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運のいい人の法則 [人文]


運のいい人の法則 (角川文庫)

運のいい人の法則 (角川文庫)

  • 作者: リチャード・ワイズマン博士
  • 出版社/メーカー: 角川書店(角川グループパブリッシング)
  • 発売日: 2011/10/25
  • メディア: 文庫



 人生で成功を収めるには、才能というものも重要だろうけれど、運のよさも必要だろう。とくに秀でた才能の持ち主であれば、向こうのほうからどんどんチャンスがやってくのかもしれないけれど、凡人の場合、ごくたまにやってくるチャンスをうまくつかみ取る必要がある。

 では、そうしたチャンスをうまく見つけたり、運を高めたりする方法というのはあるのだろうか? 運・不運というものはある程度自分でコントロールすることはできるのだろうか?

 本書「運のいい人の法則」は、まさにそうした運の良さについて研究した本。イギリスのハートフォードシャー大学の心理学者である筆者は、数百人の人間を調査したり、心理学の実験を行ったりして、どうすれば運のいい人間になれるのかを、つきとめようとしている。

 本書によると、運のいい人間にはいくつかの共通パターンが見られるという。それは、①チャンスを広げる努力をしていること、②自分の直感を大切にしていること、③将来への期待感を持っていること、④失敗にへこたれない力の4つ。

 最初はなんじゃこれはと思ったけれど、よくよく読んだら、確かにそうだなあとも思えてきた。

 まず、挑戦する回数を増やすということ(①)。「下手な鉄砲数打ちゃ当たる」戦法である。運のいい人というのは、意識するとしないにかかわらず、人よりも多く挑戦しているから、成功する確率が高くなっているのだという。言われてみれば当たり前の話だ。チャンスを得るためには、チャンスを得るための機会にたくさん遭遇する必要があるのだから。

 また、直感を大事にするということ(②)。せっかくいいチャンスが来ているのに、気づかなければ意味はない。成功につながる機会を見逃さない眼力が必要だし、意外なところにあるチャンスを見過ごさないように、普段から肩の力を抜いて生きることが大事。

 将来に期待する、夢や目標を持つということも大事だろう(③)。目標意識がある人間とない人間とで比べたら、やはりモチベーションが相当違ってくる。目的意識がはっきりしないとすぐにあきらめてしまうが、強靭な目的意識があれば、苦労や失敗にもめげずに何度も挑戦することができる。

 不運をバネにする力というのも重要だ(④)。どんな分野でも1回で成功できるわけはない。何度も繰り返し失敗した後で、ようやく成功できるのが普通だ。とすれば、失敗をおそれないことが大事だし、同じ失敗を繰り返さず、失敗から学ぶ努力も必要になってくる。

 人生というのは、偶然性の連続である。未来を完璧にコントロールすることなどできない。避けられない事故や事件に巻き込まれてしまうことだってある。

 だが、すべてが偶然というわけでもなくて、ある程度は努力をすることで、未来を少しでも切り開いていくことができるのかもしれない。幸運の女神は、自ら行動する人間に微笑む。幸運が降ってくるのをただ指をくわえて待っているのではなくて、自分から幸運を呼び寄せることが大事で、努力をすれば少しは人生をよい方向に変化させることができるのかもしれない。

 本書にはそんな幸運を得るためのヒントがたくさん書かれていて、苦難に立ち向かう勇気をくれる、前向きな気分にさせてくれる一冊だった。
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ドイツ流掃除の賢人 [生活]


ドイツ流 掃除の賢人―世界一きれい好きな国に学ぶ (知恵の森文庫)

ドイツ流 掃除の賢人―世界一きれい好きな国に学ぶ (知恵の森文庫)

  • 作者: 沖 幸子
  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 2005/08
  • メディア: 文庫



 掃除というのは、なかなか面倒なものだ。日々たまっていく塵や汚れとの戦い。塵も積もれば山。放っておくと、厄介なことになってしまう。

 本書はそんな面倒な掃除をうまくするコツを教えてくれる本。きれい好きな国民で、いつも家中ピカピカな生活をしていることで知られる、ドイツ流の掃除の仕方を伝授してくれる。

