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アメリカの小学生が学ぶ歴史教科書 [世界史]


アメリカの小学生が学ぶ歴史教科書

アメリカの小学生が学ぶ歴史教科書

  • 作者: 村田 薫
  • 出版社/メーカー: ジャパンブック
  • 発売日: 2005/01
  • メディア: 単行本



 アメリカの小学生が学んでいるアメリカ史の教科書。アメリカのバージニア大学の教授が編纂した6冊の小学生用の教科書から歴史部分を抜粋して1冊にまとめたものである。

 アメリカの小学生はどんなことを教わっているのだろうという興味本位で読んでみたのだが、意外なほど読みやすい本で驚いた。教科書などというと、およそ堅くて退屈なイメージがあるけれども、この教科書は読みものとしてとても面白くて、教科書とは思えないほど。

 何がよいかというと、全編を通じて物語性が感じられるところ。無味乾燥な事実の列挙ではなくて、ひとつひとつの出来事がストーリーとして、昔話を話して聞かせるように語られているところが非常に良い。歴史上の出来事について、主役を配し、彼らがどのような時代背景の中で、どのような動機で行動したのか、ドラマティックに解説されている。小説を読むような感覚で、アメリカの歴史を学ぶことができるのだ。

 ネイティブ・アメリカンがアメリカにやってきてからの話から始まって、コロンブスのアメリカ大陸発見、植民地化、独立戦争、南北戦争、西部開拓、ふたつの世界大戦、冷戦、60年代までが描かれている。独立戦争や南北戦争などは、割と多くのページが費やされていて、様々な出来事が具体的に書かれていて、場面が目に浮かぶような感覚さえしてくる。

 アメリカから見た歴史認識という点から見ても興味深い。第二次大戦のところでは、日本との戦いについてページが割かれていて、真珠湾攻撃が真珠湾にいた人々の目線から描き出されていたり、太平洋での戦いや原子爆弾投下がこれもアメリカ側からの目線で書かれている。単なる事実の列挙ではなくて、人々の思いのようなものまで書かれているので、アメリカ側から見るとどのような戦争だったのかが、心理的な部分まで知ることができる。

 思いもかけず面白い本で、つらつらと読んでいるうちに、あっという間に通読してしまった。いろいろと知らなかったこともあって、これまで本や映画で知っていた知識の断片がつながるような感じがして、なかなか勉強になる。アメリカの小学生はこんな面白いものを読んでいるのかと思って驚いた。
タグ:村田薫

飛行士たちの話 [文学]


飛行士たちの話

飛行士たちの話

  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • メディア: Kindle版



 第2次世界大戦時の飛行士たちの姿を描いた、作家ロアルド・ダールの短編集。アフリカ、ギリシャ、ドイツなどを舞台に、飛行乗りやその家族をめぐる10の物語がつむぎだされている。

 ダール自身、戦時中はイギリス空軍のパイロットとしてアフリカやギリシャの地で飛び回っていた。その時の話は「単独飛行」という本に詳しく書かれているけれど、本書に出てくる物語にも、「単独飛行」の中に出てくるダール自身のエピソードがちらほら見え隠れしている。伝記的な小説とも言えるし、自身で見聞きした体験を想像力豊かにふくらませた作品なのかもしれない。

 生々しい体験に根ざした作品群であるから、その迫力は圧倒的だ。飛行士たちの日常風景、敵地に飛び立つときの浮遊感、ドイツ機と遭遇した時の心理、熾烈を極める空中戦、事故に遭遇した時の混乱など、実際に飛行した人間にしか分からない、独特の世界が描き出されている。えもいわれぬ臨場感があって、主人公たちの目を通して、一緒に空を飛んでいるような感覚さえしてくる。

 戦時中のリアリティというだけでなく、不思議な幻想風味があるところも本書の作品群に共通するところだ。飛行士たちは、生死のはざまで戦ったり、地上から離れて雲の上を飛び回ったりするうちに、幻のような体験をすることがあるそうだ。本書は、飛行士たちが遭遇した数々の不思議話が語られていて、戦時下を舞台にしたほんのりとしたファンタジー物語になっている。

