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トリポッド [SF(外国)]


トリポッド〈2〉脱出 (ハヤカワ文庫SF)

トリポッド〈2〉脱出 (ハヤカワ文庫SF)

  • 作者: ジョン クリストファー
  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2005/01/15
  • メディア: 文庫



 未来の地球を舞台にしたSF小説。少年の主人公が困難な旅に出る冒険もの。 

 舞台はトリポッドという巨大な三脚を持った奇妙な存在が、世界を支配してから100年後の世界。人々はトリポッドの支配下にあって、おとなしく平和裏に暮らしていた……。

 ウィル・パーカーはイギリスのウィンチェスターに住む少年。もうすぐ14歳になると、戴帽式が控えている。トリポッドから帽子をつけられる、子どもたちが楽しみにしている通過儀礼だ。

 ウィルはそれまで何の疑問も抱かなかった。自分たちの世界が平和であることに。これからもトリポッドに対して畏怖の念を感じながら、支配され続けることに……。だが、町にやってきた放浪者から聞いた話がウィルの世界観を変えてしまう。

 戴帽式で与えられる帽子というのは、実はトリポッドが人々を支配するための機械で、帽子をつけると脳に直接トリポッドからの指令が下って、人々は従順になり、トリポッドに逆らえなくなるという。トリポッドは100年前に宇宙からやってきた侵略者で、大勢の人々を殺戮し、奴隷化し、人々を家畜のようにしてしまったのだ。

 海の向こうの白い山脈のどこかに、帽子をかぶせられず、トリポッドの支配を受けない自由な意思を持った人々が逃げのびているという。ウィルは放浪者から与えられた地図とコンパスを手掛かりに、町を出て旅立つことになる。白い山脈を目指して、自由な世界を求めて—―。

 主人公が危険をかいくぐりながら旅を続けていくという、わくわくするような物語。途中途中で仲間ができて、一緒に旅していくなど、冒険もののツボをおさえた展開。

 行く先々で危険な目にあいながらも、困難をかいくぐっていくところがスリリング。かつての文明都市が廃墟のようになって、その中を探検していくくだりなど、文明のはかなさを感じさせる場面もあって印象的だった。
 
 主人公のウィルは旅を通して成長を遂げていく。これまで周りの大人と変わらず、支配されることに疑問を抱かなかったウィル。トリポッドの支配下にあっても、人々はそれなりに幸福に暮らしているので、迷いも生じるけれども、やがてウィルは信念を貫いて、自由な生き方を選択することになる。家畜としてではなく、人間としての誇りを失わない生き方を。

 SF冒険ものとしてもよくできているし、主人公の成長物としてもよくできた質の高い内容で、面白かった。読んでいて、主人公と壮大な冒険をしているような感覚になってくる。

 映画化の企画などもあったようなのだが、どうなったのだろう? 壮大な冒険もので、映像化してもかなり見栄えがするような気がする。大きなスクリーンでトリポッドが暴れるところを見てみたいなあと思った。
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災厄の町 [ミステリ(外国)]


災厄の町〔新訳版〕 (ハヤカワ・ミステリ文庫)

災厄の町〔新訳版〕 (ハヤカワ・ミステリ文庫)

  • 作者: エラリイ・クイーン
  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2014/12/05
  • メディア: 文庫



 ライツヴィルという架空の町を舞台にしたミステリー。

 いかにも古きよきアメリカといった雰囲気があって、のどかな感じが心地いい。昔のアメリカはこんなだっただろうなという典型的なイメージの町なんである。田舎町ながらも、どこか品があって、ノスタルジックな世界観。

 そんなライツヴィルの町に推理小説家エラリイ・クイーンが降り立って、滞在することになる。もちろん例によって殺人事件が起こって、エラリイが活躍することに――。

 事件の内容は、妻を毒殺しようとした疑いで、新婚の夫が逮捕され裁判にかけられるというもの。被告人には圧倒的に不利な証拠がそろっている。夫は金に困っている様子だったが、妻が死亡すれば莫大な遺産が転がり込んでくる。妻に毒の入ったグラスを渡したのは夫自身で、他に毒を入れることのできた人間は考えられなかった。また、夫が妻殺害の計画を練っていたことを示す手紙まで見つかってしまう。

