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一神教と国家 [人文]


一神教と国家 イスラーム、キリスト教、ユダヤ教 (集英社新書)

一神教と国家 イスラーム、キリスト教、ユダヤ教 (集英社新書)

  • 作者: 内田 樹
  • 出版社/メーカー: 集英社
  • 発売日: 2014/02/14
  • メディア: 新書



 世界に広がるイスラム世界をテーマに、イスラム学者の中田考と思想家の内田樹が語り合った対談本。

 現代はグローバル化の時代といわれている。全世界の市場を開放して、アメリカ型の価値観を広めて、世界中に似たような政治体制を確立して、英語を公用語にして、みんなが同じ商品を買って、同じようなものを食べてという、世界のフラット化が到来しようとしている。

 日本も含めて世界中の国々がこのグローバルの波に乗っかろうとしているのだけれど、貧富の差の拡大、環境や文化の破壊など、問題点があることも指摘されている。

 アメリカを先陣にグローバル化が推進される中で、この流れを押しとどめようという勢力も存在しているという。それが、本書のテーマでもあるイスラム世界。

 イスラムの古くからの慣習や信仰は、アメリカ的な世界観とは異質なものだ。こうした文化的な価値観の違いは世界のあちこちで衝突を生み出している。世界中で起きている紛争のいくつかは、こうしたグローバリズムとイスラム世界との衝突が原因になっているんじゃないかというのが筆者らの意見。

 本書を読むと、世界で起きている大きな潮流が見えてきて面白い。アメリカを中心とするグローバル勢力とイスラム世界との文明の衝突。世界で点在する出来事がひとつながりに見えてくるような感覚がしてくる。

 グローバル時代というけれども、その先陣を切っているアメリカ自身が二極化して苦しんでいたりするので、何が正しいのやら。もともと親米だった国がイスラムの原点に回帰する例なども出てきて、ますます世界は混迷を深めている。

 一つの価値観だけじゃなくて、世界には多様な価値観があることに気づかせてくれる本。世界を俯瞰することのできるダイナミックな一冊で、面白かった。
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サイバー・クライム [犯罪]


サイバー・クライム

サイバー・クライム

  • 作者: ジョセフ・メン
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2011/10/13
  • メディア: 単行本



 コスタリカに拠点を置くブックメーカー(ギャンブル運営会社)、ベットクリス社のもとに一通のメールが届く。それは、4万ドルの支払いを求める脅迫メール。要求に従わなければ、会社のサイトを攻撃して、アクセス不能にしてしまうというものだった。

 これはDDoS攻撃と呼ばれるサイバー犯罪の手口で、コンピュータウィルスによって乗っ取られた世界中に点在する無数のコンピュータ(ボット)から、いっせいに特定のサイトにアクセスして、サイトをパンクさせてしまうというやり方だ。

 ベットクリス社は、オンラインギャンブルも扱っていて、短時間サイトが閉鎖するだけでも、莫大な額の損害が生じ、顧客の信頼は失墜してしまう。DDoS攻撃は、ブックメーカーの弱みを突いた、巧妙な犯行といえる。

 この困難な事態の解決に向けて、白羽の矢が立てられたのが、ネットセキュリティの専門家バーレット・ライアンだった。バーレットは、ベットクリス社のCEOからの依頼を受けて、脅迫者の攻撃を防止するための計画を立て、激しい攻防を繰り広げる。そして、脅迫者の正体を突き止めようと、手がかりを探り始める――。

 インターネットの世界を舞台に、サイバー犯罪を繰り返す犯罪者らと、彼らの正体を突き止めようとする捜査官たちとの戦いを描いたノンフィクション。映画のようなスリリングな展開に、目が離せなくなるような内容の本だ。

 本書を読むと、サイバー犯罪を取り締まることがいかに難しいかがよく分かる。

 犯罪者の正体を突き止めるためのルートは2つあるだろう。ひとつは、ネット上のアクセスをたどっていって、どうにか脅迫者のIPアドレスを突き止めていくやり方。もうひとつは、脅迫者宛に振り込まれた金のルートをたどっていくやり方。

 だが、世界中の捜査機関を見渡してみても、最先端のネットセキュリティには疎いことが多く、犯罪者の使う複雑な手口に対応することはなかなか難しい。また、たとえ犯罪者の居所が分かったとしても、海外にいるケースが多く、外国の捜査機関の協力を仰がなければならない。しかし、外国の機関と早急に連携を図るというのは、なかなかできるものでもないのだ。

 本書に出てくるネット・セキュリティの専門家バーレットと、イギリス人捜査官アンディは、こうしたネット犯罪の捜査につきまとう困難に挑戦した勇敢な人たち。じりじりと犯罪者を追い詰め、コスタリカ、アメリカ、イギリス、ラトビア、ロシアと世界を股にかけて、犯人を追いかけていく。徐々に犯人の正体が明るみになっていくところなどは、スリラー小説を読むようなドキドキ感があって面白い。

