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タイムライン [SF(外国)]


タイムライン〈上〉 (ハヤカワ文庫NV)

タイムライン〈上〉 (ハヤカワ文庫NV)

  • 作者: マイクル クライトン
  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2003/12/10
  • メディア: 文庫



 マイクル・クライトンが描くタイムトラベルSF。歴史調査を行う学生たちが、14世紀フランスへと旅立つ。

 ローマ帝国が崩壊した後の中世ヨーロッパは、暗黒時代とも呼ばれ、長らく無法状態が続いていたそうだ。だが、封建制度が整えられ始めると、徐々に新たな秩序が生まれ始める。強力な地方領主たちが地域を支配し、農業や交易などが盛んになっていく。文化も大いに発展していった。

 だが、この時代は戦乱の世の中でもあった。王位継承権を巡って、イングランドとフランスとで何度も戦いが繰り広げられたのだ。百年戦争のはじまりである。

 本書は、まさにこの百年戦争の時代を描いた小説。それも現代の若者たちがタイムスリップして、中世ヨーロッパを旅するという冒険談だ。

 中世フランスの古城を研究している調査チームが、あるとき遺跡の中から、不思議な羊皮紙を発見する。そこには、現代の英語で「HELP ME」と書かれていた。14世紀の遺跡からこのような文字が出てくるなどというのは、ありえないことだった。

 いったい何が起きているのか? 学生たちが謎を調査するうちに、発掘調査のスポンサーであるハイテク企業ITCが機密の実験を行っていることがわかる。それは、量子コンピュータを使って、時空を超えて別の時代に人間を送り込むという世紀の実験だった。

 学生たちもまたこの実験に加わることになる。時代は14世紀のフランス。目的は、同じく実験に参加したまま行方不明になった教授を探すこと……。

 中世フランスの時代が、臨場感を持って描かれていて読んでいて楽しい。こんな時代だったのかと想像を広げられる楽しさ。騎乗槍仕合とか、騎士の剣戟とか、城内の風景とか、微細に描写されていて、その場にいったかのような迫力。歴史小説の醍醐味を味わうことができる。

 クライトンが書いているので、アクション映画を観るようなテンポの良さ。次から次に主人公たちが危険な目にあって、みんな生き延びられるんだろうかとハラハラドキドキの連続。時代のギャップや残忍な騎士たちとの闘いに悪戦苦闘する様子が見もの。戦争にまで巻き込まれてしまって、最後の最後まで手に汗握る展開だ。

 中世の時代についての薀蓄もたくさん書かれていて、歴史の勉強にもなる。タイムトラベル小説として、歴史小説として、情報小説としてなど、様々な楽しみ方のできる一冊だった。
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大聖堂 [歴史小説(外国)]


大聖堂 (上) (ソフトバンク文庫)

大聖堂 (上) (ソフトバンク文庫)

  • 作者: ケン・フォレット
  • 出版社/メーカー: ソフトバンク クリエイティブ
  • 発売日: 2005/12/17
  • メディア: 文庫



 ケン・フォレットの小説「大聖堂」は12世紀のイングランドを舞台に、大聖堂建築に命をささげた人々を、壮大に描いた歴史小説である。

 当時のイングランドは、ヘンリー1世亡き後の時代。ヘンリー1世の嫡子が海難事故で亡くなったため、世継ぎ問題が起こっていた。ヘンリー1世の甥のスティーブンとヘンリー1世の娘マティルダとが、権力の座を巡って激しく対立する。

 そんな不穏な時代にあって、トム・ビルダーという石工がキングズブリッジという町にやってくる。彼は優秀な職人であったが、仕事がなく各地を放浪して働き口を探していた。あるとき、この町の聖堂が大炎上して崩壊する事件が起こり、トムにチャンスが舞い込む。新たな聖堂を建築する必要が出てきたのだ。修道院長のフィリップはトムの優秀な能力を見込んで、大聖堂建築を依頼する。

 だが、大聖堂建築は簡単にはいかない。建築には多くの資金が必要であるし、建築工学上の難しさもある。さらには、王位継承権やら様々な権力闘争を巡って、建築を妨害しようとする黒い勢力も現れ始める。大聖堂建設の陰で様々に激しくドラマが展開する。