 苦境に立った被告人の容疑を晴らすことができるのか? 法廷ミステリーとしての面白さも兼ね備えた作品。法廷での激しい戦いも見ものだった。
 
 トリック自体はよく見かける定番なもので、クリスティーの小説にも似たような作品がいくつかある。だが、結末に至るロジックだったり、登場人物の人間関係のドラマだったり、法廷ミステリーとしての質の高さだったり、全体的な完成度が高い作品といえるだろう。クイーン自身も自らのベストといってるくらいで、クイーン作品の中でも上位の内容。

 たまにこういう昔のミステリーを読むと、現代ミステリーが失ってしまった素朴な雰囲気が楽しめていい。最近の海外ミステリーはやたらと残酷な描写が多くて、読んでいてへきえきさせられることも多かったりする。ミステリーはもっとおしゃれなものだったのに残念だと常々感じているから、こういう謎解きで真っ向勝負してくれる作品を読むとうれしくなる。

 本書のような名作が新訳で復活するというのもファンとしてはありがたいことである。昔のミステリーには今読んでも古びないような傑作が多いので、どんどん新訳で読みたいものだ。
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進化とは何か [生物]


進化とは何か:ドーキンス博士の特別講義 (ハヤカワ・ポピュラー・サイエンス)

進化とは何か:ドーキンス博士の特別講義 (ハヤカワ・ポピュラー・サイエンス)

  • 作者: リチャード ドーキンス
  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2014/12/19
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)



 「利己的な遺伝子」で有名なリチャード・ドーキンス博士による科学講義。生命の進化のしくみについて、分かりやすく解説してくれている。

 進化という言葉はよく使われていて、身近な概念ではあるけれども、実際にそのメカニズムについて説明しろと言われると案外難しい。原始生命が生まれて、魚が生まれて、両生類が陸に上がって、爬虫類や哺乳類が生まれて、人間が生まれて……と、おおざっぱな流れは分かるけれども、具体的にどのようにして動物たちには羽が生えたり、ひれがついたり、知能を持ったりしたのか、よく考えると分からなくなってしまう。

 進化は自然選択とも言われる。世代交代を繰り返すうちに、自然界に適応する能力を持つ者が生き残っていくのだと。

 たしかに、背の高い同士をかけあわせていってどんどん体が大きくなるとか、赤い色同士をかけあわせていくとどんどん赤くなっていくとか、単純な特徴であれば直感的に理解できる。だが、眼だとか、脳だとか、羽だとか、昆虫の擬態だとか、複雑な構造を持った特徴はどのように自然選択で生まれてきたのだろう? 偶然の積み重ねで生まれたにしてはあまりにも奇妙すぎるのでは? 世代交代だけで説明するのは不可能なようにも思えてしまうのだ。

 ドーキンス博士はこうした一見すると説明困難に思える進化の過程を、「不可能の山を登る」と表現して、懇切丁寧にそのメカニズムを解説している。

 たとえば、眼。眼の原型は非常に単純な、光を感知するだけの一枚の膜だった。世代交代を繰り返すうちに、やがて、膜にくぼみのある子孫が誕生し、影を感知して光の方向が分かるようになった。くぼみがどんどん大きくなっていくと、敵の居場所もはっきり分かるようになってきた。くぼみを薄い膜で保護するようなものも誕生した。その透明な膜はやがてレンズの役割を果たすようになり、光と影だけでなく、周りの風景がハッキリ見えるようになってくる。さらに世代を繰り返すごとに、眼の構造は精巧を極めていく。

 最初は単純なしくみだったものが、世代を追うごとに複雑になっていって、現在目にするような形があらわれる。一見不可能に見える山も、小さなところから始まって、一歩一歩のぼっていくうちに、とんでもないところまで到達してしまう。進化ってこんなメカニズムになっているのかということが見えてきて、はっと目が覚めるような気分になる講義である。

