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日本のいちばん長い日 [日本史]


決定版 日本のいちばん長い日 (文春文庫)

決定版 日本のいちばん長い日 (文春文庫)




 太平洋戦争終結までの一日を描いたノンフィクション。

 連合軍はポツダム宣言をもって日本に降伏を求めたのだが、ポツダム宣言受諾をめぐっては様々なドラマがあったらしい。

 日本から連合軍側にどんな条件を出すのかで会議は紛糾。天皇の地位を変えないという条件のみ求めて降伏しようという意見。占領や武装解除や戦犯処置についての条件も求めて、決裂したら一戦交えようという意見。さまざまな意見がぶつかり合う。

 結局、ポツダム宣言を受諾して降伏するということで話がまとまったのだが、その後さらに事件が起こる。無条件降伏を受け入れがたい青年将校らがクーデター計画をたて、玉音放送を妨害して、徹底抗戦を続けようと画策しはじめたのだ。

 すでに沖縄でたいへんな被害が出ていて、広島長崎にも原子爆弾が投下された。これ以上、戦争が長引けば、本土決戦は必至。さらに犠牲者が増えてしまう状況にあった。クーデター計画の結果によっては、その後の日本の運命が変わってしまう。一握りの人々の動きによって、日本の将来が決するようなたいへんな一日を描いていて、スリルとサスペンスに満ちたドラマティックな内容だった。

 読んでいて感じたのは、国を守るということの意味が、人によって違っていたのだなということ。ここまで来たら国民の命を守るためには降伏しか読ないというのが和平派の考えだったが、クーデターを起こした青年将校たちは、そのような国民の生命よりも天皇を現人神とする国体を守ることが重要だったらしい。

 国体を守るためには一億総玉砕もやむなしという考えがあったそうだけれど、戦争の時代を知らないせいか、国体を守るという感覚がよくわからなかった。この頃は今よりもずっと、個人よりも抽象的な国家という存在のほうが優先される時代だったのだろうか?

 今から振り返ると、早く降伏してれば犠牲が少なくなったのにと思うけれど、すでに大勢の人が犠牲になっていて、いまさら止められないというのもあるかもしれない。本書を読むと、人々の心情が見えてきて、戦時中でも全員が一致した考えをもっていたわけではなく、いろいろな考えを持った人々がいたことが分かって興味深かった。
タグ:半藤一利
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地球は火山がつくった [地学]





 火山のメカニズムを解説した本。

 最近火山のニュースをよく耳にしたり、地震があったりするので、地球科学について知りたくなって読んでみた。

 岩波ジュニア新書なので、中学生でもわかるように書かれており、格段に分かりやすい。イラストもふんだんに掲載されていて、視覚的に火山のしくみが理解できるようになっている。

 ジュニア新書といっても、子供だましの物足りないものではなくて、結構内容も充実している。火山の噴火する仕組み、プレート・テクトニクス理論、最新の学説プルーム・テクトニクス理論に至るまで、火山にまつわる話題全般が幅広くカバーされているのだ。

 大陸移動説とかプレート・テクトニクス理論は有名で、プレートがマントルの下の方に沈み込んでいく図をよく目にする。だけど、沈み込んでいったプレートはその後どうなっちゃうんだろう? そもそもどうしてプレートが生まれて、ベルトコンベヤーみたいに移動して沈んでいくんだろう? 地球の内部ではどんな力が働いているんだろう? などと常々疑問も感じていた。

 本書はこうした疑問に対する答えも用意されていて、火山の仕組みだけでなく、地球の内部全体のすがたが解説されている。うすぼんやりとしたイメージしかなかった地球内部の仕組みについて、明快に語ってくれている。そして、地球内部はダイナミックに変化し続けていることが見えてくる。

 本書を読むと、人間が住んでいる地殻というのは、本当に卵の殻みたいな薄っぺらいところなんだなあということが実感できる。その他の大部分の、卵でいう白身や黄身にあたる部分はマントルと核なのだ。

 人間は我が物顔で地球の支配者のようにふるまっているけれども、実は文明は薄氷の上に成り立っていたのだね。いくら文明が進歩しても、自然の脅威の前ではなすすべがなくて、1万年に1度起こるような大噴火が起きたら、ポンペイみたいに文明があっという間に崩壊してしまうことだってありうる。さすがに火山ばかりは防ぎようがなさそう。

 自然に対する畏敬の念を忘れてはいけない。火山の仕組みを知りたいというちょっとしたきっかけで読み始めたら、文明社会のことまで考えさせられてしまう、壮大な一冊だった。
タグ:鎌田浩毅
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針の眼 [ミステリ(外国)]


