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たったひとつの冴えたやりかた [SF(外国)]


たったひとつの冴えたやりかた (ハヤカワ文庫SF)

たったひとつの冴えたやりかた (ハヤカワ文庫SF)

  • 作者: ジェイムズ・ティプトリー・ジュニア
  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 1987/10
  • メディア: 文庫



 人生、思わぬ運命に巻き込まれることがある。巨大な壁が立ちふさがったり、究極の選択を迫られたり。

 運命に翻弄されてしまったときには、一体どんなふうに生きたらいいのだろう? どんな選択をしたらいいのだろう? 小説や映画を見る醍醐味のひとつは、そうした人生の生き方について、教えてくれるところにあるのかもしれない。

 本書「たったひとつの冴えたやりかた」は、まさにそんな人生の試練と選択を描いた作品だ。

 主人公は16歳になる少女コーティー。宇宙を夢見る少女で、前人未到の未知の空間に行くことに強いあこがれを抱いている。そんな彼女は誕生日のお祝いにスペースクーペをプレゼントされて、大騒ぎ。コーティーはさっそく未知の星々めがけて出発することに。

 だが、宇宙のはるかかなたで待っていたのは意外な生き物。とても小さなエイリアンと遭遇して、そのエイリアンはコーティーの頭の中に入り込んでしまうのだった……。

 コーティーとエイリアンとの不思議な友情物語。前半は、ほのぼのした印象があって、エイリアンとの和気あいあいとしたエピソードが語られる。だが、後半から一転。コーティーとエイリアンは思わぬ試練に巻き込まれてしまう。コーティーはある究極の選択を迫られることになるのだった。

 本書が感動的であるのは、まだ小さな少女が大人顔負けの勇敢な決断をするところにあるのかもしれない。少女とはいっても、人類の運命をも背負った大きな選択をすることに……。

 宇宙を舞台にした空想的な設定ながらも、人生とは何か、運命とは何か、選択とは何か、人間の生きざまについていろいろと考えさせられる作品。短いながらも、深みがあって力強い物語になっている。
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TVディレクターの演出術 [実用]


TVディレクターの演出術: 物事の魅力を引き出す方法 (ちくま新書)

TVディレクターの演出術: 物事の魅力を引き出す方法 (ちくま新書)

  • 作者: 高橋 弘樹
  • 出版社/メーカー: 筑摩書房
  • 発売日: 2013/11/05
  • メディア: 新書



 テレビ東京のディレクターが書いた、演出術に関する本。

 筆者は「TVチャンピョン」「世界ナゼそこに? 日本人」などの番組を手がけるディレクター。自身がテレビ番組を作り続けるうちに学んだ、演出の極意について語っている。

 もともと筆者が勤務するテレビ東京というところは、NHKや他の民放各社に比べて、ディレクターにとっては苦労が避けられない局なんだそうだ。それは、圧倒的に予算が少ないから……。経費節約のためには、使えるスタッフの数を制限する必要があるし、タレントを出すことさえ難しかったりする。

 一般的にテレビ番組の制作は、①リサーチをして、②台本を作成して、③撮影して、④編集して、⑤仕上げをするという流れをたどる。本来であれば、これらの作業は大人数で分担して行うのがふつうだ。リサーチは専門のリサーチ会社に頼んだり、台本は構成作家が書いたり、撮影はカメラマンが行ったりする。だが、筆者はこれらの作業もすべて自分自身でこなす必要があったのだそうだ。

 少ない予算で面白い番組を作るためには、それなりの創意工夫が必要になってくる。本書を読むと、タレントを出さないでも視聴者を引き付けるような、そんな中身のある番組を作るために、TVマンが悪戦苦闘する様子を見ることができる。調査の段階から、自ら各所に足を運んで、面白いネタはないかとえんえん探し求めたり、ひとつのテーマを深く深く掘り下げていったりと、こんな苦労があるのかというのが分かって興味深かった。