 基本にあるのは、まとめて掃除をするのではなくて、日々こまめに掃除をする生活のススメである。

 ドイツには大掃除という習慣がないそうだ。汚れてから一度にきれいにするよりも、習慣としてこまめに掃除をすることで、きれいな状態を維持するというのが彼らの考えなのだ。

 そうはいっても、毎日張り切って掃除ができるわけもなく、そんな時間もないだろう。掃除のコツは、毎日15分ずつでもいいから、小刻みに気になるところを掃除していくということらしい。どんなに忙しくても15分程度であれば、時間は取れるはず。その程度の時間であれば、無理なく続けることができる。

 物を使ったときは、ついでにその物や場所を掃除してしまう。ほかの事をしている間に、手を動かして物を拭いてしまう「ながら掃除」。物を床に置かないことなど。簡単に取り入れることができる掃除のノウハウが詰まっていて、参考になった。

 部屋の場所ごとの掃除の仕方についても書かれていて、これまた勉強になる。基本は「拭く」ということが大事で、ぬらしたタオルなどで「拭く」ことでかなりの部分がきれいになるそうだ。

 かなり実用的な内容で役に立ちそう。無理せず続けられそうなところがよかった。
タグ:沖幸子
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紅はこべ [歴史小説(外国)]


紅はこべ (創元推理文庫 507-1)

紅はこべ (創元推理文庫 507-1)

  • 作者: バロネス・オルツィ
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 1970/05
  • メディア: 文庫



 1792年のパリ、フランス革命が進行するにつれて、急進的な勢力が力を持つようになると、恐怖政治が蔓延するようになった。

 貴族たちは次々に死刑台へと送られ、ギロチンで首をはねられていく。国王と王妃も、幽閉生活を余儀なくされてしまう。貴族たちは危険を逃れるため、続々と国外への逃亡を図ろうとする。女は男に、若者は老人に、金持ちは乞食に変装して、関門をくぐり抜けようとする。だが、目ざとい軍曹たちが貴族たちの変装を見破り、逮捕して死刑台へと送ってしまう。

 そんな恐怖の支配する中、人々の間で不思議な噂が広まり始める。貴族たちの逃亡を助ける秘密の結社があるというのだ。なんとも鮮やかな手口で、見張りの目をかすめ、関門を突破してしまうのだとか。その神出鬼没の一団の正体はようとして知れない。ただ、彼らが象徴として用いている小さな星形の花の名前をとって、「紅はこべ」と呼ばれていること以外は……。

 フランス革命の時代のイギリスとフランスの2つの都市を舞台に、秘密の団体「紅はこべ」の活躍を描いた冒険活劇。

 「紅はこべ」の正体を見破ろうとフランス政府大使ショーヴランという男が、手がかりをたぐり寄せてぐんぐん包囲網を狭めていき、「紅はこべ」の正体に迫っていく。追いかけるショーヴランと、するりと逃げる「紅はこべ」。追いつ追われつの物語がスリリングだ。

 一体誰が「紅はこべ」の首領なのか? 登場人物の中からその正体を探していくくだりは、怪盗ルパンみたいなところもあって、ミステリーとして読んでも面白い。実際、「紅はこべ」は次々にいろいろな人間に変装したりして、人々を欺くので、奇術的な味わいも楽しめる作品になっている。

 現代でいうスパイスリラーのようなものだろう。初めから終わりまで、機略に富んだ内容で、陰謀の世界が描かれていて面白かった。最後の最後まで手に汗握る展開で、けっこう昔の本なのに、物語の中に引き込まれてしまった。
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世にも不思議な物語 [ホラー]


世にも不思議な物語  世界の怪奇実話&都市伝説 (扶桑社ミステリー)

世にも不思議な物語 世界の怪奇実話&都市伝説 (扶桑社ミステリー)

  • 作者: レノア・ブレッソン
  • 出版社/メーカー: 扶桑社
  • 発売日: 2014/08/31
  • メディア: 文庫



 不思議な出来事にはなぜかひきつけられるものがある。昔から不思議話を見かけると、ついむさぼるように読んでしまう。

 不思議世界に飛び込んでいくファンタジー、不思議な出来事を解き明かしていくミステリー、科学の進歩が未知の世界(センス・オブ・ワンダー)を見せてくれるSFもの、不思議話が恐怖と結びついたホラーなど。世界でも人気のあるこれらのジャンルは、不思議世界という点ではどれも共通しているように思う。 