 最先端の捜査の実情が分かって興味深いとともに、サイバー犯罪の流行についてざっと分かるところもよかった。犯罪者の手口は年々巧妙化しているようで、スパムメールにはじまり、DDoS攻撃、個人情報を抜き取る方法、ウィルスを使った政府施設の破壊など、徐々に変化しているようだ。

 のんきにネットサーフィンなどしていたが、知らないところで見えない戦いが繰り広げられていたんだなあと驚嘆。ネット社会の裏事情についていろいろ分かって、非常にためになる一冊だった。
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トム・ゴードンに恋した少女 [ホラー]


トム・ゴードンに恋した少女 (新潮文庫)

トム・ゴードンに恋した少女 (新潮文庫)

  • 作者: スティーヴン キング
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2007/05/29
  • メディア: 文庫



 アメリカのメイン州に住む9歳の少女トリシア・マクファーランドは、母親と兄と一緒に恒例の週末旅行に出かけることになった。行き先は、アパラチア自然公園という森林地域。普通なら楽しいはずの家族旅行だが、いつものように母親と兄は喧嘩ばかり。いがみ合う二人を尻目に、用を足そうと、トリシアはひとり遊歩道から外れることに。だが、森の中に分け入るうちに、トリシアには帰り道が分からなくなってしまい……。

 小さな少女が巨大な森の中で迷子になってしまうという、サバイバルもの。本当にそれだけのシンプルな話なのに、非常に面白い。やはり、キングの表現力が圧倒的にうまいからであろう。

 子供が主人公の作品だが、スティーヴン・キングが書いているだけあって、容赦がない。森の虫や生き物、自然の脅威、飢えと渇き、行き先の分からない不安と絶望がトリシアを襲う。読んでいて、主人公と一緒に森の中をさまよっているような気分になってきて、本当にハラハラさせられる作品だ。

 トリシアは、川をたどっていけば海に出られるんじゃないかと考えるが、予想外の障害がつぎつぎ現れて、なかなか森から脱出できない。こういう主人公がじわじわと追い詰められていくところは、やはりキング・ホラーだなあと思う。

 いつものように、人物描写が丁寧なところもすばらしい。両親の離婚、引っ越しして学校になじめない兄の怒り、母親と兄の間でやきもきするトリシア。主人公がつらい現実を生きる姿には共感させられるし、そんな主人公が森の中でさらなる窮地に陥るというので、思わず応援してしまう。

 トリシアを元気づけるのは、ウォークマンから聞こえてくる野球の試合。トリシアが憧れるボストン・レッドソックスの投手、トム・ゴードンの活躍ぶりだった。

 最初は一種の現実逃避ともいえるものだったのが、いつしかトリシアは、単なる想像を超えて、トム・ゴードンが目の前にいるかのような、一緒に会話をしているような幻影を見る。そして、危機的状況に陥った時に、トム・ゴードンが道筋を教えてくれるのだった。トム・ゴードンの存在が、本書に単なるサバイバルものではない、不思議な幻想的な雰囲気をもたらしていて、いかにもキングらしい作品になっている。

 キング曰く「世界には歯があって、油断していると噛みつかれる」。キングの小説は、主人公が突然サバイバル状態に置かれてしまうけっこう悲惨な話が多いけれど、本当に誰しも、いつ何時同じような目に合わないとも限らない。思わぬ形で生きるか死ぬかの世界に置かれてしまった少女のたくましさに、思わず感動してしまった。
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未来の二つの顔 [SF(外国)]


未来の二つの顔 (創元SF文庫)

未来の二つの顔 (創元SF文庫)

  • 作者: ジェイムズ・P・ホーガン
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 1994/11
  • メディア: 文庫



 SFの映画や小説には、よくコンピュータの反乱の話が出てくる。

 最初は幼稚な行動しか取らなかったコンピュータが、次第に学習能力を発揮。恐ろしいスピードで進歩し、とうとう人間の能力を凌駕してしまう。そして、人間を支配下に置いたり、絶滅させたりするために、攻撃を始めてくるというホラーストーリーだ。

 映画の「ターミネーター」や「アイ・ロボット」などは有名だし、最近では「ロボポカリプス」という小説が、このテーマを扱っていた。テクノロジーの進歩に対する憧れと同時に、人間よりも進歩した存在が生まれてしまうことに対する恐怖。アメリカではこの種の話のことを、メリー・シェリーの古典小説のタイトルにちなんで、フランケンシュタイン・コンプレックスと呼んでいるそうだ。

 でも、こうした映画や小説を読んでもいまいちよく分からないところもある。なんでそんなにやっきになって、コンピュータが人類の滅亡を図ろうとするのか? 人間を絶滅させて、どんな社会を作ろうとしているのか? 彼らにとってはちっぽけな存在にすぎないはずの人間をちまちまと殺して何の意味があるのか? 