 テレビはそんなに見るほうではないが、テレビ東京のものは確かに他局に比べて内容が濃くて面白いイメージがある。予算がないなりのたゆまぬ努力を積み重ねているから、一味違う番組ができるのかもしれないなあと、本書を読んでよくわかった。

 リサーチをして素材を探す、集まった素材の中から面白い要素を取捨選択する、選んだ素材を面白さが伝わるように効果的に並べる。こういった作業は、テレビ番組に限らず、文章を書いたり話をしたりするときにも共通して必要なものなんじゃないか。本書には、調査の効率的な進め方だったり、よい編集の仕方だったりのテクニックがふんだんに書かれているので、日常の場面に応用すれば、大いに役立ちそう。テレビ業界の裏話というだけでなく、実用的な知恵の詰まった、一般人にもけっこう使える本だと思った。
タグ:高橋弘樹
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肩胛骨は翼のなごり [児童書]


肩胛骨は翼のなごり (創元推理文庫)

肩胛骨は翼のなごり (創元推理文庫)

  • 作者: デイヴィッド アーモンド
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2009/01/22
  • メディア: 文庫



 新しい土地に引っ越してきた少年マイケルは、古いガレージの奥に奇妙な存在を見つける。真っ白な顔にズタ袋のような黒いスーツを着た男。体じゅうほこりやアオバエにまみれている……。病弱な雰囲気の彼を、マイケルは手助けし始める。そして、ふたりが交流をもつうちに、不思議な体験をすることになる。

 少年の不思議な体験を描いたファンタジー小説。

 「ET」でもなんでも、こういう異質な存在との交流を描いた作品にはひきつけられる。

 この種の作品では、たいてい友人同士となる二人は、それぞれにどこか欠けている部分を持っていて、お互いに手助けしあうことになっている。お互いに協力し合ううちに、友情がはぐくまれていって、主人公は友人との交流を通じて、新たな世界観を得ながら大きく成長していく。

 本作品にもそうしたモチーフが現れていて、主人公のマイケルはガレージの男を助けるために、食料を運んだり、病気を治そうとしたりする。ガレージの男もまた、マイケルのある願いをかなえる重要な役割を果たす。最初はお互いに敬遠していたふたりであったが、協力していくうちに、次第にお互いになくてはならない存在になっていくのだ。

 非常に簡潔な文体なのに、イメージが豊かに伝わってきて見事。派手な展開があるわけではないけれど、読んでいて、不思議な体験をしたなあと思わせてくれる本だった。

 肩胛骨は翼のなごり。文中にも幾度か出てくる言葉だけれども、いいタイトルだなあと思った。
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物語フランス革命 [世界史]


物語 フランス革命―バスチーユ陥落からナポレオン戴冠まで (中公新書)

物語 フランス革命―バスチーユ陥落からナポレオン戴冠まで (中公新書)

  • 作者: 安達 正勝
  • 出版社/メーカー: 中央公論新社
  • 発売日: 2008/09
  • メディア: 新書



 1789年、フランスでは革命への気運が高まっていた。

 土地を貴族・教会に握られ、関税によって自由な流通も阻害され、不満を持っていた富裕市民たち。生まれによる身分差別によって、貴族をうらんでいた中産市民たち。法外な年貢を巻き上げられ、貴族領主を憎む農民たち。王権の絶対的な力におびやかされていた貴族たち。それぞれの立場によって思いは違っていたが、国中で様々な不満が煮えたぎっていた。

 国王であるルイ16世自身も、改革的なところがあった。当時、フランスの国家財政はひっ迫していて、このままでは経済破たんすることは目に見えていた。財政改革が必要な状態で、たとえば、税金の支払いを免除されていた貴族から徴税する仕組みなどを作りたかった。

 フランスの国全体が、変化に向けて動き出し、三部会を開くなどして新たな政治体制の実現に向けて模索を開始。「国民、国王、国法!」をスローガンに、国民と国王が一丸となっての新たな国づくりが試みられた。立憲君主国へと生まれ変わることを目標に、平和裏のうちに改革が終わるはずであった……。