 誰の心の中にも、不思議なものに対する憧れや畏怖の念のようなものがあって、これらの物語は人々の未知のものに対する畏怖の念を呼び覚ますのかもしれない。

 本作は、まさにそんな不思議な話ばかりを集めたアンソロジー。世界中から選りすぐった、実際に起こった不思議な出来事が描かれた一冊だ。

 ごく普通の日常を送っていた人々が、突然奇妙な世界へと飛び込んでしまう。そんなゾクゾクするような逸話がたくさん詰まっている。

 突然他人の心を読めるようになった少女の悲劇(「魔女と呼ばないで」)、夢の中で夫が死ぬ場面を目撃してしまった女性の恐怖(「夢の結末」)、第二次大戦前後のドイツで起こった不思議な出来事(「再会」)、殺人を犯してしまったピアニストに迫る呪い(「血まみれの手」)、サーカスで起きた奇跡体験(「空中ぶらんこ」)……。

 中でもとくに面白かったのは、夜学の女教師ロイス・モリソンが体験したという不気味なエピソード。ロイスが授業中に黒板に文章を書いていると、チョークを持つ手が勝手に動き出して、自分でも意図しないような言葉を書き始めてしまう。それは、ロイスが今までに見たことのないような外国の言葉。その言葉には実は隠された意味が込められていて……(「クララからのメッセージ」)。

 こうしたアンソロジーの類は、玉石混交なことが多く、自分の好きな作品がごくわずかでもあればいいほうだが、本書に至ってはどの作品も水準以上で、ドツボにはまってしまった作品ばかり。単に不思議な出来事が起こるというだけでなく、背景にある登場人物たちのドラマもじっくりと描き出されていて、不思議な出来事に直面する彼らに思わず感情移入してしまうほど。

 世の中まだまだ謎が多い。分からないことが多いから面白い。本書は世界が謎に満ちていることを教えてくれる、興味深い一冊だった。
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USJのジェットコースターはなぜ後ろ向きに走ったのか? [ビジネス]


USJのジェットコースターはなぜ後ろ向きに走ったのか?

USJのジェットコースターはなぜ後ろ向きに走ったのか?

  • 作者: 森岡 毅
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA/角川書店
  • 発売日: 2014/02/26
  • メディア: 単行本



 何か問題を解決しなければならなくなったときに、ただ闇雲に事に当たったのでは、無駄に時間を浪費してしまうばかり。事態が解決するどころか、空回りしてしまうことも……。うまく問題を解決するためには、まずは戦略的にじっくりと計画を練ることが肝要だろう。

 そのためのツールとして有効なのが、戦略的フレームワークと呼ばれる方法。

 まずは到達すべき目標が何なのかをよく考えて、向かうべき方向を絞り込む(目的)。目標が決まったら、今度は目標を達成するために、どのような選択肢があるのか、大まかな方針を定める(戦略)。大まかな方針が定まったら、方針をさらに具体化させるアイデアを練っていく(戦術)。

 これら3ステップを踏むことで、徐々に考えるべき範囲を絞り込んでいって、時間や努力を集中していくことができるのだ。

 本書は、こうした戦略的フレームワークの考えを実際のアミューズメント・ビジネスの世界に用いた実践の書である。筆者はマーケターとして、USJ(ユニバーサルスタジオジャパン)からヘッドハンティングされ、当時苦境にあったUSJをV字回復に導いた張本人。どのように戦略を固めていくのか、具体的な事例から学ぶことができる。

 筆者がUSJから与えられた難問とは、一時期は来場者数が1000万人以上あったにもかかわらず、700万人を推移するようになってしまった現状。どうにかして集客を増やしたいという切実な問題だった。

 筆者は、目標を「1000万人レベルの年間集客を維持すること」と設定し(目的)、そのための戦略として、これまで集客の少なかったファミリー層をターゲットとして狙いを定めることを考える(戦略)。そして、具体的なファミリー層を集めるためのアイデアを実現させていく(戦術)。