 話を盛り上げるために、無理やりな動機を持ってきている話もあったりして、どうにも納得できないことが多かったのだが、J・P・ホーガンという作家の「未来の二つの顔」は、その辺りの部分を詳細に描いていて、興味深かった。コンピュータが進歩したらどんなことが起こりうるのかを、かなり説得的に論じている。

 物語は、コンピュータ研究者たちの疑問から始まっている。もしコンピュータがこのまま進歩を遂げ、意識を持つようになって、自らが合理的な存在であることを自覚し、生存本能のようなものが生まれたら? コンピュータを妨害する行為があった場合に、コンピュータはこれに対して防衛して、人間を襲うだろうか? 人間は最悪の事態が起きた場合に、コンピュータの暴走を食い止めることができるだろうか?

 実際にコンピュータが実用化されてから、このような事態が生じたのでは、収拾がつかなくなってしまう。そこで、研究者たちがとった方策は、地球から離れた宇宙植民地を実験場として、コンピュータの行動をシュミレートすることだった。コンピュータに意図的に生存本能を与えて、あえて攻撃を仕掛けてみて、コンピュータがどんな反応を示すのかを記録する。コンピュータの安全性を秤にかけるのだ。人類の行く末を占う、壮大な実験、「ヤヌス計画」が始まった――。

 安全圏での実験ということで、最初は地味なシュミレーションの話なのかなと思っていたが、読み進むにつれて、徐々に話がとんでもない方向へと進んでいく。用意周到に準備された計画で、あらゆる不測の事態に備えたつもりが、コンピュータが恐ろしいスピードで進歩して、人間たちの裏をかいてくる。最初は電力の供給源の争奪戦みたいな地味な戦いだったのが、だんだんと本格的な攻防戦になっていくのだ。

 読んでいて思わず、「これ、人類勝てるんだろうか?」と心配になってしまうくらい、恐ろしい強さのコンピュータ。どんどん学習して進歩する機械に、人類が追い詰められていく様子が、手に汗握るスリリングな展開。

 そして、激しい戦闘の後に待っている、あっと驚く結末。最後の最後に、コンピュータの進歩についてのひとつの答えが提示されていて、こういう風になるのかと唖然とさせられる。

 本当にこんなことが起こってもおかしくないほどリアルに描かれたコンピュータの話。全編、あまりの迫力に圧倒されてしまう。まさかこんな激しい戦闘が繰り広げられるとは思わなかった。

 話が面白いだけでなく、今後コンピュータ社会がどのような方向に進んでいくのか、未来論として読んでも面白い。中に出てくるコンピュータの進歩に関する議論などは、秀逸なノンフィクションを読むような充実した内容だった。
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「自分」の壁 [人文]


「自分」の壁 (新潮新書)

「自分」の壁 (新潮新書)

  • 作者: 養老 孟司
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2014/06/13
  • メディア: 新書



 解剖学者の養老孟司が「自分」という問題について語った本。

 「個性の発揮」とか「自己実現」とか、現代社会は「個」がおおはやりである。ビジネス書や成功本などを読んでも、「自己啓発」が、ひとつのジャンルになっているほど。個人主義の時代なのだ。

 でも、この「個」というもの。日本ではもともとそれほど大切にしてこられなかった。もともと日本はムラ社会で、「世間」のルールが重視されてきた。共同体意識の強い国だったのである。

 個人主義がはじまったのは、明治以降、西洋から「近代的自我」という考えが入ってきてからのこと。戦後になると、戦争の反省からか、ますます「自己」が大事ということになって、「世間」というものを徐々に解体する方向で進んでいった。

 それでも、「世間」の役割を会社が一部担っていたが、現代では会社のあり方も変わりつつあって、完全な個人主義の時代に入りはじめている。

 筆者は、日本人がこうして個人主義をもてはやしてきた結果、人間関係が希薄になって、個人個人がバラバラになってしまった。日本は、人間的な絆が壊れてしまった、さもしい世界になってしまったんじゃないかと述べている。その結果、様々な現代的な問題が発生しているのではないかと。

 あまり今まで意識したことはなかったが、確かに言われてみればという感じで、面白い話だった。

 一方では「自分探し」「個性の確立」というプレッシャーをかけられると同時に、他方では「絆を大切に」というプレッシャーをかけられて、矛盾するメッセージが飛び交う中を右往左往。「個人」と「共同体」の間で引き裂かれているのが、現代の日本人の姿なのかも。