 目が見えるとか、ものがつかめるとか、走ることができるとか、誰でも持っているような能力、あるいは、虫が飛ぶとか、蛍が光るとか、ごくごく当たり前に目にする光景。そういったありふれた光景が、実は気の遠くなるような時間を経て進化したもので、驚くべき能力なんだということに気づかされる。

 今まで当たり前のものとして見過ごしてきたような自然の光景が、別世界の星のように見えてくる。まさに世界観の転換を迫ってくる本。本書を読んで、世界はどんな風になっているのだろうと、ふと自然に目を向けたくなってきた。
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城のなかの人 [歴史小説(日本)]


城のなかの人 角川文庫 緑 303-8

城のなかの人 角川文庫 緑 303-8

  • 出版社/メーカー: KADOKAWA / 角川書店
  • 発売日: 1977/05/30
  • メディア: Kindle版



 豊臣秀吉の子、秀頼の生涯を描いた作品。

 星新一はSFショートショートで有名だが、こういう歴史ものの作品も残しているとは意外だった。実際に読んでみると、歴史上の人物が独自の視点で描き出されていて、歴史ものといっても星新一らしいひと味ちがう作品になっている。

 そもそも、秀吉のようなスーパースターではなく、あまりよく知られていない秀頼にスポットを当てているところ、その着眼点からして興味深いのだ。父秀吉の話ならよくドラマなどにもなっているけれど、「秀頼の生涯ってよく知らないなあ。どんな人生を歩んだのだろう?」と思わずひきつけられてしまう。

 「城のなかの人」とタイトルにもあるが、本当に秀頼は、城の中でぬくぬくと育っていった人らしい。大阪城で生まれた秀頼。幼いころから、豪華な建物の中で、調度品や芸術品に囲まれて育ち、侍女たちが世話をし、何不自由ない生活を送ってきた。まさに二代目のお坊ちゃん、御曹司といったところか。

 城の中の生活がすべてで、城の外がどんな世界なのかを知らない、世間を知らない若者。そんな秀頼が、秀吉亡き後、家督を継ぐことになるのだからたいへんだ。あれよあれよという間に、何もわからないまま偉い地位に担ぎ上げられてしまい、秀頼もあたふたしてしまう。政治や経済など何も知らないまま社会を動かしていかなければならない、その困惑ぶりが面白い。

 天下統一がいつまでも続けばそれでも問題なかっただろうけれど、波乱の世の中である。秀吉亡き後、権力を狙って徳川家康ら周辺の人間が、虎視眈々と秀頼の立場を危うくしようとするのだ。城の中でぬくぬくしていたはずの秀頼だったが、だんだんそうも言っていられなくなった。戦が始まるようになって、ようやっと城の外の世界の恐ろしさを目の当たりにすることになる―—。

 本当に城の中で育って生活して、最期を遂げていった人物だったのだなあと、こんな人生を送った人がいたのかと読んでいて、興味深かった。偉大な父親を持った子はこんな思いをすることになるのかと、二代目の目線で描かれた珍しい歴史小説。波乱万丈の生涯をたどった秀吉とはまた違った面白さがあって、なかなか読みごたえがあった。
タグ:星新一
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虚ろな十字架 [ミステリ(日本)]


虚ろな十字架

虚ろな十字架

  • 作者: 東野 圭吾
  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 2014/05/23
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)



 江東区木場の路上で殺害されたフリージャーナリストの女性――。それは中原道正の別れた妻小夜子だった。犯人はすぐに捕まった。金銭目的の犯行だったという。だが、中原の胸には何か釈然としない思いが去来する。単純に見える事件の背後に何か隠れた事実が潜んでいるのではないか? 中原は小夜子の足取りを追いかけながら、事件の真相に迫っていく。

 久しぶりに東野圭吾を読んでみたら、相変わらず水準が高かった。

 一見すると単純な事件なのに、主人公があれこれ探るうちに、徐々に今まで分からなかった事件の裏側が明らかになっていく。単純な事件に見せかけて実は……という展開のわくわく感。いろいろな登場人物の間に思わぬつながりも出てきたりして、ミステリーの醍醐味を存分に味わうことのできる内容。