 石工のトム、修道院長のフィリップ、没落した伯爵の娘アリエナ、権力の座を握り悪のかぎりをつくすウィリアム、秘密を抱えた女性エリンとその息子ジャックなどなど、それぞれに野望や思いを秘めた数多くの登場人物たち。彼らが入り乱れて、様々に衝突しながら話が進んでいく群像劇になっている。

 今では高層ビルなんて当たり前のように建っているから、とくに気にもしなかったけれど、当然のことながら、高い建物を建てるにも高度な技術がいるのだ。力関係を計算しないと、重みに耐えきれずに建物は崩壊してしまう。聖堂なので線の長さの比率などの美的要素も考慮する必要がある。大聖堂の話だから、このあたりの苦労話がかなり詳しく書かれていて面白い。

 建築の歴史的な背景も丁寧。当時はロマネスク様式からゴシック様式に移り変わっていった時代。登場人物たちはフランスに渡って、イングランドではまだ珍しかったゴシック様式の建築物を見て、その斬新さに驚愕する。大きな窓を壁にはめ込むだけでも、当時としては画期的だったらしいのである。

 ケン・フォレットの小説は初めて読んだが、話の運び方が抜群にうまい。次から次に事件が起こって、一難去ってまた一難という感じで息つくひまもない。1巻500ページ以上が3巻もある長大な話なのに、続きが気になって一気に読んでしまった。
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コンテンツの秘密 [映画]


コンテンツの秘密―ぼくがジブリで考えたこと (NHK出版新書 458)

コンテンツの秘密―ぼくがジブリで考えたこと (NHK出版新書 458)

  • 作者: 川上 量生
  • 出版社/メーカー: NHK出版
  • 発売日: 2015/04/10
  • メディア: 新書



 ドワンゴの川上会長が書いたコンテンツ論。映画・小説・絵画・音楽・漫画・アニメ・ゲームなど、様々なジャンルのコンテンツのありようについて語っている。

 「ぼくがジブリで考えたこと」という副題がついているので、ジブリの内幕本なのかなと思ったら、けっこう本格的な作品論・コンテンツ論になっていて驚いた。

 筆者はジブリのプロデューサー見習いとして、宮崎駿や高畑勲といった天才クリエイターたちと直に接するうちに、よいコンテンツとは何か? クリエイターたちはどんなふうにコンテンツを作り出すのか? コンテンツについての様々な疑問が浮かんだんだそうだ。筆者はこれら疑問について、理屈でロジカルに解明しようとしている。

 こんな大それたテーマをどう論ずるのだろうと思ったが、意外にも明快にコンテンツの秘密を解説していて、「そういうことだったのか」と目からうろこが落ちたほど。

 アニメよりも実写の方が情報量は多いにもかかわらず、アニメに惹きつけられるというのはなぜなのか? そもそも人々はなんで好き好んでコンテンツを摂取しようとするのか? クリエイターはどうして表現にこだわりをもつのか? オリジナリティとはなにか? 前からもやもやと気になっていた疑問が晴れていく楽しさがある。

 筆者はコンテンツとは現実のシュミレーションであると述べている。自分でも前からそんなふうに感じていたところもあったので、これは腑に落ちる内容であった。天才クリエイターと言われる人たちは、天才シュミレーターなんだと思う。優れたアニメーターは、鮮やかなイメージをシュミレートすることができる。優れた物語作家は、キャラクターの人生の選択肢をシュミレートして、劇的な展開を選び取ることができる。

 コンテンツを脳の観点から語っていて、最近はやりの脳関連本にも通じるようなところもあって興味深かった。

 軽い気持ちで読み始めたら、コンテンツについて真摯に研究されていて、非常に読みごたえのある本。思わぬ掘り出し物で面白かった。
タグ:川上量生
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SFを実現する [科学]


SFを実現する 3Dプリンタの想像力 (講談社現代新書)

SFを実現する 3Dプリンタの想像力 (講談社現代新書)

  • 作者: 田中 浩也
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2014/05/16
  • メディア: 新書