 絆が大事といっても、世間が解体されて、個人個人がばらばらに生きていて、共同体に帰属しようにもどこへ行ったらいいのやら。共同体を探してあてどなくさまよわざるをえない。なんとも生きづらい世界になったものである。

 いくら「世間」は煩わしいとはいっても、どこかに帰属することで安心感を得られるのも事実であるし、意外なコストの削減にもつながるので経済的なメリットもある。失敗しても、「自己責任だ」と切り捨てるのではなくて、共同体の中でケアしていく。本書を読んで、共同体に所属することの意味は想像以上に大きいのかもしれないと感じた。

 「個」を大切にするのか、「世間」と折り合うのか、まだ明確に整理がついていないところはあるけれども、新たな視点を与えてくれたようで、面白い一冊だった。
タグ:養老孟司
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知の武装 [国際]


知の武装: 救国のインテリジェンス (新潮新書 551)

知の武装: 救国のインテリジェンス (新潮新書 551)

  • 作者: 手嶋 龍一
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2013/12/14
  • メディア: 新書



 膨大な情報の海の中から重要な情報を選び出し、そこにはどんな意味があるのかを精緻に分析する。それが、インテリジェンスの世界。

 単に珍しい情報を入手するというだけではなくて、新聞・テレビ・ネットといった公開情報からであっても、深く読み込んだり、情報を組み合わせたりすることで、新たな意味を浮かび上がらせてしまう。ありふれた情報に隠された意味を解読するプロフェッショナル。

 そんなインテリジェンスの世界に身を置いている2人、外交ジャーナリストの手嶋龍一と元外務省主任分析官の佐藤優が対談。インテリジェンスの世界を語り合ったのが、本書「知の武装」である。

 オリンピック開催、尖閣問題、スノーデン事件、TPP、北朝鮮などの時事問題を題材に、ニュースの裏に隠された意味をあぶりだしてゆく。インテリジェンスの視点から見ると、普段耳にする出来事も、マスメディアでの一般的な解説とは全く違った見かたがあることが見えてきて面白い。

 冒頭から、オリンピックというのはスポーツの祭典というだけでなく、政治的な意味合いも大きいという話が出てくる。オリンピックを成功させるためには、是が非でも地域紛争は避ける必要がある。平和の祭典というのは、象徴的な意味合いだけでなく、実際にもそのような意味がありうることが分かって、なるほどと思った。

 アメリカの権威が徐々に揺らいでいるという指摘も興味深かった。シリア問題にアメリカが右往左往するうちに、その様子を見た各国がアメリカに反旗を翻しつつある。世界情勢が徐々に不安定化しているのかもしれないそうだ。
 
 途中、北朝鮮の写真が出てきて、2人が写真から情報を読み取るくだりにもひきつけられた。普通なら見過ごしてしまうような些細な点から、重要な意味を引き出してしまうのには驚く。外交分野でのシャーロック・ホームズの手腕を見たような感じ。まさに、ありふれた情報からでも意味を引き出してしまうという、インテリジェンスのお手本といえるだろう。

 普段ニュースなどで耳にする出来事の断片が、つながっていくようで、読んでいてああそうかと腑に落ちるところがたくさんあった。膨大な知識と深みのある分析には、圧倒されてしまう。インテリジェンスの世界について知ることができるとともに、ニュースの裏側を垣間見ることもできて、かなり勉強になる一冊だった。
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キル・リスト [ミステリ(外国)]


キル・リスト (海外文学)

キル・リスト (海外文学)

  • 作者: フレデリック・フォーサイス
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA/角川書店
  • 発売日: 2014/05/29
  • メディア: 単行本



 ホワイトハウスの大統領執務室で検討されている文書「キル・リスト」。そこには、アメリカ合衆国に危険を及ぼすおそれのあるテロリストたちの名前が記されていた。対テロ当局は、このリストに載っている人物たちを、逮捕・起訴といった適正手続きを踏まずに、秘密裏に抹殺するならわしになっている。

 あるとき、このリストに新たな名前が付け加わる。その名前は「説教師」。ウェブ上で過激な主張をくり返すイスラム教徒で、彼の影響を受けて過激なテロに走る人間が後を絶たない。これ以上の被害を食い止めるべく、当局はアメリカ海兵隊所属のテロリストハンター「追跡者」に、「説教師」の暗殺指令を下す。

 スパイ小説の第一人者フレデリック・フォーサイスの最新作は、テロリストを追い詰めていく手に汗握るスリラーだ。往年の名作「ジャッカルの日」や「オデッサ・ファイル」に引けをとらない、スピード感あふれる傑作になっている。