針の眼 (創元推理文庫)

針の眼 (創元推理文庫)




 ケン・フォレットの「大聖堂」という本が面白かった。大聖堂という厳かな雰囲気のタイトルからは想像もつかないほどの、ハラハラドキドキの展開。数ページに1度は事件が起こるというサービス満点さ。陰謀渦巻く中世のイングランドのドロドロした世界を冒険させてくれた。

 「大聖堂」があまりにも面白かったので、引き続き同じ作者のほかの作品も読みたくなった。調べてみると、「針の眼」という作品が代表作らしい。さっそく読んでみた。傑作だった。

 「大聖堂」の中世の世界とは打って変わって、「針の眼」は第二次大戦真っ只中のイギリスの話。「針」と呼ばれるドイツのスパイを追い詰めていく、スパイ・スリラーだった。

 1944年、連合軍はフランスのノルマンディーに上陸する作戦をたてていた。戦いを有利に進めるためには、ドイツの防備が薄い間に奇襲することが望ましいが、それにはドイツ側に上陸場所を知られないようにする必要がある。連合軍は、そのための大偽装工作を施していた。

 イギリスに潜入したドイツのスパイを捕えて、二重スパイに仕立て上げて、ドイツに偽の情報を流す。あるいは、実際とは別の場所にゴムとブリキで作られた偽の艦隊やセットの兵舎をこしらえ、あらぬ場所に軍事勢力が集結しているように見せかける。上陸場所がノルマンディーではなく、カレーだと思い込ませる偽装作戦だった。

 こういう偽装作戦は実際に行われた歴史的事実らしい。ただ、この計画のひとつの問題は、もしイギリスに捕まっていないドイツのスパイが潜伏していた場合に、たちどころに偽装を見破られる恐れがあるということだ。本書はこの歴史的経緯をふまえて、フォレットが想像力を膨らませて、スリリングなスパイの物語に仕上げたものなのである。

 ドイツからイギリスに潜入した「針」と呼ばれるスパイ。彼が、連合軍の偽装工作を見破ってしまう。「針」はドイツに情報を流そうと画策するが、他方でイギリス当局は「針」のもくろみに気づき、追跡劇が開始される。

 マンハントものの面白さは、知力をかけて逃げ回る逃亡者と、手がかりをたどって追い詰めていく追跡者の頭脳戦にあるといえる。フレデリック・フォーサイスの「ジャッカルの日」という本がマンハントものの代表格であるが、本書の「針の眼」もまたフォーサイスのものに劣らない秀逸な作品だった。「ジャッカル」にちょっと似ていて、「針」は頭脳明晰であっという間に当局のもくろみを察知して裏をかこうとするし、邪魔する人間がいれば無慈悲に殺していく。

 広いイギリスからどのようにして「針」を探そうというのか? 「針」は当局の目をかいくぐってどのように脱出しようとするのか? 激しい攻防が繰り広げられて、手に汗握る展開。「針」が逃げ出してしまえば、戦争の勝敗にも決定的な影響を与えてしまうかもしれない。国際趨勢の鍵をこの戦いが握っているという緊張感。歴史の「もしも」を描いた、ノンフィクションとフィクションがないまぜになった面白さがある。

 「大聖堂」の時と同じように、次から次にいろいろな事件が起こるので目が離せない。ケン・フォレットの語り口のうまさにまたしても驚嘆させられてしまった。
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幽霊塔 [ミステリ(日本)]


幽霊塔

幽霊塔




 江戸川乱歩が書いた大正時代を舞台にしたミステリー。

 長崎の片田舎に建てられた古い洋館。その館は「幽霊塔」と呼ばれるほど、不気味な雰囲気を醸し出していた。何年も前に老婆が殺害された事件が起こった、いわくつきの場所。さらに大きな謎として、その建物のどこかに幕末のころに隠された財宝が眠っているのだという。

 あるとき、この建物を青年が訪れるのだが、そのさびれた建物で青年は、この世のものとは思えないような美しい女性の姿を目撃することになる。

 宮崎駿がジブリ美術館で「幽霊塔」の特別展を開いたことがきっかけで、この本が新装版として出版された。アニメ映画の「カリオストロの城」に影響を与えたということで、宮崎駿自身にも思い入れのある本らしい。

 冒頭には、その宮崎駿の解説漫画も載せられている。幽霊塔の内部構造の解体や、主人公が幽霊塔を訪れる場面の絵コンテまで描かれていて、本一冊読んでここまでイメージを膨らませるとはさすがだなあと驚いた。短いページではあるけれども、なんかもうこの解説漫画だけでも、この本を買う価値はあったような気がする。

