So-net無料ブログ作成

非常識な成功法則 [人文]


非常識な成功法則【新装版】

非常識な成功法則【新装版】

  • 作者: 神田昌典
  • 出版社/メーカー: フォレスト出版
  • 発売日: 2011/10/22
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)



 人生の目標を達成するための方法について書かれた本だが、一風変わっている。

 巷で見かけるビジネス書でよくあるのは、成功者のサクセスストーリーを語って、その成功への道筋を法則として導き出そうというようなものである。だが、その成功者が成功したのは、たまたまその時代にその環境にいたからだったり、もともと持ち合わせている生まれ持った才能が原因であったりする。

 ある人が成功したからといって、そもそも成功の原因が明確でないので、簡単に法則化できるものでもない。単純な作業マニュアルのようなものであれば、再現可能かもしれないけれど、人生をかけたようなロングスパンでの成功について、法則化して同じように再現することは難しいだろう。

 だから、自己啓発本のたぐいは読んでいて腑に落ちないことも多いのだが、本書に書かれている成功法則は、上記のようなものとはアプローチが異なっている。しかもかなりぶっ飛んだ予想外のものであったので、読んでみてちょっとびっくりした。

 それは、自分のかなえたい夢なり目標なりをただ紙に書いて、ときどき眺めるというもの。紙に書いて、目標を可視化してみる。すると脳の潜在意識が働きだして、勝手に目的達成に必要な情報を集め始める。そして、いつの間にやら自分の立てた夢がかなってしまうというのだ。

 「ホントかなあ?」と半信半疑になってしまうが、でも、ただ紙に目標を書いただけで夢がかなってしまうのであれば、こんなにラッキーなことはない。そもそも元手はいらない。紙とペンさえあればいい。やってみてうまくいかなくても何にも損はないのだ。

 他人の成功を真似しようというものではなくて、あくまでも自分の置かれた環境や持っている条件に応じて、自分の力で目標を達成しようというメソッドであるので、他人の成功体験をまねるよりも理にかなっているようにも感じる。自分の夢は何だろうと考えること、夢に向かって一歩踏み出すこと。それだけでも、何もせずに足踏みを続けるよりもずっと成功への可能性を広げてくれる。

 科学的な根拠があるわけでもないし、やってみないと分からないたぐいの内容なのだか、夢に向かうきっかけを与えてくれる、楽しい気分にさせてくれる本ではある。読み終わって、さっそくガサゴソと机をあさって、紙とペンを探してしまった。
タグ:神田昌典

11/22/63 [SF(外国)]


11/22/63 上

11/22/63 上

  • 作者: スティーヴン キング
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2013/09/13
  • メディア: 単行本



 高校教師のジェイク・エピングは、友人のアルが経営する飲食店の倉庫の奥に、不思議なトンネルが存在することを知る。それは、過去の世界へと続くタイムトンネル。トンネルを抜けると、50年前の古きよき時代の光景が広がっていた。ジェイクはそのトンネルを使って、過去を改変して、様々な惨事を食い止めることができるのではないかと考え始める。そして、歴史に残る大事件、ジョン・F・ケネディ暗殺を阻止しようと計画するが……。

 スティーヴン・キングが新たに放ったタイムトラベルSFの傑作。

 タイムトンネルの存在に気づいた主人公が、タイムトラベルを試みて、過去を変えようとする様子を描いている。最初は、名もなき人々の身に起こった銃の事故だったり、一家の惨殺事件だったりといった悲劇的事件を食い止めようとするジェイク。やがて、さらに大きな事件、ケネディ暗殺の歴史を変えようとする。

 もしケネディが暗殺されなければ、アメリカはベトナム戦争での泥沼を経験せずに、死傷者を抑えることができたのではないか? 暗殺を阻止することで大勢の犠牲者を救うことができたのではないか? そんな思いから、遠大なミッションに乗り出すことに。