 戦時下の悲哀だったり、不思議な体験が描き出されていて、どの作品も味があって面白い。とくに以下の作品は印象に残る傑作だと感じた。

 「アフリカの物語」

 ナイロビを飛び立った飛行士が、事故で不時着し、人里離れた高原の丸太小屋にたどり着く。小屋にいた老人に助けてもらうが、その老人は、飛行士に向かって奇妙な話を語って聞かせる……。

 飛行士の話というよりも、いかにもダールらしい奇妙な味の作品。ある犯罪を行おうとした老人の物語。ミステリータッチで、一種の完全犯罪を描いている。まさかこの短編集でこんなコロンボみたいな話が読めるとは思わなかった。

 「カティーナ」

 1941年、ギリシャのパラミティアで、ドイツ軍のドルニエ機が村を襲撃、その地は瓦礫の山と化した。少女カティーナは家族を亡くし、うつろな目で石の上に座っているところをイギリス軍に救助される。彼女はイギリス軍の行動についてゆくことになるが、ドイツ軍に対する憎しみは子供とは思えないほど激しく、思わぬ行動に駆り立てられる。

 戦時中に家族を亡くした少女の生き様を描いた重厚な作品。ドキュメンタリータッチとも言えるような現実味があって、戦争の悲劇が生々しく描き出されている。ダールを含めて、本書に出てくる飛行士たちは割とクールな視点で描き出されているものが多いが、この作品の少女の怒りの激しさには心打たれるものがある。

 「彼らは年をとらない」

 パレスチナのハイファ、飛行場を飛び立ったまま帰還せず、とっくに死んでしまったものと思われた飛行士フィンが、2日間後に奇跡の生還をとげる。駆け寄る仲間たちにフィンは不思議な体験を語りはじめる。それは、雲の外に出たときに見た飛行機の列。戦死したはずのパイロットたちの姿だった。

 雲の上の不思議体験。死んだ飛行士たちの最後の飛行が神々しく描き出される。生死のはざまの幻想的な光景が印象に残る作品。

 映画監督の宮崎駿もこの話が好きだったらしく、「紅の豚」の一挿話として使われている。

 「番犬に注意」

 飛行中に砲弾を受けて、イギリス海峡上空で脱出したパイロット。パラシュートで落下しているうちに意識を失い、気づいた時には病院の中にいた。看護士の手厚い看護を受けるが、奇妙な違和感が……。

 これもミステリータッチの作風で、最後にどんでん返しがある。最初は何だろうと思わせる謎めいたところがあるのだが、終わりのほうでああそうかという世界が反転するようなところが面白い。トリッキーな技巧的な作品。

 「この子だけは」

 爆撃機の操縦席に座る一人息子を思う母親。いつしかその思いは空間を超えて、母親は爆撃機で気を失う息子のところへとたどり着く。

 テレパシーのような不思議な出来事を描いた作品。地上で空を見上げていたはずの母親が、魂だけ抜け出てしまったかのように、いつの間にか息子の乗る飛行機の中に入り込み、気を失っている息子を救い出そうとする。戦時下で、戦争に行った家族を待つ母親のもの悲しい心境を描いた一遍。幻想的な一夜の悲哀を描いた不思議な作品だった。

荒木飛呂彦の超偏愛!映画の掟 [映画]


荒木飛呂彦の超偏愛! 映画の掟 (集英社新書)

荒木飛呂彦の超偏愛! 映画の掟 (集英社新書)

  • 作者: 荒木 飛呂彦
  • 出版社/メーカー: 集英社
  • 発売日: 2013/05/17
  • メディア: 新書



 「ジョジョの奇妙な冒険」でおなじみ、漫画家荒木飛呂彦による映画論。前作ではホラー映画について論じていた筆者が、今度はサスペンス映画の面白さについて語っている。

 筆者は漫画家を志した若いころに、物語の「面白さとは何か?」ということを考えるようになり、その正体をつかむためにたくさんの映画を観ながら研究したのだそうだ。ノートを広げて映画を分析し、キャラクターやサスペンス、アイテムがどのように効果的に使われているのかを学んでいったという。