 主人公が追いかけるのは、「説教師」と呼ばれる男。だが、その正体はようとして知れない。ウェブ上に姿をあらわしてはいるが、顔を隠しているので、琥珀色の目以外の容貌は知ることはできない。また、ウェブ上の動画から居所を突き止めようとしても、偽のIPアドレスが使われているため、たどりつくことができない。

 居所も正体もわからない相手をどうやって暗殺するのか? 「追跡者」が思わぬ方法で、突破口を開いていって、徐々に「説教師」の正体に近づいていくところが、本書の一番の見所だろう。

 世界をまたに駆けたスケールの大きな話で、舞台はアメリカから、パキスタン、ドバイ、イギリス、ソマリアと、転々とする。それぞれの国の描写が詳細に描かれていて、こんなところなのかというのが分かって面白い。

 国際謀略の世界についてもリアリティをもって描かれている。外国に潜入した諜報員は、当局からマークされて、電話を盗聴されたり、メールをモニターされたり、尾行されたりすることなどは日常茶飯事。どうやって監視の目をくぐって、目的を達成するのか。諜報部員同士で物を渡したり、情報を交換するのも、かなり複雑な手順を踏むということが書かれていて、すごい世界だなあと思った。

 無人機によるターゲットの追跡やミサイル攻撃の手順なども細かく描かれていて、普段ニュースに出てくる無人機の裏事情まで分かってしまう。

 スリリングな追跡劇が面白いのと同時に、国際謀略の現状を知ることができて、世界の裏側を覗き込んだような気分。短いのであっという間に読めてしまうけれども、膨大な取材に裏打ちされた濃密な内容で、読み終わったあとに得られるものは非常に大きかった。またこういう面白い作品を書いてほしいなあと、次回作が待ち遠しくなった。
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はじめて読む人のローマ史1200年 [世界史]


はじめて読む人のローマ史1200年(祥伝社新書)

はじめて読む人のローマ史1200年(祥伝社新書)

  • 作者: 本村 凌二
  • 出版社/メーカー: 祥伝社
  • 発売日: 2014/06/02
  • メディア: 新書



 建国神話から帝国滅亡まで、古代ローマの歴史について解説した一冊。

 ローマが王政から共和制にうつった理由、ローマ軍の強さの秘密、キリスト教が弾圧されたわけ、ローマ帝国滅亡の原因などなど、気になる疑問に答えてくれる。

 古代ローマなどというと、「ベン・ハー」「グラディエーター」「スパルタカス」など、映画からのイメージが強かったのだけれど、本書を読んで新たな発見がたくさんあった。実は、実際の戦場で戦車が使われることはほとんどなかったという話や、自由民なのに剣闘士の試合に出場した人も大勢いたという話など、知らなかった話も多くて、ああそうだったのかと驚かされる。

 「グラディエーター」という映画を観ていたら、皇帝が剣闘士と闘技場で対決する場面が出てきて、あれこそフィクションじゃないかと思っていたが、本書を読んで実話だと知ってびっくり。実際にコンモドゥス皇帝は剣闘士として戦っていたのだそうだ……。

 古代ローマ帝国の政治形態の話からはじまって、経済情勢、軍隊の規律、奴隷制度の実態、キリスト教との関係、権力をめぐる闘争など、古代ローマ全般についてこれ一冊で大まかに分かってしまう内容。

 カエサルやネロ帝、スキピオなど有名人も多数登場して、それぞれどんなキャラクターだったのかが語られる。人物の人となりがわかるようなエピソードもちりばめられていて、この人はこんな人だったのかとか、この人とこの人は仲が悪かったのかとか、人間味があって面白い。

 これからローマ関連の本を読んだり、映画を観たりしたときには、この本は重宝しそうだ。本書を読んで、古代ローマの全体像が見えてきて、もやもやしていたものがすっきり分かったのがよかった。
タグ:本村凌二
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イン・ザ・ヘブン [SF(日本)]


イン・ザ・ヘブン

イン・ザ・ヘブン

  • 作者: 新井 素子
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2013/10/31
  • メディア: 単行本



 SF作家、新井素子の短編集。

 天国論を展開した表題作(「イン・ザ・ヘブン」)、輪廻転生をめぐる大騒動(「つつがなきよう」)、なんでも願いがかなってしまうドロップの物語(「あけみちゃん」)、細菌戦争が引き起こす人類の終末(「ノックの音が」)、人類を懲らしめようとする神様と人々との対決(「ゲーム」)などなど、楽しい話が満載。

 星新一を敬愛している作家ということで、まさに星新一の作品を想起させるような話ばかり。現実味と空想との間のはざまにある世界。からっとした爽やかさ。空想科学な世界が広がっていて、そのポップな文体とクールな雰囲気に完全に魅了されてしまった。