 昨今話題になっている3Dプリンターの未来像を描いた一冊。

 3Dプリンターはニュースなどでもときどき話題になっているけれど、正直それほど期待しているわけでもなかった。樹脂やプラスチックなどの単一素材でものを作るには限界があるんじゃないかとか、強度の問題はどうなんだろうとか。フィギュアやアクセサリー、模型、試作品、人工骨、クッキーやチョコなどは作れるかもしれないけれど、用途は限られるんじゃないか? 「なんでも作れる魔法の箱」というわけではなさそうだなと半信半疑であった。

 だが、本書を読むと、現在の3Dプリンターというのはまだまだ初期段階で、本当の驚異というのはこれからやってくるだろうということが見えてくる。いろいろな素材を組み合わせることができるようなプリンターも開発されている。樹脂などの素材を積み重ねていくだけでなく、元の素材を切断・切削していくカッター、ものの構造を把握するスキャナー、物同士をつなげていく接着の技術など、複数の作業工程を統合した機械も生まれる可能性がある。

 これから技術が発展していくことによって、ネットからデータをダウンロードすると、家庭に置かれたプリンターが工業製品をプリントしてしまう。そんな夢の未来が来てもおかしくはないのだという。

 筆者によると、そもそもこうした「何がつくれるか?」ということ自体、3Dプリンターの可能性のひとつに過ぎないとも書いている。家も作れるとか、バイオリンも作れるとか、「何がつくれるの?」というところに焦点が当てられ過ぎていて、3Dプリンターの他の長所が見逃されてしまっているんじゃないか?

 他の長所というのは、ひとつには、ものの輸送そのものが不要となるということ。3Dプリンターというのは一種のテレポーテーション装置である。データだけ送ってしまえば、ものを直接輸送せずとも受け手のほうで作ってしまえる。輸送の手間をなくして輸送コストを抑える可能性があるし、そもそも輸送の難しい僻地にも製品や部品などを供給することができる。宇宙ステーションなど、輸送の難しい場所に部品を供給することができるというメリットは大きい。

 もうひとつは、ものづくりのあり方そのものを変えてしまうということ。20世紀のものづくりというのは、大量生産・大量消費であったが、3Dプリンターはその場で作るものなので、一点から作ることができる。データを修正して、素材、寸法、デザイン、色彩を変えることで、自分に合った製品をカスタマイズすることもできる。すでにできあがった完成品を受動的に消費するだけでなく、自分自身でものづくりに参加する、自分の使いたいものを作っていくという能動的なものづくりのあり方が可能となるのだ。

 3Dプリンターにはまだまだ未知の可能性がたくさんあるんだなということがよく分かる本である。筆者は実際に「ファブラボ」という3Dプリンターを使った活動を行っているので、本書を読むと、3Dプリンターの国際的な活用例も出てきて興味深い。すでに様々な探求がなされていて、こんな使い方もあるのかと驚かされた。
タグ:田中浩也
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放課後 [ミステリ(日本)]


放課後 (講談社文庫)

放課後 (講談社文庫)

  • 作者: 東野 圭吾
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 1988/07/07
  • メディア: 文庫



 「放課後」は人気作家、東野圭吾のデビュー作である。

 女子高を舞台に、教師が殺人事件の謎を解いていくという話。

 東野圭吾というと、社会派やサスペンス物、SFミステリーなど、ジャンルをまたいだ幅広い作品を書いている作家だけれど、本作は、古典的な本格推理ものであった。出てくる事件も、密室状態の更衣室で教師が殺害されていたというもので、昔ながらの密室殺人。学校内の様々な人物たちが容疑者となって怪しい動きを見せたりするところも、フーダニッドの典型的なパターンだろう。

 トリックも秀逸で、真ん中あたりで密室の謎が明かされていて、こんなに早くネタが割れてしまってこの先どうするんだろうと思ったら、実は密室の謎には意外な意味があることが分かってくる。二重三重にトリックが仕掛けれられていて、一筋縄ではいかない。デビュー作からこんな凝ったことをやっていたのかと驚かされた。

 東野圭吾はいろいろな作品を書いているけれど、しっかりした本格ミステリーの基盤が確立しているのね、ということが見えてくる内容。トリックもよく練られているし、犯人を追い詰めるロジックも非常に精密なのだ。