 過去の出来事が現代につながってくるという、東野圭吾の作品にありがちな展開も出てくる。何年も前の出来事がめぐりめぐって、新たな悲劇をもたらす。封印したはずの過去、忘れようとしていた記憶がふとしたきっかけでよみがえってしまって、現代に生きる登場人物たちに牙をむく。徐々に過去の出来事の全容が明らかになっていくところはなかなか迫力があった。

 ミステリーとしてのエンターテイメントの面白さだけではなく、社会派として読んでも興味深い。死刑制度が事件にからんできて、死刑をめぐる議論が随所に出てくるのである。

 悪いやつがいたらやっつけて、懲らしめてしまってめでたしめでたし……。そんな子供のヒーロー漫画みたいな単純な勧善懲悪でうまくいくのならいいが、現実にはそうはいかない。殺人犯を死刑にしたところで、被害者が帰ってくるわけでもなく、悲しみが癒えることはない。でも、犯人に処罰を与えて、犯人が二度と犯行をくり返さないようにすることが、遺族にとっての最大の目的にもなりうる。死刑制度や刑罰についてひそむ、様々な矛盾が描き出されている。

 刑罰のシステムにはいろいろ理不尽な面があるのだなということが、読み進むうちに見えてくる内容。犯罪者が贖罪するということはどういうことなんだろう? 正義とは何なんだろう? という難しい疑問をつきつけられ、何か分かりやすい正解があるわけではないことに気づかされる。

 推理ものであると同時に、こうした犯罪と刑罰をめぐる様々な矛盾自体が物語に取り込まれていて、ミステリーとして楽しいだけの作品に終わらない、重いテーマを抱えた作品になっていて読み応えがあった。
タグ:東野圭吾
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最貧困女子 [社会]


最貧困女子 (幻冬舎新書)

最貧困女子 (幻冬舎新書)

  • 作者: 鈴木 大介
  • 出版社/メーカー: 幻冬舎
  • 発売日: 2014/09/27
  • メディア: 新書



 日本の貧困女性たちを筆者が直接取材して、貧困層と呼ばれる人々の生活の実態をあぶりだした本。

 複数の女性たちに直接インタビューして書いているので、非常に生々しくその生活の様子が描き出されていて迫力がある。

 貧困などというと、「お金がなくて困っている」という単純なイメージしかなかったけれど、この本を読むと、ひとくちに貧困層といっても、様々なタイプがあることが見えてくる。同じような低収入状態にあったとしても、その生活の困窮ぶりには違いがあるようだ。

 例えば、収入が少なくても、周囲との密なつながりを使って、お互いに物品をシェアして楽しく生活しているような女性がいる。収入の低さを他で補うことができているので、このような場合は、貧困といっても深刻なものではない。

 また、収入がなくても、生活保護を受けられれば、最低限の生活を送ることができるだろう。

 だが、こうした周囲の支援を一切受けられない状態にある人もいるのだそうだ。こうした人は、収入も乏しく、家族の支援も受けられず、公的扶助も得られず、非常に困った状態に置かれている。お金がないことだけが貧困なのではなくて、家族の支援が受けられないとか、頼る知人がいないとか、生活保護を受けるための知識もないとか、貧困にもいろいろなレベルがあるのである。

 こういう貧困状態になった人に対して、自己責任だという人もいるけれども、一概には言い切れないだろう。なかには、家族からひどい虐待を受けて、やむにやまれず小さいうちに家出をせざるを得なくなった人もいる。こういう人を誰も非難できないだろう。生まれた環境を自分で選ぶことはできないのだから。

 本書を一読して、貧困問題とか格差の問題というのは、難問なんだなあということをしみじみ感じた。単純にお金を支援すればいいという問題でもなくて、そもそも生活保護の受け取り方も分からない場合というのがあるのだ。教育とか家庭環境とか社会システムなどの全般的な問題になるので、こうすればいいよという単純な解決方法はないんじゃないだろうかと思った。
タグ:鈴木大介
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宇宙への秘密の鍵 [児童書]