 よく戦略的に考えるとか戦術を練るとかいう言い方をすることがあるけれども、実際にやってみると難しい。そもそも、どんなふうに戦略を練るのか、その方法が分からなければ、戦略の練りようがない。しかし、本書を読むと、戦略を練るための方法が具体的に書かれていて、戦略を練るということはこういうことなのかというのが見えてくる。

 ただの机上の空論ではなく、実際にUSJの経営を安定させた実績があるので、書いてあることに非常に説得力がある。もちろん、成功の原因は本人の尋常ならざる知識・経験によるところも多いだろうから、そう簡単にまねることはできないが、わずかながらでも参考になるところはあった。

 戦略・戦術云々は抜きにしても、単純にショービジネス業界の裏側を覗き見ることができただけでも読む価値はあるだろう。映画のアトラクションだけだと小さなこともが楽しめないので、批判は承知で漫画のキャラクターを取り込む必要があるのだとか、「ハリー・ポッター」のアトラクションに込められた思いとか、いろいろ人知れぬ苦労があるんっだなあということがひしひしと伝わってくる。

 エンターテイメント業界の裏話として読んでも面白いし、人生やビジネスに応用できる戦略論として読んでも面白い内容。自分も、いろいろな問題を山のように抱えているので、本書を見習って、戦略的に生きられるようにがんばりたいものだ。
タグ:森岡毅
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緑の光線 [文学]


緑の光線

緑の光線

  • 作者: ジュール・ヴェルヌ
  • 出版社/メーカー: 文遊社
  • 発売日: 2014/07/30
  • メディア: 単行本



 緑の光線(グリーン・フラッシュ)という自然現象があるのをご存じだろうか?

 海上に霧がなく、空も完全に澄み渡っている条件下で、水平線に太陽が沈むときに起こる現象。このときに見られる光線は、一般的な赤い光線ではなく、緑色の光を放つという。その緑色は、えも言われぬ不思議な色合い。澄み切った天候でないと見ることのできない世にも珍しい光線なのだ。伝説では、その緑の光線を見た者は、幸福になれるのだとか。

 本書「緑の光線」は、このグリーン・フラッシュ現象を題材に、ヴェルヌが物語にしたためた作品だ。
 
 スコットランド人のメルヴィル兄弟の最も大切にしているものは、18歳になる自分たちの姪っ子のヘレーナ。たいそうな可愛がりようで、姪っ子の言うことならどんな我がままでも何でも聞いてしまうほど。そんな兄弟の目標は、ヘレーナを自分たちの勧める立派な青年と結婚させて、姪っ子に安心した将来を与えてあげることだった。だが、当のヘレーナはそんな兄弟の気持ちには無頓着で、かえって兄弟たちに無理難題を突きつけてしまう。「自分はけっして結婚はしない。「緑の光線」を見るまでは」と。こうして、メルヴィル兄弟とヘレーナの「緑の光線」を探す旅が始まる――。

 ジュール・ヴェルヌにしては珍しく、女性を主人公にした物語。緑の光線をたずねて、島々を転々とする。そして、登場人物たちが冒険をするのと並行して、ヘレーナの恋物語が展開するのだ。

 「緑の光線」を探すというなんとも呑気な目的で、しかも、道中ものんびりしたところがある作品なのだが、さすがヴェルヌで、ところどころダイナミックな場面があって、わくわくする冒険ものになっている。何より、登場人物たちのキャラクターが生き生きとしているところがよい。冒険心と空想的なところのあるヘレーネ、世間離れしたメルヴィル兄弟、ヘレーネのフィアンセの退屈な科学者、海を漂流しているところを見つかった若者オリヴァ―などなど、多彩な人物が出てきて様々にドラマを展開する。

 「緑の光線」を見ようと思っても、肝心の時に邪魔が入ったりして、なかなか見られない。一行を襲う騒動がコミカルに描かれていて愉快。

 幸福を求めて「緑の光線」を見ようと思ったヘレーナ。最後の最後に、思わぬ結末が待っていて、本当の幸福とは何かに気づく。いつものヴェルヌ作品と比べたら若干のんびりしたところはあるけれど、ユーモラスなところがあるし、最後ほのぼのとした気分にさせてくれて、捨てがたい魅力がある作品だった。
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赤後家の殺人 [ミステリ(外国)]