 「もしも~だったら?」というところから出発して、理詰めで話が転がっていく面白さ。「もしも神様が怒ったら?」「もしも天国があったら?」「もしも人工知能が発達したら?」という疑問から、「どうなる? どうなる?」を繰り返していくうちに、どんどんと話が意外な方向に話が転がっていって、とうとう思わぬところに行きついてしまう驚き。

 壮大なほら話として読んでも楽しいし、意外にも社会についてあれこれ考えさせられたり、今まで当たり前と思っていた価値観ががらりと崩れてしまったり。人類の文明についてのパロディになっている。これぞまさにSF小説の醍醐味といえるだろう。

 こういう本を読むと、頭のネジが外れるというか、固定観念を外してくれるようなところがあって、頭がすっきりしていい。こんな世界の見方もあるんだよと教えてくれる感じ。読後感のすがすがしい一冊だった。
タグ:新井素子
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無伴奏ソナタ [SF(外国)]


無伴奏ソナタ〔新訳版〕 (ハヤカワ文庫 SF カ 1-26)

無伴奏ソナタ〔新訳版〕 (ハヤカワ文庫 SF カ 1-26)

  • 作者: オースン・スコット・カード
  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2014/01/24
  • メディア: 文庫



 オースン・スコット・カードというSF作家の短編集。

 本格SFあり、寓話的な作品あり、ホラー風味ありと、バラエティに富んだ作品集なのだが、表題作の「無伴奏ソナタ」が群を抜いてよかった。

 近未来のお話。クリスチャン・ハロルドセンは、生まれながらにして音楽の才能に恵まれていた。生後6か月で、音程とリズムに関して鋭敏な感覚を示し始める。天才的な創造性を有していることも、テストで判明した。

 将来有望なクリスチャンは、国家の方針で、創造性をはぐくむために、森の一軒家に隔離されてすごすことになる。だが彼は、そこである禁止行為を犯してしまい、計り知れないほど厳しい制裁を受けることになるのだった。それは、彼の人生そのものともいえる、音楽を禁じられてしまうこと……。

 生まれたそばから区分けされ、生き方まで決められてしまう超管理社会を舞台に、音楽を奪われてしまった音楽家の人生が描かれる。

 圧倒的な才能を持った主人公なのに、音楽を奏でることができない哀しさ。禁じられた音楽に手を出してしまいそうになる誘惑。音楽をあきらめてしまうべきなのか? それとも……? クリスチャンの物語を通して、生きるということの意味を考えさせられる。

 禁じられた音楽の世界に思わず足を踏み入れてしまう、その生き様にひきつけられる。彼はたぐいまれな才能を活かすことができたのだろうか? 物語の最後に思わぬ感動が待っていた。

 未来の世界を舞台にしているが、描かれているのは人間の思いだったり、生き方だったりと、現代にも通じるような内容。SFというジャンルが、文学性を持ちうるということを、この作品は証明していると言えるだろう。

 この作家のものは初めて読んだが、とても面白い。他にも、映画にもなった「エンダーのゲーム」には、その意外な結末に驚かされたし、寓話「磁器のサラマンダ―」も、神秘的な雰囲気が素晴らしかった。
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少年弁護士セオの事件簿 [児童書]


少年弁護士セオの事件簿 (1) なぞの目撃者

少年弁護士セオの事件簿 (1) なぞの目撃者

  • 作者: ジョン グリシャム
  • 出版社/メーカー: 岩崎書店
  • 発売日: 2011/09/16
  • メディア: ハードカバー



 ストラテンバーグの町に住む13歳の少年セオ。父親は不動産専門の弁護士、母親は離婚弁護士という弁護士一家に生まれた少年。セオ自身も法律に詳しく、将来は法曹界で活躍することを夢見ていて、ときには友人たちの法律相談にのってしまうほど。メジャーリーグ観戦やコンサートの鑑賞よりも、裁判の傍聴が好きという一風変わった子供だ。

 そんなセオの住む町の裁判所で、殺人事件の公判が始まろうとしていた。それは、ピーター・ダフィーという男が妻を殺害したとして起訴された事件。宝石類が盗まれていたので、一見外部の強盗による犯行にも見えたが、犯行現場となった住宅は、富裕層が住む警備の厳重なゲーテッド・コミュニティの中にあり、外部の人間が入り込んだとは考えにくい。また、被告人ピーターは、借金に苦しんでいて、妻にかけられた100万ドルの保険金は大きな魅力でもあった。

 殺人事件の裁判に町中が騒然となる中、少年セオは、図らずもこの殺人事件の謎に巻き込まれてしまうことに……。

 少年弁護士の活躍を描く法廷ミステリー。

 作者は、リーガルスリラーの代表的作家ジョン・グリシャム。「ペリカン文書」「法律事務所」「依頼人」など、出す本出す本が売れに売れているベストセラー作家だ。そんなグリシャムがはじめて児童書に挑戦したのがこの少年弁護士シリーズなのだ。