 もちろん、小説の内容自体も面白い。古い洋館に仕掛けられた時計細工のカラクリ、地下に広がる迷路、隠された財宝と、読者の心をわしづかみにするワクワクポイントを突いてくる感じ。インディ・ジョーンズとか宝島とか、宝探しものの話は楽しいけれど、日本に置き換えたらこんなふうになるのかというよい例だと思った。

 語り口がうまくて、謎の上に謎がさらに積み重なっていき、さらにいわくありげな人物が多数登場して、これはどういうことなんだろうと読むのが止まらなくなってしまう。とにかく謎だらけなので、どう収拾つけるつもりなのかと思ったら、最後に怒涛の展開で急速に風呂敷がたたまれていくのにはひっくり返った。地下迷路のところはもう少し話を引っ張ってもよかった気がするなあ……。

 乱歩のものは久しぶりに読んだが、あまりにも面白かったので、また別のも読んでみたくなった。
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日本はなぜ、「基地」と「原発」を止められないのか [法律]


日本はなぜ、「基地」と「原発」を止められないのか

日本はなぜ、「基地」と「原発」を止められないのか




 戦後から続く日本とアメリカの関係を読み解いた本。

 日本は太平洋戦争に負けてアメリカの占領下に入って、そのあと1952年に独立を回復したことになっている。でも、実はいまだにアメリカの日本に対する影響力というのは非常に強固で、国家の中枢にまでアメリカが関わっているということが書かれている。

 沖縄や横田の基地周辺の空域をアメリカが支配していることや、米軍が事故を起こしたときに事故現場が治外法権エリアになってしまうこと。核兵器持ち込みや米兵の裁判権放棄などに関する日米間の密約についてなど。読んでいると、アメリカが具体的にどのような形で影響力を行使しているのかが見えてくる内容だ。

 日本は最高法規の憲法があって、アメリカとの間の条約などよりも憲法が優先されるので、本来であれば国民の権利を侵害するような憲法違反の条約や法律があった場合にはこれは認められないはずだ。憲法の番人ともいえる最高裁判所が違憲の判断をして、歯止めをかけることになっている。

 だが、軍事基地をめぐって問題となった砂川事件という裁判で、最高裁は高度に政治的な内容をもつ問題については法的判断をしないという判決を出した。統治行為論などと呼ばれる理屈が裁判所のスタンスになって、憲法違反の疑いのある条約や法律などがあった場合でも、日米問題のような政治問題が関わると裁判所は及び腰になる。

 結局、司法権による立法・行政の監視機能が制約されるため、アメリカが日本に対してかなりの部分で影響力を行使できるシステムになっているようなのだ。同じ構図が原子力政策についても言えて、日米原子力協定があって、日本の原子力政策にもやはりアメリカの意向が反映される。

 アメリカの日本への影響力が大きいことは分かってはいたものの、読んでいるとまさかここまでとはという内容で驚く。独立したとはいっても、まだまだアメリカに占領されているようなものなんだなあと。よく日本は51番目の州とか言われるけど、本当にそんな気がしてくる内容だった。

 日本はアメリカからこれまで経済面や安全保障の面で恩恵を受けてきたのだろうけれど、アメリカは世界中で紛争の火種を撒いていて、アメリカが世界でやっていることがすべて正しいとは思えなくて。日本がアメリカに尻尾を振って、何でもかんでも大人しくホイホイついていくのもどうなのかと思う。

 戦後からのアメリカと日本の関係が詳しく書かれていて、戦後史の勉強になる本である。沖縄の問題とか今までしっかり考えてこなかったけれど、そりゃ沖縄の人も怒るよなあということがたくさん書かれていて、こんなことになっているのかといろいろ驚かされた。
タグ:矢部宏治
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原爆を盗め! [世界史]


原爆を盗め!: 史上最も恐ろしい爆弾はこうしてつくられた

原爆を盗め!: 史上最も恐ろしい爆弾はこうしてつくられた




 第ニ次大戦中のアメリカドイツ・ソ連の原爆開発競争を描いたノンフィクション。

 1938年、ドイツのベルリンの化学者オットー・ハーンは、ウランの原子核に中性子をぶつける実験をしたところ、衝突の力で原子核が分裂するという奇妙な現象に遭遇する。原子が2つに割れるという発見だけでも当時としたは信じがたいことだったが、この現象はさらなる可能性を秘めていた。原子が分れる際にちょっとしたエネルギーを放出するので、もしウランの塊の中にある膨大な数の原子核を同時に分裂させることができれば、強力な爆弾が作れるのではないか?