 暗殺犯を阻止しようと計画する一連のくだりは、スリラー小説そこのけのサスペンスに満ちた内容。暗殺犯と目される男、リー・ハーヴェイ・オズワルドの足取りを逐一調査して、会話を盗聴したり、行動を監視したり。オズワルドの行動が詳細に描き出されていて、歴史上の事件の重要人物が、生身の人間として目の前で息づいているのを見るのは不思議な感覚がしてくる。本当に暗殺計画の場に居合わせたかのような臨場感があった。

 もし過去を変えることができたら、歴史はどのように変化を遂げるのかという、タイムトラベルならではの面白さもある。北京で蝶が羽ばたくと、ニューヨークで嵐が起こる。ちょっとした変化で世界が一変してしまうという、バタフライ効果の可能性。最後には意外な結末が待っていて、因果律というものの面白さを感じさせられた。

 暗殺を阻止するサスペンスというだけでなく、ジェイクの心の旅路にもなっている。ジェイクは、過去の世界で高校の司書をしているセイディーという女性とめぐりあい、ジェイクとセイディーとの恋愛模様が描かれているのだ。時を越えたふたりの運命は、どのような結末を向かえるのだろう? その展開はひとすじなわではいかず、涙を誘うラストへとまっしぐらに突き進む。

 キングが生み出したこの本は、超大なもので、書店で見かけたときには見るからに分厚いので、読むのに及び腰になってしまったが、一旦読み始めたらスピーディで一気に読ませる内容。不思議にもあっという間に読み終えてしまった。手に汗握るサスペンスの教科書のような作品でありながら、人間模様の感動を味わうこともできる傑作。最近のキングの作品の中でも大当たりの作品だと感じた。

2001年宇宙の旅 [SF(外国)]


2001年宇宙の旅〔決定版〕

2001年宇宙の旅〔決定版〕

  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 1993/02/28
  • メディア: Kindle版



 人類初の土星への有人宇宙飛行を達成するために、地球からはるか遠くまで飛び立った宇宙船ディスカバリー号。クルーたちは長旅の間、交代で人工冬眠によって眠りの中で過ごし、宇宙船内のシステムはハル9000というコンピュータによって一手に管理されていた。デイビッド・ボーマンは、ディスカバリー号の首席キャプテンとして船に乗り組んでいたが、あるとき、このミッションには土星探査のほかに隠された秘密があることを知る。それは、人類が踏み込んだことのない未知の領域に関するものだった。

 SF作家アーサー・C・クラークが、ボーマンの経験する遥かなる旅を通して、人類の進歩と宇宙にあまねく知的生命の存在を描き出した小説。

 7部構成になっていて、第1部は、原始時代の地球が舞台で、ヒトザルが謎の直立石に遭遇するところからはじまり、その後、第2部は月面のクラビウス基地、第3部は木星と、部を追うごとに地球から離れていく。人類はテクノロジーが進歩するごとに、徐々に遠くまで足を運ぶようになるけれども、読者は主人公たちとともに、未知への探索の様子を見守ることになるのだ。

 探索と言っても、単なる惑星探査の話ではない。小説全体に、未知の石版が何度も登場し、その存在の謎が解き明かされていく話にもなっている。石版はまだ文明も形作っていないヒトザルの前に人工物として現れたり、今度は月面基地で発見されたりと、これはどうも地球外で作られたのではないかという話になる。最初は謎のように見えるこの石版だが、だんだんとその役割が明かされて、人類の進歩に大いに関係していることが分かってくる。このあたりのミステリアスな展開には大いに惹きつけられた。

 小説全体を通して、徐々に人類の進歩が描き出されているところも壮大でぞくぞくする。ヒトザルから始まった人類は、道具を操り、宇宙船を作り、コンピュータを作り、さらにこれからどこに向かって突き進んでいくのだろう? 話の終盤のほうでは、ボーマンは未知の領域へと引きずり込まれていき、読者はボーマンの冒険を通じて、人類の未来の姿を垣間見ることになる。その想像をはるかに超えた未来像には、圧倒されてしまった。