 だが、そんな計画にも、やがてひずみが生まれ始める。民衆同士が戦闘が繰り広げるなど、激しい様相を帯びるようになってしまう。その後、恐怖政治が始まったりもして、フランス革命は数多くの死者を生み出す悲劇の革命へと変貌を遂げる。また、革命騒動は国内にもとどまらなかった。フランスは革命を恐れる諸外国の敵とみなされて、全ヨーロッパを相手に回しての戦争状態へと突入することに――。

 本書は、こうしたフランス革命のいきさつを描きだした本。フランス革命がどのように始まって、どのように展開していったのか、その一連の流れがよく分かる内容。ときには、登場人物たちのセリフを交えながら書かれてあって、小説を読むような生き生きとした臨場感も感じられる。

 ルイ16世、マリー・アントワネット、ダントン、ロベスピエール、ナポレオンなど、主要な人物の評伝も丁寧に描き出されているし、革命を理想として戦闘行為に加わった女性テロワーニュ・ド・メリクール、フランス革命の指導者マラーを暗殺した女性シャルロット・コルデ、ルイ16世の死刑執行を務めた執行人サンソン、マリー・アントワネットの愛人とされるアクセル・フェルセンなど、あまり知られていないような人物も数多く登場して、興味深いエピソードが満載。こういう人々のうねりが歴史を作っていったんだなあということが見えてきて面白い。

 そもそも、革命が平和的に終わらず、方向性が変わることとなったきっかけとなったのは、ルイ16世の心変わりなんだそうだ。

 国王の思いは、揺れ動いていた……。革命が進行するにつれて権限が縮小されていくことへのいら立ち。王家としての伝統への誇り。革命をこれ以上進めることは許されないと感じ始めた王様は、外国への逃亡を図ろうとする。しかし、脱出計画が発覚して、逃亡に失敗すると、民衆は国王の裏切りに失望。ルイ16世を敵とみなし、「王政を廃止せよ!」との声が上がり始める。

 革命騒ぎがどんどんエスカレートしていく様子がまざまざと描かれていて壮絶。こんな風に進展していったのかということが目に見えるよう。

 フランス革命が始まる発端のところから、ナポレオンの戴冠まで描かれている。読んでいると、その後の世界史の流れを変えてしまった壮大な革命であることが伝わってくる。国民主権や法の前の平等といった、今では当たり前となっているような概念も、この時代に作られたのだ。後世の国々に圧倒的な影響を与え、日本の憲法にもフランス革命の精神は脈々と受けつがれている。

 世界の流れを変えた革命の動きが分かるとともに、人々がどんな思いを持っていたのか、いろいろな人間ドラマまで知ることのできる興味深い一冊だった。
タグ:安達正勝
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なぜ、あなたの話はつまらないのか? [実用]


なぜ、あなたの話はつまらないのか?

なぜ、あなたの話はつまらないのか?

  • 作者: 美濃部 達宏
  • 出版社/メーカー: あさ出版
  • 発売日: 2014/04/24
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)



 テレビ番組でも映画でも本でも、「面白い」という言い方をよくしてしまうけれども、この「面白い」の正体はいったい何なのだろう? 具体的にどのようなものを「面白い」と言えるのだろう? 逆に「つまらない」話には何か理由があるのだろうか?

 本書は、この「面白い」「つまらない」の正体に迫った一冊である。

 筆者は、テレビ番組の構成作家。様々なテレビ番組を手がけたり、諸先輩から学ぶうちに、「面白さ」の秘密が身についていったそう。本書では、筆者が学び取った「面白さ」のノウハウを伝授してくれている。

 「面白い」「つまらない」を考えるときには、大事な二つの要素があるんだそうだ。それは、「話題」が適切かどうかと、話の「構成」がうまいかどうか。

 いくら楽しそうに語っていても、「内輪話」だったり「自慢話」ばかりでは、聞いているほうも退屈してしまう。その場に合った「話題」を取り上げる必要があって、誰でも共感できるような「話題」を探すことが重要になってくる。