赤後家の殺人 (創元推理文庫 119-1)

赤後家の殺人 (創元推理文庫 119-1)

  • 作者: カーター・ディクスン
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 1960/01/15
  • メディア: 文庫



 部屋が人を殺す。そんな奇妙な殺人事件を書いたのは、カーター・ディクスン(ジョン・ディクスン・カー)という作家だ。

 ロンドンの古い屋敷に、「赤後家の間」と呼ばれる部屋があった。その部屋に、昔から伝わる古い言い伝え。それは、部屋に一人で入った人間は、謎の死を遂げてしまうというもの。実際に、フランス革命の動乱の時代から数えて、すでに4人もの人間が部屋に入ったきり死んでしまったという。この恐ろしい言い伝えから、開かずの間として封印されていたこの部屋だったが、現代になって、この死の部屋の謎を解明すべく数名の男女が集まり、封印を解くことになる。そして、噂の真偽を確かめるために、誰か一人だけで部屋の中で過ごす実験を試みるのだが……。

 赤後家の間と呼ばれる密室での事件を描いたミステリー。作者のカーは、アガサ・クリスティーやエラリー・クイーンとともに、本格ミステリーの黄金時代を築き上げた大御所。とくに密室殺人などの不可能犯罪を持ち味にした魅力あふれる作家だ。

 ミステリーの面白さにも、推理の面白さとかどんでん返しとか、いろいろあると思うけれど、冒頭の奇想天外な謎というのもミステリーの醍醐味の一つだろう。誰もいないはずの密閉された部屋で人が殺されるとか、監視されている中で人が消失してしまうとか、常識では計り知れないような摩訶不可思議な出来事が起こって、「これは本当に現実なの? それとも怪奇現象なの?」とゾッとした気分になる。そんな不気味さに思わずひきつけられてしまう。

 そんな奇妙奇天烈な謎を味あわせてくれる作家として、カーの右に出る者はいないと思う。密室ものの話を山ほど書いていて、数多くの魅力ある謎を体験させてくれる。オカルティズムにあふれていて、読んでいると奇怪な世界に迷い込んだような気になってくる。

 本書はとくに、人を殺す部屋という不気味さ満点の舞台が出てきて、吸引力抜群の内容。部屋の中で何が起こったのだろうと、いろいろと恐ろしいことを想像させられてしまった。フランス革命のころの死刑執行人サンソンと深く関わりがあるという部屋で、歴史的な由来も非常に興味深い。
 
 最後にはあざやかな謎解きがあって、手際の良い奇術を見ているかのようでもある。冒頭の謎が大きいと、あとで尻つぼみになるようなミステリーもあるけれども、本作のトリックは単純明快な謎解きが待っていて、盲点を突かれたような気になる。謎の不気味さだけでなく、結末の冴えも見せてくれる逸品だった。
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NかMか [ミステリ(外国)]


NかMか (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)

NかMか (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)

  • 作者: アガサ・クリスティー
  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2004/04/16
  • メディア: 文庫



 第二次大戦中のイギリス、冒険好きな夫婦トミーとタペンスは戦争に協力することを希望していたが、高齢を理由に拒絶され、もどかしい日々を送っていた。そんな折に、情報局からある任務を依頼される。南海岸のリーハンプトンという保養地にある〈無憂荘〉に潜入して、住民たちの動向を監視してほしいというのだ。ある情報によると、その建物の中にドイツのスパイが入り込んでいる可能性があるのだという。ふたりはさっそく別人に成りすまして〈無憂荘〉に赴くが、目の前には様々な謎と危険が待ち受けていた……。

 アガサ・クリスティーが、第二次世界大戦中のイギリスを舞台にして描いた、スパイ・スリラー。トミーとタペンス・シリーズの一冊である。

 クリスティーはスパイ小説も何冊か書いていて、お得意の殺人ミステリーに比べると玉石混交で、正直いまひとつの作品もあったりする。だが、本作『NかMか』は、中でも突出した出来栄え。〈無憂荘〉という閉鎖的な環境(クローズド・サークル)を舞台にしているので、いつものクリスティーらしさが発揮されているのだ。登場人物の中から殺人犯を探す代わりに、今回はドイツのスパイを探すことになる。