 もともと映画用に書かれた小説のようだが、キューブリックの映画版があえて説明を排して、観る者に解釈をゆだねているようなところがあるのに比べて、この小説のほうは主人公の思考なども描き出されているので、話としてより分かりやすくなっている。映画と小説と両方を比べてみると、いろいろと細かいところまで見えてきて面白い。

宇宙はなぜこのような宇宙なのか [地学]


宇宙はなぜこのような宇宙なのか――人間原理と宇宙論 (講談社現代新書)

宇宙はなぜこのような宇宙なのか――人間原理と宇宙論 (講談社現代新書)

  • 作者: 青木 薫
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2013/07/18
  • メディア: 新書



 宇宙論の分野で論争を招いている「人間原理」という考えについて解説した本。

 筆者の青木薫は、理論物理学の専門家で、外国のポピュラーサイエンス本などの翻訳をしていることで知られている。その翻訳のうまさには定評があり、本来であれば、専門的で理解が難しい科学に関する文章であっても、噛み砕くように丁寧に日本語に翻訳していて、流れるようにすらすらと読ませてしまうのだ。青木薫が翻訳している本というだけで、つい買って読んでしまったりするくらい、普段から気になっている翻訳家。

 そんな青木薫が自ら宇宙に関する本を書いたというから、迷わず読んでしまった。テーマは、「人間原理」という宇宙論に関するものだ。

 もともとほとんどよく知らないテーマだったのだが、読み進むにつれて、実に奇妙奇天烈な考えであることがだんだん分かってきて、興味をひかれて思わず読みふけってしまった。

 「人間原理」というのは、宇宙の様々な条件が、ちょうど人間が存在するのに都合のよい値で設定されていることに着目した考えのことらしい。

 宇宙は生命の存在に不可欠な条件を満たしていて、それはまるで、人間が誕生することができるように、誰かが物理定数を微調整したかのようにも思えてくる。たとえば、重力がもっと強ければ宇宙はブラックホールだらけになってしまうし、逆に弱ければ現在の宇宙に見られる様々な構造は見られなくなってしまう。宇宙はなぜこのように、人間が存在できるような条件になっているのだろう? そんな人間中心的な視点から宇宙を読み解こうとする考えが「人間原理」なのだ。

 筆者はこの「人間原理」を読み解くにあたって、古代の天文学や占星術の誕生にまでさかのぼって、宇宙の成り立ちについて人類がどのように解き明かしていったかを詳細に語っている。そして、「人間原理」というものがどのような経緯で誕生し、科学界にどのような影響を与えたのかについて解説している。

 結局のところ、「人間原理」は、宇宙はひとつだけではなくたくさんあるのだという、多宇宙の考えを導き出すきっかけにもなっていて、後半では多宇宙についての論争も描き出されていた。

 このあたりの多宇宙の解説がとても壮大で読んでいてむやみに楽しい。自分たちの住んでいる宇宙の外には別の宇宙が広がっていて、泡みたいに宇宙がポコポコと次々に誕生している。そんな多宇宙モデルが現代の科学界のトレンドになっているらしい。想像を絶するようなスケールの世界が広がるようで、圧倒されてしまった。

 一見すると、哲学的というか空想的というか、不思議な考えなのであるが、科学的にも精緻な根拠があって提唱されてきた「人間原理」。さすが青木薫という感じで、非常に細やかでいて分かりやすい解説がなされている。宇宙はなぜこのような宇宙なのかを探っていくうちに、思わぬところにまで連れてゆかれる楽しさ。壮大な宇宙に思いを馳せることのできる、好奇心をくすぐられる一冊だった。
タグ:青木薫

「アラブの春」の正体 [国際]


「アラブの春」の正体    欧米とメディアに踊らされた民主化革命 (角川oneテーマ21)

「アラブの春」の正体 欧米とメディアに踊らされた民主化革命 (角川oneテーマ21)