 その後の作品を予感させるような、本格ミステリーにとどまらない面白さもあった。本格ミステリーというジャンルは、パズル的で、人間がチェスのコマみたいに扱われて精彩に乏しいことが往々にしてあるけれど、本作はそうした不自然さがない。生徒や教師、刑事などの登場人物のひとりひとりのキャラクターに実在感があって、それぞれに心の中に闇を抱えているどっしりとした重みがある。だから、ミステリー小説なんだけれど、なにか実際に起こっている犯罪事件を追いかけているような不気味な臨場感が感じられた。

 デビュー作から完成度の高い作品を書いていたんだなあと感嘆。最後の最後まで驚きの展開で、面白い一冊だった。
タグ:東野圭吾
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ナポレオンに背いた「黒い将軍」 [伝記(外国)]


ナポレオンに背いた「黒い将軍」:忘れられた英雄アレックス・デュマ

ナポレオンに背いた「黒い将軍」:忘れられた英雄アレックス・デュマ

  • 作者: トム・リース
  • 出版社/メーカー: 白水社
  • 発売日: 2015/04/21
  • メディア: 単行本



 アレクサンドル・デュマは「三銃士」「モンテ・クリスト伯」などで知られる文豪だが、デュマの父親もまた偉人だったんだそうだ。

 その名もアレックス・デュマ。フランス革命前の時代に生まれ、数奇な人生を歩んだ風雲児。有色人種として生まれ、将軍にまで上り詰めた男。

 本書は、そのデュマ将軍の人生を描いた伝記もの。読んでみると、まるで冒険活劇を読むような怒涛の展開で、アレクサンドル・デュマの小説を地で行くような内容に驚いた。

 もともとデュマ将軍が生まれたのは、サン・ドマングというカリブ海に浮かぶフランスの植民地。黒人奴隷たちを使ってサトウキビ栽培をしていた場所。デュマ将軍は、この地で、フランス人侯爵の父親と黒人奴隷の母親との間に生まれる。

 有色人種として生まれたため、差別の風当たりは強く、苦悩する日々を送っていたわけだが、フランスに渡ってからデュマ将軍の運命は新たな方向へと向かう。当時のフランスは、革命に突入しようとしていた時代。身分や人種の違いを超えて、平等な社会を作りだそうという機運にあふれていた。出自に関係なく、能力さえあれば這い登っていくことのできる社会。

 そんなフランス社会にあって、デュマ将軍は、持ち前の隆々たる体格と、剣士としての腕前で、めきめきと頭角を現し始める。フランス軍に入り、一気に将軍にまで上り詰めてしまう。やがて、フランスの英雄ナポレオンとも共に戦うほどになり、エジプト遠征にも参加したというから、大出世といえるだろう。

 だが、デュマ将軍は、高潔で理想家肌な側面を有してもいた。しばしばナポレオンと衝突するようにもなる。ナポレオンの軍勢が占領地で略奪を繰り返したり、ナポレオン自身が横暴な態度をとったりすることに我慢がならなくなったのだ。仲間であるはずのナポレオンとたもとを分かつようにもなり、やがて、悲劇的な運命から、デュマ将軍は捕虜となって牢獄に囚われる身の上となってしまう。

 本書を読むと、「三銃士」「モンテ・クリスト」のルーツは実はこのデュマ将軍であることが見えてくる。勇猛果敢で、1日に3人と決闘をするダルタニアンだったり、牢獄に囚われて苦悩するエドモン・ダンテスだったり、デュマの小説の主人公は、父親のデュマ将軍の人生が投影されたものだったのだ。「三銃士」も「モンテ・クリスト伯」も、好きな本だったので、意外な原点が分かって面白かった。

 また、デュマ将軍の生涯を通じて、当時の歴史を学ぶことができるところもよかった。フランス革命はどのようにして起こったのか? 革命から恐怖政治にどのように変化していったのか? ナポレオンの活躍とはどのようなものだったのか? 当時の雰囲気が生き生きと目に浮かぶように描かれていて、非常に分かりやすく歴史の流れを知ることができる。

 伝記としても面白いし、歴史の勉強にもなるという、非常にためになる一冊。デュマの小説もまた読み返したくなってきた。 
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