 そして、行きついた結論が、面白い物語、エンターテイメントの基本にはサスペンスがあるということ。ミステリーだけでなく、コメディでも、ラブストーリーでも、子供向けの話でも、サスペンスの要素がないと面白くならないということだった。

 本書は、こうした筆者の映画研究から得られた結論、サスペンスの重要性、よいサスペンスの5つの条件など、物語が面白くなるための仕掛けについて、様々な映画を引き合いに出しながら語りつくしている。ヒッチコックやブライアン・デ・パルマのように、いかにもサスペンスという作品も出てくるし、「シュレック」や「フロスト☓ニクソン」といった、一見すると別ジャンルの映画のようなものについてもサスペンスという観点から紹介していて面白い。

 カメラワークをワンショットごとに分析していたり、サスペンスの条件を戦力分析表のような形であらわしたり、キャラクターの描き方について論じたりと、かなり詳細に作品が分析されていて、さすが荒木先生と思わず圧倒されてしまう。名作の条件は、男が泣けることだということで、「男泣きサスペンス」というジャンルがあることも本書を読んで初めて知ったので、こういう見方があるのかと驚いた。

 とにかく嬉々としてサスペンスについて語っている感じが伝わってきて、とても楽しい本。よほどサスペンスが好きなんだろうなというのがよくわかる内容。

 筆者の映画に対するこだわり、映画愛が伝わってくるとても楽しい一冊。知らなかった映画もたくさんあったし、知っている映画でもこんな見方をするのかというのがあって、これから映画を観るのに非常に参考になりそうな本だった。
タグ:荒木飛呂彦

九尾の猫 [ミステリ(外国)]


九尾の猫〔新訳版〕 (ハヤカワ・ミステリ文庫)

九尾の猫〔新訳版〕 (ハヤカワ・ミステリ文庫)

  • 作者: エラリイ・クイーン
  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2015/08/21
  • メディア: 文庫



 ニューヨーク市に現れた〈猫〉は、人々を恐怖の渦に巻き込んだ。それは、突如出没しては、ひっそりと殺人を繰り返す連続絞殺魔。被害者は一人きりでいるところを狙われ、いつも同じ絹のひもで首を絞められて殺害されていた。すでに5人もの人間が同じ手口で殺される中で、推理小説家のエラリイ・クイーンは、父親のクイーン警視からの依頼で調査を開始する。

 海外本格推理小説の巨匠、エラリイ・クイーンが書いた、連続殺人もののミステリー。探偵クイーンが、ニューヨークを震撼させる連続殺人魔〈猫〉の正体を暴こうとする姿を描く。

 複数の人間が殺害されるのだが、そのつながりが分からない。被害者はお互いに面識はなく、職業も生活状況もバラバラ。ひとり暮らしの無職の男、売春婦、靴のセールスマン、石油富豪の娘……。犯人は無差別に被害者を殺してまわっているのか? それとも、何か被害者の間に共通項があるのだろうか? エラリイは、数少ない手がかりの中から、隠れたパターンがないかを探求する。

 こういう連続殺人もので、被害者の共通項を探ろうとする話を、「ミッシングリンク(失われた輪)」などと呼んだりする。一見ばらばらに見える殺人事件であっても、実は被害者の間に隠されたつながりがあることが分かって、すべてが輪のように関連しあっていたことが分かる。見えない輪を見つけだすところに主眼がある作品のことだ。

 ミッシングリンクものは、密室ものやアリバイものに並ぶほどミステリーでは人気のテーマで、本格推理作家たちはこぞってこのテーマに挑戦しているほど。代表的なものには、クリスティの「ABC殺人事件」、デアンドリアの「ホッグ連続殺人」、マクベインの「警官嫌い」、ウールリッチの「黒衣の花嫁」などがある。

 この種の作品はそんなにパターンがあるわけではなくて、クリスティの「ABC殺人事件」と同じトリックか、その亜流が多いといえるだろう。そんな中でも本作は新機軸を打ち出しているところが読みどころだ。

 エラリイの相変わらずの鋭い推理も楽しい作品である。隠された手がかりを発見したり、ロジックで犯人を特定したり。冴えた推理があって、ひねりのある結末があって、推理小説の面白さが凝縮されたような傑作だった。