  • 作者: 重信 メイ
  • 出版社/メーカー: 角川書店(角川グループパブリッシング)
  • 発売日: 2012/10/10
  • メディア: 新書



 チュニジアの青年が焼身自殺をしたことがきっかけではじまった「アラブの春」。そのうねりは、エジプトをはじめ、アラブの国々全体へと広がってゆく。民主化革命にはどのような人々が関わっているのか? アラブ諸国にどのような影響がもたらされたのか? アラブで生まれ育ち、中東問題を絶えず見つめてきた筆者が、「アラブの春」の裏側を描き出した本。

 筆者は、レバノンのベイルートで生まれ、アラブ社会で育ち、中東問題の専門家として活躍してきたジャーナリスト。そんな筆者が「アラブの春」についてレポートしているだけあって、現地の人々の思いなどが反映された、真に迫った内容になっている。

 本書を読むと、ひと口に「アラブの春」と言っても、それぞれの国によって事情が異なるんだなあということが見えてくる。たとえば、リビアで起こった騒乱。エジプトやチュニジアとともに「革命」と報じられたが、実際には部族間の対立であったり、アフリカを一つの連合体としてまとめようと地域通貨を作ろうとしたカダフィに対する欧米諸国の危機感があったりと、単純な民主化革命とは捉えることができないことが分かる。

 「アラブの春」というと、エジプト、チュニジア、リビアなどは大々的に報じられていたけれども、実はそれだけでなく、サウジアラビア、カタール、オマーン、バーレーンなどにも飛び火し、大々的なデモが広がったのだそう。それぞれの国ごとの背景事情が丁寧に描かれていて、中東諸国全体の情勢を知ることもできる内容だ。

 どの国の革命も単純に割り切れない複雑さを持っていて、革命に参加した者も一枚岩ではなくて様々な宗派や思惑が交じりあっている。国内問題だけでなく、諸外国が利権などを求めて介入しようとしたりして、さらにややこしいことに。結果的に、革命が終わっても争いが絶えずに混迷が続いていくのだ。

 最近問題になっているシリア情勢についても、単純にはいかない。アメリカが介入したがる理由として、シリアとイランとの関係やロシアの軍事基地の存在についても書かれていて、シンプルな国内問題だけでは片づけられない、入り組んだ外交情勢にあることが理解できる。

 民主化革命などという単純化されたイメージでは割り切ることのできない実態があることが分かる、非常に有益な本。本書を読んで、中東の諸問題に概括的に触れることができたので、さらに深く中東問題について知りたくなってきた。
タグ:重信メイ

都市と星 [SF(外国)]


都市と星〔新訳版〕 (ハヤカワ文庫 SF ク)

都市と星〔新訳版〕 (ハヤカワ文庫 SF ク)

  • 作者: アーサー・C・クラーク
  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2009/09/05
  • メディア: 文庫



 SF作家、アーサー・C・クラークが描き出す遠未来の人類の行く末。

 物語の舞台になるのは、ダイアスパーという巨大都市である。そこでは、人々の情報は、メモリーバンクにデータとして管理されて、誕生と休眠を繰り返す不死のような状態にある。ほしい食べ物や道具などがあれば、物質変換機により、いつでも好きな時に合成することができる。機械化によって、人々はとっくの昔に労働から解放されて、遊びに興じたり、芸術活動にいそしんだり、知的な論争をしたりして楽しんでいる。苦悩から解放された何不自由のない生活。一種のユートピアと言えるだろう。

 このようなユートピアを描き出しただけでもすごいけれども、クラークのすごいのは、ユートピアのさらに先の世界を描いたところにある。

 安楽な生活を送る人々であったが、ダイアスパーは余りにも安定した社会でもあり、変化に乏しく、活気のない世界でもある。十億年という長い期間、なんの進歩もないまま無為に時間だけが過ぎていく。

 主人公のアルヴィンは、そんな世界にただひとり嫌気がさし、突破口を開こうとする。都市内を探検して、外の世界へと通じる扉を探し、とうとう外界へのルートを見つけ、未知の世界へとつきすすんでいく。そして、そこで驚くべき世界を目の当たりにするのだ。