 また、せっかく面白い「話題」を取り上げていても、話の組み立てが悪いと聞いているほうもピンとこなかったりする。先にオチを話してしまったり、ダラダラと話したりしては、話も盛り上がらなくなってしまう。話を効果的に伝えるための「構成」が重要なのだ。

 テレビのトーク番組などでも、この「話題」と「構成」という考えは常識になっていて、人気のあるテレビのトーク番組を見ると、このノウハウが生かされているのだとか。たとえば、「家族」や「グルメ」の話は、誰でも共感できるので頻繁に取り上げられているし、人気芸人などがトークをするときには、どうやって話を盛り上げようかと、さまざまなテクニックが試みられている。何気なく見ているテレビ番組の裏側に、こんな技法が隠れていたのかと、驚かされる内容だ。
 
 この本で明かされている「面白い」の秘密は、テレビ番組に限らず、小説や映画、漫画、日常会話など、あらゆる「面白さ」に対応しているといえるだろう。いろいろな「面白い」コンテンツに、本書の法則を当てはめてみると、たしかにその通りだなあというのが散見されて、腑に落ちた。

 具体的にどんな「話題」が適切なのか、どんなふうに「構成」すればいいのか、細かく具体例が書かれてあって、とても参考になる本。

 タイトルに偽りなし。自分の話がなぜつまらないのかがよく分かる、痛い一冊だった……。
タグ:美濃部達宏
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わたしはマララ [国際]


わたしはマララ: 教育のために立ち上がり、タリバンに撃たれた少女

わたしはマララ: 教育のために立ち上がり、タリバンに撃たれた少女

  • 作者: マララ・ユスフザイ
  • 出版社/メーカー: 学研マーケティング
  • 発売日: 2013/12/03
  • メディア: ハードカバー



 2012年10月、パキスタンのスワート渓谷で、15歳の少女マララ・ユスフザイは学校から帰宅するためスクールバスに乗っていたところ、バスに近づいてきたタリバンの男に銃撃されてしまう。左側頭部を撃たれて意識不明の重態となったが、どうにか奇跡的に命を取りとめることができた――。重傷の身から回復したマララは、その後、国連本部でスピーチを行うことになる。子どもと女性の権利と教育の大切さをうたったその演説は、世界中に影響を与えることになった。

 本書は、タリバンの銃撃を受けた少女、マララの手による手記。まだ若いというのに自伝とはどういうことかと思ったが、読んでみたら、15年の歳月が実に波乱に満ちたものになっていて、なるほど大いに引き込まれる内容だった。

 学校を経営する父親のもとで生まれたマララは、勉強が得意で学校に通うことが大好きな少女。アメリカのドラマや映画が大好きという、自由な環境のもとで育った。だが、パキスタンの政情不安がやがてスワートにも及ぶようになると、マララの人生は一変してしまう……。

 パキスタンといえば、アフガニスタンと国境を接する国。911テロの首謀者ウサマ・ビンラディンを捕えるため、当時、アメリカ軍が、このアフガニスタンを攻撃していた。だが、空爆を逃れたアルカイダのメンバーが、パキスタンに隠れ住むようになったという話が出てくると、今度はアメリカ軍は、無人機を使ってパキスタンの一部に空爆を加えるようになる。この攻撃で、アルカイダだけでなく多数の民間人が犠牲となって、大勢の死者が出ることとなってしまった。

 これに対して、武装勢力は復讐を宣言する。アメリカやアメリカに協力するパキスタン政府を敵対視して、武力衝突に及んだり、自爆テロなどを行ったりするようになった。

 タリバンと呼ばれる勢力も現れた。厳格な規律を人々に求め、映画・テレビ・ダンス・歌などの娯楽は禁じられるようになる。女性の生活にも様々な制約が加えられるようになったそう。タリバンは、政府軍としばしば激しい戦闘行為を繰り広げ、パキスタン国内はあっという間に大混乱に陥る。マララの住むスワートにもタリバンの影響力は及び、今までの環境はがらりと変わってしまったのだった。