夢幻花 [ミステリ(日本)]


夢幻花(むげんばな)

夢幻花(むげんばな)

  • 作者: 東野 圭吾
  • 出版社/メーカー: PHP研究所
  • 発売日: 2013/04/18
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)



 西荻窪の自宅で、秋山周治という老人が何者かによって殺害された。被害者は周囲からも慕われ、恨みを持つような人間は見当たらず、犯人が何のために犯行に及んだのかは全くの謎だった。あるとき、被害者の孫娘である秋山梨乃は、事件現場から被害者が育てていた黄色い花がなくなっていることに気づく。事件と何か関係があるのだろうか? 梨乃は黄色い花と殺人事件の謎を解明するため、手がかりを追いかけ始める。

 人気作家東野圭吾のノンシリーズのミステリー小説。

 冒頭からいきなり、矢継ぎ早に複数の謎が立ち現われて、ぐいぐい引き込まれてしまう。アマチュアバンドマンの突然の自殺、50年前に起こった痛ましい事件、老人が殺害される事件と消えた黄色い花の謎。それぞれの謎がどのようにからみあっていくのか全く分からないまま話が進み、謎めいた雰囲気がするところがとてもいい。

 中盤の展開も見もので、ひとつの手がかりが別の手がかりにつながるといったように、次々に場面を転々とする展開が動きがあってスピーディ。と同時に、犯行現場からロジカルに犯行当日の状況を推理する場面などもあって、推理もののいろいろな面白さが楽しめる内容になっている。

 最後には、複数の謎がひとつひとつ解けていき、お互いが関連しあっていたことが分かる。不明だった点が一本の線につながる爽快感。まさにミステリーの醍醐味が詰まった作品といえるだろう。

 一番よかったのは、事件のキーポイントになっている黄色いアサガオの謎。黄色いアサガオというのは、江戸時代には存在したが、今では存在しない幻の花。被害者はどのようにしてこの花を手に入れたのか? そして、この花が事件にどのように関わってくるのか? 花が事件を解くための重要な手がかりになっているところが面白いし、黄色いアサガオをめぐる薀蓄もいろいろと出てきて、こういうところを読んでいるだけでも楽しい。

 主人公たちと一緒に手がかりを追いかけていくうちに、思わぬところまで連れて行かれる楽しさ。真相も意外な深みのあるもので、最後まで目が離せない作品だった。
タグ:東野圭吾

犬も歩けば英語にあたる [語学]


犬も歩けば英語にあたる

犬も歩けば英語にあたる

  • 作者: 坂之上 洋子
  • 出版社/メーカー: 英治出版
  • 発売日: 2003/04/25
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)



 アメリカに15年近く在住してきた筆者が、アメリカの日常をつづったエッセイ集。

 英語の誤用から起きる様々な騒動だったり、習慣の違いがもたらすカルチャーショックだったりと、アメリカ生活の中で起きた珍しいエピソードがたくさん描かれている。

 アメリカ人になるための試験の話、パーティーで聞いてはいけない話題、日本とアメリカの顔文字の違い、アメリカで就職するときの面接の受け方などなど、豊富な話題が挙げられている。どれも実際にアメリカに住んでみないと分からないような話ばかりで、映画や本でアメリカのことを知ったつもりになっていたが、まだまだ知らないことだらけだなあと驚かされた。

 外国の人と話す機会がごく稀にあるけれども、英語そのものの能力が足りないだけでなく、習慣や振舞い方が分からずに頭が真っ白になってしまうことも多い。本書には、英語圏の人と接するときに注意したほうがいい文化的な違いがいろいろと書かれていて、英語を使うときに実際に役に立ちそうだ。

 とくにパーティーでは年齢、結婚歴や宗教、学歴、政党などの話題は避けた方がよいという話や、日本人特有の謙虚な言い回しは伝わりづらいといった話は、ああそうなのかと腑に落ちたので、これから注意したいと思った。

 ひとつひとつのエピソードが短いので、アメリカの文化習慣をさくっと楽しく知ることができる本。ところどころ英語での言い回しも書かれていて、こんな表現をするのかと英語の勉強にもなった。
タグ:坂之上洋子