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人間はウソをつく動物である [犯罪]





 むかし観た映画に「深夜の告白」という作品がある。

 主人公が人妻と不倫関係になって、愛に狂った挙句に愛人の夫を殺害する計画を立てる。鉄道車両から転落死したように見せかけて、生命保険金をかすめ取ろうという寸法だ。

 かくて計画は実行され、うまくいったかに見えたが、主人公の友人である保険会社の調査員が事件のことを調べ始める。刑事コロンボばりに執拗に犯罪計画の矛盾を突いていき、主人公と愛人は次第に追い詰められていく……。

 この映画のイメージがあったせいか、保険会社の調査というと、とても厳しいものだと勝手に思っていた。何事も見逃さないチェックが入るものなのかと。

 だが、実際にはそこまででもないらしいということが、「人間はウソをつく動物である」という本に書いてあった。損害保険の調査員が書いた、保険調査を巡る様々な経験談を集めた本である。

 厳しい審査が難しい理由は、保険会社もビジネスだからだ。あまり厳しい審査をすると、営業が難しくなる。とくに継続して取引をしている顧客の場合、保険金の支払いでもめてしまうと、他の取引まで引き上げられてしまう。競争の激しい保険業界にあっては、多少疑惑がある事案でも保険金を支払ってしまったほうが、かえって保険会社の利益につながるというケースがままあるのだ。

 なるほど世の中に知らないことは多いものである。本を読んでいると、こういう自分では絶対に体験できない世界が描かれているから面白い。

 知らないといえば、保険金詐欺をたくらむ者たちの心境というのも書かれてあって面白かった。盗難保険、自動車保険、火災保険、傷害保険と、あらゆる種類の保険について詐欺の事例が集められているのだが、犯行を行うに至った心境も垣間見えてくる。

 たとえば、会社経営が困難になって犯行に及ぶ者の例などがいくつか出てきた。借金がかさんで、従業員に給料を支払う金もない。会社が焼けて火災保険がおりれば再起を図ることができる。やむにやまれずの犯行。

 こういう事例を見ると、なんだか妙に同情してしまうのである。人間というのは追いつめられると、誰でも犯罪者になりえてしまうんじゃないか。犯罪者とそうでない人を分ける線というのは、とてもか細いものなのではないかと思えてくるのである。

 人間味のあふれるエピソードが満載だし、こういう風にして犯罪が暴かれていくのかというところも丁寧に描かれていて、短編ミステリーを読むような味わいのある本でもあった。
タグ:伊野上裕伸
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