宇宙への秘密の鍵

宇宙への秘密の鍵

  • 作者: スティーヴン ホーキング
  • 出版社/メーカー: 岩崎書店
  • 発売日: 2008/02/09
  • メディア: 単行本



 イギリスの理論物理学者スティーヴン・ホーキング父子が書いたジュブナイル小説。

 少年が彗星に乗って、太陽系のあちこちを探検するという宇宙アドベンチャー。平凡な少年が、万能コンピュータの助けを得て、宇宙に飛び出して大冒険をするという夢のあるストーリーだ。

 ストーリーはいたってシンプルなものだが、読んでいて、主人公の冒険を通して、宇宙の様々なしくみを知ることができるところがよい。小説部分だけでなく、随所に科学解説コラムが挟みこまれていて、惑星とは何か、宇宙の成り立ちはどのようなものか、宇宙を形作る物質は何かなど、宇宙の様々な仕組みを知ることができるのだ。

 星や宇宙の写真がたくさん掲載されていて、宇宙がどんなところなのかが具体的に見えてきて、宇宙を身近に感じることができる内容。「土星はどんな惑星なの?」とか「ブラックホールに入ったらどんな風になっちゃうの?」とか、素朴な疑問にも答えてくれる。

 科学と環境保護との衝突というテーマも描かれていた。科学者に突きつけられた問いかけ。「地球での暮らしをもっとよくする方法を見つける努力をすべきなのか? それとも人類が暮らしていける別の新惑星を見つけるべきなのか?」 ホーキング博士なりのメッセージもこめられていて、子供向けながらも考えさせられるところもある。

 やさしくさらっと読める内容であるが、読み進むうちに宇宙の基礎の基礎がいつの間にか頭に入ってくる。主人公と一緒に宇宙を探検するような気分になれる夢のある一冊だった。
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未来予測を嗤え! [科学]


未来予測を嗤え! (oneテーマ21)

未来予測を嗤え! (oneテーマ21)

  • 作者: 神永 正博
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA/角川書店
  • 発売日: 2014/12/09
  • メディア: 新書



 数学者の神永正博とプログラマーの小飼弾との「未来予測」をテーマにした対談本。

 未来予測という切り口から、ビッグデータ、人工知能、貧困問題、超国家企業、経済成長、教育問題など、幅広いトピックについて語っている。

 「経済はこうなる」とか「社会はこうなる」とか、「未来はこうなる」という言説をよく目にするけれども、そもそも未来予測というのはどの程度可能なんだろう? 

 本書によると、未来予測が可能な分野というものがあって、天体の動きなどの物理法則だったり、人口動態などの物理的な制約があるものだったりは、ある程度の予測はできるかもしれない。だが、お金などの人間が絡む社会現象などは予測不可能だろうという。

 統計データを使って理路整然と「社会はこうなる」と語ることもできるけれど、結局幻想にすぎないんじゃないか? データを恣意的に解釈して、自分の語りたいストーリーに合わせてしまっているだけなんじゃないか? 社会をもっともらしく予測しようという話は注意が必要になる。

 経済がどうなるかなんてわからないし、どんな商品がヒットするのかとか、どうすれば成功するのかといったことについても予測できない。成功法則があるわけではなくて、「こうすれば成功する」という話もあとづけの理屈に過ぎないということなんだろう。

 結局、未来のことが予測できないということになれば、手探りで試行錯誤を繰り返ししていくしかなさそう。あまり未来のことなど気にしすぎないで、その場その場を楽しんで生きるのがいいのかもしれない。将来に備えるといっても、どんな分野が発展するのか、後で何が役に立つかもわからないのだから、現在のトレンドと無関係な分野に興味を持って、とことん勉強してみるのがいいのかも。

 社会が複雑になるにつれて、ますます未来のことが分かりにくくなって、どうやって生きたらいいのか考えるのが難しくなった。一寸先は闇の社会ではあるが、本書はそんな不安な社会に生きるための羅針盤といえる。ちょっと先の社会について、これからの未来について、あれこれ考えさせられる、生きるヒントを与えてくれる本だった。
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