 複数の登場人物の中から標的を見つけ出していく楽しみ。〈無憂荘〉のおかみとその娘、退役軍人、ドイツからやってきた青年、赤ちゃんを連れた若い婦人、大きな体格をした威圧的風貌の女、中年の夫婦、編み物をする初老の女性、そして、無憂荘の周りを嗅ぎまわる謎の外国人女性……。一体誰がドイツのスパイなのか? 全員がひと癖もふた癖もあって、疑わしく思えてきて、疑心暗鬼になっていくところがいつもながらにゾクゾクさせられる。

 群像劇のようなところがあるのも見どころのひとつだろう。クリスティーの作品は、本命の犯人だけでなく、そのほかの登場人物にもいろいろな仕掛けが施されていることが多い。読者をミスリードするためという理由もあるのだろうけれど、脇役にもいろいろな秘密やドラマが隠されていたりして、本筋以外のところでも楽しめるようになっている。

 それぞれの背景やドラマを持った人物たちが、ひとつの場所に一堂に会する。人物たちの人生が交錯して、それぞれのドラマが同時並行に進行していく。殺人やスパイのスリルとしての面白さだけでなく、群像劇としていろいろな人々の人生を感じさせられるところもクリスティーの小説の魅力であるのだ。本作でも、脇役たちの様々な人間模様をみることができたり、事件が終わった後にも心温まるエピソードが語られたりして、なかなか読みごたえがあった。

 スパイを見つけ出すためにいろいろな罠をしかけるトミーとタペンス。主人公たちとスパイとの頭脳戦としても面白いし、脇役に注目しても面白いというクリスティーの本領が発揮された傑作。クリスティーのスパイ・スリラーを読むなら、まずこの作品からがおすすめだろう。
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憲法主義 [法律]


憲法主義:条文には書かれていない本質

憲法主義:条文には書かれていない本質

  • 作者: 内山 奈月
  • 出版社/メーカー: PHP研究所
  • 発売日: 2014/07/16
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)



 憲法学者がアイドル歌手に憲法を解くという異色の本。

 キワモノかと思いきや、非常にしっかりした憲法の解説書になっている。憲法のしくみについて、その歴史的背景や制度の意味が丁寧に解説されていて、これ一冊で憲法の全体像をつかむことができる。アイドルも、憲法を暗唱するくらい知識豊富で、講義の内容もすらすら理解していて、頭がいいんだなあとびっくりさせられた。

 憲法というのは、国家権力を縛るためのしくみである。国家権力というものは、放っておくと暴走しがちである。歴史をひも解いていくと、国家機関は様々な問題行動を繰り返してきた。独裁に走ったり、思想・言論統制を行ったり、不平等な扱いをしたり、少数派を虐殺したり、他国を侵略したり。多くの人々の犠牲が生じた。

 民衆も黙ってばかりいたわけではない。人々はこうした国家の暴走や傲慢に対して業を煮やし、自ら立ち上がって、アメリカ独立戦争、フランス革命など、反乱を起こすこともしばしば。国家対人民をめぐる闘争の中で、多くの血が流れた。

 こうした様々な歴史的な紆余曲折があるなかで、人々はどんな国家が理想か、どんなシステムがよりよいものになるのかを考えるようになった。そして、国家を理想的なシステムにすべく、憲法にその設計図を組み込んだのだ。

 日本の憲法は、GHQが草案をつくっているので、こうした世界史の背景が踏まえられている。人権規定にしても、国民主権にしても、違憲審査制にしても、それぞれに歴史的な由来があって規定されたもの。歴史上の様々な悲劇を繰り返さないよう、先人たちの知恵を集結したものといえるだろう。

 本書を読むと、それぞれの仕組みの大元がどこにあるのか、どんな思想でこのようなシステムが作られたのかがよく分かって大変興味深い。完璧なシステムなどあるわけがないし、日本の憲法にもいろいろなデメリットはあるようだが、他のシステムに比べたら大分ましなんじゃないかということが見えてくる。時事的な問題についても語られていて、大いに勉強になる一冊だ。
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