 マララは学校に通っていた幼い少女だったが、国内の政情不安に否応なしに巻き込まれていく。その半生を振り返るうちに、パキスタンの政治情勢が見えてくる。

 本書はマララが社会に立ち向かっていく話でもある。マララは幼いながらも、国家の行く末を憂い、何か社会に訴えかける手段はないかと考える。そして、ジャーナリストのインタビューに答えるようになったり、自らブログなどで情報発信をしていくようになる。国の現状や教育の大切さについて、切々と訴えていく。その思いはやがて世界中に広まり、小さなマザーテレサのように受け入れられるようにもなる。

 とくに自らの信念を熱く語るマララの国連スピーチはとても力強く、小さな少女のものとは思えないほど迫力があった。

 幼いマララの活躍を描いた自伝であるが、パキスタン周辺をめぐる国際情勢も分かってたいへん勉強になる本。武装勢力の行動も激しいけれど、タリバンが生まれたのももとをたどればアメリカとソ連の冷戦構造にあったといえる。列強の介入が尾を引いて、政情不安が続いているのであって、罪深いことするよなあと思った。

 イスラム教徒の生活についても詳しく書かれていて、イスラム教徒といってもたくさんの宗派があって、各宗派によってだいぶ規律に違いがあるというところも興味深かった。
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資本主義の終焉と歴史の危機 [経済]


資本主義の終焉と歴史の危機 (集英社新書)

資本主義の終焉と歴史の危機 (集英社新書)

  • 作者: 水野 和夫
  • 出版社/メーカー: 集英社
  • 発売日: 2014/03/14
  • メディア: 新書



 16世紀以来、世界の基準になってきた資本主義であるが、もうそろそろ終焉に近づいているのではないかということが書かれている本。

 資本主義終焉の原因として筆者が指摘するのが、グローバリズムだ。

 企業が利益を上げて、国家が経済の成長を遂げるためには、資源を外国から安く調達して、商品を高く売る市場を開拓することが重要になる。周辺国から安く資源を買い叩くことができれば、安価なコストで製品を作り出すことができて、利潤を多く上げることができるし、商品を高く売ることのできる市場がたくさんあれば、やはり利益を伸ばすことができるのだ。

 だが、グローバリズムによって新興国が台頭し、どの国も豊かさを求めてこぞって近代化するようになった現代において、資源の価格は高騰し、外国から安価なコストで買い叩くということはできなくなってきた。また、モノやサービスを売るための市場も開拓し尽くされているといえる。

 先進国が豊かさを享受できたのも今は昔。一億総中流という形で、安定した成長を遂げることができたのも、昔は発展途上国に「貧困」を押し付けることができたから。経済格差が国境を超えていたから、先進国の人々は豊かに暮らすことができた。

 だが、今となってはそうはいかない。グローバル化によって、国境を超えた経済格差がなくなると、今度は経済格差を国内に取り込まざるを得なくなった。先進国であっても「富裕層」と「貧困」という格差が生じるようになりつつあるのだ。

 世界中のフロンティアは掘りつくされて、経済成長は難しくなって、国内の経済格差が広まっていく……。本書の5分の4くらいは、こういう身もふたもないことがえんえんと書かれていて、読んでいて暗澹たる気分になる本。いったい世界はどうなってしまうんだろうと、おろおろしてしまう。

 だが、最後の最後に、希望の光がかすかに見えてくる。筆者なりの経済成長に頼らない、資本主義に代わるシステムがないかという模索がはじまるのだ。

 まあ、昔みたいな右肩上がりの成長は難しいよねというのはなんとなく感じてはいたが、本書はそのあたりを細かく解説していて、勉強になった。これからどんな世界になっていくんだろうと考えた時に、実は日本は低成長を真っ先に続けてきた国として、世界の手本になりうるということも書かれていて、興味深かった。
タグ:水野和夫
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