 読んでいて、アルヴィンが、外の世界を探検する様子が非常に楽しい。アルヴィンにとっては謎のような人工物の中を歩き回ることになるのだが、古代の遺跡の中を探検するような感覚がある。出てくる機械にはどんな意味があるのだろうか、好奇心を刺激され、わくわくさせられるのだ。

 ダイアスパーの外に何があるのかという疑問だけでなく、アルヴィンの出生の秘密、ダイアスパーの誕生した歴史の謎など、全編を通して謎が謎を呼ぶ展開で、大いに惹きつけられる。ひとつの謎が解けでも別の謎が浮かび上がってくる。ページをめくるのがもどかしいというのはこのことかと思った。

 すべての謎が解明された時には、アルヴィンは人類の歴史にまつわる真実を知ることになる。そして、アルヴィンの行動は、停滞したダイアスパーに変貌をもたらし、人類全体を新たな世界へと導くことになる。それは、人類全体が幼年期から一気に成長してしまうような、壮大な成長物語を見るかのようだった。

 アルヴィンの浪漫あふれる冒険を描いた物語であると同時に、人類の未来を想像させられる思索に富んだ作品でもある。人類はどこに向かっているのか? 人類の本質とは何か? 未来の先の先についてまで考えさせられる非常に刺激的な本だった。

奇術師の密室 [ミステリ(外国)]


奇術師の密室 (扶桑社ミステリー)

奇術師の密室 (扶桑社ミステリー)

  • 作者: リチャード マシスン
  • 出版社/メーカー: 扶桑社
  • 発売日: 2006/07
  • メディア: 文庫



 奇術師のマックス・デラコートは、自宅の中にマジック・ルームという小部屋をしつらえていた。その部屋は、手品の小道具が満載され、様々な仕掛けが施された奇妙な空間。そこに集まったのは、マックスとその妻、妻の弟、マックスのマネージャー。彼らはそれぞれに秘密を抱え、お互いに陰謀を巡らせていた。やがて、悲劇の幕が切って落とされ、二転三転する奇妙な物語がはじまる。

 マジックルームという奇術の道具部屋を舞台にした密室劇。植物人間の状態にある奇術師の父親が語り手で、そこで巻き起こる事件の一部始終を目撃しているという設定。

 マジシャンの話というだけあって、ストーリーは、まるでマジックを見せられているかのような、騙しのテクニックのオンパレードだった。目の前で起きている出来事は、いつも見たまま通りの意味ではない。別の本当の意味が隠されていて、予想をくつがえされてしまう。この本のどんでん返しの連続には驚かされる。何が現実で何が幻想なのか分からなくなる、まさにイリュージョンという言葉がぴったりの内容。

 最初は、奇術師のマックスがマネージャーのハリーを呼びつけるところから始まる。マックスは、ハリーの抱えている秘密について話し始め、ハリーがマックスの奇術のタネを他所に売っているのではないかという疑惑について糾弾する。マックスはハリーに銃を突きつけるなどするので、最初はマックスがハリーを殺害する話なのかなと思っていると、話はそう単純ではない。事態は意外な方向へと転がっていく。

 出てくる登場人物たちは誰もが誰かを騙そうとしている。そして、騙そうとするうちに、自分が誰かに騙されていたことに気づく。このあたりのばかし合いが見もの。ハッタリの頭脳戦を見るようで面白かった。

 マジックルームという舞台も非常にうまく使われている。奇術の小道具がそのまま騙しのトリックに用いられているあたり、小道具の使い方がうまいなあと思った。出てくる小道具はどれも何かの意味があって、無駄にしないところがいい。

 奇術をモチーフにした奇妙奇天烈なミステリー。どんな方向に話が進むのか全く予想がつかない複雑な作品。次はどんな手品が見られるのだろうとわくわくさせられる、胸躍るミステリーだった。