 少年ものとはいえ、さすがはグリシャム。アメリカの法曹界について詳しく描かれている。セオの活躍を追いかけるうちに、読者はいつの間にかアメリカの法制度を勉強できるようになっている。アメリカの裁判所の中の様子、裁判の手続きの進行、弁護士たちの仕事ぶりなど、こういう風になっているのかというのが見えてくる内容。実際に、アメリカの子供たちはこの本を教材として使用しているそうだ。

 もちろん、ストーリーも映画を見ているようなテンポの良さで、ぐいぐいと引き込まれてしまう。ミステリーとしてはわりかし単純ではあったが、次々現れる問題を法律知識を使ってどう解決していくのか? セオの奮闘ぶりが存分に楽しめる。

 検事と弁護士が熾烈なバトルを繰り広げる法廷ものとしての面白さ、殺人事件の謎を解き明かすミステリーとしての面白さ、セオが友人たちの悩みを解決していく人情話としての面白さなど、グリシャム作品の面白さの要素が凝縮されたようなところがある。シリーズは続々出版されているようで、本書を読んで面白かったので、セオの次回の活躍もぜひ見てみたいと思った。
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「外食の裏側」を見抜くプロの全スキル、教えます。 [料理]


「外食の裏側」を見抜くプロの全スキル、教えます。

「外食の裏側」を見抜くプロの全スキル、教えます。

  • 作者: 河岸 宏和
  • 出版社/メーカー: 東洋経済新報社
  • 発売日: 2014/05/09
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)



 外食産業の裏側について明かした本。

 筆者は、食品業界を渡り歩き、現在は食品の製造・衛生管理の仕事をしている人。ありとあらゆる食品を扱い、料理を見ただけで、どんな食材が使われていて、どんな調味料やどんな添加物が使われているのかを見抜いてしまう食品のプロ。そんな筆者が本書で書いているのは、外食産業の実態だ。

 もちろんお店にもよりけりで、丁寧に作ったおいしい料理を提供する良質なお店もたくさんあるのだが、中には儲けを最優先にするあまりに、料理の品質をかなり犠牲にしてしまうような残念なお店も頻出しているんだそう。

 本書は、そんな残念なお店が陥りがちな商売手法と、よいお店を見抜くための様々なポイントを教えてくれる。

 筆者が問題だと感じているお店は、コスト削減を追求するあまりに、料理やサービスの質を極端に下げている店のことだが、その手法はいろいろなお店で共通しているようだ。

 合理化・効率化を目指そうと思ったら、まず真っ先に削減対象となるのは、人件費である。外食産業のコストの半分が人件費といわれているから、ここを削ることができれば、利益を生み出すことができる。腕のいい職人さんを雇うにはそれなりのお金がかかるけれども、もっと安くアルバイト店員を雇うことができれば、人件費を抑えることができるのだ。ただし、もちろん料理に手間暇かけなくなるので、料理の質は低下する。

 それから、食材もコスト削減の対象となりうる。国産の食材を使うと高いので、アメリカや中国の安い食材を使ったり、安いニセモノ商品と置き換えたり、添加物でかさ上げしたりする。これまた利益にはなるけれども、味は格段に落ちてしまう。

 本書にはこうした利益優先型のお店の例がたくさん出てきて、どんな食材を使っているのかとか、流通ルートとか、どんな料理方法で作られているのかとか、お店の舞台裏が見えてくる内容。外食産業の様々なビジネス上のカラクリがわかって面白い。

 よいお店を見抜くポイントも書かれていて便利でもある。「お寿司屋に入ったら「イカ」を見ろ」「餃子は店で包んでいるお店がおいしい」「焼き鳥は「ねぎま」のある店で食べる」など、気をつけたいポイントが満載。「これは知らなかった~」ということばかりで、本当に勉強になった。おすすめのチェーン店のリストまで乗っていて、非常にお得。

 あまりグルメでないせいか、これまでジャンクフードもおいしく食べてしまっていたが、本書を読んで反省……。やはり安いものにはそれなりの理由があるのだ。もっと、食べるものに注意しないといかんな~と、あらたに気づかされる面白い一冊だった。
タグ:河岸宏和
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イベリコ豚を買いに [料理]


イベリコ豚を買いに

イベリコ豚を買いに

  • 作者: 野地 秩嘉
  • 出版社/メーカー: 小学館
  • 発売日: 2014/03/31
  • メディア: 単行本



 スペインのイベリア半島で育てられている豚、イベリコ豚。そのお肉は、鮮やかなバラ色をしており、加熱しても白くならない。ドングリを食べて育つ豚で、お肉をかみしめればかみしめるほど、ナッツの香りが口の中に広がる。スペイン料理には欠かせない極上の素材……。