 この発見のニュースは、またたく間に世界中の物理学者たちに広まる。アメリカでも、原子爆弾を作れる可能性について、様々な科学者たちが検討し始める。折しも、ヒトラーがポーランドに侵攻し、ヨーロッパは戦争の火ぶたが切って落とされていた。もし、ドイツが先に原爆を開発してしまったら、アメリカ国民の命も危ぶまれる事態となる……。

 こうしてアメリカでは、ドイツに負けじと原爆開発がスタートする。ニューメキシコ州のロスアラモスにアメリカ中の科学者たちが呼び寄せられる。その中には、ロバート・オッペンハイマー、エンリコ・フェルミ、リチャード・ファインマンといった名だたる科学者もいた。マンハッタン計画と呼ばれる極秘の開発プロジェクトである。

 他方で、スターリン率いるソ連もまたアメリカやドイツの動きに目を光らせていた。アメリカに潜伏するKGBはアメリカの科学者たちと接触して、どうにかして原爆開発の秘密情報をソ連に流すように働きかけようとする。こうして、アメリカ・ドイツ・ソ連の三つ巴の原爆開発競争が始まった。

 読んでいて、スパイ小説を地で行くような内容でスリリング。こんなことが実際にあったのかと驚くような内容だ。ソ連のスパイたちがアメリカで暗躍して、実際に科学者たちを手玉にとって原爆の情報を流させていた経緯が描かれたり、ノルウェーにあるドイツの工場を破壊する様子が描かれたり、ドイツの科学者ハイゼンベルクの暗殺計画が描かれたり。諜報の世界のキナ臭い出来事があからさまに描かれている。

 読み物としては面白いけれど、日本は原爆を落とされているし、自分には広島で原爆被害にあった親類もいて、原爆投下の日の話を聞かされてきたので、読んでいて無性に腹の立ってくる本でもあった。

 アメリカ目線で見たら、アメリカや世界の国々を守るために正義のために開発をして、日本がなかなか降伏しないので投下をしたということなんだろうけれど、正義のためということを言い続けているうちに、だんだん歯止めが効かなくなって、恐ろしい威力の兵器を作り上げて、平気で都市を丸ごと消滅させてしまった。正義というものは恐ろしいものなんだよなあとつくづく……。

 本当に原爆を落とす必要があったのだろうかとか、あらためて歴史について考えさせられる良書だと思った。
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地球の長い午後 [SF(外国)]


地球の長い午後 (ハヤカワ文庫 SF 224)

地球の長い午後 (ハヤカワ文庫 SF 224)




 未来の世界というとどんなイメージがわくだろう? 

 メタリックな高層建築とハイウェイに覆われた鋼鉄都市? あらゆる政治・経済・行政システムが人工知能によって運営される超管理社会? 宇宙空間まであまねく進出して、宇宙連合を作り上げる世界? それとも核戦争か何かで文明が崩壊して、野蛮な戦いを繰り返しているだろうか?

 ブライアン・オールディスの描く「地球の長い午後」に出てくる未来イメージは、そのどれでもなかった。彼が描いたのは、全世界が植物によって支配された地球の姿。

 その世界では、植物たちはあらゆる場所に根を張り、太陽と栄養を得ようと熾烈な戦いを繰り広げている。植物たちは、あらゆる形態に進化し、動いたり飛び跳ねたりして、エサを食べるようなものまで現れ始めた。少し油断すると、獲物をとらえようと待ち構える植物たちの餌食になってしまう、弱肉強食の世界。

 そんな世界にあって、人類は絶滅寸前にまで追いやられている。かつてはわがもの顔に地球を支配していると思っていたのに、植物たちの繁栄にはなすすべがない。もはや文明などというものはなくなり、一日一日を生き延びて生存するだけで精いっぱいの毎日なのだ。

 SF小説はイメージが大事で、どんな世界観を見せてくれるのかというところが醍醐味だけれど、本書に出てくる世界観は想像をはるかに超えた奇妙なもので、読んでいて圧倒されてしまった。地球と月との間がたくさんの糸でつながっていて、巨大な植物の乗り物に乗って、糸をたどって宇宙旅行する場面など、よくこんなこと考えるなあと驚いた。

 この奇妙な世界の中をサバイバルしていく主人公たちの様子が描かれるのだけれど、読んで行くうちに単なる日々のサバイバルだけでなく、やがて彼らの行動が人類全体の命運にまでかかわってくることも分かってくる。人類は最終的にどこに行くのかという壮大なテーマまで関わってきて、文明観として読んでも面白かった。
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