な階級、天皇の地位、女性の地位など、社会のあらゆる側面について言えることで、人々の意識はこの時期にダイナミックに変化していったのだという。

 14世紀にこんな大きな転換期があったとは知らなかったので、読んでいてかなり驚かされる。13世紀以前の日本では、現在とは全く異質の世界が広がっていたことが分かって興味深い。今では存在しないようなマジカルな人々や制度の話がたくさん出てきて、ファンタジーの世界をのぞき見るような楽しさがある。読んでいて、こういう世界観もいいなあとつい思ってしまった。

 現代人がいつの間にか忘れてしまった不思議な世界に連れて行ってくれる本。これまで持っていた教科書的な歴史観とは異なる歴史観を見せてくれる面白い本だった。
タグ:網野善彦
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王子と乞食 [児童書]


王子と乞食 (岩波文庫 赤 311-2)

王子と乞食 (岩波文庫 赤 311-2)

  • 作者: マーク・トウェーン
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 1934/07/25
  • メディア: 文庫



 マーク・トウェーンの古典的名著。

 そっくりの容貌をしたエドワード王子と乞食のトム。ふとした出来事で出会ったふたりは、今までと違う世界を見たいというお互いの願望をかなえるために、こっそり入れかわって生活することに。だが、入れかわっていることに周囲の誰も気づかないため、思わぬ騒動が巻き起こる。

 立場を交換することによって、てんやわんやの騒ぎが起こるという話は物語にはよく出てくるけれども、この小説はその原点ともいえるような話だった。

 国王が乞食と思われて散々な目にあい、あちこちでこづき回される。王子になったトムは自分は正直に打ち明けても狂人扱いされて取り合ってくれない。入れかわりによって周囲に勘違いが広がっていくという、コメディ風味のお約束の展開。まさにこういうのが読みたかったというものをきっちりと見せてくれる。

 乞食トムが騒ぎを収めるために王子の言動をまねたり、意外にも王子として活躍してしまったり。いろいろな活躍ぶりを見せるところが楽しい。

 立場交換ものの物語は、交換することによって、主人公の世界のとらえ方がこれまでとは変わってしまうところがもっとも興味深いところかもしれない。今までとは異なる視点から世界を眺めることで、知らなかった世界を目にすることになる。世界に対する見え方が一変してしまう。

 本作でも、王子は宮殿の外に出て乞食の立場から世界を見ることで、当時のイギリスの社会の実情を知る。社会の底辺に生きる人々と接することで、世の中の悲劇を知る。人々の苦難を知った王子は、やがて慈悲深い王となって、残酷な世界を慈愛の世界へと変えていく。そういう王子の成長物語になっているところが見事だった。

 この主人公の王子はエドワード6世という実在の人物だそうだ。ヘンリー8世の子供である。短命だったそうだが、実際の人生はどんなだったのだろう?

 翻訳しているのは、「花子とアン」の村岡花子。流麗な翻訳で、一気に読んでしまった。
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歌うダイアモンド [ミステリ(外国)]


歌うダイアモンド (マクロイ傑作選) (創元推理文庫)

歌うダイアモンド (マクロイ傑作選) (創元推理文庫)

  • 作者: ヘレン・マクロイ
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2015/02/27
  • メディア: 文庫



 「歌うダイアモンド」は、ヘレン・マクロイという作家が書いたミステリー傑作集。本格推理からサスペンス、なかにはSFも混じっていて、バラエティに富んだ短編集だ。

 もっとも面白かったのは「鏡もて見るごとく」。ある女性教師が自分そっくりのドッペルゲンガ―の出現に悩まされるというミステリーだ。怪奇性抜群の作品で、圧倒的な謎に思わず魅了されてしまう。合理的な謎解きも用意されていて、きっちりとまとめているところも巧い。

 同じく超常現象的なミステリーを扱った表題作「歌うダイアモンド」も秀逸な出来栄え。複数の人間が謎のダイアモンド型の飛行物体を目にした後、死んでしまうという不思議な事件が起こる。こんな大規模な事件をどうやって解決するのだろうというわくわく感が強烈。こちらもきっちりと解決篇が用意されていて、奇跡のような作品といえるだろう。

 「カーテンの向こう側」はサスペンスものの傑作。同じ夢を何度も見る女性の話。女性はある殺人事件の容疑者で、その夢には主人公の心理が影響している。最後にゾッとするような結末が用意されていて、なんともいえない後味を残す。最近流行りのイヤミスのはしりだった。

 「人生はいつも残酷」は中編と呼べる長さのミステリー。過去の殺人事件を掘り起こしていくタイプの話で、本格推理物の教科書と呼べそうな作品だった。

 「風のない場所」は世界の終末を描いたSFもの。ブラッドベリとかキングとかが書きそうな話で、こういう作品も書けるのかと驚かされる。短いながらも抒情的で強い印象を残す。 

 あまりにもよかったので他にも短編を読んでみたかったのだが、残念なことに翻訳されているものはこれが唯一のものらしい。長編の方はいくつか翻訳が出ているようなので、そちらを挑戦してみようかなと思った。
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