 本書は、このイベリコ豚について、筆者がスペインにまで取材して、そのおいしさの秘密に迫ったノンフィクション。イベリコ豚にまつわる様々な謎を解き明かすとともに、イベリコ豚についての多くの誤解をといていく。

 とくに興味深いのは、単に業者にインタビューするだけでなく、筆者自らスペインで豚を買いつけて、日本で販売までしているところ。筆者渾身の体験レポートになっていて、すごい行動力だなあと驚いた。

 何でそこまでするのかは、長い経緯があるのだが、筆者自らの実体験が書かれているので、非常に迫力がある。筆者の足跡をたどるうちに、読者はいつの間にやら、イベリコ豚の放牧される様子、屠殺の様子、精肉の技術、日本への販売ルート、商品化の難しさなどを知るようになる。

 単にイベリコ豚のおいしさを紹介しているだけでなくて、食肉業界全体を俯瞰して、食品業界の裏事情が垣間見えてくるところが一番面白かった。

 肉屋などについて、街でよく見かけても、今までたいして深く考えもしなかったけれど、肉を売るのも意外とたいへんなんだなあということが分かってくる。他社との競争が激しかったり、安い価格競争にさらされたり、在庫リスクがあったり、商品開発を工夫したり……。知られざる苦労があるのだ。

 イベリコ豚の話からはじまって、ビジネスの裏事情にまで話が及ぶ面白さ。イベリコ豚に限らず、食品業界全般について、いろいろ知ることができてためなる一冊。これから肉を食べるときには、まずこの本のことを思い出してしまいそうだ。
タグ:野地秩嘉
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変人偏屈列伝 [漫画]


変人偏屈列伝 (集英社文庫―コミック版)

変人偏屈列伝 (集英社文庫―コミック版)

  • 作者: 荒木 飛呂彦
  • 出版社/メーカー: 集英社
  • 発売日: 2012/04/18
  • メディア: 文庫



 世界には想像を超えた異様な人生を送った変人偏屈たちが存在する。本書は、そんな変人偏屈たちのエピソードをまとめた伝記集。

 原作は「ジョジョの奇妙な冒険」でおなじみの漫画家の荒木飛呂彦。独自の選考基準で世界中から常識を外れた人生を送った人々を選び出し、その人生を物語の形にまとめている。うち2作の作画を荒木飛呂彦が行い、残りはアシスタントの人が描いている。

 こんな変わった人生を送った人がいたのかと、純粋に伝記ものとして興味深い漫画。紹介されているのは、メジャーリーガーのタイ・カップ、興行師の原芳夫、腸チフスの料理人メアリー、ウィンチェスター夫人、コリヤー兄弟、ニコラ・テスラの全6話。知っていたのは、ニコラ・テスラぐらいだったので、彼らの壮絶な生き様を読んで、思わずのけぞってしまった。

 とくに面白かったのは、コリヤー兄弟の話。法律家と技師という仕事を持っていた兄弟なのに、なぜか突然屋敷の中に引きこもりはじめて、外部との接触を拒み、外の人間にまったく顔を合わせないようになってしまう。おまけに屋敷への侵入を警戒して、家中にトラップを仕掛けて、外部から入ってきた者は危険な罠にかかって命を脅かされる。一体なんでこんなに極端に引きこもり始めたのだろうという謎に魅せられてしまう。

 荒木飛呂彦が作画を担当しているウィンチェスター夫人の話も不思議である。ウィンチェスター夫人は、有名なウィンチェスター・ライフルを作った会社の跡取り息子と結婚して、夫の死後、その莫大な遺産を受け継いだ大富豪。彼女はその潤沢な資産を用いて、なぜか生涯をかけてひたすら自分の館を増築し続けたという……。

 実話なので、元になっている話が面白いというのもあるだが、何より荒木飛呂彦のストーリーの運び方が抜群にうまい。不気味な謎めいた雰囲気がかもし出されているし、迫力のある対決と息詰まるサスペンスには手に汗握る。実話が元になっていても、こんなに迫力が出るのかと、荒木飛呂彦のサスペンス演出のうまさに、あらためて驚嘆させられた。

 誰でも多かれ少なかれ変わったところはあって、普通の人ってなんだろうと思ったりもするけれど、本書に出てくるのは飛びぬけた変人偏屈たち。その壮絶な生き様にはひきつけられたし、世界を変えるような偉人というのは、こういうパワーを持ったつきぬけた変人偏屈なのかもしれないなあと、いろいろ考えさせられた。
タグ:荒木飛呂彦
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